2016年6月29日水曜日

ミルトン・エリクソンを学ぶための3つの必要条件


                                                                                                                             
 エリクソンを学ぶために必要なこと。

 一つは、英語、
 一つは、統計学、
 一つは、グレゴリー・ベイトソンの視点、

 もちろん、必要条件であって十分条件ではない。

 あと、ここに情熱と好奇心が少々・・・・

 <ひとりごと>



3つの必要条件

  個人的な意見だ、他の人にはその人の意見があるだろう。が、それはそれぞれ考えていただければよいと思う。

それで、

 ● 一つは、英語

  エリクソンの著作、ビデオの邦訳は少ない。一次情報にあたるためには、英語が理解できるのが最低の条件。できれば、言語学的に、統語論、意味論、語用論の3つの視点で英語が分かること。

http://ori-japan.blogspot.jp/2012/02/blog-post_29.html

 これで、エリクソン自身の論文、関連論文、著作を読む。Youtubeなどに映像があれば観察し実践してみること。

もし、エリクソンの研究に失敗しても、英語は格段にうまくなっている(笑)。そして、行間にメタメッセージをのせた一皮向けた英語が使えるようになっているだろう。皮肉屋さんの英国人にもボケて対抗できる英語力が得られる(笑)。

● 一つは、統計学

 心理的な効果が検証された論文を読むのには統計学の知識が必須。Google で検索すると、例えば、エリクソン派生のソリューション・フォーカスト・アプローチについての、二重盲検 (double-blind test)やメタ分析 (Meta-analysis)を行った論文が見つかる。もちろん、社会科学的な分野はこれをやれば必ず効果があるというわけではない。その意味、将来の日食を正確に予測できるような自然科学の分野とは違う。しかし、プロフェッショナルな人間の嗜みとしては必ずエビデンスベースドで効果検証された道具を使うべきだろう。

http://ori-japan.blogspot.jp/2013/01/blog-post_27.html

もし、エリクソンの研究に失敗しても、効果のない自己啓発にぼったくられることはなくなるだろう(笑)。もちろん、統計的な考え方は仮説ー検証を重視する仕事には役に立つ。

● 一つは、ベイトソンの視点

 要は、人類学者グレゴリー・ベイトソンのやっていたシステム思考やサイバネティクスの視点で<現場にいって、現物を触って、現実を>観察する必要があるということだ。これによって単なる怪しい催眠術師から役に立つコミュケーターになることができる。すくなくとも、物事が注意を引く<現象>だけから出来ているのではない、とより大きなつながりを理解し感じ、相手にもそう思わせることができるようになるだろう。

http://ori-japan.blogspot.jp/2014/10/blog-post_7.html

もし、エリクソンの研究に失敗しても、システム思考家にはなれるだろう。おそらく会社でも「読みの深い人間」と評価されるようになるだろう。また、会社の業務をサイバネティクスで記述することでトヨタ生産方式を形式知化した「リーン生産方式」のようなものができるかもしれない。

あとは、小さじ3杯くらいの情熱と好奇心をもって前に進み続けることだ。

それでは、諸君の健闘を祈る(笑)。




(つづく)

文献
N/A

記事の内容の正誤について、執筆者は一切保証いたしません。また、本書の内容、エクソサイズなどを実行した結果被った被害などについて著者は一切責任を負わないこととします。本ニュースレターの内容は、以下クリエイティブ・コモンズ・ライセンスに従うものとします。但し、引用元の著作権は引用元に所属します。ご意見、ご感想は次へ tritune'`@''gmail.com
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2016年6月28日火曜日

サイバネティクスについての諸々


                                                                                                                             
 世の中の現象を学問的にとらえるとする。

 普通の学問は範囲が非常に狭く取られている。

 だから、こころを数式化する、とか単なる物質に還元して説明するみたいなトンチンカンなことが起こる。

 要は、頭が良すぎて物事をありのままに観察できないのだ。

 そうならないためには、範囲が広く取られている体系をまなばねば、となるのだが・・・

 サイバネティクスがそのひとつに該当するのは間違いない。

 その前に世の中をマインドフルネスにみるのが最初かもしれないが(笑)。

 <ひとりごと>



マネジメント・サイバネティクス

 昔むかし、学生の頃、一般教養で心理学の授業があった。

 感想は、ひとこと「つまらない」。

 理系の人間からすれば、うんちくを聞かされて、再現性もないことを勉強しても意味がない。これが正直な感想。そのころ、心理学を勉強するというのは浮き世離れした世の中で役に立たないことを勉強する代名詞みたいに言われていた時期でもあった。もちろん今でもそういうところはあるのかもしれないが(笑)。

 それがちょっとだけ変わったのは社会人になって人類学者のグレゴリー・ベイトソンを勉強するようになってから。

 この時、お客さんのプロジェクトを観察して出た「局所最適の積み重ねが、なぜ全体最適化にならないのか?」という疑問を解決してくれそうな気がしたからだ。真面目な人間がレンガを一つ一つ積んでいく、そしていつかは立派な教会ができる。これは物語としては美しいが、実際の仕事はそうはならない。全員が他球団では4番を打てる選手で打線を組んでも、勝てるとは限らない。結局、局所最適な和で全体最適を実現できることは少ない。


 さて、その時のベイトソン感想は、外国の文系の人はすげーロジカルなのね(笑)。もちろん文系・理系みたいな単純な二元論で物事を分けるのは頭の悪いやり方だ、と今は思っている。

   実は、今でも心理学には興味はない。で個人的な興味は、世の中で起こっていることをベイトソンのようなサイバネティクスな視点から眺めてみること。これに尽きる。

 サイバネティクスは結構便利だ。

 会社で起こっている、<組織の振る舞い: Organizational Behavior>や<人間関係のあや>を非常に冷静な視点から記述できることになる。もちろん、心理療法家の暗黙知的な技法を記述すれば方法論ができるし、卓越した人間の考え方を記述して実装すれば人工知能になる。

 それで、特に組織のマネジメントにサイバネティクスを適用したのがスタッフォード・ビーアだ。

 そんなわけで、今日は、個人の趣味でサイバネティストのスタッフォード・ビーアの映像を紹介しておこう。[1]

    見てくれは怪しい新興宗教の教祖様、中身は確かにサイバネティクスだ(笑)。




 
http://ori-japan.blogspot.jp/2011/08/blog-post_14.html

 余談だが、学士の時の就職試験でI◯M社を受験した時、「君は心理学が不可ですが・・・」と生意気そうな面接官に突っ込まれた。まぁ、進学も決まっていたこともあり。「だから、どうしましたか?」と答え、喧嘩になった(笑)。それで、結局、2年後にシリコンバレー系のぬるい会社で働くことになるのだが。まぁ、本社のご近所にベイトソンの勤務したMRIがあったことを考えるとこれはこれで良いのではないかと考えている今日このごろだったのだ(笑)。そういうつまらないことを思い出した。

(つづく)

文献
記事の内容の正誤について、執筆者は一切保証いたしません。また、本書の内容、エクソサイズなどを実行した結果被った被害などについて著者は一切責任を負わないこととします。本ニュースレターの内容は、以下クリエイティブ・コモンズ・ライセンスに従うものとします。但し、引用元の著作権は引用元に所属します。ご意見、ご感想は次へ tritune'`@''gmail.com
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2016年6月27日月曜日

ミルトン・エリクソン:うまくいっているやり方が良いやり方


                                                                                                                             
 心理療法家のミルトン・エリクソン、<学習>という視点から見ると非常に深い。

 いつも上手くいく万能の方法というのはない。

 その時、その状況、その人・・・・に合わせて、うまくいっているやり方がよいやり方なのだと。

 観察、見立て、そして気の遠くなるほど試行錯誤。

    どんな絶望的な状況でも、それを逆手に取ってうまくやるために、あなただけにやれることは何かある。

 エリクソンの伝えたいのは、おそらくそういうことだ。


 <ひとりごと>



すべてオーダーメイドで

  Youtubeに心理療法家のエリクソンの映像が上がっていたので、そのご紹介を少々。


 エリクソンの言葉には多重で他水準の意味が含まれている。だから本当は簡単に翻訳できない。そこを敢えて日本語らしきものに置き換えると以下の感じになる。



英文
日本語訳
E
Now hypnosis in itself  dosen’t do anything. But it gives you a favorable climate in which to work.
さて、催眠それ自体が何かをするということはありません。しかし、催眠はうまくいくための好ましい(情緒的)雰囲気をあなたに与えてくれます。[1]
I
Dr. Erickson , what do you recommend for learning the techeniqs of hypnosis ? Who do you recommend going to for that ?I live in the Santa Fe area . I am not looking for a paticular person of uh-  some kind of
エリクソン博士、催眠の技法を学ぶ上で何かお勧めされることはありますか?それをすすめる上で誰か推薦できる方はいらっしゃいますか?私はサンタフェに住んでいて、特にそんな感じの人を探しているわけではないのですが・・・
E
The first place: develop you own technique. Don’t try to use somebody else’s technique. Cuz you can have them . Look at an object and disscuss learning to write a letter of the alphabet. That’s the easiest technique.
第一に:あなただけの技法を編み出しなさい。他の誰かの技法を使おうとしてはいけません。それを持てるのだから。モノを示してアルファベットを書くために学ぶことをについて討論しなさい。これが最も簡単な技法です。
E
And tell them to relax as a conscious thing. You get tired, that’s conscious. Go to sleep. That’s a conscious command. Now I tell you about the difficulties learning to write the letters of the alphabet. They just naturally go into trance.
そして、彼らに意識的なこととしてリラックスしないさいと伝えなさい。あなたはだるくなる、それは意識的です。眠りなさい。それは意識的な命令です。さて、私はアルファベットを書くこと学ぶことが難しいことについて伝えます。彼らは自然にトランスに入っていきます。
E
And don’t try to imitate my voice, or my cadence. Just discover your own. Be your own natural self. I’ve seen dozens of scores of men trying to imitate me. It’s a hollow pretense. And the patient knows it.
私の声、あるいは調子を真似ようとしていけません。ぴったりあなたのを見つけるのです。自然にあなた自身のになるのです。私は、私を真似しようとする人を何十人も見てきました。これは中身のないハッタリです。クライエントはこれを知っています。
E
If you talk very rapidly, do so. If you talk very softly, do so. If you talk slowly, do so. Be your self. And develop your own technique. I’ve seen lots and lots of failures of attempts to follow my techniques or somebody else’s techniques. It’s the indivdidual responding to the individual.
あなたがとても早口なら、そうしなさい。あたなが、穏やかに話すなら、そうしなさい。あなたがゆっくり話すならそうしなさい。あなたらしくなりなさい。あなただけの技法を編み出しなさい。私は、私の技法、あるいは他の誰かの技法を追いかけようとして失敗する多くの多くの事例を見てきました。個に応答するのは個です。
E
If I were to work with you, I’d keep you in mind. And I work with you, I keep you in mind. With you, it’d be you I’d be thinking about. And I would try to understand your own behavior. And I would be just my own natural self.
I’ve experimented with trying to do things the way somebody else would do it. It’s a mess.
わたしがあなたとうまく取り組みたいなら、それを心にとめておかなければいけません。そして、わたしはあなたとうまく取り組んでいるので、それをこころにとめています。そして、わたしはあなただけの振る舞いを理解しようと努めています。そして、わたしは自然な自分になろうとしています。わたしは他の誰かがやったやり方をやろうとする実験をしてきました。
これは混乱します。

http://ori-japan.blogspot.jp/2012/02/blog-post_29.html

(つづく)

文献
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2016年6月26日日曜日

短期戦略療法の系譜:ハインツ・フォン・フォルスター


                                                                                                                             
     サイバネティクスは不思議な学問だ。

 MITのジェームズ・ウォマックのようにトヨタ生産方式の暗黙知をサイバネティクスをくぐらせて形式知化する。結果、『リーン生産方式』ができる。[0]

 一方、心理療法の研究機関のMRIのように心理療法家のミルトン・エリクソンの暗黙知をサイバネティクスをくぐらせて形式知化する。結果『短期戦略療法、戦略的家族療法』ができる。

 結局、やっていることは同じということになるが、色々な方法論ができる(笑)。

 もちろんすべての暗黙知を形式知化することはできない。職人技は残る。

 しかし、人の認識や振る舞い、そして出現する世界との関わりを、生物と無生物のやりとりと記述すると少なくともわかりやすくはなる。

 
 <ひとりごと>



そうだ、サイバネティクスを学ぼう w

  家族療法、短期療法に大きな影響を及ぼしたサイバネティストのハインツ・フォン・フォルスターが米加州パロアルトのMRI(Mental Research Institute)に姿を表したの2002年のことだ。フォルスターはこの年の10月に亡くなったため、この映像が公に現れた最後の姿となった。[1]




 Youtubeにその時の映像が残っている。この中の質疑応答で、オートポイエーシス論の提唱者であるウンベルト・マトゥラーナとの関係は?と聞かれ、彼との出会いのことが語られている。

 余談だが、2002年あたりのパロアルトを含むシリコンバレーはITバブルが弾けてしまってお通夜状態になっていた時期だ(笑)。

 話を元に戻して、MRIでは心理療法家のミルトン・エリクソンらの研究が行われた。ここでエリクソンの暗黙知の説明原理としてサイバネティクスを持ち込んだのは人類学者のグレゴリー・ベイトソンだ。もちろん、サイバネティクスも進化する。だから現在では短期戦略や家族療法は第二次サイバネティクスやオートポイエーシスの説明原理で語られることになる。

 もちろん、ここでフォルスターは何をやっていたのだろうか?という疑問は残る。もちろん、「人の認識と振る舞いと出現する世界との関わり」ということになる[2]

 それで、Youtubeにこれを簡潔に説明したスチュワート・アンプレビー教授のレクチャーが公開されている。



これを参照すると、トヨタ生産方式から、企業のマネジメント(スタッフォード・ビーア)、心理療法家からジョージ・ソロスの投機の話までは一つの糸でつながってくる。結局、普段当たり前として捉えている現象を形式知として取り出すためにはサイバネティクスは非常に有効な方法だということが分かってくるし、サイバネティクスの視点で世の中の現象を観察することこそ、ベイトソンやフォルスターの視点に他ならないことに気づいてくる。

 余談だが、心理療法を形式知化する時にスピリチュアルやオカルトの気持ちの悪さを払拭するのにも、ブラック企業で強調される意味の無い精神論を払拭するのにもサイバネティクス非常に有効だといういうことだ(笑)。

 そのうち、営業プロセスを自動化するSFA (Sales Force Automation)なんかも、卓越した企業のプロセスをサイバネティクスを使ったモデリングで実装する企業も出てくるだろう。

(つづく)

文献
[0]http://ori-japan.blogspot.jp/2013/10/blog-post_6.html
[1]https://en.wikipedia.org/wiki/Heinz_von_Foerster
[2]http://pespmc1.vub.ac.be/Books/foerster-constructingreality.pdf

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2016年6月24日金曜日

ミルトン・エリクソンの系譜:システミック・セラピーを3つ


                                                                                                                             
 大手製造業の教育担当と打合せをした時、面白いことを言っていた。

 「個人がミスをした時、うちはまず最初に(広義の)システムに原因がなかったのか?を考え、事実関係を調査して対策するように教育しています。」

  現象を安易に個人の責としない、なかなか深い考えだと思った。

        一時的な感情に振り回されれず、現象の裏にあるシステムを意識して、対処するためにはどうすればよいのだろうか?

  答えのひとつは、「そうだ、システミック・セラピーを学ぼう!」に違いない(笑)。

 <ひとりごと>



ミルトン・エリクソンのシステム論的解釈

  心理療法家のミルトン・エリクソン、彼が歩いた後には大きな森ができた。

この森の詳細については以下で書いた。

http://ori-japan.blogspot.jp/2015/11/blog-post_29.html

 『エリクソンの前にエリクソン無し、エリクソンの後にエリクソン無し』、本当は森ではなく、唯一無二のでっかい足跡が残っただけ、かもしれない。

しかし、エリクソンのエッセンスをサイバネティクスでセンス良く形式知化した人たちが植えた木が巨木に成長しているのは間違いない。もちろん、この背景には、ベイトソン亡き後、日本人研究者丸山孫郎の第二次サイバネティックス(Second order Cybernetics)への貢献があるのを忘れてはならない。

Youtubeに面白いプレゼンテーションがアップロードされていた。それは、エリクソンから派生した<状況ーこころー身体ー人間関係>を綜合的に扱うシステミック・セラピーについてのプレゼンテーションだ。

一つは、人類学者グレゴリー・ベイトソンから派生したカリフォルニアのMRI、
一つは、ベイトソンの理論を深掘りした円環的質問で有名なイタリアのミラノ派、
一つは、MRIから派生しジェイ・ヘイリーがワシントンで起こした戦略派、

この3つだ。

これらの功績を3つほどあげると以下になるだろう。

1.同じ効果を得るのに、催眠を使う必要がなくなった。
2.再現性をもった社会科学として取り扱えるようになった。
3.不思議なことを不思議でない方法で学べるようになった。

個人的な趣味の世界だが Youtubeの映像をリンクしておく。


 






(つづく)

文献
N/A

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2016年6月23日木曜日

いつの間にか翻訳出版される不思議


                                                                                                                             
     このブログでは心理療法家ミルトン・エリクソン派生の英語の著作を多くご紹介している。

 で、個人的に知っている方、知らない方を含め、日本語に翻訳していただいて出版された本を数えるとすでにざっと10冊くらいある。

 不思議だ(笑)。

 本屋さんに立ち寄った時、これらの本が、第五版くらいになっているのを見るとちょっと嬉しくなる。ニッチであまり儲かるところではない分野だけれど根強いニーズがあるということなのだろう(笑)。今後も、派手さはないけれど息の長くて、普遍性のある、よい内容の著作をご紹介していきたいところ・・・・

 <ひとりごと>



胡散臭いのは機会がてんこ盛り?

   昔、副業としてIT系の翻訳と著述家をやっていたことがある。もちろん会社公認。

 だから、名前がクレジットされいる分、いない分を含めると、書きおろしが2冊、翻訳が10冊くらいある。

     特にこれ[1]なんかは400ページくらいあって、夏休みと土日のうちどちらかを全部潰して3ヶ月くらいかけ翻訳した記憶がある。で、今は絶版で入手が困難、Amazonの中古で買うか、国会図書館で読むかしかない(笑)。

 ここで、だから?と言われると、400ページの著作を1日平均5ページ翻訳するとして80日くらいは根気を持続する必要のある作業だということだ。もちろん、これは副業だから本業の仕事をした後の仕事だ。だから、こころの底から興味のある本しか続けることができない。「ケーキは別腹」飯をお腹いっぱい食べた後にケーキをたらふく食べる感覚だ。だが、物理的に食べているわけではないので体が肥満なるかわりに、知識が確実に肥満になる(笑)。もちろん、会社の業務に関係した内容だ。実践すれば筋肉になる。

 さて、この分野は実はカラクリがあった。ITでもニッチで非常に専門的な内容だ、1万部売れればベストセラー。だからプロの翻訳家に頼むと採算が取れない。ただし、翻訳のプロではないけれど、当該分野のプロではある。そこで、1)安く正しい内容で出したい出版社、2)最新の技術を勉強、紹介したいエンジニア、3)ブランド向上をねらう会社、の三者の利害が一致したのでこんなにいくつも出版できたというわけだ。分野は違うが山形浩生さんがやっているようなやり方に近い。もちろん、山形さんは会社名は出していないが。

 そんな経験を踏まえ、おそらく現在の心理療法系の本にも同じような構造があるのだろうなぁと考えた次第だ。

 ミルトン・エリクソン関係の著作について、現状、悟策先生のお弟子さんとか学術系の人たちの翻訳や著作を外すとほとんどがスピリチュアルなクソ本。あるいはエロ。ブログも何人かの実践家を除くとほとんど宴会芸。

 文句をいいたいわけではない。

 事実はまずマインドフルネスに受け止めなければならない(笑)。ただ、事実として市場が胡散臭いだけだ。しかし、胡散臭いカオスな市場だからこそ、機会がてんこ盛りだということだ。胡散臭いからこそ、参入余地がある。もちろん、市場規模が爆発的に成長することはないだろうが、適当に胡散臭くて、適当に参入障壁があって、適当なニーズがある状況は続くだろう。

 個人的には、エリクソン関係、周辺の著作や論文やら含めると2万ページくらいは読んで、色々試してみた。で、海外の論文はだいたいが博士、修士の書いたエビデンス付き。社会科学的な内容なので効果は確率的で保証はされないが、ある程度は見込める。

 で、本業が忙しくて、胡散臭いこの市場で本気で遊ぶことはまだ出来ていない。でも、本当にエリクソンは心の底から興味があって飽きが来ないこと。それで、一日一善、良い本があったら引き続きご紹介していきたいと思っているところだ。もちろん、何が善なのかはよくわからないのだが(笑)。

 余談だが、エリクソンの技法は本業で予想以上に役に立っていて自分の血肉となっていて、収益に寄与してくれてところがまた逆説的で今日のオチなのかもしれないが・・・・(笑)。
 

(つづく)

文献
[1]https://www.amazon.co.jp/dp/481018921X/

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2016年6月22日水曜日

40分で分かるヴァージニア・サティアの家族療法


                                                                                                                             
 最新のシステム理論からすると、結構ダサいのだが、昔田舎のおばあちゃんの実家で手料理を食べた的な懐かしい感じのてんこ盛り感はなんだろうねぇ(笑)。

 <ひとりごと>



MRI ヴァージニア・サティアのレガシー

  世の中の課題の多くは人間関係の中で起きている。しかし、自分だけが頑張れば問題解決できる、というわけでもない。人間関係の問題は組織の問題であり、いわばシステムの問題だ。すなわち、組織や家族を一つのシステムと見て全体の視点から介入しないと解決することはない。[1]
 
  そこで、登場する手法の一つが<家族療法>だ。 家族や組織をシステムと見立ててより大きな視点からの解決を目指す。もちろん、家族療法にもいくつもの流派がある。ミニューチェン、アッカーマン、ボウエン、ウィタカー・・・を無視するわけではないが、大きな木の幹の一つはMRIにも在籍したサティアだ。[2] 個人的なサティアとの出会いは、ジェラルド・ワインバーグ著「コンサルタントの秘密」[3]で紹介されていたこと。また、カリフォルニアに出張した時に知り合ったオーストリア出身の年配のコーチが若い頃サティアのワークショップに参加した体験談を聞いたのがきっかけだ。

 別に家族に問題を抱えているわけではないが、ミッション・クリティカルなプロジェクトに従事していると、組織のマネジメントをもっとうまくやるための理論と方法論を求め続けているところはある。かなり昔にIBMに買収されたラショナル・ソフトウェアのソフトウェア開発でもサティアの方法論をファシリテーションの手法として取り入れている事例もある。[4]

 さて、Youtubeにサティアの技法が非常に簡潔に説明されていた映像がアップロードされていたのでご紹介しておこう。 

 

 これを視聴すると、まずサティア・カテゴリーによる見立て、そして成長モデル
、具体的な介入方法と続き、サティアの技法が40分足らずで俯瞰できるようになっている。余談だが、個人的には個人の振る舞いのパターンに注目したサティア・カテゴリより関係性のパターンに還元したベイトソンのほうが合理的だと思っているので、サティア・カテゴリはあまり好きではない。

サティアの質問について:サティア・カテゴリーの見立てを行う、

http://ori-japan.blogspot.jp/2011/09/blog-post_04.html

サティアの二次的情動をあつかう理論的背景について:

http://ori-japan.blogspot.jp/2013/07/e-prime.html

サティアの氷山モデルについて:

http://ori-japan.blogspot.jp/2012/07/blog-post_13.html


ごちゃごちゃ書いたがサティアの技法は一言でいうと「愛と調和:Love & Congruence」なのかもしれないが、70年代のヒューマン・ポテンシャル・ムーブメントの(人間の限界、ギネスに挑戦的な)いっちゃっている感は少なめにして、研究・実践してみるのも面白いのだろう(笑)。少なくとも、家族や組織の人間関係をシステムとして見立て、介入できるヒントはこの技法にある。

(つづく)

文献
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2016年6月20日月曜日

MRI ポール・ウオツラィックのレガシー


                                                                                                                               
 ITの分野なんか特にそうだが、だいたい<リューション>と言われるようなシステムを導入して、深く考えずに今の問題を無理くり解決しようすると、将来、余計大きな<問題>が起こるのだよねぇ(笑)。

 個人的には安直な<ソリューション>ではなく、人と人とのコミュニケーションの力を信じたい。

 <ひとりごと>



コミュニケーションは相互作用

  カリフォルニア州パロアルトにある心理療法の研究機関であるMRIの研究員であり、スタンフォード・メディカル・スクールでも教えていたポール・ウオツラィック(1921-2007) は、オーストリア生まれのためか残存の映像のほとんどがドイツ語だ。もちろん、英語の字幕版もあるのでドイツ語が分からなくても理解するのには困らない。[1]

  MRIの短期療法、あるいは家族療法について、あえて2分法的に考えると、ミルトン・エリクソンを研究したジェイ・ヘイリーのように現状から理想をどのように達成するかという<戦略性>について強調している人たちと、ウオツラィックのように家族や個人間のコミュニケーションの<相互作用>の中での問題解決について強調している人たちに分けられるようにも思えてくる。もちろん、この2つは単純に分けられないのだが敢えて分類すると、ということだ。

   そのため、ウオツラィックらはコミュニケーションの相互作用についてはこだわりがあるように思える。<コミュニケーションの5つの試案的公理>でも有名であり、個人的にも活用しているこの公理もそのこだわりの一つだ。ウオツラィックは構成主義を取るので、コミュニケーションは生き物であり、創発的に生成発展するというような立場だと思われる。その意味、ここからウンベルト・マトゥラーナのオートポイエーシス論にもつながってくる。

 http://ori-japan.blogspot.jp/2011/08/blog-post_08.html

  もちろん、この試案の元になっているベイトソンはニューギニアの<中央集権的ではない>イアトムル族のフィールドワークを通して人間関係のシンメトリカルとコンプリメンタリーな関係を取り出した。が、ここに上下関係が入ってくると、ここにメタ・シンメトリカルとメタ・コンプリメンタリーが入ってくるので結構面倒でもある反面、ほどんどの人間関係を記述できるようにもなる。だから日本の会社における上下関係や同調圧力のような関係も記述することができる。

 さて、個人的には、ウオツラィックを信奉するウオツラキアンと言うには信心が足りないのかもしれないが(笑)。ウオツラィックの公理や理論は好みだ。その理由は、家族という単位だけではなく、企業組織やプロジェクト組織にもこの理論が応用可能で、実際に使ってみると案外使い勝手がよいからだ。

  その証拠にプロジェクトマネジメント普及の非営利団体であるPMIから出されているChange Management の理論はウオツラィックらのコミュニケーション理論に基づいている。

  http://ori-japan.blogspot.jp/2013/12/blog-post_7.html

 日本のプロジェクトマネジメント有識者の中ではまだ普及していないところだが、学んでおいて損はないと思われるところである。

 さて、Youtubeにウオツラィックの映像が転がっていたのだが、コミュニケーションの公理やコミュニケーションの語用論のころを考えながら視聴してみるのもよいのだろう。




(つづく)

文献
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2016年6月18日土曜日

ミルトン・エリクソンの技法:リバースセット(再)


                                                                                                                             
 ミルトン・エリクソンの技法も単純に認知科学のフレームワークで観察すれば、種も仕掛けもない単なる再現性のある程度担保された技法(笑)。

      で、個人的な考え:エリクソンを研究する時には間違っても不思議系にはいかないほうがよいと思っている。結局、認知科学とか現象学の視点でもって、どういう条件でその現象が再現性を持つのかをいつも意識しておかないと、単なる宴会芸で、世のため人のためにはまったくならないことを学ぶことになるだろう。

   もちろん認知科学のフィルターを通して、技法的には似ても似つかない方法だが本質的には同じ効果が得られるという技法がつくれれば一番格好がよいのだが・・・

 <ひとりごと>



従来の認識に対する新しい反応の形成

 ミルトン・エリクソンの技法として「Yesセット」、「Noセット」のパターンが抽出されている。この技法は本来は、「Yes セット」「Noセット」「リバースセット」の3セットの技法だ。で、「リバース・セット」は論理的に理解するのが難しい少し不思議な技法だ。[1]

 リバース・セットは、エリクソンの質問に対して、通常クライアントの「頭ではYes、体の反応もYes」あるいは「頭ではNo体の反応もNo」という反応が予想される状況において、リバースの名前の通りに「頭ではYes だけれど体の反応が No」「頭では No だけれども体の反応が Yes」のように、従来の認識に対して反対の行動パターン、あるいは新しい行動パターンを形成するために用いられる技法だ。

 ただし、文献を読んでみるとエリクソンは何らかの条件によってリバース・セットのパターンを使うのが適切かどうかを判断している節が見られる。例えば、スタンフォード催眠感受性尺度の低い人向けなど。[2]

 このパターンが明示的に抽出される元になっているのは、1958年にエリクソンがスタンフォードの研究室を訪れ、ルースという名前の女性(ヒルガードの秘書)と行ったセッションだと考えられる。この映像は、スタンフォードで教鞭を取っていたアーネスト・ヒルガードとMRI(Mental Research Institute)の研究員であったジェイ・ヘイリーが研究のために撮影している。

この映像について、 Youtube3358秒の完全版が再度アップロードされているのを偶然発見したので、リンクしておく。

もちろん、このビデオはエリクソンのバーバルな技法とノン・バーバルな技法が入り乱れており、1)統語論、2)意味論、 3) 語用論などのフレームワークを立ててベイトソンかウォツラウィックにでもなったつもりできちんと観察しないと何をやっているのかまったく意味不明な高度な技法が活用されている。




リバース・セットの部分だけ解説する。

否定疑問文の答えが英語と日本語で Yes/No.がひっくり返ることもこの理解をややこしくしているが、ここにも注意しながら考察する。また、エリクソンが相手の女性に「girl」という言葉を使っている1958年に撮影された時代背景も考慮する必要があるだろう。(もしかすると小さな女の子に話しかける言葉を使っていることで、子供の頃を思い出してね・・・というメタ・メッセージを送っているのかもしれないが・・・

http://ori-japan.blogspot.jp/2012/07/blog-post_10.html


18分55秒付近から
E:Now I'm going to ask youis your first name Ruth (Ruth nods Yes.) That's right. Are you a girl? 
R: Yes.
エリクソン:さて、今ココで質問を始めようと思います。あなたの名前はルースですか?(ルース、Yesとうなずく)。いいですね。あなたは女の子ですか? ルース:はい

E: You just nod your head or shake your head in answer. Are you a girl? (Ruth nods Yes. ) Are you sitting down ? Ruth nods Yes.
エリクソン:答える時はうなずくか首を横に振るだけで構いません。あなたは女の子ですか?(ルースはYesとうなずく)あなたは座っていますか?(ルースは Yesとうなずく)

E: All rightnow I'm going to ask you some other questionsand you will nod your head in answer. Is your name Ann? (Ruth shakes head No.) And you will nod your head in answer.(Erickson models ,nodding Yes.) Is your name Ann ?(Ruth nods Yes.)
エリクソン:いいですね。さて、他の質問をしようと思います。うなずいて答えてください。 あなたの名前はアンですか?(ルースは No-いいえ、と首を横に振る)。で、あなたはうなずいて答えることができます。(エリクソンはルースを真似てうなずく。)あなたの名前はアンですか?ルースは Yes-はい、とうなずく
※2回目の質問で一回目とは反対の反応が引き出されています。

E: That's right. Because your thinking can be different than movement of the muscles in your neck. Are you standing up?(Ruth nods Yes.)
エリクソン:いいですね。なぜなら、あなたの考えていることはあなたの首の筋肉の動きとは違っていることができるからです。立ち上がろうとしていますか?(ルースは Yes とうなずく)。

E: That's right. And are you a boy? (Ruth nods Yes.) That's right
エリクソン:いいですねえ。あなたは男の子ですか?ルースは Yes とうなずくいいですねえ。
※先ほどの質問では女の子ですか→Yesと反対の反応が引き出されています。

E: And now I want you to shake your head No. (Erickson  models head shaking.) Your name isn't Ruthis it? (Erickson  shakes No; Ruth shakes No.)
さて、私はあなたに No と首を横に振って欲しいのです。(エリクソンはルースを真似て首を横に振る)あなたの名前はルースではありませんね。エリクソンは No-はい、ルースではありませんと首を横にふる。ルースも No と首を横にふる

E: And you aren't  a girl are you?(Ruth shakes head No.)
エリクソン:あなたは女の子ではありませんね?ルースは No-はい、女の子でありませんと首を横にふる)。

E:And You arent sitting down , are you ? (Ruth shakes head No.)
エリクソン:座ろうとはしていないですね?ルースは首を横に振ってNo-はい、座ろうとしていません

E: And you aren't in tranceare you? (Ruth shakes head No.)
エリクソン:で、あなたはトランスに入っていませんよね。(ルースは首を横に振って、No-はい、トランスには入っていません)
※少なくともルースはトランスに入っていないと思っている。

E: And you aren't answering meare you? (Ruth shakes head No.) And you're not going to answer meare you? (Ruth shakes head No.) That's right. And you can hear everything I say ,can you not ? (Ruth shakes head No.) And you wont hear anything I say to you , will you ?(Ruth shakes head No.)
エリクソン:で、あなたは、私の質問に答えてないですね?ルースは No-はい答えていませんと首を横に振る:ダブル・バインドで、あなたはわたしの質問に答えるつもりはないですね?ルールは、No-はい、答えるつもりもありません:ダブル・バインドいいですねえ。私がいったことはすべて聞いていますねぇ?(ルースは、No-いいえと首を横に振る)で、あなたは私がいったことを何も聞いていないですね。ルースは、No-はい、何も聞いていませんと首を横に振る:ダブル・バインド)。

E: All right, and  you can close your eyes.
エリクソン:いいですねえ、あなたは目を閉じることができます。

E: You can close your eyes, can you not?
エリクソン:あなたは目を閉じることができますかねえ?

E: And youre closing them , are  you not? (Ruth closes her eyes.) That's right. And you can enjoy sleeping more and more deeply all the time. And your really , arent you ?(Erickson nods head  continuously.) Thats right. And you really are - and just keep right on sleepingdeeper and deeper in trance.
エリクソン:で、目を閉じましたね?(ルースは両目を閉じる)いいですね。で、あなたはいつでも深い深い眠りを楽しむことができます。で、本当にそうですか?(エリクソンはうなずきつづける)いいですね。あなたは、本当に、眠りにあり、深い深いトランスに入っていきます。

ここでは、付加疑問文(Tag Question)などの細かい技法については説明しない。で、映像をよく観察すると途中から、Yes , Noに対する身体の反応がある時を境にして綺麗に反転しているところが理解できるだろう。

人の認識としての Yes, No つまり何かの枠組みを設定して判断された真偽に対して、Yesならうなずく、No なら首を横に振るというそれまでの行動が、Yesなら首を横に振る、Noならうなずくと見事に、認識→行動のパターンが反転していることが観察される。

トランス状態を伴わなくても誰にでも出来る通常の「Yes セット」、「No セット」と比較すると、「リバース・セット」は頭で考えている反応と体で行う反応が一旦分離され、さらに元の反応のパターンを反転して接続された格好になっているため難易度は高いがその効果は明示的に確かめられる技法だ。

また、倫理的には相手の同意も必要で、ビジネスやコーチングの場面などでは使い難いところがあるようにも思う。しかし、この技法が出来ると、普段身につけている認識→行動というパターンを変化させる技法という意味では非常に興味を引く技法だと言えよう。

余談だが、今から50年以上も前にエリクソンが自然にやっていた不思議な現象を、スタンフォードの頭脳をもってして、この秘密を解明しようと研究が行われていたことを想像し、ヒルガードがエリクソンから何を学んだのかを考えると、これはこれで興味深い。

ミルトン・エリクソンの技法はある意味神業で、人間国宝の域に達しているようにすら思うのだが、グレゴリー・ベイトソン、アーネスト・ロッシ、MRIの人達をはじめ多くの頭の良い人達を惹きつけ、今でもブリーフ・セラピーカンファレンス(直近の開催は2015年)が開催されると全世界から数千人単位のPh.D.を持った人間が集まるように、非常に多くの人達が惹きつけられている理由が少しだけ分かった気になる。


最後に個人的にはミイラ取りがミイラにならないようにあくでもベイトソンの視点をもってエリクソンを観察することに徹しているのだが、この命綱がないと自動的に深みにはまっていってエリクソニアンという自覚のないエリクソニアンに成っていくことが容易に予想されるので結構危ないなと思っている今日この頃でもある(笑)。

関連リンク


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