2011年11月12日土曜日

東大院の過去問



「ミニスカート」とかけて、「結婚式のスピーチ」と解く。その心は「短いほど喜ばれる」

三遊亭遊朝のなぞかけ

 
今日は、「東大院の過去問」と題して少し書いておきましょう。

東大の過去問

 Google先生が見つけてくれた、2003年の東大 広域システム科学専攻の大学院の入試問題が中々洒落ています。


 どのように洒落ているか?というと出題内容がグレゴリー・ベイトソンの「精神の生態学」に書いてあった内容からの出題となっていて、ベイトソンを学んでいる人にはそれほど難しくなく、ベイトソンを学んでいない人にはチンプンカンプンというような面白い問題となっているところが個人的には結構洒落ていると思っています。

 もちろん、出題者の意図がわかればベイトソンの理論や仮説のコンテンツには入らずに解くことはできるようになっています。

 それで出題内容の一部について少し考えてみると


問題文
1)   幼い子供がホウレンソウを食べるたびに、ごほうびとしてアイスクリームを与える母親がいる。この子がa-ホウレンソウを好きになるか嫌いになるか、b-アイスクリームを好きになるか嫌いになるか、c-母親が好きになるか嫌いになるか、を知るには、ほかにどんな情報が必要か

1) 下線(1)について。幼い子供がホウレンソウを食べるたびに、ごほうびとしてアイスクリームを与える母親がいたとき、それに続いて、3つの可能性を著者は考えている。この問いで著者が指摘しようとしている内容について解説せよ。


が設問となっています。

それでオチ、という答えを先に言ってしまいますが、ベイトソンが言いたいのは、アブダクティブなロジックで仮説を立てて、それから観察によって情報を集めないといけないよねぇ、と言っているというのが答えになると思います。



 おそらく、問題全体の意図は、お勉強のお作法として、個々の観察から一般的な法則を導く帰納法、法則を現実に適用する演繹法、そして、ヒラメキ、あるいは落語の「なぞかけ」とも言って良いようなアブダクションのロジックをきちんと理解して出来れば意識してそれをできるようになりましょうねぇというのがこの問題の意図のように思えてきます。

 それで、ここからは出題の意図とはあまり関係ないベイトソンの提唱したコンテンツという意味での薀蓄(うんちく)を書いておくことにします。

    コミュニケーションは相互作用するプロセスである

第一に、ベイトソンは人と人との間で交わされるコミュニケーションを相互作用を基本としたサイバネティクス的なループで考えていたということを話しの前提とするとこの問題はぐっと面白くなります。 つまり、コミュニケーションはダンスのような関係になっているので母親と子供の間で交わされるメッセージとメタ・メッセージのループで考える必要があるということになるでしょう。また、このループはコンテクストによっても変わってきます。

それで、第二に、ベイトソンは精神現象の過程として6つのクライテリアを考えていて、[1]


1. 精神とは相互作用する部分(構成要素)の集まりである。」
2. 「精神の各部分の相互作用の引き金は、差異によって引かれる。差異とは時間にも空間にも位置づけられない非実態的な現象である。差異はエネルギーにではなく、負のエントロピー/(正の)エントロピーに関係する。」
3. 精神過程はエネルギー系の随伴を必要とする。」
4. 「精神過程は、再帰的な(あるいはそれ以上に複雑な)決定の連鎖を必要とする。」
5. 「精神過程では、差異のもたらす結果を、先行する出来事の変換形(コード化されたもの)と見ることができる。」 変換のルールは、比較的すなわち変換される内容より)安定したものでなくてはならないが、それ自体変換を被ることもありうる。
6. 「変換プロセスの記述と分類は、その現象に内在する論理階型のヒエラルキーを表す。」


    精神過程にはレベルが存在する(という仮説)
  
ここに、レベルという概念を持ち込んでいるわけですが、これには 1) 意味のレベル 2) 学習のレベル 3) 論理階型のレベルが存在します。


それでこの問題では、コンテクストとも相互作用する 1) 意味のレベルと 3)の論理階型のレベルから母親と子供の関係を指摘すれば良いのだろうなと思ってきます。

ちなみにこのケースはダブル・バインドには該当しないのですが、一般的なダブル・バインドの形式で説明すると説明し易いのでこれを使って以下のように考えます。


1.ふたりあるいはそれ以上の人間がコミュニケーションのコンテクストに存在。この場合は、母親と子供。

2.
  犠牲者は、繰返される経験の中で、ダブル・バインド構造に対する構えが形 成される

3.
 犠牲者に対して、第一次禁止の命令が行われる。    

    a.「これをすると、お前を罰する」 もしくは、    
    b. 「これをしないと、お前を罰する」 という形式を取る。

ほうれん草を食べないと、お前を罰するという命令が行われる。

4.
  次に犠牲者に対して、より抽象的なレベルで第一次禁止の命令と衝突する第二次の禁止命令が行われる。これが第一次禁止の命令に対するメタ・メッセージとなる。

ほうれん草を食べると、アイスクリームというご褒美を与えるというメタ・メッセージが送られる。

5.
 犠牲者が関係の場から逃れるのを禁止する第三次の禁止命令が行われる。

ほうれん草を食べ終えるまで席を離れてはいけません。など

6.
     犠牲者は、ダブル・バインドの一部を知覚するとその任意の状況でパニックや憤激が引き起こされる 

ほうれん草が好きになる? アイスクリームが好きになる? 母親が好きになる?


逆の言い方をすると、母親と子供の関係性において、どれがメッセージで、どれがメタ・メッセージになるかで結果が変わってくるということになります。

もっとも、この理論が、ブリーフ・セラピーや家族療法を貫いている根幹となる理論なのですが、何れにしても、アブダクティブなロジックで仮説形成を行い、そしてその仮説を証明するような情報を集めるというのは非常に重要なスキルであることには間違と思われます。

文献
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