2012年5月1日火曜日

仏教徒のための一般意味論



実際に実践して何かを身につけるということと、身に付けたことを分かりやすいように説明するというのはまったく違うモードなのですよねぇ。

独り言


今日は、「仏教徒のための一般意味論」について書いておきましょう。

仏教を一般意味論の枠組みで説明してみたら?

  今日は、少し前に Amazonから購入して読んだKhai Thien著の「Buddhist General Semantics」について書いておきましょう。[1]

 本書は、ベトナム人である著者が仏教の教義を西洋の人達にも分かりやすいように、一度、アルフレッド・コージブスキーの提唱した一般意味論にくぐらせて説明している、個人的には知的好奇心を書き立てられる良書であると考えています。[2]

 
もちろん、実践でのみ身に付けることのできる暗黙知や実践知に対して何らかの学問的フレームワークを適用してそれを言葉(形式知として)で説明しようとすると暗黙知のほとんどは落ちてしまうわけですが、もともと言葉とはそういった制限を含んでいるためその部分は仕方ないのでしょう。

 それで、著者のプロフィールを参照すると、このテーマの講演をスタンフォードやUC Berkeleyなどの大学でも実施したと記載されており、内容も非常にしっかりしています。  

 本書では、上でも説明したとおりに、仏教を説明するために心理学ではなく一般意味論が使われているところがユニークな点なのですが、 本書では、一般意味論をMilton Dawes の言葉を借り以下から始まっています。

As said by Milton Dawes “General Semantics is based on the postulate that the structure, method, psyco-logics of science and the principles of mathematics are demonstrations of the human nervous system functioning at optimum efficiency and effectiveness.
 Accordingly, the structure of general semantics is set up in two correlative domains: man subject of perception and the world object of mans perception.  In that relationship, multi-fields are concerned with, including: thought, behavior, event, impact, evaluation. Act, language, and so on.

 人の神経系の働きに対して数学的な考え方を持ってきたのは、後にベイトソンが、ラッセル&ホワイトヘッドの型理論を引用して人のマインドに対して論理階型の理論を考えだしたところに影響を与えているようにも思ってきます。

 また、それぞれの人の主観的な知覚そして外的な事物に対する人の知覚を扱っていることを考えると、後の構成主義や仏教は、「世界の投影としての自己、そして自己の投影としての世界」の循環を扱っているため、同じ概念を持つ一般意味論と非常に相性が良いように思ってきます。 ちなみに、一般意味論では外的世界で成立つ法則のことを logics 人の知覚や認識の世界で成立つ法則のことを phyco-logics と定義しています。

 それで、本書では、人間のコミュニケーション、人間が評価を行うときの知覚・思考による推論のプロセス、気づきや覚醒について以下の表のような一般意味論のフレームワークを当てはめ考察しています。

1.Process of abstraction:
(抽象化のプロセス)
This technical term implies personal process of activity and realization involving.
a.Structually-determine, selection/filtering of human six-sense-organs.
b.Functional selecting depending both on the past and present experiences, knowledge, interest, skill, habit, moods,etc.
c.Integrating: summarizing, gestating.
d.Projecting: the tendency of brains to allocate their own experience.
e.self-reflexiveness: including reactions to reactions, etc.
f.Talking (symbolizing) to self and others, which involves: Multiordinality Many possible orders of abstraction? 

2. Structural Differential: (構造の区別)
Map of abstraction process in human mind, the foundation of accumulation of and transmission of knowledge and information , etc.
3. Intentional orientation;(意図的 定位)
Dependency on definitions, verbalizations, assumption, conception, etc.
4. Extensional orientation:(拡張的 定位)
Universal principles and laws of the extensional world the non-verbal domain.
5. Time-binding:(タイム・バインディング)
Specific characteristics of human activity, leading to formation of cultures, ethics, language, etc.
6. Logical Fate:(論理的 命運)
Relationship of premise-conclusion, cause-effect, etc.
7. Multi-values:(多重の価値)
Differ from two values either or traditional orientation.
8.Certainty and Possibility:(確実性および可能性)
Fact and inference distinction.
9.Semantic reaction:(意味論的反応)
Psychological response of a man-as organism-as-a-whole to a stimulus broader than what is traditionally called meaning.
10.Multi-use of terms:(用語の多重利用)
The same term in difference meaning, evaluation, definition, situation, and brain.
11.Language:(言語)
Tool of time-binding language-referent relationships.
12. Non-identity:(非アイデンティティ)
Level of abstraction in human behaviors. 
13. Types of Questions:(質問のタイプ)
Operational, speculative, fun, etc.
14. etc (その他)
 重要な概念である etc.
  
 本書では、このフレームワークを使って仏教の空とは?、三宝とは?、四諦、五蘊、十二縁起、八正道といったその意味やプロセスを説明しているということになります。  

この話を書いていくとまた2ヶ月くらいこのテーマについて書き続けるようなことになるため、ここでは中身の詳細までには踏み込みませんが、詳細にご興味のある方は本書をご参照していただければと思います。

もっとも、米国などにいって「興味本位に仏教って何?」と聞かれても、普段形式知化して説明できるようにしているわけではないので、案外この質問に答えるのは難しいのですよねぇ。

 それで、個人的に考えているのはこういった経営にしてもリーダーシップにしても心理療法家の卓越性にしても、「それって何?」と聞かれても答えるのが難しいため、その暗黙知の一部を一般意味論で形式知化しておくのは良いアイディアだなぁと思っているわけです。 もっとも、説明できたからと言って実践できているわけではないのでしょうけれども。

(つづく)

文献

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