2011年9月30日金曜日

知覚を磨いてリアリティを高めるマインド・マップ読書法



抽象的な思考から発生する、知覚というものがある。 例えば、平和で満たされている状態ということを考えると気持が良くなるというのがこれにあたる。

ひとり言



今日は、「知覚を磨いてリアリティを高めるマインド・マップ読書法」と題して書いておきましょう。

以下のリンクでも述べたように個人的にはトニー・ブザン氏の提唱するマインド・マップをそのまま使うのではなく、一端、ブザン氏の影響を受けた一般意味論の理論に戻して使っています。 


何せ、一般意味論のバイブルで、英文で約900ページある、アルフレッド・コージブスキーの著作「Science and Sanity」の第五版 を三回ほど読んで大凡の概念については理解したので、個人的にはこちらのほうがしっくりくるというわけです。[1]

ちなみに、以下のリンクに書きましたが、一般意味論を簡単に説明すると、五感からの情報がどのように神経系に取り込まれ、抽象化されながら、かつ言語、記号と相互作用しながら経験として神経系にコーディングされるかを探求する学問です。

http://ori-japan.blogspot.com/2011/09/blog-post.html

従って、見てくれは別にして、中のロジックは、私オリジナルのGSMM(General Semantics Mental Map )とでも言ったほうが良い内容になっているのですが、今日はこのマインド・マップを使って読書を行う方法について書いておくことにしたいと思います。

基本的なフォーマット

まず、基本的なフォーマットは、一般意味論の構造微分(Structural Differential)を2次元に展開して、以下の図のようにしています。



·           中心イメージ

まず、主客分離が行われ、言葉で表現される前の純粋経験のイメージを中心に配置します。手書きの場合はポンチ絵のようなものでもかまいませんし、読書の場合は、文字から想像したイメージを書けば良いでしょう。 また、ここに焦点を当てた場合には、その場面に入り込んでそこに居る状態を想像してみましょう。

·           著作中の事実

この部分は中心イメージの観察者がその要素に言葉、記号のラベリングを行い、主客分離の認識を行うフェーズです。


 普通はこのフェーズの情報処理は私達の無意識で行われています。 それで、このプロセスを言葉や記号を使って敢えて意識に上げて、そのプロセスに焦点を当ててみることで観察者のもつ認識の歪や認識の枠組みに気付くことがあります。


 ここでは、メイン・ブランチに近い幾つかのブランチに「著作中の事実」、つまり「中心イメージ」のいくつかの要素を認識し意識にあがってきた情報、つまり観察者の中での事実について書くことにします。 


 例えば、小説が扱っている舞台、客観的な事実をここに記載します。 この場合にもこの画面に入り込んだようにイメージして、セントラルイメージが適切な言葉、記号に置き換えられているのかを感覚的なところからチェックしてみましょう。

·           著者(登場人物)の視点での推論/気持/行動

ここでは、「著作中の事実」に対して、著者もしくは登場人物になりきり、「著作の中の事実」に対してどのような推論を行い、どのような気持になり、どのように行動しているのか?追体験してみましょう。 ここでは、これらの情報をブランチに載せて短い言葉、記号で表現します。


 もしかすると、何らかの違和感を感じるかもしれませんが、それは登場人物と普段の読者との事実に対する認識や反応の違いだと考えられますのでこの違和感は大事にしましょう。

·           読者視点での感想/推論/共感/反感

 つぎに、「著者(登場人物)の視点での推論/気持/行動」に対して、読者の視点で眺めてみましょう。 この視点で眺めると、著者や登場人物に共感することもあれば、逆に反感を覚えることもあるでしょう、また、登場人物の推論から何らかのアイディアが導かれる場合もあるでしょう。 ここでは、これらの情報をブランチに載せて短い言葉、記号で表現します。 普段、私達が読書感想文といっているものはこの視点で書かれていることに注意してください。

·           メタ視点

ここは、一言で言うと、本を読んでいる読者について観察しているような視点です。つまり、比喩的に言うと本を読んでいる読者を読んでいる状態と考えることができるでしょう。


読者の視点でみた場合、著者や登場人物に反感を感じるような場合、もう一段上の視点に出てみましょう。


 どのようにしてその反感を感じるのでしょうか? 反感を感じているのはどのような気持から分かるのでしょうか?


 このような質問を行なっていると、読者の持つ、信念・価値観、思考フレームに気付くことがありますし、これは己を知る上で非常に貴重な情報です。 おそらくこれを知るために読書をしているという目的もあるのでしょうが、ここでは、これらの情報をブランチに載せて短い言葉、記号で表現します。


 また、メタ視点に立つことで読者の視点では気づかなったかったより深いテーマ、関係性、巨視的なパターンなどが見えてくることがあります。


 それで、一歩進んで、この視点に一般意味論の「Etc.」の概念を持ち込んで、もし、読者視点で読んだ時の共感や反感についてそれ以外の感情、思考、反応があるとしたらそれはどういったものになるのでしょうか?


 それで勘の良い方はお気づきになられたと思いますが、このフォーマットは通常のロジック・ツリーのように端に行けばいくほど具体的な方向に詳細化するのではなく、端にいけばいくほど情報、あるいは視点の抽象度が上がる形式になっています。これが大きな特徴です。 


 余談ですが、マインド・マップをMECEで書くなどと言う方がいらっしゃいますが、MECEで書くためにはそれが漏れ無く・ダブりもないということについて前提や枠組みを設けて担保する必要があります。


 しかし、この前提や枠組みのスコープを広げると当然検討される要素も広がりMECEの範囲も広がるわけです。 それで、自分の表象の中身を書きだすことで外在化し、マインドマップの端にいけばいくほど抽象度を上げるような視点を作り出す理由は、普段意識に上がっていない、前提や枠組みを広げることを行なっているということになります。

基本的なガイドライン

ここでは、上のフォーマットを活用する上で基本的なガイドラインについてお話します。

ここで考えている基本的なガイドラインは以下の6つです。

  1. 地図と領土の区別をつける (事実と思考、事実と感情などの区別をつけましょう。事実と思考、事実と感情の繋がりに必然的な因果関係が存在していないことに気づきましょう。)
  2. ブランチとブランチの間に別の選択肢、つながり、があることを意識する。(ブランチとブランチの間にも必然的な因果関係は存在しません。そのつながりは観察者がつくりだしていることを意識してください。つまり、別の選択肢は必ず存在しますし、それは選べるということになります。)
  3. 知覚、気持にも焦点を当て、思考だけに頼らない
  4. 抽象度を上げ下げする (セントラルイメージ ⇔⇔⇔ メタ視点の行き来)
  5. より大きな要素と要素の関係性のパターンを見つける
  6. 読書を通して見つかる自分の信念・価値観、思考フレームを大事にする。

以上が一般意味論に戻したマインド・マップの使い方なのですが、個人的にはこうすると読書がエピソード記憶として記憶されやすくなるのと、抽象度の上げ下げによる頭の体操が出来て非常に有益な感じがしています。

 もっとも、これが唯一優れた手法であるとは主張するつもりは無いので、状況に応じて色々カスタマイズして使っていけば良いのだろうなと個人的には考えているわけです。

文献
記事の内容の正誤について、執筆者は一切保証いたしません。また、本書の内容、エクソサイズなどを実行した結果被った被害などについて著者は一切責任を負わないこととします。本ニュースレターの内容は、以下クリエイティブ・コモンズ・ライセンスに従うものとします。但し、引用元の著作権は引用元に所属します。ご意見、ご感想は次へ tritune'`@''gmail.com

世の中に影響を及ぼす12のレバレッジ・ポイント(てこの支点)


私に十分な長さのテコと足場を与えてくれたら、この地球でも動かして見せよう

アルキメデス



最近、「システム・シンカー」という自己認識が気に入っているのですが、世の中に存在する課題・問題などをシステム、あるいはシステムの一部と考える考え方は非常にしっくりくるわけです。

それで、ざっくりしたイメージですが、スターウォーズ ep4 でルークがほんの一発の爆弾をデススターの排気口にぶち込んだところデススター全体が消散してしまうというように、例えば問題を起こしているシステムに大きな影響を与えるレバレッジ・ポイント(支点)、日本語で言うとシステムのへそになると思いますがこれを発見できるかどうかが問題解決の鍵のように思ってきます。

もっとも、システム思考を続けて、このおへそについて考え続けると以下のようなことに気がついてくるでしょう。

·           システムが目標を達成するためにほんのいくつかの成功要因(CFS)が存在する。
·           システムの目標達成を阻害するほんのいくつかの制約条件が存在する。システムに対して、最も影響の大きい制約を活用することがシステム改善の鍵となる。

 それで、アプローチの違いはありますが、基本的には、成功要因を整えていくか、制約条件を外していくことがシステム思考的なアプローチになります。


 さて、今日は、今日はシステムのおへその話について書いておきたいと思います。 「成長の限界」の著者であるドネラ・メドウズ女史が「世の中に影響を及ぼす12のレバレッジ・ポイント」と題して世の中に存在する様々なシステム、あるいは自分を取り巻く課題に影響を与えるために、どのようなおへそがあるのか? を示してくれているので、これについて考えてみると面白いでしょう。[1]

12のレバレッジ・ポイント

内容をかいつまんで書いておくと、・・・システムを変えるには、以下の12のおへそに着目しなさいということが示されています。また、一般的に、数字が小さくなるにつれで影響度が大きくなるということのようです。(当然、数字が小さくなるとそれを実施する難易度は増すのでしょうが。)

12. 定数、パラメータを変更する。(例、補助金、税率、標準など)
11. 全体の流れに関係したバッファサイズ、安定した在庫を変更する。(SCM、TOCなどの移送バッチ・サイズの変更、時間バッファの調整がこれにあたる。)
10. 物質的なストックや流れの構造を変化させる。(交通網や人口動態の構造)
9.システム変更の割合に伴う、遅延の長さ。
8.それを修正しようとする結果に関連するネガティブ・フィードバックの強さ。
7.ポジティブ・フィードバックを回した時に得られる利得。
6. 情報の流れの構造。(誰がどのような情報にアクセスするか、もしくは出来ないのか?)
5.システムのルール。(賞罰、制約条件)
4. 追加、進化もしくは自己組織化を起こすシステムの力
3. システムのゴールの変更
2. システムに対するマインドセット、もしくはパラダイムの変更。
1. パラダイムを越える力。(今日、多くの人が、自然を人間の目的に変換される資産の在庫として見る。しかし、ネイティブアメリカン達の多くは、自然を愛し、崇拝し、共存し、自然を生きている神として見る。 これらの2つの見方は相容れない、しかし、それらを統合するもう1つの視座を持つことで、両方が統合された視点を持つことが可能となる。これがパラダイムを越える力である。)

それで、1.などは弁証法や禅のようにも思ってくるわけですが、システムは起こっている事とそれを観察する者との相互作用と考えられるので、要はあれこれ物理的なパラメータを変えるよりも、現在、持っているマインドセットを超える視点を養うのが最もインパクトが大きいといえそうですね。

余談ですが、311以降日本人(既得権にしがみついている人以外)の価値観も良い意味で一段上に抜けたような気がするような気がするのですが気のせいなのでしょうか?

文献
記事の内容の正誤について、執筆者は一切保証いたしません。また、本書の内容、エクソサイズなどを実行した結果被った被害などについて著者は一切責任を負わないこととします。本ニュースレターの内容は、以下クリエイティブ・コモンズ・ライセンスに従うものとします。但し、引用元の著作権は引用元に所属します。ご意見、ご感想は次へ tritune'`@''gmail.com

2011年9月29日木曜日

システム・アーキタイプ




われわれは、音楽という例外を除いて、パターンというものを固定して捉えるように訓練されている。その方がやさしいし楽なことは間違いないが、それでは意味がない。 結び合わせるパターンというものを考え始めるときの正しい道筋は、それがまず第一に(どいうことの厳密な意味はさておき)、相互に作用し合う部分の演じる舞踏なのだということ、さまざまな物理的な限界と生物体が固有に持ち合わせている伽によって固定されるのは二次的なことなのだということである。

グレゴリー・ベイトソン 「精神と自然」
  

今日は、システム・アーキタイプについて少し書いておきましょう。

システム・アーキタイプとは?

システム・アーキタイプは、ピーター・センゲの著作「最強組織の法則」などで紹介されていた、システムの振舞いのパターンです。[1]

パターンといったところに理解の鍵があるわけですが、一般的にシステムは物理的な時空間に存在していますが、そこで起こる何らかの事象と事象の関係性は、そのシステムの観察者の認識の中に存在しているということになります。


 つまり、このシステム・アーキタイプというのは、あるコンテクスト、つまり文脈や状況が設定されて、そこに観察対象のシステムと観察者の双方が存在し、この相互作用の中で出現するパターンが、このシステム・アーキタイプというわけです。 余談ですが、ここでは内部観測やオートポイエシスのような自己創出のシステムについては保留して考えています。

システムを観察すると、局所的で特徴的なところに注意が当たってしまう

以下でも書いたのですが、認知科学的に私たちは何らかの意図(Intention)の元に自分の知覚の注意(Attention)を当て物事を観察することになります。


そして、観察者にとって印象的な部分に注意が向くということになるのですが、これだけだとシステムの局所的な特徴だけを見ているということになってしまいます。 そこで、システムをよりできるだけ大きな視点から理解し、最適化を図ることを考えると、よりマクロな、動的関係性で成り立っているパターンを観察する必要があるわけですが、このパターンの元型が文字どおりシステム・アーキタイプとなるわけです。

 もちろん、このように非常に巨視的な視点を取るためには、ベイトソンのマインドの理論で言うようなメタ視点を取ったり、あるいはアーサー・ケストラーのホロアーキー[2]な構造で表させるより全体へ向かう視点を取る必要があるでしょう。 そして、この視点を上げ下げする中でいくつものパターンが現れ、そして消えていくことを観察することが出来ます。

システムの構造を因果ループで表す

 システム・アーキタイプは基本的に、リニアーな因果関係ではなく、相互作用する因果ループで表現されます。



311の原発事故をシステム・アーキタイプを通して見てみる

個人的には、311後の原発事故についてシステム・アーキタイプを通して見ている3 月半ばのtweet が残っていたので、自分のメモ代わりに載せておくことにします。

http://p.tl/Qo1o センゲのシステム・アーキタイプを政府や東電の言い訳にマッピングしてみる。 「Balancing process with delay」=ただちに影響はありません。

http://p.tl/8mvw センゲのシステム・アーキタイプに政府や東電の対応っぷりをマッピングしてみる。「Eroding goals」= 最悪に備えて最善を目指さないから、終着点がなし崩し的にズルズル低くなる。

 http://p.tl/L35M センゲのシステム・アーキタイプに政府や東電の対応っぷりをマッピングしてみる。「Tragedy of the commons」=問題が同時に起っていてその両方に必要な人財・資材が不足することでより事態が悪化する。

http://p.tl/PtQ6 センゲのシステム・アーキタイプに政府や東電の対応っぷりをマッピングしてみる。「Fixes that fail」=短期的、局所的、場当たり的な問題解決が長期的に起こる問題の原因となる。

http://p.tl/8h2B センゲのシステム・アーキタイプに政府や東電の対応っぷりをマッピングしてみる。「Escalation」= 泣きっ面に蜂 個別には対処できる問題であっても、それが同時に起こると対応が難しくなる。

http://p.tl/atb6 センゲのシステム・アーキタイプに政府や東電の対応っぷりをマッピングしてみる。「Shifting the burden」= 原因ではなく、現象を無くそうと躍起になって原因はいつまでも解決しない。

http://p.tl/VHDe センゲのシステム・アーキタイプに政府や東電の対応っぷりをマッピングしてみる。「Limits to growth」= 問題は幾何級数的に悪化するけれども、取れる施策は足し算でしか行えない。

もちろん、こういった非常に影響範囲の大きな事故についてはコンティンジェンシー・プランが必要なことは言うまでもないのでしょうが、すべて想定外、つまり最初から意図していなかったという言い訳のほうが問題だということが今になって議論されていることのほうが問題なのでしょう。 もっとも、このあたりはシステム工学の範囲を超えて社会学や政治学の領域になるのかもしれませんけれども。

文献
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2011年9月28日水曜日

Theory U: 3つの敵


何を切り捨てるべきかを知ること。
それを知恵という。
何かを手放す必要がある時に、それを手放せるだけの明晰さと強さを持つこと。
それを勇気という。
知恵と勇気をもって毎日を生きていこう。
そして生活をシンプルにしていこう。

ヴィルヘルム・ミュラー 詩人
 

  今日は、MITスローン校の先生であるオットー・シャーマ博士によって開発された「U理論( Theory U)」について書いておきましょう。[1]
U理論は未来創発の方法論

U理論を簡単に言うと、個人やグループを対象に、現在まで身に付けた、物事の見方、枠組み、常識、といった認識、そしてそれに伴う行動、反応を手放し、そして、新しい物事の見方、枠組みを得、新しい行動、反応を身につけることでいままでの延長線上に無い未来を創発させるための方法論です。

 この方法論の特徴は、ある出来事に対する、物事の見方、意味付け、反応を保留しながら内省を深めて行きます。 これをもう少し難しい言葉で言うと、現象学的還元をかけて出来事に対する意味を保留するということになると思います。

 それで、Youtubeに、内省を深めていくこのプロセスを行う過程で、ジョセフ・キャンベルの神話の法則に出てくるアーキタイプであり、通行人の覚悟を試す門番のような役割をしている「3つの敵」について説明した映像がアップロードされていましたので、今日はこれについて書いておきましょう。


 
 個人的にこの映像はとても氣にいっていて、つい何度も見てしまいします。  人は未来のことをイメージする場合、どうしても現在持っている既存の枠組みで見てしまいます。つまり、普通に未来を思い描くと過去の直線的な延長として未来を見てしまうということになるわけです。 

 しかし、現在のように外的環境が著しく変化しているような時代だと過去の延長では上手くいかないことが多いように思ってきます。 そこで、古い考え、思考の枠組み、常識、を手放し、そして新しい反応、行動を身につけていく必要があります。

もっとも、古い考えを手放し、新しい考えをハラに落ちるレベルで身につけるというところには、やはり抵抗があるわけでこの抵抗が「3つの敵」というわけです。

克服するべき3つの敵とは何か?

それで、この「3つの敵」というのは、映像にある通り、自分自身の内面にある声(内部対話)というわけですが、Uプロセスの心のレベルである知(Open Mind)→情(Open Heart)→意(Open Will) にそって自分の内面を探るべくUプロセスを底まで降りていく過程で遭遇す情動、思考パターンに伴う声というわけです。
 
 具体的には、自分の知につながった時に聴く、「VoJ:判断の声」、自分の情につながった時に聴く「VoC:嘲笑、皮肉の声」、そして意につながった時に聴く「VoF:恐怖の声」に対処しながらU底まで降りて行きます。
 そして、Uの底まで降りた後で、まさに生きるか死ぬかといったミッションクリティカルな状況で、これらの声(や情動、感情、あるいは思考パターン)を手放して境界(閾値)を超えていく決断を行なっていくことになります。
 
  この
映像では、この決断こそがリーダーシップであるとも・・・語られています。
 当然、Uの底でこの決断を行うために、強力なコミットメントと覚悟が必要なわけで、こういう覚悟が出来て、ハラを括った時に始めて、未来を創発させるために小さな自己(self:小文字)から大きな自己(Self:大文字)が現れてくるわけで、この時、未来を創発させる準備が整ったということになるのでしょう。
これは、神話学者のジョセフ・キャンベル神話パターンで主人公である英雄が「境界を超えようとしている」ところの覚悟のように思えてきます。
  逆に知(Open Mind)のレベルで「VoJ:判断の声」といった内部対話を止めるだけでは、次の情(Open Heart)を取り扱う準備が出来ただけでそれ以上の何ものでもないですし、「VoC:嘲笑、皮肉の声」を止めても、より心の深いところにある「VoF:恐怖の声」に取り組まなければいけないことが分かってきます。

 つまり、通常のコーチングの質問である「What  stops you ?」の答えを聞いただけでは、Theory U で言う知(Open Mind)にあるほんのとっかかりの情報をつかんだだけでしかない・・・ということになるわけで、より深いレベルでのクライアントのコミットメントを引き出す支援をする必要があるというわけです。
 それにしても、映像の冒頭で、スローン校の先生がUの底に到達した後、どこかの自己啓発のセミナーのように、「ソースに繋がる・・・」とやっているのは非常に興味深いと言えば興味深いのでしょう。もちろん、ここで「ソースに繋がるとは」、Uの内省のプロセスを深めていって、「VoF:恐怖の声」を克服し本当にハラを括って覚悟をし、自分より大きなフィールドや集合知に繋がった主客を超えた自己が創発した状態ということになると思います。


 ちなみに本来佛教用語である「覚悟」というのは、煩悩(ある考え、思考フレームに固執すること)の迷いから目覚めて、の真理・正法を悟る(現実を直視する)ことと考えると非常に興味深く思えてきます。


http://ori-japan.blogspot.com/2011/09/blog-post_18.html

余談ですが、U理論のファシリテーションは、デフォルトの設定だとケン・ウィルバーのインテグラル思想に基づいたインテグラル・コーチングを使うような設定になっていますが、個人的には、このファシリテーションでどの手法を使うのかが一つの課題となっています。[2] 

現在のところ、ギリガン&ディルツのジェネラティブ・コーチング、もしくはマイケル・ホールのメタ・コーチングでファシリテーションを行なっていますが、もう少し余裕が出来たらインテグラル・コーチングか、オートポイエシス・ベースのオントロジカル・コーチングに手を伸ばす予定にはしています。

文献
記事の内容の正誤について、執筆者は一切保証いたしません。また、本書の内容、エクソサイズなどを実行した結果被った被害などについて著者は一切責任を負わないこととします。本ニュースレターの内容は、以下クリエイティブ・コモンズ・ライセンスに従うものとします。但し、引用元の著作権は引用元に所属します。ご意見、ご感想は次へ tritune'`@''gmail.com

2011年9月27日火曜日

マインド・マップの構造(その2)

マインド・マップの構造(その2)
今日は、昨日に続いて「マインド・マップの構造(その2)」と題して書いておきましょう。
          
マインド・マップは半構造

ソフトウェア業界では知る人ぞ知る平鍋さんところのサイトを参照すると非常に興味深いことが書かれています。



 これに対してマインド・マップは、テンプレートのようなスキーマをあらかじめ決めておいてもよいし、その場でどんどんスキーマを変化させてもかまわない。すなわち、「メタ・データ」と「データ」に明らかな区別がなく、場合によってはたまっていくデータを見ながらそれをメタ・データ構造に反映することもある。両者の区別が曖昧なのだ。これは、マインド・マップのインタビューや要求収集に使えるもっとも大きな特徴である。 


まず、この話の前提として、RDB(Relational Data Base)[1]のように構造がスキーマによってかっちり定義されているのは完全な構造だということがあります。 

一方、マインド・マップやXML[2]は、データとデータの関係性がゆるく結び付けられている半構造の形式であり、喩えるなら、半熟卵のようなゆるい状態で物事が流動化された状態と見ることが出来ます。

(余談ですが、これは、以前書いたシステム思考のところで、事象を構造からプロセスとして見るパラダイムと関係してきますし、http://ori-japan.blogspot.com/2011/09/blog-post_22.html 、ゆるい思考を取るための手段ともなります。http://ori-japan.blogspot.com/2011/09/blog-post_25.html

そのため、情報収集をした人達が、収集されたデータの繋がりを観察して、どれをデータとし、どれをメタ・データとして解釈するかについて、かなりの自由度が担保されているということになるわけです。 

つまり、この半構造と自己再帰的意識を上手く使うと、観察者自身の認知バイアスに気付いて、固定化されたいつもの思考パターンから抜け出すことが出来る、あるいは、いつもと異なる視点から出来事を観察することが出来るようになります。

また、ここで「メタ・データ」というのは、簡単に言うと、データの意味や秩序を規定する抽象度の高い「データについてのデータ」ということになります。 もっとも、メタについての詳細な解説は以下の Blogを参照されると良いでしょう。

 もっとも、ベイトソンのマインドの理論で書いた比喩からすると「データ」が実態を表す月で、「メタ・データ」がその月を示す指ということになるわけですが、


 マインド・マップを上手く使うと、月と指の区別を行なった後で(一般意味論的に領土と地図、つまり事実と思考/推論/感情の区別を付ける)、月を示す指の中でもより影響力のある高次の論理階型にある有用な指、つまりより有益な関係性に気付くことが出来るように思ってきます。

つづく   
文献
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2011年9月26日月曜日

マインド・マップの構造(その1)

今日は、マインド・マップの構造という題で書いておきましょう。

私事ですが、子供のころから面白いメカは一度バラバラにして組み立て直さないと納得しない主義です。

時計、ラジオ・・・あたりから始まって、バイク、コンピュータあたりまで、最近だとハードウェアの世界だけではなくソフトウェアの世界に世界にも足を突っ込んでいるわけですが、基本的にはどのような構造あるいはプロセスになっているのか?理解せずには居られないところがあります。

それで、トニー・ブザン氏の提唱するマインド・マップという概念がありますが、今日はこれをバラバラにして組み立て直してみようと思っています。
          
マインド・マップのベースは一般意味論

Wikipedia の Mind Map の項目を参照すると以下のような興味深い記述が見つかります。[1]


  British popular psychology author Tony Buzan claims to have invented modern mind mapping.He claimed the idea was inspired by Alfred Korzybski's general semantics as popularized in science fiction novels, such as those of Robert A. Heinlein and A.E. van Vogt..


これを読むと、 トニー・ブザン氏は、アフレッド・コージブスキーの一般意味論にかなり影響を受けてマインド・マップを開発したということが書かれています。 これから推論すると、マインド・マップ本来の使い方は、自分の表象の中身をメタファーとしてマインド・マップに書き出し、コージブスキーの一般意味論のトレーニングで行なっていたエクサイズを行うための知覚や思考を動かすための補助線としてマインド・マップを使うというのが本来の使い方になるのだろうなと思ってきます。
          
マインド・マップは一般意味論の構造微分を2次元に展開した図

一般意味論には、人が外的な出来事をどのように知覚し、神経系の中で、どのような抽象化のプロセスを経て、それが認識され、そしてそれについてどのように思考、推論を行うのか、を表現したモデルである構造微分(Structural Differential)が存在します。[2]




それで端的に言うと、マインド・マップはこの構造微分を二次元に放射状に展開した図と考えられます。 以下にその対応を書いておきましょう。




構造微分(Structural Differential)のレベル
マインド・マップでの表現
外的出来事であるイベントEvent)レベル
 N/.A
外的出来事を知覚したオブジェクトObject)レベル、主客分離の前の純粋経験
セントラル・イメージ
外的出来事に言語のラベルを付ける記述(Description)レベル
(メインの)ブランチ
言語、記号を使って行う推論(inference)レベル
ブランチ
推論で出た思考の汎化Generalization)レベル (本によってこのレベルが明示してあるものと明示してないものがある)
同じ属性を持つ複数のブランチをグルーピングする

Etc. レベル
外的出来事に対する、それ以外の解釈、あるいは親ブランチと子ブランチの隙間を見つける。(領土と地図、つまり事実と思考の区別を付ける、事実と感情の区別を付ける、というようなことと関連する)


(※一般意味論における構造微分の形式に併せてマインド・マップを展開するとセントラルイメージの絵が一番情報が具体的(抽象度が低い)で、放射状の先に向かうにつれて情報の抽象度が上がっていく形式になります。)

このように考えると一般意味論の構造微分と完全に対応していますし、一般意味論の原理原則が使えることが分かってきます。 もっともここまで分かってくると敢えて登録商標のついたマインド・マップという言葉を使う意味も失せてきて、個人的には GS (General Semantics) メンタル・マップとでも呼べば良いのではないかと思ってきているわけですが・・・

つづく   
文献

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2011年9月25日日曜日

ゆるい思考とアブダクション

今日は自分の頭の整理も兼ねて、まずは思考の種類について書いておきましょう。


大まかに分けると演繹と帰納の2種類

思考、といってもこれを認知科学や脳神経科学の視点からどのようなプロセスで行われているかという視点で定義するのは少し難しいところがあります。

それでも、経験的に、(意識の世界で)言葉や記号を使って、


  • 抽象的なフレームワーク(あるいは一般法則)を現実に適応して思考する演繹法
  • 逆にいくつかの現実から一般法則を導き出す帰納法
という具合に考えるのが一番しっくりくるように思ってきます。



それで普通にロジカル・シンキングと言うと上の表の演繹と普通の演繹の活用ということになります。

しかし、人は負のエントロピーを食べて好き勝手に考え、そして振る舞う、という特徴があるわけであり、もっと言えば、いくらロジカルといっても神経系を使ってこれを行っているわけでしょうから、単に思考だけの問題ではなく、知覚-情動・感情‐思考が相互作用しながら、物事を知覚、認識し、そのことについてアレコレ推論を巡らせるというような、以下のリンクで書いた構造微分のような考え方が必要ではないかと思ってきます。

http://ori-japan.blogspot.com/2011/08/blog-post_25.html

また、人は自分でも気づかない、高次の心に、思考のフレームや暗黙の前提をおいて考えているため、自分が居心地の良い思考空間をつくって、そのハコ中でだけで物事を考えてしまいがちです。 

つまり、そのハコから出るのは感情・情動的な抵抗を伴うために、

  • 演繹を行う場合には、今持っているフレームワークと無意識に整合性を取って使っている、あるいは逆に、今持っているフレームワークと矛盾するようなものは無意識に排除する
  • 帰納を行う場合には、今持っているフレームワークから飛び出さない範囲で行っているようなことになりがちです。

それで、頭では分かっていても、気持が良すぎてこのハコから出られなくなると、いわゆるガラパゴス化ということになるのでしょうし、逆に気持の悪いハコに閉じ込められて頭では何とかしたいのだけれども、気持が落ち込んでしまっているし、方法もよく分からないという状態がダブル・バインドということになるように思ってきます。

 もっとも最近は、普通の演繹と帰納を使って思考法はインプットが同じなら結論は誰が行っても似たような結論が導かされるために、より創造的な結果を導くために、


  • インプットにあたる情報収集について、人類学のフィールドワークの手法を使って、五感をフル活用した観察で得た暗黙知、つまり質感の情報を入力として使いましょうという方向か
  • インプットされた情報に対してチャールズ・サンダー・パースの言うアブダクションを活用しましょうという方向になってきているように思ってきます[1]
それで、ベイトソン的には前者が「ゆるい思考(Loose thinking)」と言われる、いわゆる自分の信念・価値観のフィルターを一端保留して思考や身体感覚にタメをつくって観察を行う現象学的還元にあたりますし、後者はメタファーを活用して現在持っている信念・価値観のフィルターを変化させる思考法になり実際にはこれらの区別を付けるのは難しいとパースの本に書いてあった覚えがありますが、このあたりの具体的なやり方については、はおいおい書いていこうと思っています。


文献


[1] http://ja.wikipedia.org/wiki/アブダクション
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