2013年5月31日金曜日

ダブル・バインドにはご用心(その8)

                               

 心理療法家のミルトン・エリクソンが暗黙知として活用していた治癒的ダブル・バインドに対して、色々な学問的フレームワークをあてて形式知化し、統合失調症の原因仮説としてのダブル・バインドを取り出したのは人類学者のグレゴリー・ベイトソン(のグループ)ということになるわけです。

それで、英国のケンブリッジあたりに生息するニュートンあたりから続く無宗教の家系に生まれたベイトソンが晩年、禅に傾倒していて最期はサンフランシスコの禅センターで亡くなったことを考えるとベイトソンが見出していたであろう「ダブル・バインドの言語パターンと禅問答の共通性」について色々な妄想が沸き起こってくることになりますねぇ。()

独り言


ダブル・バインドと変性意識

さて、引き続きダブル・バインドについて書いておきましょう。Amazon で知らない間に目が飛び出るくらいプレミアがついていますが、個人的にも座右の書となっている学術論文集であるスティーブン・ギリガン博士の「The Legacy of Milton H. Erickson: Selected Papers of Stephen Gilligan[1]の中に以下のような記述があります、


 The ideas that paradoxical injunctions create altered states is rooted in the Bateson groups formulation of the double bind hypothesis(Bateson, Jackson, Haley, & Weakland ,1956; Haley ,1963)

 「パラドキシカルな導入(インジェクション)は変性意識をつくる」という考え方はベイトソン・グループが体系化したダブル・バインド仮説に基づいている。(ベイトソン、ジャクソン、ヘイリー、ウィークランド 1956;ヘイリー , 1963)


 この場合、インジェクションはTOC思考プロセスでいうインジェクションのように、ある状況に対する、「言動による働きかけ」と考えるとしっくりくるわけですが、ある状況においてこのような「言動による働きかけ」がパラドクスを形成すると、主体は変性意識状態に入るという仮説が説明されているわけです。

それで、ざっくり言うと、変性意識は通常の意識の延長にあるという考え方と、まったく別の意識状態であると考える学派の2つがあったと記憶していますが、 Wikipedia の変性意識の説明を読むと以下のように書かれています。[2]


An altered state of consciousness (ASC),also called altered state of mind, is any condition which is significantly different from a normal waking beta wave state. The expression was used as early as 1966 by Arnold M. Ludwig and brought into common usage from 1969 by Charles Tart. It describes induced changes in one's mental state, almost always temporary. A synonymous phrase is "altered state of awareness".Altered states of consciousness can be associated with artistic creativity or different focus levels. They also can be shared interpersonally and studied as a subject of sociological research.

 変性意識(心の変性状態とも呼ばれる)は、通常のβ波の脳波の状態は著しく異なる状態である。この表現は、早いところでは1966年にアーノルド・M・ルードヴィッヒにより用いられ、1969年にチャールズ・タルトによってより慣用的に用いられるようになった。変性意識は、ほとんどの場合、一次的にメンタルの状態に変容を引き起こす。同義の表現は「自覚の変性状態」であり、変性意識は、芸術的な創造性もしくは異なるフォーカス・レベルに関連している。変性意識は、個々人の間で共有することができる、また社会学的研究の課題として研究される。


 このあたりからすると、ある意味、禅問答を一つ投げるだけで一瞬にして変性意識状態に入る、あるいはその状態で既存の枠組みの外に出ることもあり得るわけで、このあたりが短期療法と禅問答の共通点なのでしょう。[3]
(つづく)

文献
[3] http://www.filoeduc.org/childphilo/n4/NadiaKennedy.pdf

記事の内容の正誤について、執筆者は一切保証いたしません。また、本書の内容、エクソサイズなどを実行した結果被った被害などについて著者は一切責任を負わないこととします。本ニュースレターの内容は、以下クリエイティブ・コモンズ・ライセンスに従うものとします。但し、引用元の著作権は引用元に所属します。ご意見、ご感想は次へ tritune'`@''gmail.com






2013年5月30日木曜日

ダブル・バインドにはご用心(その7)

                              

心理療法家のミルトン・エリクソンが用いた治癒的ダブル・バインドの言語パターンを聴くと、

あえて目先にある瑣末な二項対立に注意を向けさせておきながら、同時に、意識していない、もっと大きなパターンである意図や目的に暗に気づくように働きかけているように思えてくるわけですねぇ~。

ここで、目先としての認識が一次レベルの認識、もっと大きなパターンの認識がメタ・レベルの認識ということになるのだと思います。

http://ori-japan.blogspot.jp/2011/11/blog-post_10.html

それで、このパターンはアメリカンなコーチの「それが得られることで更に何が得られますか?」のような質問と理屈は同じなのですが、エリクソンはチカラワザで意図や目的を引き出していなのが格好の良いところなのだと思います。(笑)

もちろん、仕事の場面で、あえて瑣末な二項対立に注意を向けてもらうようなことをやって、もっと大きな意図や目的に気づいてもらうといったことを個人的にはよくやっていますけれどねぇ。「そもそも、ここでの目的ってなんでしたっけ?」って言うと上から目線になって都合が悪い場合もありますからねぇ。(笑)  
独り言


結論のないダブル・バインド

ネットを検索する「ダブル・バインド」が悪の道具みたいに言われているところがあります。

たしかに、「ダブル・バインド」というのは使い方を間違えると、相手の認識を必要以上に混乱させたり、誤った解決策を導いたり、好ましく無い方向で用いることもできるわけです。しかし、反対に、相手の認識を既存の枠組みから出して、新しい次元での解決策を見つけるということを支援するといった好ましい方向で用いることもできるわけです。

もちろん、「ダブル・バインド」はパラドクス介入になることが多いため、例えば、混乱したからといって解決策から遠ざかっているわけではない、(一度混乱したほうが良い解決策が出たり、良い変化につながることがある)あるいは、好ましくない方向に向かっているからといってゴールに到達できないわけではない(一度、ゴールとは真逆の方向に走ってみたほうが、ゴールが明確になったり、望むゴールに早く近づけることがある)というようなことがあるために、「ダブル・バインド」の技法や効果を局所的な視点で簡単に評価できないところが難しいところでもあると思います。

それで、心理療法家のミルトン・エリクソンが活用したダブル・バインドの言語パターンの中から結論のないダブル・バインド(Non-Sequitur Bindsについて少し書いておきましょう。

このダブル・バインドについては以下で少し書いていますが、

以下のパターンを少しみてみましょう[1]


Begin Orientation: Lets begin now or use the time constructively.

開始のオリエンテーション:「さあ、はじめしょう・・・そうでなければ、時間を建設的に使いましょう。」


通常のロジカル・シンキングについて考えてみましょう。例えば、Aにするか?それともBにするか?のような Either or の選択を行う場合は、クライテリアを合わせるのが普通です。上の例であれば、「今始めますか?」or「今は止めておきますか?」 あるいは、「今始めますか?」or「後で始めますか?」といった具合です。


しかし、上は、Either orのパターンを踏襲しているような格好になっていますが、冷静に考えると比較できないものについての選択を問うような格好になっています。つまり、「今始める」と「時間を建設的に使う」というのはそもそも同じクライテリアではないという具合です。そのため、ここでは、このような構図になっているダブル・バインドのことを結論のないダブル・バインド(Non-Sequitur Binds)と呼んでいるわけです。おそらく英語のネイティブ・スピーカーが聴くと少し妙な感じに聴こえるでしょう。

 余談ですが、日本でも「仕事が大事なの?」それとも「わたしが大事なの?」というようなパターンがあるわけですが、ある意味同じクライテリアで比較できないものを比較して選択を迫っている点では、結論のないダブル・バインドだというわけです。もちろん、こういった課題は単純に理屈では解決できないことも多いため、背景にあるメタ・メッセージを慎重に読んでいく必要があるわけです。

それで、上のパターンを更に見ると、Lets がどこにかかるかが曖昧(Ambiguity)になっており、use the time ~以下が埋め込みコマンド(embedded command )になっているところでもあると思います。

Developing trance: You may be able to either go into trance as we speak or you will alter your consciousness and experience.

トランスを発展させる:「あなたは、私たちがおしゃべりしている時トランスに入ることができるかもしれません・・・・そうでなければ、あなたは(自分で)意識と経験を変容させるでしょう。」


Arm levitation: Your unconscious will either raise the hand off your lap or your conscious mind will notice it half way to your face.

腕浮揚:「あなたの無意識は、膝から腕を話して上げるでしょう・・・そうでなければ、あなたの意識はあなたの腕が顔を目指して途中まで上がっていることに気づくでしょう。」


Age regression: The memory may be from the age of five or about the time you entered grammar school.

年齡退行:「記憶は五歳の時からのものかもしれません、・・・そうでなければ、あなたが高等小学校に入った時のものかもしれません。」


Learn from experience: You can either learn from this experience or use the learning in a directed fashion for our own benefit.

経験から学ぶ:「あなたは、この経験から学ぶことができます・・・そうでなければ、私たちの利益を得るために方向をあわせてこの学びを使うことができます。」


Use learning after trance: Will you use these learnings after trance or change your maladaptive behavior?

トランスの後、学びを用いる:「トランスの後あなたはこの学びを使いますか?・・・それとも適応していない振舞いを変えますか?」


余談ですが、ロジカル・シンキングのようにMECEに整理されていないような格好で本当は対比できない選択肢に耳を傾けたり、あるいは、あえてそういった整理されない形式の情報を相手にぶつけてみるというのは案外重要なことなのだと思ってきます。

(つづく)

文献


記事の内容の正誤について、執筆者は一切保証いたしません。また、本書の内容、エクソサイズなどを実行した結果被った被害などについて著者は一切責任を負わないこととします。本ニュースレターの内容は、以下クリエイティブ・コモンズ・ライセンスに従うものとします。但し、引用元の著作権は引用元に所属します。ご意見、ご感想は次へ tritune'`@''gmail.com





2013年5月29日水曜日

ダブル・バインドにはご用心(その6)


 ミルトン・エリクソンのリバース・セット・ダブル・バインドって、

親の「だいたいお前なんか頭が悪いんだから勉強なんてする必要なんてないんだよ」に対して、子供が、親に反抗したいだけのために一生懸命勉強して、ものすごく勉強ができる子供に育ってしまうみたいなある意味パラドキシカルな面白さがあるなぁ~(笑)と思います。

もちろん、親は、子供が反抗しながらも勉強したくなるという状況設定は行う必要があるわけで、これが反社会的な行為に向くと単に暴力を振るう不良になっちゃいますからねぇ~
  
独り言


リバース・セット・ダブル・バインド

今日は、リバース・セット・ダブル・バインドについて少し書いておきましょう。

このダブル・バインドについては、幼年時代のミルトン・エリクソンが牛舎に入るのを嫌がる牛のしっぽを反対側に引っ張って牛を牛舎に入れたというエピソードで語れることが多いわけですが、ある意味、短期療法におけるパラドキシカル・アプローチの原型になっているパターンでもあるわけです。


それで、エリクソンはダブル・バインドの言語パターンをその状況設定と併せてほとんど手なりで使っていたところがあるわけですが、この暗黙知にサイバネティスクやラッセルーホワイトヘッドの論理階型理論をあてて、こころの理屈をつくり出し、そのものさしを当てて形式知としてこのダブル・バインドのパターンを取り出したのがベイトソン・グループの功績と言っても良いでしょう。もっとも、ベイトソンを始め、研究が進めば進むほど、なぜか、エリクソンのパラドキシカル・アプローチと禅との共通点が発見されるようになったのも不思議なところのように思えてきます。

それで、Complete Works に以下のようなエピソードがあるのですが、少し引用しておきましょう。[1]
もちろん、このあたりの面白さは、英語を真面目に読んでも見えてこないところがあり、少し斜めにかまえてそのユーモラスなアプローチを楽しむような余裕が必要ではないか?と個人的には考えています。


ある日、わたしの子供のひとりがディナー・テーブルの上のほうれん草を見てこう言った「ぼくは、ほうれん草を使った料理なんて食べるつもりはないからね」。

わたしは、息子の言うことはもっともだと思って「もちろん食べなくてもいいよ、おまえはまだ十分な年齡でもないし、体も十分に大きくないし、まだ十分強くもないだろう」と言った。

実はこれが、息子の反抗を弱め、ほうれん草を欲しがるようになるダブル・バインドである。

妻は、息子がほうれん草を食べるには「十分な年齡で、体も十分に大きいし、十分強い」というようなわたしとは反対の立場を取っていてしばしば口げんかの原因にもなった。

息子はと言えば、もちろん、妻と同じ立場だった。

そこでわたしは最終的にティースプーンの半分のほうれん草を食べさせるという妙な妥協案を示すことになった。(※態度は真剣だけれどもある意味小バカにしているような提案-笑)

「ティー・スプーン半分のほうれん草を食べるというのはどうだろう?」

妻と息子はこの提案には不満な様子だった。「・・・・・・・・・・」

そこで、息子にお皿に半分のほうれん草を食べさせることにした。

「では、お皿に半分盛られたほうれん草を食べてみるというのはどうだろう?」

息子は出来る限り速くほうれん草を食べ、大きな声でオカワリと言うことが出来た。

わたしは、「お前まだ食べるの?」といった態度をとったのだけれど、妻は息子に満足な様子だった。

わたしはしぶしぶ「はいはい、お前はわたしがおもっていたより十分強いです・・・・」と息子を認めることになった。それが今ででは息子が自分で見ることのできる新しい視点を与えることになった。

わたしは息子の自己イメージを変えるように直接要求したわけではないが、間接的に自己イメージの変化が起こっている。

つまり、1)息子に、わたしと妻との口論の中で同じ行動に対して2つの見方があるという視点が提供された、2)さらに、わたしが息子の成長に対する承認を出し惜しみすることで、行動の変更が行われる。間接的アプローチの要点は、主体が自分で適切な選択ができるような環境を整えることを容認することである。


ちなみにエリクソンのダブル・バインドの構図をベイトソンがラッセルーホワイトヘッドの論理階型理論を援用して構築した「Theory of Mind 」で説明できると東大院の入試くらいのレベルになるらしぃです(笑)。以下の「母親とほうれん草とアイスクリーム」のお話ですねぇ~。


(つづく)

文献
[1]http://www.amazon.co.jp/dp/0971619034/

記事の内容の正誤について、執筆者は一切保証いたしません。また、本書の内容、エクソサイズなどを実行した結果被った被害などについて著者は一切責任を負わないこととします。本ニュースレターの内容は、以下クリエイティブ・コモンズ・ライセンスに従うものとします。但し、引用元の著作権は引用元に所属します。ご意見、ご感想は次へ tritune'`@''gmail.com






2013年5月28日火曜日

ダブル・バインドにはご用心(その5)

                               

 色即是空、空即是色を英語で説明すると多分こんな感じになると思いますよ(笑)。
  
独り言


意識-無意識の二重分離ダブル・バインド

意識-無意識の二重分離ダブル・バインド(Conscious Unconscious Double Dissociation Double Bind について書いておきましょう。文献によっては Double Dissociation Double Bind と書かれていたりしますが、ここではエリクソン国際会議のスティーブ・ランクトン氏の配布資料[1]にあわせて意識-無意識を付けた形式にしています。

一見、意識とか無意識とかを語り始めるとかなり怪しいような感じもしなでもないですが、ここで、「意識=観察している自分、何かをコトバで説明している自分」、「無意識=身体感覚をともなって何かをやっている自分、すでに何かが出来ている自分」と考えると何も怪しいことはないように思ってきます。

もっというと、「意識=形式知」、「無意識=暗黙知」と考えるとミルトン・エリクソンは何も怪しいことをやっているわけではありません。もちろん余談ですが、形式知、暗黙知をポランニーの定義で考えるのか?野中郁次郎先生の定義で考えるのかの議論はあるのかもしれませんが・・・(笑)。

 それで、このダブル・バインドは、「意識」、「無意識」というある意味仮想の視座を設定して、コトバを補助線として、あえて、「意識」、「無意識」の間に線を引いてそれぞれを意識してみましょうというのがこのパターンの特徴ということになってきます。


 以下、目的別に具体的に見て行きましょう。

Beginning orientation: Your conscious mind may have begun with the aid of your unconscious or perhaps your unconscious is ready to begin with any aid you can offer consciously.

開始のオリエンテーション:「あなたの意識は、あなたの無意識の支援に気づいていたのかもしれません・・・・・あるいは、あなたの無意識は、あなたが意識的に申し出ることのできるどんな支援をも始める準備が出来ています・・・・・」


Developing trance: Your conscious mind may focus on some one spot while your unconscious initiates trance or your unconscious may select the actual location on which to focus your attention while your conscious mind helps you go into trance.

トランス状態を発展させる:「あなたの意識は、あなたの無意識がトランスに入ろうとしている間いくつかのしみの一つに焦点を当てているかもしれません・・・・・あるいは、あなたの無意識はあなたの注意の焦点をどこに当てるのか実際の場所を探しているかもしれません、その間あなたの意識はあなたがトランスに入るのを助けます。」


Arm levitation: Your conscious mind can choose which arm to raise up while your unconscious makes alterations in sensation, but perhaps the unconscious mind selects which arm to raise and the conscious mind will notice the sensation.

腕浮揚:「あなたの意識は、あなたの無意識が感覚を別のものに変化させようとしている間どちらの腕を上げるのか選ぶことができます・・・・・しかし、おそらく、無意識はどちらの腕を上げるのかを選択してそして意識はその感覚の違いに気づくことができるでしょう。」


Age regression: Your unconscious may allow you to relive some aspect of your past while your conscious mind has a learning about it or maybe your unconscious mind will store a learning while you consciously remember  and relive the past experience.

年齡退行:「あなたの無意識は、あなたの意識がそれから何かを学んでいる間、過去のいくつかの局面からあなたがそれを再体験することを許します・・・・もしくはあなたの無意識は、あなたの意識がそれを思い出し、そして過去の経験を再体験する間に学びを蓄えることになるでしょう。」

Learn from experience: Your conscious mind can be interested in what you learn from the experience and your unconscious mind can take care of really learning from it, or perhaps your unconscious mind only allows you to develop interest as your conscious mind develops a learning.

経験から学ぶ:「あなたの意識はあなたが経験から何を学ぶのか興味を持つことができます、そしてあなたの無意識はそれから本当に学んだことについて世話ができるでしょう・・・・もしくは、おそらくあなたの無意識は、あなたの意識が学習を発展させている時にだけあなたが興味を持つことを許可します。」


Use learning after trance: And one might let the conscious mind select the site for using the learning while the unconscious is trusted to carry it out, or one may allow the conscious mind to carry out a learning and let the unconscious select the location, and time.

トランスの後、学びを用いる:「そして、あるひとはその学びを使う場所を意識に選択させるでしょう、その間、無意識はそれを遂行するために信用されています・・・・・あるいは、あるひとは学びを遂行するために意識に許可を与えるでしょう、そして無意識に時間と場所を選択させます。



(つづく)

文献
[1]http://www.ericksoncongress.com/IC10/HandoutCD/Presenter%20Handouts/Lankton/Lankton%20suggestion-binds%20handouts.pdf


記事の内容の正誤について、執筆者は一切保証いたしません。また、本書の内容、エクソサイズなどを実行した結果被った被害などについて著者は一切責任を負わないこととします。本ニュースレターの内容は、以下クリエイティブ・コモンズ・ライセンスに従うものとします。但し、引用元の著作権は引用元に所属します。ご意見、ご感想は次へ tritune'`@''gmail.com






2013年5月27日月曜日

ダブル・バインドにはご用心(その4)

                               

 心理療法家のミルトン・エリクソンの研究をする場合は、ベイトソンの「Theory of Mind」のような視点を持っていないと、「潜在意識ガァ~」と叫ぶだけで実際自分が何をやっているのか?メタ視点で観察できない催眠バカみたい人が出来上がることになるように思います。(笑)
  
独り言


意識-無意識のダブル・バインド

  心理療法家のミルトン・エリクソンはその言語パターンで「無意識」について言及しているところがありますが、ある意味このコトバは方便として使われているようなところがあり、エリクソンから「無意識」のメカニズムがどうだこうだと詳細に説明されるようなところはほとんどありません。

  従ってウィツェンフォファーのような同時代の研究者が、エリクソンは無意識についてこういった考え方を持っていたのだろう、と推定することに留まっているという具合です。[1]


Erickson believed that the unconscious mind was always listening, and that, whether or not the patient was in trance, suggestions could be made which would have a hypnotic influence, as long as those suggestions found some resonance at the unconscious level. The patient can be aware of this, or can be completely oblivious that something is happening. Erickson would see if the patient would respond to one or another kind of indirect suggestion, and allow the unconscious mind to actively participate in the therapeutic process. In this way, what seemed like a normal conversation might induce a hypnotic trance, or a therapeutic change in the subject. According to Weitzenhoffer, "[Erickson's] conception of the unconscious is definitely not the one held by Freud."

  無意識のマインドはいつでも声を聞いていて、患者がトランスに入っていてもいなくても、暗示が無意識のレベルで何らかの共鳴を起こす限りにおいて、催眠的な影響を及ぼす暗示が可能である、とエリクソンは信じていた。患者はこの共鳴に気づくことも出来れば、起こったことを完全に忘れることもできる。エリクソンは患者が一つの暗示、あるいは別の間接暗示に反応することが分かっており、クライアントの無意識の心を治癒のプロセスに積極的に参加させるようにはからった。このようにして、一見普通の会話で催眠的なトランス状態に誘った、もしくは主題について療法的な変化を起こした。ウィッツェンフォファーによれば「エリクソンは、フロイトが言った無意識とは明らかに違う無意識の概念を持っていた」とされている。


   それで、比較的有名な意識―無意識のダブル・バインドのパターンがあるわけですが、個人的にはクライアントの視座をあえて2つに割ってベイトソンの言う二重記述をしてもらっているパターンなのだろうなと考えています。余談ですが、これは別にコトバとしては意識―無意識ではなくても極端な話、「ケーキは別腹」のようにお腹―別腹のようにクライアントの視座を2つに割ることが重要のように思えてくるわけです。

  それで、エリクソニアン国際会議で配布された資料[2]の中に目的別に意識-無意識のダブル・バインドが紹介されているので少し書いておきましょう。(訳は適当)


Beginning orientation: The conscious mind may be curious about how your unconscious mind is beginning to work toward a solution.

開始のオリエンテーション:「意識は、あなたの無意識が解決に向けてどのように動き出したかについて興味を持っているのかもしれません。」



Developing Trance: Your conscious mind may think you desire or need one level of trance while your unconscious mind develops the proper depth of trance.

トランス状態を発展させる:「あなたの意識は、あなたの望むもしくは必要とするあるレベルのトランスについて考えているかもしれません、一方、あなたの無意識は適切なレベルのトランスを発展させます。



Arm levitation: Your conscious mind may not notice how your unconscious will raise your arm up to your face.

腕浮揚:「あなたの意識は、あなたの無意識が腕をあなたの顔の高さまでどのように浮揚させるのか気づいていないかもしれません。」


Age regression: Your conscious mind can recall some important early experience while your unconscious mind develops a reliving of it.

年齡退行:「あなたの意識は昔の重要ないくつかの経験を思い出すことができます、一方、あなたの無意識はそれを再体験することを発展させます。」



Learn from experience: An unconscious learning from the experience may be developed in the conscious mind as well.

経験からの学び:「経験からの無意識の学びは、意識の中でも同じように発展させられています。」



Use learning after trance: Your conscious mind might already have some ideas of where you will use this while your unconscious handles the job of doing it correctly.

トランスの後、学びを用いる:「あなたの意識はどのような場所で使われるのかが分かったいくつかのアイディアを持っているでしょう、一方、あなたの無意識はそのアイディアをどう正確に使うかという仕事を処理しています。」


  ここで、トランス状態がどうのこうのと考えると本質が見えなくなってしまうのですが、ここでのパターンとしては、無意識が(に)行なっているプロセスとしての行動に対して、メタの視点を立てて意識にメタ認知してもらっているような格好になっていることが非常に重要なことのように思ってきます。このパターンは優秀なコーチが使っているパターンにも共通するところがあるようにも思ってきます。もちろん、これが分かっていないとコーチとしては話にならないというレベルなのかもしれませんけれども。(笑)

(つづく)

文献
[2]http://www.ericksoncongress.com/IC10/HandoutCD/Presenter%20Handouts/Lankton/Lankton%20suggestion-binds%20handouts.pdf

記事の内容の正誤について、執筆者は一切保証いたしません。また、本書の内容、エクソサイズなどを実行した結果被った被害などについて著者は一切責任を負わないこととします。本ニュースレターの内容は、以下クリエイティブ・コモンズ・ライセンスに従うものとします。但し、引用元の著作権は引用元に所属します。ご意見、ご感想は次へ tritune'`@''gmail.com



2013年5月26日日曜日

ダブル・バインドにはご用心(その3)

                              

 コーチングや心理療法のコンテクストで、トランスとか催眠とか言うから怪しくなるわけです。で、トランス(のひとつの)状態を、良い意味で集中していたり、スポーツなどでパフォーマンスが発揮されていたりする「フロー状態」と表現すると、わかりやすいし怪しくないのですよねぇ。(笑)

ちなみに、この「フロー状態」にどのように入れば良いのか?

この一つの方法が Simple ダブル・バインドを使うということなのですよねぇ。もちろん、普通にお話ししながらやるのですけれどねぇ。
  
独り言


自由な選択は本当に自由なのか?

こういったタイトルをつけるとベンジャミン・リベットの著作「マインド・タイム」に書かれていたような自由意志[1]の話を思い出します。つまり、意識が働く前に既に無意識が既に動いていて、その後、その結果が意識されるという例のアレですが、ここではこのレベルまでは踏み込みません。

逆に言うと、ここでの自由な選択とは、一次レベルで行われる選択や行動が、二次レベル(あるいは、メタ・レベル)の枠組に対して齟齬をきたしていないという意味で自由な選択ということを前提としています。例えば、メタ・レベルでは「どこかに旅行に行く」ということは決めているけれども、一次レベルで具体的に「ハワイか?」「グアムか?」あるいは「他の所」なのか?それはまだ決めていないといった構図で語られるような場合です。それで、具体的にはこのメタ・レベルは保持しつつ、一次レベルでいくつかの選択肢を示すような技法がこれにあたります。逆にいうと営業のような場面で、お客がメタ・レベルで「今は何も買わない」がある場合は、「暖色系がいいですか?」「寒色系がいいですか?」というような質問は機能しないというわけです。それで、このあたりの詳細は後述します。

で、心理療法家のミルトン・エリクソンの活用したダブル・バインドの詳細については、The American Journal Clinical Hypnosis に掲載された Varieties of Double Bind (Erickson & Rossi ,1975)そのものか、それを引用した論文を読んでいただくとして、今日は、Simple Bind あるいは、「比較された選択肢の中からの自由な選択」について少し書いておきましょう。

ダブル・バインドを考えるには、TOC(Theory of Constraints )の対立解消図のようなものを思考の補助線として、物理レベルで起こる決断を一次レベル、思考といった論理のレベルにある意図や認識された必要条件を意図のように考えるとわかりやすいと思います。




さて、Complete Works を少し読んでみましょう。[1]


In hypnosis we may consider that it is the trance situation itself which is the metalevel determining that some choice will be accepted among the comparable alternatives presented on the primary level by the hypnotherapist. In the following examples free choice is offered on the primary level of the when or how of trance, but it is determined on a metalevel that trance will be experienced

催眠において、ヒプノセラピストによって一次レベルとして示される比較された代案の中から、(クライントが)いくつかの選択肢を受け入れることそれ自体がトランスの状況そのものであるということを検討したい。以下の例では、「何時?」「どのように?」のような一次レベルで自由な選択肢が提供されている、しかし、この選択はメタ・レベルで決定されており、トランス状態を経験することにつながる。


で、この話の後には、

·        「今直ぐにトランスに入りたいですか?それとも後でトランスに入りたいですか?」
·        「深いトランスに入りたいですか?それとも浅いトランスに入りたいですか?それとも中位のトランスに入りたいですか?」

というような一次レベルに注意を向けるパターンが示されていることになります。もちろん、ここで重要なのは、クライアントは自分で納得してエリクソンの所にやってくるわけであり、メタ・レベルでは、最初からトランスに入るのに抵抗がない、あるいは少ないという状態でやってくることになるわけです。ですから、このパターンを営業に応用しているような人がいたりしますが、顧客のメタ・レベルの中で「今は買う気がない」というような場合、いくら一次レベルで「赤にしますか?青にしますか?」と聞いてもまったく逆効果ということになってきます。(笑)

 さて、心理療法ではないコーチングの場面を考えてみましょう。一例を示しましょう。この前提としては、「どこか旅行には行く」という既に行われているメタ・レベルの決断があり、その下位にある一次レベルで多少抽象度を変えながら、Simple Bind の質問を行うような場合を想定してみましょう。

·        「海にしますか?」「山にしますか?」それとも「都会ですか?」
·        答え:「海にしたいです」
·        「温かいとこですか?」「寒いところですか?」「それ以外ですか?」
·        答え:「温かいところが良いです」
·        「ハワイ?」「グアム?」「他に?」
·        答え:「ハワイが良いですねぇ?」
·        「オアフ島」「ハワイ島」「それ以外?」
·        答え:「オアフ島」
·        「何をしたいです」「サーフィン?」「ゴルフ?」「観光?」「それ以外?」
·        ・・・・・・・

というようなこの場合は質問の抽象度を具体的にしながら Simple Bind で質問をしているような場合です。

逆の言い方をすると、このパターンは「フロー状態」を引き出すのが主であるため、メタ・レベルにある枠組をひっくり返す場合は別のパターンが必要だということになると思います。

(つづく)

文献
[2]http://www.amazon.co.jp/dp/0971619034/



記事の内容の正誤について、執筆者は一切保証いたしません。また、本書の内容、エクソサイズなどを実行した結果被った被害などについて著者は一切責任を負わないこととします。本ニュースレターの内容は、以下クリエイティブ・コモンズ・ライセンスに従うものとします。但し、引用元の著作権は引用元に所属します。ご意見、ご感想は次へ tritune'`@''gmail.com