2013年3月12日火曜日

ミルトン・エリクソンの技法:間接暗示の要件

                                  

 鴨長明の「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず・・・・」、徒然草の「世は定めなきこといみじけれ」、平家物語の「おごれる人も久しからず・・・・」に代表されるように日本人は昔から「変化しないものはないこと」あるいは「無常」を示唆する時にメタファーを使った間接表現を好むようなところがあるように思います。で、間接的な表現で変化を示唆するというのは、個人的には、これってまさにミルトン・エリクソンの間接暗示の世界だよなぁ~と思っているわけです。

 逆に言うと、「世の中は変わる」とか、ちょっと自我丸出しな感じで「世の中は俺が変えてやる・・・・!!」などとストレートに叫ぶと、「だから、それがどうした?」とか「思い上がるのもいい加減にしろ」などと激しい抵抗を受けることになるでしょうし、そもそも論として、何か下品な感じがするように思います。(笑)

もちろん、日本人は基本的に間接表現が好きだから状況にもよるのでしょうし、エグゼクティブ・コーチングで「What do you want ?」みたいな下品な質問ばかりするのはあまりよろしくないのでしょうし・・・そう考えると、案外エリクソンのアプローチというのは合っているような感じはするのですよねぇ。

 独り言


物事を間接的に伝えることで懐の深い含みを伝えることができる

間接的なプローチ:エリクソニアンのスティーブ・ランクトン氏にも指摘されていましたが、心理療法家のミルトン・エリクソンの技法の特徴として「間接的なアプローチ」ということがあります。


 実際、ミルトン・エリクソンは、この「間接的なプローチ」の一つとしてクライアントに対して間接暗示(Indirect Suggestion)を多用しているところがあるわけですが、この間接暗示を考える結構深いところに行き着くことになります。

間接暗示は無意識に働きかけるという仮説:アーネスト・ロッシ博士の論文「What is a Suggestion? The Neuroscience of Implicit Processing Heuristics in Therapeutic Hypnosis and Psychotherapy[1]を読むと、直接暗示(Direct suggestion)間接暗示(Indirect suggestion)が、米国プラグマティズムの父、ウィリアム・ジェームズからノーベル生理学賞受賞者のエリック・カンデルまで5人の学説と比較した形式で示されています。ここでミルトン・エリクソンの場合は、間接暗示が無意識に働きかけ、直接暗示が意識に働きかけることが出来るというモデルになっています。

記憶と学習の説
無意識
意識
ウィリアム・ジェームズ
不随意の注意
随意の注意
ミルトン・エリクソン
間接暗示
直接暗示
アーネスト・ロッシ
暗黙的ヒューリスティクス
明示的ヒューリスティクス
ダニエル・シャクター
潜在記憶
顕在記憶
エリック・カンデル
潜在記憶
顕在記憶

ヒューリスティックスに関しては以下を参照。
http://ori-japan.blogspot.jp/2013/01/blog-post_21.html

間接暗示で変化をほのめかす:エリクソニアンのザイク博士を引用してクライアントに変化していることを伝える方法について書いたわけですが、実際これについて間接暗示を使うとするとどのような感じになるのか?個人的には興味が尽きないわけですが、今日のテーマにもなってくるわけです。

http://ori-japan.blogspot.jp/2013/02/blog-post_14.html

スケーリング・クエスチョン:以下のリンクでミルトン・エリクソンの影響が濃いソリューション・フォーカスト・アプローチのスケーリング・クエスチョンについて、相手に変化することを明示しないで変化することが前提になっている旨を書いています。

http://ori-japan.blogspot.jp/2012/11/blog-post_20.html

間接暗示を網羅的に考えると:間接暗示についてはエリクソン&ロッシ共著の「Hypnotic Realities[2]に詳しく書かれているところですが、間接暗示の少しミクロな動力学の視点から5つの要件が取り出されていることになります


Erickson's approaches to depotentiating conscious sets are so subtle and pervasive in the manner with which they are interwoven with the actual process of induction and suggestion that they are usually unrecognized even when one studies a written transcript of his words. In order to place them in perspective we have outlined the microdynamics of induction and suggestion in Table 1 as: (1) the Fixation of Attention; (2) Depotentiating Conscious Sets; (3) Unconscious search; (4) Unconscious Processes; and (5) Hypnotic Response.


(1)注意の固定化 (2)意識の判断を緩める (3)無意識の検索 (4)無意識のプロセス (5)催眠の反応。

 もちろん、これだけだと何を言っているのか分からないところがあるためにそれぞれの項目について技法としてどのようものがあるのか?を書いておきましょう。もちろん、ここから分かるのは間接暗示という一つの手法があるわけではなく、上に書いた5つのカテゴリーに分けても、それこそ多種多様な手法が存在しているということになってくるわけです。

翻訳は適当
トランス誘導と暗示のミクロ的な動力学
(1)注意の固定化
(2) 意識の判断を緩める
(3) 無意識の検索

(4) 無意識のプロセス

(5) 催眠の反応

1.物語
やる気が出る、興味が湧く、魅力がある物語を語る
2.凝視法
1点を凝視する
3.パントマイム
無い壁を見せるなど
4.イメージ、想像してもらう
5.腕浮遊
6.内的知覚、気持ちをリラックスさせる
7.その他


1.ショックや驚き
非現実や非日常に驚愕する
2.参照枠のシフト
疑い、抵抗、失敗の枠組からのシフト
3.気を散らす
4.ディソシエイトと平衡状態を崩す
5.認知的なオーバーローディング
7±2を超えるチャンクの情報
6.混乱
予想外の結果
7.パラドクス
8.バインドとダブルバインド
9.声の強弱などを返ることによる調整
10.構造化された健忘
11.Not doing Not knowingの行動や態度
12.猜疑心や懐疑心を無くす
13.その他


1.喋り
ダジャレや冗談
2.メタファー
アナロジー、メタファー
3.含み
4.暗黙の命令
5.観念運動に関するシグナル
6.記憶から検索を行わせるようなコトバ
7.無意識に何かを探すような質問やタスク
8.何かを期待するような間の取り方
9.オープン・エンドの暗示
10.可能性のあるすべての反応への示唆
11.複合的な表現
12.コンテクストをまたぐ合図や暗示
13.その他

1.以下の総和
a)ちりばめ法の暗示
b)文、文字の連結
c)個人的な連合
d)複数の意味を含む単語
2.自律的な感覚、知覚のプロセス
3.フロイト派の重要なプロセス
4.個々人の防衛反応のメカニズム
5.ザイガニック効果
6.その他
催眠や出来事に対する振舞いに関する新しい与件それ自身



(つづく)

文献
[1]http://www.ernestrossi.com/ernestrossi/keypapers/NN%20WHAT%20IS%20A%20SUGGESTION%202007.pdf
[2] http://www.amazon.co.jp/dp/0829001123/


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