2011年11月10日木曜日

中心視と周辺視



遠くのモノを近く、近くのモノを遠くみることが肝要である

五輪書


 今日は、宮本武蔵、五輪書、水の巻「兵法の目付といふこと」という話にある中心視と周辺視について少し書いておきましょう。

中心視と周辺視

人が視覚、つまり目をつかって世界を観察する時に2つの見え方があります。

「中心視」と「周辺視」です。そしてこの時得られる視野が、それぞれ「中心視野」、「周辺視野」です。[1][2]

「中心視」は網膜の中心部を使って一点を凝視してみることで、色や形を正確に捉えるのに適しています。日常生活の中では、7±2で表される同時に認識できる要素に対応しているのもこの視野で、意識的に、看板の文字を読む、本を読む、特定のモノや出来事に着目するというように色々な場面で活用されています。


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一方、「周辺視」は、網膜の周辺部を使って視野の周辺部を漠然と見ることで動きや位置、また定性的で何となくのパターンを捉えることに適しています。

 日常生活の中では、あまり意識していない状態(意識に上がっていない状態で)体を動かす、例えば、歩いたり、食事をしたりといった動作の時にあたりを認識するために使っています。

また、「中心視野」は、この視野角内において中心視で見る事が出来るエリアは視線中心付近のみに限定されており、「周辺視野」は左右180度・上下150度程度となっていますが、「周辺視」は「中心視」よりも大きな領域を見ることが可能で訓練することでこの領域を広げることが可能だと言われており、サッカー、武道など「周辺視野」を広げることが有利に働くスポーツではこれを鍛える重要性が提唱されています。

無意識に情報処理が行われる「周辺視野」は、一度に得られる情報量が多い、という利点の他に「中心視よりも反応速度が早い」という利点もあります。

 
兵法の目付といふこと

それで、宮本武蔵の五輪書「水の巻」に以下のような記述があります。[3]


(原文) 
  眼の付け様は、大きに広く付るなり。観見の二つあり、観の目つよく、見の目よわく、遠き所を近く見、近き所を遠く見ること、兵法の専なり。
  敵の太刀を知り、聊(いささ)かも敵の太刀を見ずと云事、兵法の大事なり。工夫あるべし。此眼付、小さき兵法にも、大なる兵法にも同じ事なり。
 目の玉動かずして、両脇を見ること肝要なり。か様のこと、急がしき時、俄にわきまへがたし。此書付を覚え、常住此眼付になりて、何事にも眼付のかはらざる処、能々吟味有べきものなり。

(現代語訳) 
 兵法には、敵に対して目付(めつけ)ということがある。それは、遠くのものを近く、近くのものを遠くみる要領で中心視野を弱く、周辺視野を強くして視野を大きく広く見ることである。

 目付には、観(かん)と見(けん)の二つの目付がある。観は心で見て、見は眼(まなこ)で見る事である。

 兵法では、心で察知するということを重要視して、実際に目で見ることはその次ぎにし、近いところも遠いところも同様に感じなくてはならない。

 敵の太刀の振られようを察知し、それをいちいち見なくとも良いようにすることが重要だ。工夫せよ。

 この目付の重要さは一対一でも多数同志(あるいは一対多数)の戦いでも同様だ。
 目玉を動かさないで両脇を見るようにせよ。これは戦況がせわしくなると出来なくなる。よってこの書き付けを覚えておいて、常にこの目付を取り、どんな状況でもそれを忘れてはならない。よくよく吟味せよ。 

  
要は、意識とつながっている「中心視」と無意識とつながっている「周辺視」のバランスをとって物事を見るようにしなさい、とベイトソンの「ゆるい思考(Loose Thinking)」と同じことが、日本ではなんと500年程前から言われている面白さがあるわけです。


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それで、個人的に散歩をする時に、このことを練習するようにしているのですが、これを実際に行なってみると、巨視的なパターンが立ち上がっては消え、立ち上がっては消えと、何かに集中しているだけでは絶対に気づかないことに気がつくようになるのは面白いな、と思っているところだというわけです。



文献
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