2012年7月31日火曜日

組織の問題解決のためのリフレーミング(その2)

                                     

ソマティック・マーカー仮説というのがあります。

これは、脳神経学者アントニオ・ダマシオが主張する説で、外部からある情報を得ることで呼び起こされる身体感覚をともなった情動や感情(心臓がドキドキしたり、冷や汗をかいたりする・・・など)が、前頭葉の腹内側部に影響を与えて「よい/わるい、やる/やらない・・・など」という判断を無意識に行なっていて、意思決定を効率的にするのではないかという仮説です。


この仮説にしたがうと、理性的判断には情動や感情を排して取り組むべきだという従来の常識に反して、理性的判断に情動的、感情的要素はむしろ効率的に働くことになることになります。

もちろん、これは仮説なのですが、個人的にはロジカル・シンキングに併せる形式で、気持や情動を明示して意思決定する方法論を持っているので、これはこれでありかなと・・・・

独り言


今日は、「組織の問題解決のためのリフレーミング」について書いておきましょう。

感情や情動を使いこなすには?

普段意識していないと自分の思考フレームあるいはその思考フレームが関係している認知バイアスそれ自体に気がつくことは難しいことがあります。

逆に言うと、日常生活や仕事の場面において何の問題もなく時間が粛々と流れている時には自分の思考フレームに気がつくことはないと思います。

では、実際に思考のフレームに気がつくのはどのような時なのか? 程度の問題はあると思いますが、何か自分の想定したことのない事象が発生して、自分の気持が動いて、気持や情動が発生した時、

例えば、想定外の事態が発生した時、ある人やグループの間で意見の対立が生じた時など・・・

この時に何か自分の信念・価値観、あるいは前提としている思考フレームに気がつくような場面が多いように思ってきます。(もちろん、予想外に素晴らしい結果が現れた時でも良いのですが)

それで、個人的に考えている暗黙の前提に気付く必要条件をあげると

l       自分の感情や情動の動きに気づいた時
l       出来事を二項対立で記述し葛藤などを起こしている考えの差異を明示した時

ということになるでしょう。

個人的には、必要条件にもあるように、この気持がなぜ起こっているのかを、一旦、二項対立の形式の形式で見てみることにしています、この構造を意識することで、対立解消のプロセスが活用できますので、こちらのほうの形式で使うほうが好みだというわけです。

英語では、この気持を(Emotion)と言っているわけですが、文字通り気持が動いているという状態になっているわけです。もちろん、認知心理学的には情動(Emotion)と気持(feeling)は異なる神経回路を使っているので区别されます。

それで、個人的には対立解消や意思決定において相手に直接情動や感情をぶつけるという方法は当然お薦めできませんが、自分の内側から起こる情動や気持について意識を向けて、どうしてそのような気持が起こってくるのか?という具合にその気持をメタ認知するモードに入っていくのが良いように思ってきます。

もちろん、これは以下のリンクで書いた家族療法家のヴァージニア・サティアが「気持についての気持」を尋ねて思考の抽象度を上げていく方法に入ってきます。


 それで、ここまでの結論は、現在USC(南カリフォルニア大)研究を行なっているアントニオ・ダマシオではないですが、自分の気持や情動に注意を向けることで自分の思考フレームに近接できるように思ってきます。

(つづく)

 文献
N/A

記事の内容の正誤について、執筆者は一切保証いたしません。また、本書の内容、エクソサイズなどを実行した結果被った被害などについて著者は一切責任を負わないこととします。本ニュースレターの内容は、以下クリエイティブ・コモンズ・ライセンスに従うものとします。但し、引用元の著作権は引用元に所属します。ご意見、ご感想は次へ tritune'`@''gmail.com

2012年7月30日月曜日

組織の問題解決のためのリフレーミング(その1)

                                     

ロジカル・シンキングっていうけれど、だれしも何らかの暗黙の前提をおいてロジカル・シンキングを行なっていて、ある意味バイアスがかかった状態で考えているのですよねぇ。

 これがいい意味で、検討に値することだけを考えるという卓越性にもなれば、悪い意味での盲点をつくる思考法にもなるのですけれどねぇ。


 もちろん、ここでその違いは何か?を探求するのがベイトソン流というわけなのですけれどね。(笑)

独り言


今日は、「組織の問題解決のためのリフレーミング」について書いておきましょう。

ひとは案外自分の認知バイアスに気がついていない

少し前のことですが、総務省の高度ITの人材育成プロジェクトにプログラム・マネージャとして従事したことがあり、ここでいくつか、といってもかなりの数のカリキュラム(のべ100日程度の講座)を開発して講座として提供してことがあります。

それで、このうちの一つがロジカル・シンキング[1]の講座だったわけですが、次期の経営幹部を含む中堅の社会人で、それぞれ勤務する会社の違う受講生の方々を対象にこの講座を提供していて面白いことに気がついたことがあります。


一般的にロジカル・シンキングは事実(領土)と推論(地図)を区别し、事実と事実の因果関係や相関関係を演繹法を使って正しく推論するということで成り立っていると思います。もちろん一部は帰納法を使って事実から法則を探すということになりますけれど・・・

それで、この時は、ロジカル・シンキングで考えてくださいと指示しても、多くの方は、演繹法や帰納法を行うプロセスにおいて、

l       個々人の経験からくる暗黙の前提で認知バイアス[2]がかかった状態で考えてしまう。
l       勤務する会社や業界の文化が暗黙の前提になって認知バイアスがかかってしまう。
l       ほとんどの方々は自分の認知バイアスつまり暗黙の前提に慣れ親しんでいて気づいていない。

というような状態でロジカル・シンキングを行なっていたことが分かったというわけです。つまり、演繹法の明示的な前提の奥に潜む暗黙の前提が思考プロセスや行動に大きな影響を及ぼしていたということになります。


それで余談ですが、以下に一般意味論の構造微分のモデルを使った知覚・思考プロセス、つまり五感の感覚と言葉を使った推論がどのようになっているのか?についての概要を示しておきます。




一般意味論的な人の情報処理のモデル(概要)
※ここで示すのはモデルであり一般的に人は直線的でシーケンシャルな思考をしているわけではありません。

    外的世界の出来事が存在する(Event Level
    外的な出来事の情報を五感から取り込み表象する(Object Level)
    上の情報について言葉によるラベリングを行う(Descriptive Level)
    認知言語学的には言葉の語彙から適切な言語を探す(プロトタイプ、カテゴリー化)
    言葉を使って記号操作としての推論を行う、この場合、経験から構築された思考の枠組み(フレームの)の元、演繹法、帰納法、アブダクションにのロジックを使う(Inference1 Inference2 etc )

上のプロセスを行うことで質感を伴った五感情報は削除され、言語、記号へと情報は抽象度を増す方向へ処理される。もちろん、この反対に言葉を聞いて五感情報を伴った形式で思い起こすことも可能です。この場合、削除された情報が具体化される方向になります。 また、記号・言葉で行う推論と身体感覚は相互に影響を及ぼす関係にあります。言葉や記号で推論した意味が身体に影響を及ぼし( Nuro-Semantic Feedback) 言葉や記号で推論した語感が身体に影響を及ぼす(Neuro-Linguistic Feed Back)ことになります。

話を元に戻して・・・


例えば、ロジック・ツリー(イッシュー・ツリー)を書いて問題の構造を整理してくださいという問題になった場合、知らないうちに自分でも気づいていない暗黙の前提をおいて考えてしまっていて、自分の会社や業界では常識でも、他の会社や業界からするとヌケモレのあるMECEになっていないロジック・ツリーになっているという具合になっていたという具合です。

もちろん、自分が少し恥ずかしい思いをするという実害のないお遊びの演習の場合は多少間違っていても問題ないと思いますが、一歩間違えば会社の命運を決するような大きな決断を行う場合、自分や会社の持っている文化のような認知バイアスがかかった状態で盲点に気づかず意思決定してしまうと大変なことになってしまう場合があるというわけです。

これは、市場環境が変化しているにもかかわらず、過去の成功体験の延長でものごとを考えているような場合もこの認知バイアスがかかった状態に入るでしょう。もちろん、日本の大手の会社のうちでもこのような意志決定をおこない経営が立ちゆかなくなっている企業も少なくないでしょう。

それで、メタファーなのですが、計測器などをつかって何かを定量的に測定する場合、その計測器自体に誤差がないかどうかを調整する必要がありますが、人が何かを観察して、物事を主に推論によって考える場合にも、人の認識が持っているバイアスを調整するような方法を考えておかなければならないと考えるに至った背景がここにあるわけです。

それでこの認知バイアスは家族療法などで活用されるリフレーミングを使って調整することが可能ですが、今日から何日かかけてこのリフレーミングを具体的にどのように行うかを書いていくことにしたいと思います。


(参考リンク)
http://ori-japan.blogspot.jp/2011/08/blog-post_30.html

(つづく)

 文献

記事の内容の正誤について、執筆者は一切保証いたしません。また、本書の内容、エクソサイズなどを実行した結果被った被害などについて著者は一切責任を負わないこととします。本ニュースレターの内容は、以下クリエイティブ・コモンズ・ライセンスに従うものとします。但し、引用元の著作権は引用元に所属します。ご意見、ご感想は次へ tritune'`@''gmail.com

2012年7月29日日曜日

Death of Resistance

                                     

この世の中にシステム[1]でないものは存在するのだろうか?

もちろん、システムをどのスコープで考えるのかは、「見るもの」と「見られるもの」の相対的な関係で決まるのだろうけれど・・・・

独り言


今日は、「Death of Resistance」について書いておきましょう。

スコープの変更によるパラダイムの転換

世の中システムではないものは存在するのか?と問を立てると結構難しいものがあります。

もちろん、システムではないものを探すほうが難しかったりするわけですが、車にしたって新幹線にしたって、医療制度にしたって、教育制度にしたって、ある意味システムであるわけです。

それで、今日はミルウォーキー派ソリューション・フォーカスト・アプローチのスティーブ・ド・シェザーの論文「Death of Resistance」をたまたま読んでいたところだったので、これをご紹介しておきましょう。
                        

個人的には家族療法家を目指しているわけではないのですが、仕事としてプロジェクト・マネジメントなどに関わっていると家族療法のようにあるグループに含まれるメンバー全体を一つのシステムと考え、そこで起こる現象や課題に対処することは非常重要だというわけです。

 それで、この論文の非常に面白いところは、家族、それ自体から家族とセラピストの相互作用を考えるより大きなシステムを対象とすることで、対処するための概念のパラダイムシフトが起きていることでしょう。


システムとしての家族
システムとしての家族療法
研究の対象
家族
家族―セラピスト
組織概念
ホメオスタシス
形態形成
臨床の概念
抵抗
協力

余談ですが、ここで想定されているシステム論は、ベルタランフィの一般システム論と丸山孫朗博士の第二次サイバネティックスで基本的には開放系のシステムを持ってきているわけです、ここにリン・ホフマンのようにオートポイエシスをもってきたらどうなるのだろうか?とちょっと調査中というわけです。

もちろん一見小難しいとおもわれる理論を理解するだけではなく日常生活や仕事にどのように役立てていくのか?がもっと重要なのでしょうけれども。

(つづく)

 文献
[1] http://ja.wikipedia.org/wiki/システム


記事の内容の正誤について、執筆者は一切保証いたしません。また、本書の内容、エクソサイズなどを実行した結果被った被害などについて著者は一切責任を負わないこととします。本ニュースレターの内容は、以下クリエイティブ・コモンズ・ライセンスに従うものとします。但し、引用元の著作権は引用元に所属します。ご意見、ご感想は次へ tritune'`@''gmail.com

2012年7月28日土曜日

追悼:ジョージ・ミラー博士

                                     

道なき道を拓いた認知心理学のパイオニアがいなくなるのは寂しいですねぇ。

独り言


今日は、「追悼:ジョージ・ミラー博士」について書いておきましょう。

認知心理学の創始者のひとり、ミラー博士が永眠

論文を読んだことがなくても、意識で同時に認識できる情報のチャンク・サイズが7±2だということはご存知の方も多いでしょう。

 以下のリンクで1956年に発表された「Magical Number seven minus or plus two」の著者であり、ユージン・グランター、カール・プリブラムらと認知心理学の創始者とみなされ、多くの業績を残した、ジョージ・ミラー博士が7月22日に92歳で永眠されたことを伝えています。


(つづく)

 文献
N/A
記事の内容の正誤について、執筆者は一切保証いたしません。また、本書の内容、エクソサイズなどを実行した結果被った被害などについて著者は一切責任を負わないこととします。本ニュースレターの内容は、以下クリエイティブ・コモンズ・ライセンスに従うものとします。但し、引用元の著作権は引用元に所属します。ご意見、ご感想は次へ tritune'`@''gmail.com

2012年7月27日金曜日

短期・戦略療法の傾聴の原則

                                     

コーチングや心理療法で言う「傾聴」の難しいところは、本来、コーチやセラピストは自分の信念・価値観を保留しておかないといけないのに、知らず知らずのうちに程度の差こそあれ、信念・価値観を反映したフィルターを通してクライアントの話を聴いてしまっていることですよねぇ。「~するべきだ」とか「~でなくてはならない」「そんなんじゃダメだ!」とか・・・・もちろんクライアントの言動に引っ張られてつい本音が出たということかもしれませんが・・・

それで、このような状態になるとコーチやセラピストの注意が向かない盲点みたいなものが生まれていて、それに気づきもしなければ、収集された情報の抜け漏れから状況に即した問題解決もままならないということになってしまいますよねぇ。

だから、セッション中にコーチやセラピストが自分の信念・価値観を反映した想いを持ちすぎるというのも考えものなのですよねぇ(笑)。

もっとも、これを防ぐためには、「傾聴」の方法論の中に、メタ視点に出て、コーチやセラピストの認知バイアスがかからないようにするか?あるいはそれを補正できるような方法が入っていないとそもそも話にならないのですよねぇ。だって、コーチやセラピストにしたって人の子なわけですし、いい意味でも悪い意味でも何がしかの信念・価値観は持っているわけですからねぇ。

独り言


今日は、「短期・戦略療法の傾聴の原則」について書いておきましょう。

 傾聴のプロセスとは?

心理療法でもコーチングのコンテクストでも構わないのですが、流派を問わず、クライアントの話を聴いて彼らの状況や世界観を深く理解するということは非常に重要なことであることに異論はないでしょう。

こういったプロセスのことを一般的には「傾聴」と言っていますが、実はきちんと傾聴するということ自体けっこう難しいところがあります。

 それで、個人的に考えるに、いくつかの課題があるように思います。

l       一つは、色々な流派があって標準化されたプロセスがないこと。(もちろん色々なアプローチが存在するのは多様性の点では良いことだと思いますが・・・)
l       もう一つは、コーチングや心理療法のコンテクストは、コーチやセラピストそしてクライアントと状況が相互するような形式になっており、いつもサイバネティックス的で複雑な相互作用を考える必要があること。例えば、コーチやセラピストの信念・価値観が悪い意味でクライアントとのやり取りに反映されていないかと考える必要があること、あるいはこの影響を小さくする工夫が必要なこと。

 それで、ここでは上の課題を解決するべく、短期・戦略療法系、つまりブリーフ・セラピーの「傾聴」のプロセスについて書いておきましょう。

 まず、結論から言ってしまうと、一つは以下の原則があります。


原則1:クライアントに事実と思考(推論)の区别をつけてもらう。そのためにコーチやセラピストはクライアントの言葉からこの違いを意識して聴く。


 もちろん、この前提としてクライアントとラポールをつくるとかの基本的なことは既に出来ているとして、考えてみましょう。

それで、短期・戦略療法、つまりブリーフ・セラピーの原則に一般意味論のコージブスキーの言葉を引用した「地図と領土(現地)」の区别をつけるということがありました。


これをコーチングや心理療法のコンテクストで言うと、クライアントさんの心のなかで、何が領土(事実)で何が地図(考え方や推論、それから生じた意味など)なのか?の区别をつけてもらう、あるいは気づいてもらう支援を行うのが、コーチやセラピストの重要な仕事の一つということになるでしょう。もちろんここで扱っているのはクライアントの主観的経験となりますので、定量的に表現することの難しい曖昧さというのを含んでいるのしょうが。

それで、ここでクライアントに確認するのは、言葉での思考が、事実を反映しているのか? そこに齟齬がないかどうか? あるいは思考の中の出来事と事実を混同していないかどうか?などです。

そう考えるとブリーフ・セラピーでの「傾聴」の重要なプロセスは、コーチやセラピストは、クライアントの言っていることの何が事実なのかを二値的に切れ目を入れて明確にする。そして、事実以外の部分として、何がクライアントの考え方や推論、それから生じた意味なのか、の違いに耳を傾け、表情なども観察しながら注意深く聴くことになります。また、そのプロセスで表情と言葉の不一致や、あるいは不明瞭な点があればクライアントに確認をすることが「傾聴」のプロセスであることが分かってきます。


さて、次の原則について考えてみましょう。


原則2:クライアントに事実と思考(推論)の背景にある信念・価値観、思考の枠組みについて気づいてもらう。そのためにコーチやセラピストはクライアントの言葉からこの違いを意識して聴く。



次のプロセスとして、事実を分離した残りの部分に焦点を当てることにしましょう。おそこらくこの部分は、一つは、(こだわりはあまりない)思考実験として推論、そしてもう一つは、クライアントの信念・価値観を反映した想いのこもった意見や意志のようなところに別れてくるでしょう。

コーチングや心理療法のコンテクストで、コーチやセラピストは、この2つを聞き分けることと、そして、クライアントの意見や意志の背景にある信念・価値観、あるいは思考の枠組みを聴きとる必要があります。

ここで注意することは、コーチやセラピストの持っている信念・価値観からするとクライアントが到底受け入れられないような信念・価値観を持っているような場合、あるいはコーチやセラピストから見て取るにたりないと思ってしまうような場合です。

この場合も、コーチやセラピストは風姿花伝で言われている「離見の見」のようなメタ視点を併用することでクライアントとの考え方の違いを理解しクライアントの世界観を達観して受け止めることが出来るでしょう。


それで、ここでコーチやセラピストは、信念・価値観、あるいは思考の枠組みを反映した意見や考え方に対してタイミング良く承認を与えることでラポールを深めることができるでしょう。但し、これをやり過ぎると共依存状態になる場合もあるために、逆に、事実を語っている部分に焦点当てて冷静になることでラポールの深さにブレーキをかけることができます。もちろん、事実を取り扱う場合、事務的になり過ぎてラポールを切らないようにしましょう。

また、ここで信念・価値観、思考の枠組みが現在の行動に問題を起こしているような場合、一旦、現在の信念・価値観、思考の枠組みを明示、承認した上で、リフレーミングやメタファー、場合によってはエリクソン催眠の暗示などを活用して、信念・価値観、思考の枠組みが変化するように介入(Intervention)を行なっていくことになります。


当たり前ですが、例えば、コーチやセラピストが、リフレーミングを行なって信念の枠組みに介入を行おうと思ったとしても、そもそも、リフレーミング対象となる枠組みが何なのか?は特定しておかないとリフレーミングが出来ないので話にならないという具合です。

また認識と行動の変化を行うために、リフレーミングを行う場合は、ベイトソンの言う論理階型の高いメタ・レベルにある枠組みを扱う必要がありますので、単なる言葉尻を捕まえただけのリフレーミングは効果が低く、以下のリンクで書いた3クラウド法のような要領でメタ・レベルにある信念・価値観の枠組みを探し、そして枠組みからとび出す、もしくはこの枠組をデフレームするリフレーミングを行う必要があります。


それで、具体的に、短期・戦略療法的な「傾聴」を行うにはどうしたら良いか?
以下のリンクの話に戻ってきます。


 個人的には、やり方させ間違わなければデビルマン顔負けの「地獄耳」を身に付けるのはそう難しくないことだと思います。 それで、結局はミルトン・エリクソンではないですが、相手の信念・価値観が分かったとして、クライアントが望む結果を得るために、その信念・価値観を形成している枠組み自体にどのように働きかけていくのか?がより重要だということになると思います。

 また、ブリーフ・セラピーの傾聴は、ロジャーズ派の傾聴と違ってクライアントとのやりとりを重視するため、一般的な質問のやり取りを行う場合も、エリクソンのような催眠言語やメタファーでのやり取りを行う場合も、コーチやセラピストがおしゃべりしながら「仕掛けていく傾聴」という感じのスタイルになってくると思います。

  余談ですが、知り合いに頼まれてために「傾聴、質問」のトレーニングなんかやったりすることがあるわけですが、ブリーフ・セラピーの傾聴って実はビジネス系と非常に相性が良いですよねぇ。 相手が戦コン・レベルでも問題なく対応可能って感じですからねぇ。

(つづく)

 文献
N/A


記事の内容の正誤について、執筆者は一切保証いたしません。また、本書の内容、エクソサイズなどを実行した結果被った被害などについて著者は一切責任を負わないこととします。本ニュースレターの内容は、以下クリエイティブ・コモンズ・ライセンスに従うものとします。但し、引用元の著作権は引用元に所属します。ご意見、ご感想は次へ tritune'`@''gmail.com

2012年7月26日木曜日

催眠における時間歪曲

                                     

楽しい時間はあっという間に過ぎ、退屈だと思ったり、嫌だと思ったりした時間は永遠に続くように感じられるなぁ。

独り言


今日は、「催眠における時間歪曲」について書いておきましょう。

 時間感覚は主観的

人が時間をどのように認識しているか?を考えると非常に面白いところがあります。


もちろん、これには今ココで流れている時間がどのように過ぎているのか?という感覚によって直接感じられる時間と、もう少し大きな視点からみた「時間の流れ」というようなメタ時間のようなものがあるでしょう。

ここでは主に直接五感で感じている主観的に感じられる時間について考えることになりますが、時間の感覚というのは非常に主観的なものであるということが分かってきます。

1958年にミルトン・エリクソンとリン・クーパー両医学博士共著で「Time Distortion in Hypnosis[1]が出版されており、1982年に一度改訂が行われていますが、この中でトランス状態になると時間感覚が歪曲することが報告されています。

もちろん、トランス状態とは、一般的に

1.      認知反応の変化
選択的注意、被暗示性亢進、没頭、トランスロジック(トランス状態特有の論理)、非随意感、時間歪曲、解離、記憶変化
2.      知覚・感覚反応の変化
知覚亢進、低下、鎮痛、麻酔、幻覚
3.      動作反応
カタレプシー、不動


が起こることが知られていますが、本書で特に時間歪曲について焦点が当てられていることになります。

もちろん時間感覚の歪曲には色々なバリエーションが存在するわけですが、本書ではそのバリエーションとその状態に到達するまでの具体的なプロセスについて書かれています。


PART I. EXPERIMENTAL STUDIES

Chapter 1 Introduction
Chapter 2 Time
Chapter 3 Definitions
Chapter 4 Subjects
Chapter 5 Methods
Chapter 6 Training
Chapter 7 Experimental Basis of This Report
Chapter 8 Miscellaneous Activities
Chapter 9 Counting
Chapter 10 Sound Signals
Chapter 11 Metronome
Chapter 12 Review and Practice
Chapter 13 Coincidental Happenings
Chapter 14 Special Inquiry
Chapter 15 Association
Chapter 16 Thought
Chapter 17 Creative Mental Activity
Chapter 18 Motor Learning
Chapter 19 Nonmotor Learning
Chapter 20 Mathematical Mental Activity
Chapter 21 Polygraph Studies
Chapter 22 A Semantic Interpretation of Verbal Suggestion
Chapter 23 Conclusion

PART II. THE CLINICAL AND THERAPEUTIC
APPLICATIONS OF TIME DISTORTION
PART III. FURTHER CONSIDERATION OF TIME
DISTORTION
Subjective Time Condensation as Distinct from Time
Expansion
References


(つづく)

 文献

記事の内容の正誤について、執筆者は一切保証いたしません。また、本書の内容、エクソサイズなどを実行した結果被った被害などについて著者は一切責任を負わないこととします。本ニュースレターの内容は、以下クリエイティブ・コモンズ・ライセンスに従うものとします。但し、引用元の著作権は引用元に所属します。ご意見、ご感想は次へ tritune'`@''gmail.com

2012年7月25日水曜日

ミルトン・エリクソン&アーネスト・ロッシ三部作(その3)

                                     

1970年台ミルトン・エリクソンがアーネスト・ロッシに色々なことを教授していた時、エリクソンが70歳代、アーネスト・ロッシが30歳代・・・・晩年のエリクソンがロッシに託したものは何だったのでしょう?

独り言


今日は、「ミルトン・エリクソン&アーネスト・ロッシ三部作(その3)」について書いておきましょう。


 エリクソンとロッシの問答がいったん完結

1981年にミルトン・エリクソン&アーネスト・ロッシの三部作の第三作である「Experiencing Hypnosis [1]が出版されています。

1980年にミルトン・エリクソンが亡くなってしまっているためある意味最高のデュオはこれで解消。

これ以降に発表されるアーネスト・ロッシの著作には、エリクソンはスターウォーズのオビ=ワンのように時たま「May the Force be with you (フォースとともに有らんことを)」の代りに「ユーティライズ」を行え、というような形式で生前のエリクソンの引用というような形式でのみ登場することになります。

それで、本書の目次を引用しておくと、主に、間接アプローチ、カタレプシー、観念運動[2]について、そして懐疑的な心で試してみる実験という形式になっています。


Introduction
I. The Indirect Approaches to Hypnosis
a. Hypnosis in Psychiatry: The Ocean Monarch Lecture
b. Utilization Approaches to Indirect Communication
1. Language and the Art of Suggestion
2. Multiple Levels of Communication in Hypnosis
3. Internal Responses as the Essence of Suggestion
4. Indirect Communication in the Ocean Monarch Lecture

II. Catalepsy in Hypnotic Induction and Therapy
a. Catalepsy in Historical Perspective
b. Recognizing Spontaneous Catalepsy
c. Facilitating Catalepsy
d. Utilizing Catalepsy
e. Summary
f. Exercises with Catalepsy

Demonstration in the Use of Catalepsy in Hypnotic Induction: Hand Levitation in a Blind Subject
III. Ideomotor Signaling in Hypnotic Induction and Therapy
a. Ideomotor Movements and Signaling in Historical Perspective
b. Recognizing Spontaneous Ideomotor Signaling
c. Facilitating Ideomotor Signaling
d. Facilitating Ideosensory Signaling
e. Utilizing Ideomotor Signaling
f. Summary
g. Exercises in Ideomotor Signaling

An Audio-Visual Demonstration of Ideomotor Movements and Catalepsy: The Reverse Set to Facilitate Hypnotic Induction

IV. The Experiential Learning of Trance by the Skeptical Mind

Session One: The Experiential Learning of Minimal Manifestations of Trance
Session Two: The Experiential Learning of Hypnotic Phenomena
1. Dissociation and the Modern Experiential Approach to Altered States
2. Learning Indirect Communication: Frames of Reference, Metalevels, and Psychotherapy


それで、ロッシ・エリクソンの三部作はミルトン・エリクソンを理解する上では必須の著作となっていると思いますが、ある意味ここが出発点になってくるということなのでしょう。

(つづく)

 文献

記事の内容の正誤について、執筆者は一切保証いたしません。また、本書の内容、エクソサイズなどを実行した結果被った被害などについて著者は一切責任を負わないこととします。本ニュースレターの内容は、以下クリエイティブ・コモンズ・ライセンスに従うものとします。但し、引用元の著作権は引用元に所属します。ご意見、ご感想は次へ tritune'`@''gmail.com

2012年7月24日火曜日

ミルトン・エリクソン&アーネスト・ロッシ三部作(その2)


                                     

この本の中でクライアントに語りかけているミルトン・エリクソンは、まるで子供に話しかけているように非常に簡単な言葉を使っているわけですが、その行間がかなり深いので、一読しただけではどこが凄いのか?が分からないのですよねぇ。

独り言


今日は、「ミルトン・エリクソン&アーネスト・ロッシ三部作(その2)」について書いておきましょう。

 黄金のデュオ誕生

1979年にミルトン・エリクソン&アーネスト・ロッシの三部作の第二作である「Hypnotherapy - An Exploratory Casebook [1]が出版されています。

本書はP.500を超えるような大作ですが、第一作と同じような形式で、実際にエリクソンが行った心理療法の事例を題材にアーネスト・ロッシが師匠であるミルトン・エリクソンの教えを口述しそして疑問点について質問するような形式で本書は進んでいきます。

個人的な印象ですが、この頃になるとエリクソン&ロッシのデュオも随分こなれてきて、ある意味「阿吽の呼吸」で機能するチームのようになってきているように思います。

もちろんこの著作が出版されるのがエリクソンが亡くなる1年前の1979年になりますのである意味エリクソンは亡くなる直前まで進化を続けたということになるのだと思います。

それで、以下のリンクで書いように本書でクライアントに語りかけるエリクソンは非常に平易でまるで子供に語りかけるように話しているため一読しただけでは、スーッと通りすぎてしまうようなところがあります。


 もちろん、行間がかなり深いので、行間に含まれているメタ・メッセージを慎重に読み解く必要があると思います。
それで以下に目次を引用しておきます。

フォワードは「私の声はあなたとともに」のシドニー・ローゼンが担当しています。

Foreword
Preface

Chapter 1. The Utilization Approach to Hypnotherapy
1. Preparation
2. Therapeutic Trance
3. Ratification of Therapeutic Change Summary Exercises

Chapter 2. The Indirect Forms of Suggestion
1. Direct and Indirect Suggestion
2. The Interspersal Approach
a) Indirect Associative Focusing
b) Indirect Ideodynamic Focusing
3. Truisms Utilizing Ideodynamic Processes
a) Ideomotor Processes
b) Ideosensory Processes
c) Ideoaffective Processes
d) Ideocognitive Processes
4. Truisms Utilizing Time
5. Not Knowing, Not Doing
6. Open-Ended Suggestions
7. Covering All Possibilities of a Class of Responses
8. Questions That Facilitate New Response Possibilities
a) Questions to Focus Associations
b) Questions in Trance Induction
c) Questions Facilitating Therapeutic Responsiveness
9. Compound Suggestions
a) The Yes Set and Reinforcement
b) Contingent Suggestions and Associational Networks
c) Apposition of Opposites
d) The Negative
e) Shock, Surprise, and Creative Moments
10. Implication and the Implied Directive a) The Implied Directive
11. Binds and Double Binds
a) Binds Modeled on Avoidance-Avoidance and Approach-Approach Conflicts
b) The Conscious-Unconscious Double Bind
c) The Double Dissociation Double Bind
12. Multiple Levels of Meaning and Communication: The Evolution of Consciousness in Jokes, Puns, Metaphor, and Symbol Exercises

Chapter 3. The Utilization Approach: Trance Induction and Suggestion
1. Accepting and Utilizing the Patient's Manifest Behavior
2. Utilizing Emergency Situations
3. Utilizing the Patient's Inner Realities
4. Utilizing the Patient's Resistances
5. Utilizing the Patient's Negative Affects and Confusion
6. Utilizing the Patient's Symptoms Exercises

Chapter 4. Posthypnotic Suggestion
1. Associating Posthypnotic Suggestions with Behavioral Inevitabilities
2. Serial Posthypnotic Suggestions
3. Unconscious Conditioning as Posthypnotic Suggestion
4. Initiated Expectations Resolved Posthypnotically
5. Surprise As a Posthypnotic Suggestion Exercises

Chapter 5. Altering Sensory-Perceptual Functioning: The Problem of Pain and Comfort
Case 1. Conversational Approach to Altering Sensory-Perceptual Functioning: Phantom Limb Pain and Tinnitus
Case 2. Shock and Surprise for Altering Sensory-Perceptual Functioning: Intractable Back Pain
Case 3. Shifting Frames of Reference for Anesthesia and Analgesia
Case 4. Utilizing the Patient's Own Personality and Abilities for Pain Relief
Selected Shorter Cases: Exercises for Analysis

Chapter 6. Symptom Resolution
Case 5. A General Approach to Symptomatic Behavior
Session One:
Part One. Preparation and Initial Trance Work
Part Two. Therapeutic Trance as Intense Inner Work
Part Three. Evaluation and Ratification of Therapeutic Change
Session Two: Insight and Working Through Related Problems
Case 6. Demonstrating Psychosomatic Asthma with Shock to Facilitate Symptom Resolution and Insight
Case 7. Symptom Resolution with Catharsis Facilitating Personality Maturation: An Authoritarian Approach
Case 8. Sexual Dysfunction: Somnambulistic Training in a Rapid Hypnotherapeutic Approach
Part One. Facilitating Somnambulistic Behavior
Part Two. A Rapid Hypnotherapeutic Approach Utilizing . Therapeutic Symbolism with Hand Levitation
Case 9. Anorexia Nervosa Selected Shorter Cases. Exercises for Analysis

Chapter 7. Memory Revivication
Case 10. Resolving a Traumatic Experience
Part One. Somnambulistic Training, Autohypnosis, and Hypnotic Anesthesia
Part Two. Reorganizing Traumatic Life Experience and Memory Revivication

Chapter 8. Emotional Coping
Case 11. Resolving Affect and Phobia with New Frames of Reference
Part One. Displacing a Phobic Symptom
Part Two. Resolving an Early-Life Trauma at the Source of a Phobia
Part Three. Facilitating Learning: Developing New Frames of Reference
Selected Shorter Cases: Exercises for Analysis

Chapter 9. Facilitating Potentials: Transforming Identity
Case 12. Utilizing Spontaneous Trance: An Exploration
Integrating Left and Right Hemispheric Activity
Session 1: Spontaneous Trance and its Utilization: Symbolic Healing
Session 2: Part One. Facilitating Self-Exploration
Part Two. Automatic Handwriting and Dissociation
Case 13. Hypnotherapy in Organic Spinal Cord Damage: New Identity Resolving Suicidal Depression
Case 14. Psychological Shock and Surprise to Transform Identity
Case 15. Experiential Life Review in the Transformation of Identity
Chapter 10. Creating Identity: Beyond Utilization Theory?
Case 16. The February Man
References


個人的に面白いなと思ったのは、情動へ対処したり、思考や行動を変化させたりするために思考の参照枠(Frame of Reference)に働きかけるというところです。

これは、ベイトソンのマインドの理論から分かるように抽象度の高い考え方の枠組みを変化させないと、単にトランス誘導しただけでは変化は起こりませんからねぇ。

(つづく)

 文献
[1] http://www.amazon.com/dp/0470265957


記事の内容の正誤について、執筆者は一切保証いたしません。また、本書の内容、エクソサイズなどを実行した結果被った被害などについて著者は一切責任を負わないこととします。本ニュースレターの内容は、以下クリエイティブ・コモンズ・ライセンスに従うものとします。但し、引用元の著作権は引用元に所属します。ご意見、ご感想は次へ tritune'`@''gmail.com