2017年6月24日土曜日

ミルトン・エリクソン論文全集を読む 175日目


                                                                                                                            
 
  催眠もいいけど、

  代案を持っていないと、単なるマヌケ(笑)。

   <ひとりごと>




はじめに

 備忘録として、



 お正月から、ミルトン・エリクソンの論文全集『The Collected Papers Milton H. Erickson』[1] を読んでいる。読み方のルールはここで書いた。

 175日目について書いておきたい。

抵抗を示すクライアントの偏頭痛

「Migraine Headache in a Resistant Patient (1936)」から。著者は、ミルトン・エリクソン。未発表の原稿。

 エリクソンがデトロイトのウェイン州立大学で講師をしている時の話。学と部は医学部だが、エリクソンはここで催眠を教えている。そして一人の厄介な男子生徒が居る。事あるごとに授業を妨害してくるというような具合だ。この生徒はそもそも催眠などというものをバカにしている。エリクソンもいい加減、この男子生徒にムカついている。

 ただし、この男子生徒は偏頭痛を抱えている。フットボールの試合中など強度の偏頭痛を起こす。

 お察しの通り、授業中にこの男子生徒で催眠のデモを行う。タイトルどおりに催眠など鼻から信じていないので、その間も色々抵抗を示してくるという具合。ここで、エリクソンはこの生徒にどのように対処したのか?また、彼の偏頭痛はどうなったのか?読んでからのお楽しみというような論文になっている。
 


随考

――システミックな思考とは何か? ――


 ネットに「Is systemic thinking extraneous to common sense?(2011)」というタイトルの家族療法の論文が落ちていたので読んでみた。

 ある意味、第二次サイバネティクスをくぐらせたミルトン・エリクソンの心理療法の進化系。これがよいのは、普通の「質問」だけで問題の解決を支援することができることだ。怪しくない。当然、日常生活や仕事の場面で、人間関係に起因する問題などを解決することにも使える。

 さて、システミックな思考というのは、全体論的(この中には、知覚、認識、感情、関係性などあらゆるものを含む)な思考と考えるとよいだろう。その意味、「問題が起きている」と一口に言っても、無生物であるパソコンが立ち上がらないというような問題とは違って、「職場の風通しが良くない」のような問題は、色々な要素を「システミック」に考える必要があるということになる。

 さて、ここで書いたが、ミシェル・リッターマンが考えるミルトン・エリクソンの哲学に以下があった。

  • セラピストが答えを出す必要はありません。クライアントが心を開いて見たり感じたりする手助けをすることに徹しなさい。

 反論することはないのだが、具体的にどう支援するのか?という疑問は湧いてくる。

 一つの答えは、クライアントがよりシステミックな思考で物事を見られるように支援する、というのがこの方向になる。それで、この支援をするためにエリクソン派生のシステミックを志向する家族療法では、これを促す「質問をする」ということになる。もっと細かい話をすると、ベイトソンの二重記述、多重記述で物事が見られるようになるように、無意識に視点を切り替え、二重・多重で物事を記述できる手伝いをする、ということになる。もちろんこれは、催眠は使わない、一見普通の「質問」によって行われる。

 この論文では、以下を意識した質問をする。難しいことを言っているが、自分が相手を説得するような形式で話か、他人が会話の中で言っていることを伝えるような間接的な形式でそれとなく伝えるか?のような違いでしかない・・・・・

 1. Monoadic (モノアディック)
  単一主人公による(主観的な)説明。
   2. Unidirectional dyadic (単一方向のダイアディック)
  二人の登場人物、一人が予期せぬ出来事の影響を受ける。
 3. Bidirectional dyadic (両方向のダイアディック)
  主人公に加えて、予期せぬ出来事の影響を受けるもう一人の人物が登場。
   4. Triadic (トライアディック)
  三人以上の人物が登場、ただし部分的にしか関係していない。
 5. 'Systemic Triadic' (システミックなトライアディック)
三人以上の人物が登場、円環的なゲシュタルトで結ばれている。 

 それで、この論文では普通の人がどのような形式の質問をしているのか?を定量的に調査したものだが、案外、システミックな思考を促す、4.や5.は使われていない、ということが分かったという論文になっている。

 もちろん、一般的な家族療法だと問題が起こっている関係性を二重記述、多重記述してシステミックな視点を身につけると自ずと解決策はわかってくるという前提にはなっている。これはおいておいて、調査している英国でも、普通の人はあんまり、システミックな思考はしていないのだなぁとわかるのが面白いところなのだろう。

6月24日の進捗、1380ページまで(全体 2,648ページ、進捗率 52.1%)


Volume IV
INOVATIVE HYPNOTHRAPY

Migraine Headache in a Resistant Patient Milton H. Erickson Unpublished manuscript, 1936.





お知らせ:

ミルトン・エリクソンの本質を突き詰めたから分かったことがあります。

 組織のパラドクスを解消し、組織の認識、行動の変化を支援する、
「変化・創発ファシリテーション」のオンデマンド、オンサイト講座を開始いたします。

詳細は、こちらから。


(つづく)

文献
[1]http://ori-japan.blogspot.jp/2017/01/collected-papers.html


記事の内容の正誤について、執筆者は一切保証いたしません。また、本書の内容、エクソサイズなどを実行した結果被った被害などについて著者は一切責任を負わないこととします。本ニュースレターの内容は、以下クリエイティブ・コモンズ・ライセンスに従うものとします。但し、引用元の著作権は引用元に所属します。ご意見、ご感想は次へ tritune'`@''gmail.com

https://www.facebook.com/Okirakusoken-236949276723679


――

2017年6月23日金曜日

ミルトン・エリクソン論文全集を読む 174日目


                                                                                                                            
 
  疼痛のコントロールは、コーチングのような一般の質問だけでは難しいなぁ。

  

   <ひとりごと>




はじめに

 備忘録として、



 お正月から、ミルトン・エリクソンの論文全集『The Collected Papers Milton H. Erickson』[1] を読んでいる。読み方のルールはここで書いた。

 174日目について書いておきたい。

催眠による疼痛のコントロール

「Introduction to the Study and Application of Hypnosis for Pain Control」から。著者は、ミルトン・エリクソン。時期が書かれていないが、おそらく1950年代にエリクソンがニューヨークで行った公演内容を文字に起こしたもの。

 ここで語られているのは、催眠による疼痛のコントロールについての話だ。催眠は神経学的に疼痛を低減する目的のためにはかなり研究されてきた経緯がある。19世紀から20世紀は、麻酔が今ほど発展していない時代、歯の抜歯や外科手術の麻酔として催眠が使われていたようなこともある。Wikipediaの Hypnosurgeryの項目に説明がある。

 さて、時は流れて20世紀のちょうど半ば、エリクソンは、この講演で疼痛をコントロールるする11の技法について語っている。ちょっと面白いのは、本文には11の技法が書いてあるが、まとめでは10の技法についてしか語られていない点だ。具体的にはリン・クーパーとの共著である時間歪曲の話が本文には登場するが、まとめには登場しない。また、具体的な技法は以下だ。

  1. 痛みの完全な廃絶のための直接暗示の使用の
  2. 痛みを許容する間接的催眠暗示
  3. 記憶喪失、健忘の利用
  4. 催眠による鎮痛現象の利用
  5. 催眠による麻酔効果の利用
  6. 催眠による感覚の置換の利用
  7. 催眠による痛みの移転の利用
  8. 催眠による痛みの解離
  9. 催眠による経験の再解釈
  10. 痛みの低減をもたらす催眠暗示の使用

    現在、エリクソン財団のトレーニング・ガイドラインを読むと、a.の理論を除いて b.〜g.の6つが教えられているようだ。

 a. Theories of pain
 b. Glove anesthesia
 c. Displacement
 d. Imagery
 e. Dissociation
 f. Time Distortion
 g. Scaling

 知覚を変容させて疼痛をコントロールするのは催眠ならではということにはなるのだろう。もちろん、催眠で神経の「現象」として痛みは低減できても、根本的な痛みの(物理的な)原因が取り除けるわけではないので、それは医師に相談しろ、ということだろう。


随考

――円環的質問 by ペギー・ペン ――

 ネットにペギー・ペンの論文「Circular Questioning (1982)」が落ちていたので読んだ。内容はタイトルどおりにミラノ派家族療法の「円環的質問」についてだ。

 「円環的質問」は世の中が「円環的因果関係」で構成されているというシステミックな物事の見方を促す質問ということになる。もちろん、円環的因果関係は人類学者のグレゴリー・ベイトソンの唱えた因果関係であるばかりではなく、6世紀から仏教をやっている我々日本人にはおなじみで当たり前の因果関係かもしれない。

 ベイトソンの著作「Steps to an Ecology of Mind(精神の生態学)」のトリビュートである「Buddhist Steps to an Ecology of Mind」という仏教関連の論考がネットに落ちていて、これに仏教と円環的因果関係について書いてある。余談だが、1904年に英国で生まれ、1901年にサンフランシスコの禅センターで亡くなったベイトソンは無神論者だ。円環的因果関係は一神教の信者ではない発想の自由さということなのだろう。

 個人的には、この手法の背景にはパラダイムシフトがあると考えている。ここで書いたが、これは、デカルトのような直線的な因果関係の世界から、ベイトソンの円環的因果関係の世界へのパラダイムシフトがあるという具合だ。逆に、ベイトソンをくぐらせた短期療法のリフレーミングの根幹のところは、直線的因果関係から円環的因果関係の転換をねらっているようにも思えてくる。

 これは、中途半端に勉強すると、直線的因果関係の世界観を強化するような形式になるので、「何々すると必ずこうなる」や「こうなると、これしか方法がない」のような直線的な思考が色々な問題を起こしているに思えないでもない。逆にいうと今までの常識の範囲で「どん詰まり」に陥った場合、常識を超えて、そこから抜け出す思考法として「円環的因果関係」の思考法が役に立つという具合だ。要は、実生活では答えは一つとは限らない、いくつもの答えがある、というのが円環的な因果関係の考え方でもある。今、起こっている問題も原因は一つではない、円環的に色々関係している、だからその因果の関係性を少し変えることで問題やそれについての認識は違う様相に移る。「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとに水にあたらず」、変化は様々な円環的因果関係から成り立っている。

 さて、ミラノ派家族療法は、系統的には、ミルトン・エリクソン→グレゴリー・ベイトソン(MRI)→ミラノ派家族療法(→オープンダイアローグ)ということになる。ペンの論文は、ベイトソンのコンセプトである1)共進化、2)二重記述、3)円環的因果関係がどのようにミラノ派の技法に実装されているのかが説明されているが、このプロセスを理解するのは非常によい論文ということになる。間接的にミルトン・エリクソンの知見も第二次サイバネティクスをくぐらせて反映されているような格好になっている。

 個人的にミラノ派を気に言っている理由はいくつかある。具体的には以下だ、
  • 個人、もしくは家族などの集団の両方に使える。
  • 個人、家族の自主性、自律性を引き出すことを重視している。
  • 個人、家族を自律性を持ち、自ら問題を解決できる生き物として扱う。
  • セラピストは中立である必要はあるは、「凄い人」である必要はない。
  • 催眠は必要なく、質問だけで問題解決や認識の枠組みや行動の変化を支援できる。
  • その変化のレベルはウオツラィックの言う、現在の枠組みを超えて変化する第二次変化を志向している。
  • パラドクス、カウンター・パラドクスを扱える。
  • 質問が間接的である。
  • コーチング、ファシリテーションで使える。
ここでのオチは、セラピストが直線的因果関係から円環的因果関係で物事を見られる人である必要がある、ということになるのかもしれないが、このあたりはなかなか深いところでもある。

6月23日の進捗、1372ページまで(全体 2,648ページ、進捗率 51.8%)


Volume IV
INOVATIVE HYPNOTHRAPY

Introduction to the Study and Application of Hypnosis for Pain Control Milton H. Erickson Proceedings of the International Congress for Hypnosis and Psychosomatic Medicine, edited by J. Lassner Springer Verlag, Berlin, Heidelberg, New York. Reprintedwith permission of Springer Verlag.





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ミルトン・エリクソンの本質を突き詰めたから分かったことがあります。

 組織のパラドクスを解消し、組織の認識、行動の変化を支援する、
「変化・創発ファシリテーション」のオンデマンド、オンサイト講座を開始いたします。

詳細は、こちらから。


(つづく)

文献
[1]http://ori-japan.blogspot.jp/2017/01/collected-papers.html


記事の内容の正誤について、執筆者は一切保証いたしません。また、本書の内容、エクソサイズなどを実行した結果被った被害などについて著者は一切責任を負わないこととします。本ニュースレターの内容は、以下クリエイティブ・コモンズ・ライセンスに従うものとします。但し、引用元の著作権は引用元に所属します。ご意見、ご感想は次へ tritune'`@''gmail.com

https://www.facebook.com/Okirakusoken-236949276723679


――

2017年6月22日木曜日

ミルトン・エリクソン論文全集を読む 173日目


                                                                                                                            
 
  なんか、エリクソンが地球を救う、

  みたいな話にならないこともないなぁ(笑)。

   <ひとりごと>




はじめに

 備忘録として、



 お正月から、ミルトン・エリクソンの論文全集『The Collected Papers Milton H. Erickson』[1] を読んでいる。読み方のルールはここで書いた。

 173日目について書いておきたい。

抵抗を利用した治療的ダブル・バインド

「A Therapeutic Double Bind Utilizing Resistance (1952)」から。著者は、ミルトン・エリクソン。実際には出版されなかった原稿。

    クライアントは、エリクソン関係の様々な著作でおなじみの12歳で178cm 、77kg ある少年のお話。症状はおねしょ。結論からいうと、ここで主に使われたのは、治療的ダブル・バインドの特にタイム・ダブル・バインドということになる。

 現在、少年は優秀な大学生になっており、おねしょも治りエリクソンともずっと良い関係を築いている。

・・・・・

 細かい話はここでは書かない。 

クライアントの個性や考え方を利用する

「Utilizing the Patient’s Own Personality and Ideas: “Doing It His Own Way”(1954)」から。著者は、ミルトン・エリクソン。実際には出版されなかった原稿。

 クライアントは、新婚の22歳の男性。催眠で無謀な運転をやめさてほしいという(妻の)要請を受けて、エリクソンの事務所やってきた。この男性は、催眠に入ることも、疑っているし、自分が運転のスタイルを変える必要があることも疑っている、と言った。

 この男性はいざとなったら車を壊しても自分は無傷で助かるスタントのような運転を身につけているという絶対の自信があった。ただし、運転のスタイルを変える必要性があったのは、妻を乗せてドライブする時にいつまでも無謀な運転をつづけるかということだった・・・・・

 オチは、エリクソンがこの男性の信念を逆手にとって利用するということになるのだが・・・・あまり細かい技法については書かれていない。

・・・・・・・・・・

随考

――イスラエスとパレスチナにおける平和のための逆説的介入 ――

 昔から戦争を煽るのに新聞やラジオをはじめ、多くのプロパガンダが使われてきたような歴史がある。ただし、これを反対に使えば平和(の状態)を促進できるのではないか?との仮定のもと、イスラエルで行われた社会実験の論文がリンクされていたので読んでみた。(この記事の日本語サマリがウォール・ストリート・ジャーナルのここに書いてある。)

 タイトルは、「Paradoxical thinking as a new avenue of intervention to promote peace(2014)」(平和を促進するための新たな介入方法としての逆説的思考)でサマリは以下だ。

 困難な紛争に巻き込まれている社会では、紛争の継続と困難に寄与する強い社会心理的障壁が存在する。イスラエルとパレスチナの紛争の中で行われた独自のフィールドスタディに基づいて、私たちは参加者に紛争の共通倫理に合致する極端なアイデアを表現する長期的逆説的介入キャンペーンを提示することにより、結果は、介入が直観に反しているものの、参加者には特に中道と右派の政治的方向性を持つ参加者の間で紛争に関するより懐柔的な態度を表明することにつながったことを示している。 
 最も重要なのは、2013年のイスラエルの総選挙で参加者の実際の投票パターンに影響を及ぼしたということであった。総選挙の近くで行われた矛盾的な介入に曝された参加者は、紛争への平和的解決を提唱する。これらの効果は、介入後1年後に再評価されたときに介入条件の参加者がより懐柔的な態度を表明したため、長期間続いた。これらの結果に基づいて、我々は逆説的思考の概念に基づく説得の一般的理論に新しい層を提案する。

   実験の概要

 これを読むと、もともと左派の思考を持っている人には有効ではなかったようで、右派左派がどうだということはおいておいても、効果に何らかの前提条件はつく、ということだろう。

 このあたりは、テルアビブ大の学者に加えて、スタンフォードの学者が参加したり、論文にミルトン・エリクソンを研究したMRIのポール・ウオツラィックが引用されていたりと、誤解を恐れずに言えば、巡り巡って「ビリーフ・チェンジ」を支援するミルトン・エリクソン的パラドクス介入の平和利用ということができるだろう。

 何れにしても、ユダヤ人の人たちは構想が大きすぎて、以下に自分がつまらないことを考えていたのか?再認識できるという意味では面白いプロジェクトでもある。
 
6月22日の進捗、1364ページまで(全体 2,648ページ、進捗率 51.5%)


Volume IV
INOVATIVE HYPNOTHRAPY

A Therapeutic Double Bind Utilizing Resistance
Milton H. Erickson Unpublished manuscript, 1952.

Utilizing the Patient’s Own Personality and Ideas: “Doing It His Own Way” Milton H. Erickson Unpublished manuscript, 1954.





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ミルトン・エリクソンの本質を突き詰めたから分かったことがあります。

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詳細は、こちらから。


(つづく)

文献
[1]http://ori-japan.blogspot.jp/2017/01/collected-papers.html


記事の内容の正誤について、執筆者は一切保証いたしません。また、本書の内容、エクソサイズなどを実行した結果被った被害などについて著者は一切責任を負わないこととします。本ニュースレターの内容は、以下クリエイティブ・コモンズ・ライセンスに従うものとします。但し、引用元の著作権は引用元に所属します。ご意見、ご感想は次へ tritune'`@''gmail.com

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2017年6月21日水曜日

ミルトン・エリクソン論文全集を読む 172日目


                                                                                                                            
 
  さて、

  クライアントが望む方向への支援をするとして、

  どのようにパラドクス介入をしたものかなぁ〜(笑)。

   <ひとりごと>




はじめに

 備忘録として、



 お正月から、ミルトン・エリクソンの論文全集『The Collected Papers Milton H. Erickson』[1] を読んでいる。読み方のルールはここで書いた。

 172日目について書いておきたい。

産科における催眠の活用

「Use of Symptoms as an Integral Part of Hypnotherapy (1965)」から。著者は、ミルトン・エリクソン。実際には出版されなかった原稿。

 簡単にいうと、産科に催眠をどのように活かすのか?この論考を行っているのがこの原稿となる。エリクソンはこれを書きながら以下の問を立てる。

  1. .どのような時、あるいはいつ、産科で催眠を使うのか?
  2.  誰が催眠治療を受けることができるのか?
  3.  危険があるとすれば、それは何か?
  4.  催眠を使用した事例の種類にはどのようなものがあるか?
  5. 具体的にどうやったのから?
  6.  催眠療法の知識はどこで得られるのか?
  7.  具体的には、一般的、あるいは個々の事例で催眠で何が達成されるのか?
  8.  最後に、他にも多くの方法がある場合、催眠術を使用する理由は何か?
・・・・・・
 上とは対応していないが、この回答はおおよそ、以下のようなものになる。


  1. クライアントに、身体的なリラクゼーション、肉体的な感覚や変化の漸進的な変化、妊娠に望ましいような快適さと幸福感を教えることができる。
  2. 体重の変化、吐き気と嘔吐、恐怖や不安状態ははるかに適切に処理される。
  3.  医師とその能力に対する信頼と信頼を高めつつ、協力と理解の態度を発展させることができる。 
  4. クライアントに、実際の学習能力、麻酔または鎮痛、または記憶の不快感に対する記憶喪失に応じて教えることができ、したがって、クライアントが分娩室に入り、十分なレベルの意識で本当に楽しく、実際の出産の経験に産科できる。
  5.  産後期間中のクライアントの行動を、睡眠、身体的快適、不安からの自由、身体的快適性および幸福感の促進に向けられる。 
  6. クライアントの乳房の振る舞いと、これに関する彼女の態度や不安は、より適切に扱うことができる。
・・・・・・・・ 

 個人的には医師ではないので、単に論文を読んでいるという立場だ。当然、特定の治療法を推奨するものではない。


随考

――パラドクス介入を使う ――

 ネットに「The use of the paradox technique in family therapy with Iranian families: case report 」というタイトルの論文が落ちていたので読んでみた。

 読む理由は色々ある。心理療法家のミルトン・エリクソンはクライアントに催眠誘導を行う(ことが多い)。これは事実だ。しかし、当然なら催眠誘導をしただけで認識の枠組みや行動に対する変化は期待できない。これだけだと単に催眠から覚めたら、少しは気分が良くなっているのかもしれないが、大きな変化は起こらない。

 ここで疑問が沸き起こる。エリクソンは3つの点で一体何をしていたのか?

  • クライアントの何をどのように見立てていたのか?
  • クライアントの認識の枠組みや行動をどのように見ていたのか?
  • 具体的にクライアントの何にどのように介入していたのか?
 
 上の論文はエリクソンそのものではないが、エリクソン→MRI→ミラノ派家族療法と派生していることを考えれば、何かのヒントにはなるだろう、ということだ。細かい違いは、ここで紹介したアラン・カーの家族療法の本に書いてある。(例えば、MRIはどちらかというと行動介入で、ミラノ派は認識への介入だとか・・・)で、MRIとミラノ派は催眠は使わないが、個人的には、この3つの心理療法に共通することは、パラドクス介入だ、と考えている。

・・・・・・・・

 それで本文のサマリー、

 目的:この研究は、家族療法におけるパラドックスの効果を評価した。治療ツールとしてのパラドックスは、多くのセラピスト、特にパラツォーリら(ミラノ派)によって探究されてきた。(ミラノ派は、二者間(dyadic )や三者間(triadic )の円環的質問を使い、催眠導入は行わない。)

 事例: 2人の女性顧客がこの研究のために選ばれた。どちらの女性も家族の中でうつ病の症状を呈した唯一の人物で、2年間以上投薬を受けていた。

 結果:セラピストはミラノ派システムズ・アプローチを家族療法に使用し、両家族は16回のセラピーセッションに参加した。彼らは2年間追跡調査された。すべての家族は、10回目の治療が終わった後に、家族評価デバイス(FAD)とBeck Depression Inventory(BDI)アンケートに治療前に記入した、これから3ヶ月後に治療が完了した。パラドックス介入は満足のいく結果を示した。それは症候的な行動を減少させ、家族全体のシステム全体に影響を与えた。家族制度はより実用的かつ機能的になった。 2年後の症例1はうまく機能し、被験者の一人である女性は結婚した。症例2は治療後に投薬を中止し、高校を修了して大学に入学した。

 結論:パラドックス介入は家族療法の強力なツールだ。それは長期的な病気に対する創造的で決定的な解決策となり得る。しかし、注意が払われなければならず、それは他の技術が失敗した家族療法の過程の最後の選択肢でなければならない。

・・・・・

 本文には具体的にどのようなパラドクス介入を行ったのか?が書いてあるが、ここでは書かない。

 もっとも、個人的に面白いなと思うのは、イランのおそらくイスラム教シーア派を信仰する家族なのだろうが、ミラノ派家族療法がこういった文化的な違いにも対応している点だ。反対の言い方をすると、結局、認識の枠組みや行動に働きかけるので、宗教としてキリスト教でも、イスラム教でも、仏教でも、結局、信仰とは異なるところに働きかけているということなのだろう。

 余談だが、個人的には臨床心理士でも医師でもないので何らか病気の治療に使うわけではないが、仕事の場面での、組織のチェンジ・マネジメントやファシリテーションの技法として変化を導く技法としてミラノ派の知見はおおいに活用させてもらっているところではある。当然、パラドクス介入、あるいはカウンター・パラドクス介入を伴っているけれど・・・・・このあたりの話は、ここで書いた、組織開発のような話になってくる。
 
6月21日の進捗、1356ページまで(全体 2,648ページ、進捗率 51.2%)


Volume IV
INOVATIVE HYPNOTHRAPY

Hypnosis in Obstetrics: Utilizing Experiential Learnings Milton H. Erickson Unpublished manuscript, circa 1950s.



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