2011年11月9日水曜日

無知の知の威力



無用であるからこそ有用である

荘子


 今日は、荘子の「無用の用」に習って、コーチングやファシリテーションにおいてもコーチが「無知の知」がクライアントに役に立つことがある、というパラドキシカルな話について書いておきましょう。

まったく知らないことは色々知っていることである

 チリの神経科学者ウンベルト・マトゥラーナ、フランシスコ・ヴァレラ等の提唱した生命に適用可能なシステム論であるオートポイエーシス論をベースに開発されたオントロジカル・コーチングについては以下で書いた通りです。


それで、英国のオントロジカル・コーチングを提供している団体の以下のURLにあるニュース・レターが全体的にとても素晴らしいのですが、


 このP.4 あたりに、「Metaphors in Mind」の著者で、クリーン・ランゲージ &シンボリックモデリングの実践者であるペニー・トンプキンス、ジェイムズ・ローリー両氏についての記事「Conversation form state of Not Knowing」という部分があります。

 ちなみに、クリーン・ランゲージは、MRIにいたジェイ・ヘイリーの弟子であったデイヴィッド・グローブの開発したメタファーをベースに開発された言語パターンでクライアントからメタファーを引き出しながら、クライアントの認識の枠組みに気づいてもらう、あるいはそれを変えることで認識を変えてもらう場合に有効な言語パターンです。[1][2]

手詰まりの時にこそ有効な「そもそも論」

 ここで書かれている「State of Not Knowing」は、現象学で言われている自分の主観的な意味を「」(カギカッコ)に入れて保留する現象学的還元、つまり自分の思考の枠組みを極力落として素直な視点で物事を観察する時の心身状態と対応しています。[3]

 これは、コーチやファシリテータがクライアントと向きあう時には、ひとまず自分の先入観を全て取り去った純粋な子供のような視点から観察し、そして、純粋な子供のような視点から質問する重要さを示唆しているように思います。

それで、クライアントは子供のような質問をされた場合、その概念を普段は意識していないその枠組から説明する必要がある・・・というところが重要なポイントとなってきます。

これは、グレゴリー・ベイトソンが娘のメアリー・キャサリン・ベイトソンの幼少のころを想定したたわいもない話で難しい概念を説明する「メタ・ローグ」と同じ理屈なのですが、

http://www.earthscore.org/articles/th_metalogue_bateson_ryan.pdf

実際に、コーチが純粋な子供になりきってクライアントに質問するような場面が考えられます。

このような状況では、クライアントは、


    非常に平易な言葉を使って状況や概念などを説明  

しないと説明にならない

    自分の使っている概念をその枠組自体から説明

しないと説明にならない

    その枠組の前提、普段は意識していない世界観を明示

しないと相手に伝わらない


 と比喩的には「魚であるあなたは、水の中に住んでいて、周りには水があるでしょう」と意識してもらうことが出来ればこのような質問はひとまず成功だということになります。 

 つまり、小さな子供に質問されるという状況を想定することで普段自分自身は当たり前だと思って意識していない、難しい「言葉、専門用語」を簡単にし、自分自身の世界観やその枠組やその前提条件を意識して平易に概念を説明し、さらにその枠組自体を明示しないとその質問には完全に答えられない・・・というような状況が起こるというわけです。

 それで、コーチングやファシリテーションの場面では、自分自身を制限している、世界観、枠組み、前提条件などを知らない間にメタ認知してもらって明示することが出来て・・・・認識の根底に横たわる、世界観、枠組み、前提条件などそれ自体を変化させると、理屈の上では、パラダイム・シフトに近い大きな変化を起こす可能性が高まるということになるわけです。・・・・[4][5]

 もっとも、認識の枠組みを変化させるやり方は元々MRIの研究者であったポール・ウォツラィックが提唱し後に家族療法で用いられているリフレーミングなどで体系化されているわけですが、個人的にはこれが、「無知の知」の威力なのかなと思っているわけでもあるわけです。[6]

文献
[4] http://ja.wikipedia.org/wiki/メタ認知
[5]http://en.wikipedia.org/wiki/Metacognition
[6]http://citeseerx.ist.psu.edu/viewdoc/download?doi=10.1.1.128.7389&rep=rep1&type=pdf
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