2012年4月27日金曜日

ミルトン・エリクソンの言語パターン(その31)バインドとダブル・バインド



 ミルトン・エリクソンの技法を日常生活や仕事に応用するためには催眠という現象にとらわれてはいけない、と思う。
  
独り言


今日は、「ミルトン・エリクソンの言語パターン(その31)バインドとダブル・バインド」について書いておきましょう。

ダブル・バインドは二者択一ではない

 ミルトン・エリクソンの言語パターンの根幹となるものがバインドとダブル・バインドです。

 もちろん、ダブル・バインドの言語パターンは、ミルトン・エリクソンが経験的に治療に利用していた治療的ダブル・バインド(Therapeutic Double Bind)を観察し、グレゴリー・ベイトソンがそれを統合失調症の原因仮説として形式知として取り出したところから始まります。


 それで、この言語パターンについては既に以下のリンクに詳細を書いたので、ここでは説明しません。


 さて、日常生活でこういったダブル・バインドの言語パターンを使いこなすというのは結構難しい面があります。

 その理由は、ダブル・バインドは単なる二者択一の質問ではなく、緻密に設計された詰将棋のように、被験者のメタ・レベルの思考の中で、「後一手で詰まる」という状態にしておいて、「王手」を宣言して駒を進め、王を逃せば飛車が取られるというような状態でダブル・バインドの言語パターンを使う必要があるからです。


 例えば、あなたが家を買ったばかりの会社員で、会社から「山奥村営業所に赴任をお願いします」と辞令が発令された場合、1) 山奥村には行きたくないなぁ。→(メタ・レベルの意図)単身赴任になるし、家族を連れて行くとすると、子供の教育のこともあるし、家から通いたいし、かと言って今後の昇進を考えると、断るわけにもいかないし・・・一方 2)いっそうのこと転職するか?でも、→(メタ・レベルの意図)この業界自体が景気が悪いし、かといって異業種も未知数でリスクが多いし・・・ と考えるようであれば、ダブル・バインド、あるいはベイトソンの言った「ダブル・バインドのようなもの」に陥っている可能性があります。

 逆の言い方をすると全く状況設定がなされていない状態でダブル・バインド風の言語パターン、例えばお店で店員が顧客にむけて「赤にしますか?青にしますか?」という単なる二者択一の質問をしても、顧客のメタ・レベルにどちらかを選ばなければならないという状況が無ければ「どちらも必要ないです」と簡単にかわされてしまうのでまったく意味がないという具合です。


http://ori-japan.blogspot.jp/2012/04/blog-post.html


 もちろん、ここで意味が無いといっていることは、以下のリンクで書いたように、クライアントが上位の論理階型の視点を身につけるなり、そこから新しい資源・資質(リソース)を持ってくるというようなやり方でアブダクティブに学ぶ機会を得ることができませんでしたね・・・という意味で意味が無いと言っています。


http://ori-japan.blogspot.jp/2011/08/blog-post_31.html


 逆の言い方をすると、エリクソンのダブル・バインドは、視点を上位の論理階型におしあげ、新しい資源・資質を獲得する支援をするための禅問答だということになります。


ひとつの応用例

 もちろん、個人的な提案としてはダブル・バインドの言語パターンを練習するのも良いのですが、例えば TOC の対立解消図[1](Evaporating Cloud)を使って、ジレンマやパラドクス、あるいはダブル・バインドの構造を明示するのも良い方法だと思っています。

 ある個人やグループが何らかの課題を抱えていた場合には重たい課題ほど、行動/決断を制限している必要条件、つまりメタ・レベルの思考になんらかの制限が存在しているということになります。



 この図を活用するとどうしても構造主義っぽくなりますし、あまり定量的なゴールだけにとらわれてしまうのも問題があるように思いますが、個人的には、ベイトソンの言った

The major problems in the world are the result of the difference between how nature works and the way people think.

Gregory Bateson

世の中の主たる問題は、自然の摂理と人の思考の差異によって生じる結果である。

グレゴリー・ベイトソン


を解消できる可能性を持ったツールの一つのように思えてきます。


それで、対立解消ではありがちな一つのオレンジを取り合うという事例について、対立解消図を使って課題を解いた例をつくったので公開しておきます。


https://docs.google.com/open?id=0B08_fMDft6NpWmRkaHViWHJkazg

もちろん、この例は人を小馬鹿にしたほど簡単なのですが、(もちろん実際の例は機密保持など関係で公開できないのですが・・・)日常生活や仕事の場面でも、時代の急激な変化にともなって、過去の延長では解けない課題が噴出している時なので、対立の構造に気づき、その前提の枠組みに気づき、そしてその構造を作り出しいているパラダイムを超える、という考え方は今後増々重要になってくるのではないか?と個人的には考えています。 

(つづく)

文献


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