2013年8月31日土曜日

プロジェクト・マネジメントとサイバネティクス



プロジェクト・マネジメントについて、

物理的な世界で実現される製品やサービスについて品質管理をするような場合はやはりサイバネティックス的にネガティブ・フィードバックでミクロな視点からコントロールを入れれば済むように思います。

しかし、メンタル・モデルに起因する認識や振る舞いについて扱おうとするとポジティブ・フィードバックをベースにもう少しマクロな視点から自主性を尊重しつつも目的合理性を持った全体最適を志向したマネジメントをしなければいけないように思ってくるわけですねぇ。

 まぁ、前者がいわゆる「管理」で後者が「経営」というイメージなのでしょうけれどねぇ・・・・・・

 独り言


経営と管理、マネジメントとコントロール

 知り合いのMさんがマネジメントとコントロールの違いについて語っている日経BPのサイトのこの記事を読んでいてなるほど思ったのですが、[1]これに関して英語の「マネジメント(Management)」を日本語の「管理」と訳すと個人的にはかなりの違和感があります。

 もう少し具体的な話をすると、プロジェクト・マネジメントをサイバネティクスの枠組みで考えた「CONTROL OF PROJECTS - A CYBERNETIC CONTROL[2]というタイトルのエッセーを読むとこのなんとなく確信が持てることになります。

結論から言うと、「マネジメント」は日本語の「経営」に近い概念であり、「コントロール(Control)」が「管理」ということなのだろうなと思うわけです。
 
 このエッセーでは、プロジェクトの一番小さいプロセスの単位である、「計画―モニタリングーコントロール」のサイクルに対して、プロジェクトのQCDの3つを指標としてコントロールを入れていくにはどのようにしたら良いのか?について少しミクロの視点から書かれています。(訳は適当)


A cybernetic control system that acts to reduce deviations from standard is called a negative feedback loop. If the system output moves away from the standard in one direction, the control mechanism acts to move it in the opposite direction.

サイバネティックなコントロール・システムは、基準値からの偏差を減らすために動作する、これをネガティブ・フィードバック・ループと呼ぶ。もし、システムのアウトプットがある方向においての基準値から遠ざかるようであれば、コントロールの機構が反対の方向に動作する。


これに関して以下のリンクで心理療法のソリューション・フォーカスト・アプローチの視点から少し書いたわけですが、この枠組の背景にあるのはサイバネティックスなので、根本的な理屈は同じというわけです。


それで、コントロールというのは、行動から生じる結果を事実ベースで定量的に把握し、この情報をもとに元々の標準的な値からできるだけ偏らないように、現状の枠組みの下で、サイバネティックスの用語でいうとネガティブ・フィードバックを使って行動の調整を行い標準に近づけていくことがコントロールというわけです。

 もちろん、こういうやり方は製品やサービスの製造という段階では有効に機能すると思われますが、プロジェクト・マネジメントにおける想定外(想定された枠組みの外にある)の突発的な事態に対処するような場合については上手く行かないようにも思ってくるわけです。

 それで、「Cybernetic Approach to Project Management: Where Sense Making Intelligence is needed[3]を読んでいたわけですがこれが中々面白いことが書かれています。(訳は適当)


The original cybernetics of Norbert Wiener concerns self-regulation and equilibrium stabilisation around specified goal mainly through negative
feedback.

 This is an attractive preposition for project management. Yet complexity
and chaos of projects are better reflected by non-linear systems, which in turn
are better manageable in adaptive and self-organised distributed systems with
positive feedback.
Paper presents the mental model of project management based on cybernetic system approach with several asynchronously running decentralised subsystems
based on specific component-goal oriented processes.

ノーバート・ウィナーのオリジナルのサイバネティックスは特定のゴールを取り巻く自己規定と平衡的な安定を関心事とし、このほとんどはネガティブ・フィードバックを通して行われる。これはプロジェクト・マネジメントにおいて魅力的な前提である。

しかし、プロエジェクトの複雑系とカオス的な特徴は非線形システムとしてより特徴付けられる、これは逆説的にポジティブ・フィードバックによる自己組織化された分散システムとしてよりよくマネジメントされる。

この論文はプロジェクト・マネジメントにおけるメンタル・モデルについて説明している、このモデルは特定のコンポーネント(ゴール志向プロセス)に基づく分散化されたサブシステムが非同期で動作しているサイバネティックス・システムを基本にしている。



もちろん、経営ということになると、経営者はビジョンを語り、人の認識に訴えかける必要があると思ってくるわけですが、ここでネガティブ・フィードバックのモードで「決められたルールを守ろう」と言っているだけでは組織は動かないし、顧客も感動しないし、従業員のやる気も自主性も出てこないし・・・・・・ということになってくるのでしょう。

 もちろん、このネガティブ・フィードバックとポジティブ・フィードバックを良い按配で使うということが今後のテーマとなってくるように思ってくるわけですが・・・・・ 

(つづく)

文献
[3]http://www.lent.ch/Downloads/Cybernetic%20Approach%20to%20Project%20Management.pdf

記事の内容の正誤について、執筆者は一切保証いたしません。また、本書の内容、エクソサイズなどを実行した結果被った被害などについて著者は一切責任を負わないこととします。本ニュースレターの内容は、以下クリエイティブ・コモンズ・ライセンスに従うものとします。但し、引用元の著作権は引用元に所属します。ご意見、ご感想は次へ tritune'`@''gmail.com


2013年8月30日金曜日

コミュニケーションの核となる4つの要素



英語って別に英語を勉強するわけではなくて、何らかのコンテンツが存在していてそれが偶々英語だったっていう感じで勉強しないとすぐ飽きちゃうんだよねぇ。

英語で経済を勉強するもよし、英語で哲学、科学を勉強するもよし、英語で心理療法を勉強するもよし、英語でコミュニケーションそのものを勉強するもよし、という感じですすめるのが良いのでしょう・・・・・
 
 独り言


コミュニケーションの核となる4つの要素

 米国内務省のサイトにリンクしてあった「Getting to the Core of Communication[1]のワークブックというのを読んでいたわけですが、これが中々よくできているのでご紹介しておきましょう。

 サブタイトルとして、「教えるのではなくて、相手が何かを発見することを手助けできる」というようにある意味、コーチングやファシリテーションの要点みたいなことが書かれているわけですが、コミュニケーションを通して相手に気づきを与えるにはどのようにしたら良いのか?という答えがここにあることになります。

 で、相手とのコミュニケーションにおいて重要な4つの要素がRの頭文字で

·        Recognize (認識する)
·        Respond (反応する)
·        Resolve (解決する)
·        Reflect (内省する)

というようなプロセスとそのエクソサイズからなるわけです、この中には、リフレーミングやコンフリクトの解消など、一見、平易なテキストに思えても、結構、深い内容が散りばめられていたりするので、個人的には非常にお勧めのように思います。

 そんなわけで、日本語でも英語でも良いので実際のコミュニケーションの練習としてはこんなことをやると良いのだろうなぁ~と考えていたところだったわけです。
 
(つづく)

文献
[1]http://www.usgs.gov/humancapital/cm/documents/GettingtoCoreofCommunicationWorkbook3.pdf

記事の内容の正誤について、執筆者は一切保証いたしません。また、本書の内容、エクソサイズなどを実行した結果被った被害などについて著者は一切責任を負わないこととします。本ニュースレターの内容は、以下クリエイティブ・コモンズ・ライセンスに従うものとします。但し、引用元の著作権は引用元に所属します。ご意見、ご感想は次へ tritune'`@''gmail.com




2013年8月29日木曜日

サイバネティクスの系譜:ウィリアム・ロス・アシュビー



 最近、「システム思考って何?」って考えるわけですが、これを非常に簡単に行ったら「目先の現象にいちいち脊髄反射しないで、もっと大きな枠組から本質を見抜き、短期的には損をしても最後は得を取るという思考」ってことになるのでしょう。(笑)

その意味システム思考の原型でもあるサイバネティクスもそういう感じなのでしょうねぇ・・・・・・・でも、心理療法からインターネットの制御まで同じ枠組みで見ることができるって凄い構想だなぁ・・・
 
 独り言


ウィリアム・ロス・アシュビーのサイト

 グレゴリー・ベイトソンの末娘ノラ・ベイトソンの映画 An Ecology of Mind」の中で生前のベイトソンがこうしゃべり始める場面があります。


The major problems in the world are the result of the difference between how nature works and the way people think.

世の中の主たる問題は、自然の摂理と人の思考の差異によって生じる結果である。

 
 このコトバの通り、世の中の多くの問題は、物理的な世界での現象と、人間の内的世界の認識の齟齬から発生していることが示唆されています。ちなみに、ベイトソンはこの齟齬の解決のために非常にエコロジカルな方法、日本で言ったら「山川草木悉皆成仏」で表現できる仏教的な認識論を目指したものと思われるわけですが・・・・・

 それで、こういった問題に取り組むために物理的な現象と人の認知の相互作用を明らかにし、様々な問題の解決を目指す目的で創設された学問のひとつがサイバネティクスというわけです。

米国サイバネティックス協会 (The American Society of Cybernetics)が提供しているサイバネティクスの歴史年表を参照すると、この学問の発展の様子を伺い知ることができます。[1]
 
 1946年から1953年の間にわたって開催された有名なメーシー会議に先立って、1942年に開催された会議では心理療法家のミルトン・エリクソンと英国の建築家ハワード・リディルの両者が講演者として招かれたことが書かれており、特定の分野にとらわれずに学際的な研究を志向していたことを伺い知ることができるわけです。

 もちろん、現在でもサイバネティクスは、列車の運行システムや航空管制システムのような制御系のシステム、ミサイルやロケットなどの制御システムから始まって、インターネットのプロトコルの制御と防御、はたまた家族療法や短期療法のような心理療法まで応用されている底の知れない何かに発展しているところがあるわけです。

 それで、サイバネティクスの影響を与えているシステム思考家[2]という頁があって個人的には第二次サイバネティックスに多大な影響を与えている丸山孫朗博士がのっていないところが少し不満ではあるのですが、ノーバート・ウィナーからフランシスコ・ヴァレラ、ポール・ウォツラィックあたりまでをカバーしていて、これはこれでよくまとまっているように思ってきます。

 この中のトップにリストされているのが、英国人のサイバネティクス研究者であるウィリアム・ロス・アシュビーということになっています。アシュビーといえば、「最小多様度の法則」や「自己組織化の原理」というところでサイバネティクスに多大な貢献をしているように思ってきますが、ネットとは便利なものでアシュビーの公式サイトが立ち上がっていて、代表作の「Design for a Brain」などが読めるようになっているので早速パラパラ読んでいたところだったわけです。



(つづく)

文献
[3]http://www.rossashby.info/index.html

記事の内容の正誤について、執筆者は一切保証いたしません。また、本書の内容、エクソサイズなどを実行した結果被った被害などについて著者は一切責任を負わないこととします。本ニュースレターの内容は、以下クリエイティブ・コモンズ・ライセンスに従うものとします。但し、引用元の著作権は引用元に所属します。ご意見、ご感想は次へ tritune'`@''gmail.com




2013年8月28日水曜日

課題のフレーミングとリフレーミング



  カンサス大のリンクにあった(ご近所付き合いやコミュニケーションのための)リフレーミングの教材がとても分かりやすいですねぇ。

 ちなみに、かなぁーり昔の学生の頃ここに遊びにいった記憶があって、ローレンスって地名の少し小高い丘の上のキャンパスがあって、黄色いくちばしのゆるキャラの鳥、たしかジェイホークって言うのがマスコットでバスケが信じられいくらい強かったような記憶があったなぁ・・・・懐かしい(笑)。

 独り言


課題をフレーミングしてリフレーミングする方法

カンサス大の運営する、ご近所付き合いやコミュニケーションのための教材があって、この中に「Reframing the Issue[1]、つまり課題や問題をリフレーミングするという方法があったので少々ご紹介しておきましょう。

要は、日常生活を営む上で相手がどんな枠組みで物事を捉えているのか?その認識を共有して、さらに場合によっては問題解決を支援するような形式で家族療法家や短期療法家が使うようなリフレーミングを行うというのがここでの要点です。

もちろん、普通は「どうしましたか?」「何が問題ですか?」のように、最初に問題や課題をフレーミングするところから始める必要があるということになってくるわけです。

そして、相手がその問題や課題をどのような枠組みで捉えているのか?を聴き、それを共有して、そして枠組みをすこし揺らすような質問をする、あるいはリフレーミングするというのがここでの内容です。

もちろん、このあたりのことを単なる技法として捉えると「ああ言えば、こう言う」ということになりやすいので、あくまでも解決志向で使うということも重要なことなのでしょう・・・・ 

(つづく)

文献
[1] http://ctb.ku.edu/en/tablecontents/sub_section_main_1237.aspx

記事の内容の正誤について、執筆者は一切保証いたしません。また、本書の内容、エクソサイズなどを実行した結果被った被害などについて著者は一切責任を負わないこととします。本ニュースレターの内容は、以下クリエイティブ・コモンズ・ライセンスに従うものとします。但し、引用元の著作権は引用元に所属します。ご意見、ご感想は次へ tritune'`@''gmail.com




2013年8月27日火曜日

エグゼクティブ・コーチング・ハンドブック



 エグゼクティブ・コーチングの特徴のひとつとして、コーチングの対象が、組織のリーダーとしてのクライアント、そしてその組織の課題の両方になっているわけですが、これが中々意味深なのですよねぇ。

 これは、リーダーとしてのクライアントと組織(あるいは利害関係者)の間にある関係を普通はリーダーシップと言うわけでしょうし、色々なスタイルはあるにせよリーダーは組織に対して何らかのリーダーシップは発揮しないといけないということになってきます。つまり、リーダーシップの開発を支援するというのもエグゼクティブ・コーチングの重要な項目のひとつということになるわけです。

組織について考えると、物事を達成するための仕組みでもあるのでしょうし、反対に仕組みが上手く機能しないと頭痛の種ともなるわけです。 つまり、エグゼクティブ・コーチングでは、クライアントと一緒に組織に向かい合い、クライアント自身のゴールと組織のゴールの整合性を取るなり、組織に対してリーダーシップが発揮できるようにクライアントと組織の間にある関係性に働きかけるというところが一番肝心なことになってくるように思ってきます。

実際にこんな感じのコーチングだと方法論に加えて、実際に組織を運営したことがあるとか、会社を経営しているとか、プロジェクト・マネージャーの経験が長いといった経験がないとエグゼクティブ・コーチングというのは難しい仕事なのかもしれませんけれど・・・・このあたりを考えるとコンサルタントと何が違うのだろうか?とまた別の問題も持ち上がってくるということになるわけです。(笑)
  
独り言


エグゼクティブ・コーチングの理論的背景
 
 はじめに、「コーチングを体系化するのはなぜ難しいのか?」と考えると色々答えが思い浮かぶわけですが、その答えの一つは、コーチングの扱う分野が非常に多岐に渡るということがあげられるでしょう。

例えば、コーチングを学問的に説明するには、

·        コトバ:言語学
·        知覚:現象学、知覚心理学
·        認知:認識論、認知科学、認知心理学
·        行動:行動主義心理学
·        外的出来事:物理学、システム論、◯◯工学、プロジェクト・マネジメントなど

な分野が学際的に相互作用しているような部分を取り扱う必要があるという具合です。

もちろん、このあたりを透過的に説明しようと考えると、古くは一般意味論、第二次サイバネティックス、さらに最近だとエナクティブ学派の認知科学(具体的にはレイコフ&ジョンソンの「Philosophy in the Flesh」)あたりの知見を使って体系化しないと結局何かの寄せ集めになってしまうわけです。

で、コーチングの分野のダブリン宣言[1]という文章を読むと、さらに凄いことになっていて、コーチングの背景となる理論として、

·        学習
·        変化
·        発達
·        エゴ(自我)
·        コミュニケーション
·        システム思考
·        社会心理学
·        組織開発
·        プロセスワーク
·        アクションラーニング
·        文化
·        自分で方向性を決める学習
·        リーダーシップ
·        存在論
·        カオス理論
·        認知行動心理学
·        EQ
·        SQ

があるということがうたわれています。個人的には、基本的にはこれらを透過的に扱えるような、サイバネティックスなどのシステム論、あるいはエナクティブ学派の認知科学のようなフレームワークの中に統合するような方向で考えないと、格好の良い言い方で行くと『ジグソー・アプローチ』、有り体に言うと、全体的に整合性を持った体系を欠いた単なる『寄せ集め』ということになってしまうように思ってきます。

それで、「The Executive Coaching Handbook[2]というドキュメントを読んでいたわけですが、この文章で項目としては非常に体系的に網羅されているような感じになっていますが、上で述べたように、コトバ、知覚、認知、行動、出来事がどのように相互作用するのかという理論を基本にしているのか?と言われるとそこまでは行っていないので、中々難しいのだろうなぁと思って読んでいた今日この頃だったわけです。もちろんこのドキュメントは体系的に整理されていてかなり分かりやすいドキュメントですが・・・・・

で結局は、理論だけでは「絵に描いた餅」ということになるわけでしょうし、実践だけでは学びを深め自己再帰的な学習を促すには少々不足しているということになるのでしょうし、組織を扱うとどうしても部分と全体の齟齬を扱うことになるため、色々なバランスをどう取るのか?がチャレンジになるということなのでしょう。

(つづく)

文献
[2]http://www.instituteofcoaching.org/images/pdfs/ExecutiveCoachingHandbook.pdf

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2013年8月26日月曜日

ヒプノセラピーのオートポイエティックな説明



心理療法家のミルトン・エリクソンの技法をオートポイエティックなシステム論の視点を立てて観察するのも一つの切り口ではあるのでしょう・・・・・・

 独り言


臨床催眠のオートポイエティックな説明
 
 今日は、手短に。

アリゾナ州フェニックスで心理療法を行っていた心理療法家のミルトン・エリクソンが暗黙知として実施していた心理療法の技法を形式知化するために、カリフォルニア州のパロアルトのMRIで研究を続けていた人類学者のグレゴリー・ベイトソン等のグループが持ち込んだのが当時東海岸で研究されていたシステム理論、具体的には(第一次から第二次になりかけの)サイバネティックスだったという背景があります。

従ってここには膨大なクライアントとの対話という形式の暗黙知として存在しているエリクソンの技法と何らかのフレームワークや理論で形式知化されて取り出された技法としてのベイトソン達の短期療法の技法があるという構造がここに成り立つことになります。

これを前提として The American Journal of Clinical Hypnosis に掲載された「Systemic Hypnotherapy: Deconstructing Entrenched Ambivalent Meanings In Self-Organizing Systems[1]という論文を読んでいたのですが、これがまた結構格好の良い感じで仕上がっているように思います。

ここでは、基本的に知覚・認識を持つクライアントが一つのオートポイエティックなシステムであり、ここにセラピストというシステムがまるで一緒にダンスを踊るように構造的カップリングをして、クライアントの不都合な思い込みを変える形式で、新しい意味を構築するというような、ベイトソン達のアイディアの切り口を変えて発展させたような形式になっているわけです。

もっとも、これが何の役に立つのか?と即物的な質問をされると少々困るところもあるわけですが(笑)。少なくとも怪しさ、とか胡散臭さは低減できるのだろうなぁ・・・と個人的には考えているところだったわけです。

(つづく)

文献
[1]http://www.asch.net/portals/0/journallibrary/articles/ajch-50/50-1/fourie50-1.pdf

記事の内容の正誤について、執筆者は一切保証いたしません。また、本書の内容、エクソサイズなどを実行した結果被った被害などについて著者は一切責任を負わないこととします。本ニュースレターの内容は、以下クリエイティブ・コモンズ・ライセンスに従うものとします。但し、引用元の著作権は引用元に所属します。ご意見、ご感想は次へ tritune'`@''gmail.com




2013年8月25日日曜日

「猿丸幻視行」と多重埋め込みメタファー



「逆説の日本史」の愛読者だという関係もあって、ブックオフで偶々見つけた1980年の井沢元彦氏の江戸川乱歩賞受賞作品「猿丸幻視行」[1]を読んでみたわけです。本書は、江戸川乱歩賞受賞が証明しているようにかなり尖った作品で、読者にいままでにないインパクトを与えるとともに、この物語の構造がとても凝った構造で書かれていることが認識できたわけです。

 それで、この物語の構造を支えている具体的な技法について考えると、心理療法家のミルトン・エリクソンがクライアントの抵抗を抑え、認識や行動の変化を支援するために使った多重埋め込みメタファー (Multiple Embedded Metaphors)と呼ばれる技法と同じが使われています。[2]

具体的には、A主人公の生きている現在(主人公の視点)・・・・・・B折口信夫の生きた時代(折口信夫の視点)・・・・・C猿丸太夫(柿本人麿)の生きた時代(折口信夫が推理する視点)・・・・・・B折口信夫の生きた時代・・・・・・A主人公の生きている現在・・・のように物語の中に物語がネストする構造で暗号の推理が紡がれています。

で、ここで「なぜ、物語をこのような構造で紡いだのか?」と推測することになるわけですが、物語の中に物語をネストしていくことで、読者(審査員)が物語の内容に抵抗することなくひき込まれる、また、独特の幻想的な雰囲気を作り出し、無意識からじわじわ迫るような感じの作風である印象を与えることに成功しているように思ってくるわけです。

そう考えると江戸川乱歩賞にしても芥川賞にしても直木賞にしてもクリティカル・シンキングで厳しく審査している審査員のクリティカルなモードを麻痺させて物語の中に引き込み、作品にインパクトを持たせるためには、ミルトン・エリクソンの使った技法は非常に有効なのでしょうねぇ。(笑)余談ですが、物語のプロットにダブル・バインドを用いているのは結構多いと思います。

 独り言

「猿丸幻視行」と多重埋め込みメタファー
 
 心理療法家のミルトン・エリクソンの技法を継承する一派はエリクソニアンと総称されています。また、エリクソニアンはクライアントの心理療法的ゴール達成の間接的暗示を行うためにメタファーを使用することがあります。


メタファーについてもう少し細かい話をすると、エリクソニアンのメタファーはセラピストがクライアントの問題や状況をよく聴き、セラピストがつくるメタファーということになります。従ってセラピストは作家となる必要があります。


 さらに、このメタファーの発展的な形式として、メタファー/物語の中に別の物語を入れ子にしてネストするような構造を取る技法を多重埋め込みメタファー(Multiple Embedded Metaphors)と言う技法があります。


 それで、こいうったメタファーは別に心理療法家だけの専売特許というわけではなく、読者の抵抗を抑え、作家の伝えたい主張を上手に読者に伝えるという目的で伝えることが分かってくるわけです。

 最近、ブックオフで井沢元彦氏の江戸川乱歩賞受賞作品の「猿丸幻視行」を手に入れて読んでみたわけでが、この作品がまさに多重埋め込みメタファーで書かれていることが分かってはっとしたわけです。

 概要は、現在にすむ主人公香坂明が、ある製薬会社の開発したタイムマシーン(過去に住んでいた人の意識に同化できる薬)の実験を頼まれ、明治時代の折口信夫の意識に同化し、折口の頭脳を借りて、暗号を解くことで、猿丸太夫(柿本人麿、この物語では同一人物であるという仮定がある)の秘密を解くことがこの物語の概要となっています。

 ここで、あえてこの物語を多重埋め込みメタファーにした意図を考えると色々なことが見えてくることになってくるわけです。

(つづく)

文献
[2] http://books.google.co.jp/books?id=hx_8B4PQN54C&pg=PA186

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2013年8月24日土曜日

The Evolution of Psychotherapy 2013



 別にミルトン・H・エリクソン財団のステマじゃないのだけれど、今年の12月にカリフォルニア州アナハイムで行われる「The Evolution of Psychotherapy 2013」の国際カンファレンスについてご紹介しておきましょう。 
 
 独り言

EP 2013のサイト
 
 The Evolution of Psychotherapy 2013の内容が確定して、ボランディア募集のメールが来ていたのでご紹介しておくことにしましょう。


 こっちのほうのカンファレンスは、認知療法あり、行動療法あり、マインドフルネスあり、エリクソニアンあり、ソリューション・フォーカスありと、結構、なんでもありな感じですねぇ。(笑)

(つづく)

文献
N/A


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2013年8月23日金曜日

メタファーとフレーム(その3)



 心理療法家のミルトン・エリクソンの使った言語パターンについて、統語論、語用論、意味論などの観点から分析してなんらかのパターンが形式知化して取り出されているわけです。

で、ここで意味論の点からもう少しこのパターンを深めてみようと考えると、やっぱしアーヴィング・ゴッフマンのフレーム理論とかドラマツルギーとかのフレームワークで観察してみたらどうなるのだろうか?という疑問が湧いてくることになるわけですねぇ・・・・
 
 独り言

ゴッフマンのフレーム理論
 
 今日は手短に、

昨日に引き続いて Youtube で認知言語学者のジョージ・レイコフがフレーム理論とメタファーについて語っている映像を視聴したわけですが、この中で社会科学者のアーヴィング・ゴッフマン[1]のフレーム理論について言及して、個人的には結構面白いなぁとおもったわけです。


 ゴッフマンに対する個人的な理解は、ドラマツルギー[2]で提唱されているところですが、非常に簡単に言うと、人は与えられたフレーム、つまり文脈に従って行動するというところなのでしょう。



 このあたりは個人的には結構文脈を重要視するので提案書などではついつい背景をうだうだ書いてしまうところがあるのですが(笑)。この理論は個人的な感覚には非常に合っているように思います。

 で、ちょっとこのあたりのことを色々調べてみることにしましょうかねぇ? 
 

(つづく)

文献
[2] http://ja.wikipedia.org/wiki/ドラマツルギー

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2013年8月22日木曜日

メタファーとフレーム(その2)



 認知言語学では、ディベイトや政治家の演説などでどのように相手のフレームに働きかけるのか?というのがフレーム理論のようなもので随分明確にされているわけです。

逆に言うと、論理的であること以外に聴衆のフレームにどのように働きかけるのか?がきちんと分かっていないと得票を伸ばすことが難しい、逆にこれが上手くできると得票を伸ばすことができるということになってくるわけです。

余談ですが、心理療法のコンテクストで一つのメガネとして認知言語学のフレーム理論のようなものを当ててみると、心理療法家のミルトン・エリクソンがどのような言語パターンでもって相手のフレームにどのように働きかけているのかがよく分かってきますねぇ。
 
 独り言

フレームに働きかける方法?
 
 認知言語学者のジョージ・レイコフの著作に「Don't Think of an Elephant!: Know Your Values and Frame the Debate--The Essential Guide for Progressives [1][2]
があります。

 これは2004年に行われた米大統領選挙で、共和党のジョージ・ブッシュ候補と民主党のジョン・ケリー候補の戦いを認知言語学の視点から分析した著作ということになっています。この時はブッシュ候補の勝利。

 それで、著者のレイコフはこの後民主党側のアドバイザーに就任したことが書かれているわけですが、特に進歩主義者や浮動票を取り込むために、以下のようなコトバで話し対象となる有権者のフレームに働きかける手法について言及しています。[3]

·        (候補者)自身の価値を明確にする
·        事実や統計ではなく価値のコトバを使う
·        より大きな道徳的なゴールの観点から戦略的に考える
·        その他、価値観を共有する特定の課題に基づく進歩主義者と団結、協力する
·        プロアクティブに
·        同じ価値観を持つ進歩主義者や浮動票保有者に話しかける

それで、余談ですが、先の参議院選挙で東京都から当選した某反原発候補者が、レイコフの「Dont Think of an Elephant 」に書いてあったとおりのやり方で選挙活動を行っているところを考えると裏にこんなことを理解している人が居るのでしょうねぇ・・・・・(笑)。


(つづく)

文献
[3]http://www.metaphorproject.org/pages/main.php?pageid=29&pagecategory=1

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