2016年9月30日金曜日

ミルトン・エリクソンの系譜:直接暗示と間接暗示


                                                                                                                             
 間接暗示+ベイトソニアン・ダブルバインド → 悩ましいろくでもないヤツ

 間接暗示+エリクソニアン・ダブルバインド   → 癒やしてくれるヤツ

 技法はほとんど変わらないが、どちらの立場も取れる(笑)。


 <ひとりごと>



間接暗示は難しくない・・・・

  備忘録として書いておく。

暗示は難しくない》心理療法家のミルトン・エリクソンの一派が使う用語に直接暗示(Direct Suggestion)と間接暗示(Indirect Suggestion)というのがある。細かい技法の話は、アーネスト・ロッシを引いて書いた[1] 。もっとも、個人的には、「暗示」というより「示唆」のほうが適切な訳語ではないかと考えている。理由は、相手に解釈の余地を与えつつ「示唆」する形式になっているからだ。

 難しく考える必要はない、実際に、暗示や示唆は日常生活、仕事の場面にあふれている。例えば、会社で上司に有給休暇を申請しようとした時。上司は以下のように返す。

「仕事に、余裕があるヤツはいいなぁ〜」

 もちろん、解釈は文脈や相手との関係、あるいは相手の表情を含めた(メッセージ+メタ・メッセージ)全体から行われるだろう。[2] この示唆は、ある種の「嫌味」をほのめかしたものとも取れるが、単なる「冗談」かもしれない。だから、これも間接暗示となる。もっとも、エリクソンは嫌味ではなく、相手にもっと肯定的に取られるような間接暗示を使った。[3]

ネットの誤った情報》別にこれを揶揄するつもりはない。反面教師から学ぶことでより深く学べる。で、以下のような情報がある。


トランス状態が深化してくると、クライアントはエリクソン催眠流の暗示に反応しなくなる。間接暗示から直接暗示へと切り替えるべし!

 
 これには2つの根本的な誤りが含まれる。
 
トランスの深さと変化の大きさは関係ない》まず、❶エリクソニアン・アプローチはトランスを深化させるものではない。つまり深いトランスになればなるほど変化も大きい、とは仮定していない。これはヤプコを引いて書いた。[4] また、トランスなしでも、適切な状況設定と介入があれば人の認識や行動が変化することはウオツラィックを引いて書いた。[5]

間接暗示の有効性とトランスの深さは関係ない》また、❷間接暗示はトランスとは独立だ。つまり、トランス深いから間接暗示が理解できない、といったことはない。これは、「Hope & Resiliency」[6]の中に「子供には直接暗示のほうが効果的」という記述があるが、これは子供がメタ・メッセージの解釈の発達が追いついていないため、ということだ。例えば、子供が学校を休みたいといった時、

親:「勉強に、余裕があるヤツはいいな〜」

子供:「うん、余裕があるよ」

というようなメタ・メッセージを解釈しない答えになることが予想されるためだ。逆に大人は、トランスが深かろうが、浅かろうが、間接暗示は間接暗示として解釈できる、ということになる。だから別にトランスの深さによって切り替える必要もない。そもそも、エリクソニアン・アプローチは深く催眠誘導することは目的としていない。

ご利用はダブルバインドで》もちろん、間接暗示は、人を千尋の谷に落とす場合は、統合失調症的なベイトソニアン・ダブルバインド仕立てで活用され[6]、逆に人を癒やす場合は、エリクソニアン・ダブルバインド仕立てで活用されることになる。[7] 余談だが、ベイトソニアン・ダブルバインドを活用することで嫌な上司になることも、エリクソニアン・ダブルバインドを活用することで部下の悩みの解決に協力できる上司になることもできる(笑)。

(つづく)

文献
[1]http://ori-japan.blogspot.jp/2013/03/blog-post_12.html
[2]http://ori-japan.blogspot.jp/2013/03/blog-post_15.html
[3]http://ori-japan.blogspot.jp/2012/03/24.html
[4]http://ori-japan.blogspot.jp/2016/09/blog-post_59.html
[5]http://ori-japan.blogspot.jp/2012/01/blog-post_23.html
[6]https://books.google.co.jp/books?id=B2YgBQAAQBAJ&pg=PT144&lpg=PT144&dq=milton+erickson+direct+suggestion+children

記事の内容の正誤について、執筆者は一切保証いたしません。また、本書の内容、エクソサイズなどを実行した結果被った被害などについて著者は一切責任を負わないこととします。本ニュースレターの内容は、以下クリエイティブ・コモンズ・ライセンスに従うものとします。但し、引用元の著作権は引用元に所属します。ご意見、ご感想は次へ tritune'`@''gmail.com
https://www.facebook.com/okirakusoken

2016年9月29日木曜日

ミルトン・エリクソンの系譜:NLPのエビデンス(その2)


                                                                                                                   
 40年もやっていて、まともなエビデンスがほとんどないのは

 怠慢以外の何ものでもないな。

 意図的に、お金儲けに走った足あとがこれなのだろうけれど(笑)。

 <ひとりごと>



ここに時間とお金を投資するの?・・・・・

  備忘録として書いておく。

ここでは、個人的な趣味でデータを読むことを楽しんでいるだけであり、何ら医療的、治療的助言を与えるものではないことを予めお断りしておく。

NLPの効果検証すると》米国NCBIのサイトに「Neurolinguistic Programming: asystematic review of the effect on health outcomes(2012)」[1]が見つかる。比較的最近の論文、内容は、NLP(神経言語プログラミング)を精神状態の改善目的で適用した場合、本当に効果があるのか?の(メタ分析的な)検証となっている。NLPが使えるのかどか?は別にしてもこういった効果検証のやり方は参考になるだろう。やはり、「健全に疑いを持つ」というのは日常でも仕事の場面でも必要な資質だ。で、以下に続く。


METHOD: The following data sources were searched: MEDLINE®, PsycINFO, ASSIA, AMED, CINAHL®, Web of Knowledge, CENTRAL, NLP specialist databases, reference lists, review articles, and NLP professional associations, training providers, and research groups.

方法:次のデータソースを検索した:MEDLINE®、PsycINFO、ASSIA、AMED、CINAHL®、Web上のナレッジベース、CENTRAL、NLPの専門家データベース、参考文献リスト、レビュー記事、およびNLP専門家団体、トレーニングプロバイダー、および研究グループ。

 
調査範囲は、データベース、ナレッジベースなどを活用した横断的なものだ。で、結果は以下だ。


RESULTS: Searches revealed 1459 titles from which 10 experimental studies were included. Five studies were randomised controlled trials (RCTs) and five were pre-post studies. Targeted health conditions were anxiety disorders, weight maintenance, morning sickness, substance misuse, and claustrophobia during MRI scanning. NLP interventions were mainly delivered across 4–20 sessions although three were single session. Eighteen outcomes were reported and the RCT sample sizes ranged from 22 to 106. Four RCTs reported no significant between group differences with the fifth finding in favour of the NLP arm (F = 8.114, P<0.001). Three RCTs and five pre-post studies reported within group improvements. Risk of bias across all studies was high or uncertain.

結果:検索は、10の実験的研究を含む、1459の研究を対象とした。5つの研究は、無作為抽出による比較試験(RCT)、5つは、事前事後の研究。対象とした精神状態は、不安障害、体重維持、つわり、物質乱用、およびMRI使用時の閉所恐怖症。3つは、1回限りのNLPセッションだったが、他のNLPの介入は主に4-20セッション間で提供実施されていた。18の結果はRCTの母数が106から22の範囲だった。4つのRCTは、NLPに好意的な(F=8.114、P<0.001)5つの所見だったが、群差の間に優位性は報告されなかった。すべての研究間のバイアスは高リスクか不確実だった。

 
結論としては、以下。



Conclusion: There is little evidence that NLP interventions improve health-related outcomes. This conclusion reflects the limited quantity and quality of NLP research, rather than robust evidence of no effect. There is currently insufficient evidence to support the allocation of NHS resources to NLP activities outside of research purposes.

結論:NLPの介入で健康関連の結果を改善することを証拠はほとんど存在しない。この結論は、確固たる効果なしという検証結果ではなく、NLP研究の量と質が限定されていることを反映している。研究目的の外にNLP活動にNHS(イギリス国営医療事業)のリソースの割り当てを支持するための十分な証拠は存在しない。


イギリス国営医療事業側の人たちが、現場で使えるのか?という視点で検証した 
結論として、「研究するのはよいが、公的な現場で活用するためには、何も証拠が揃っていない(ので今のままでは使う理由がない)」となる。要は、公的機関、教育機関などで使うには圧倒的に検証結果が足りない、だから使うことを推奨しないという判断になる。非常にロジカルな判断だ。もちろん、自己啓発で使っている分には、一々目くじらを立てることもないのだろうが・・・・『心理療法』と名乗るにはかなり無理があるということだ(笑)。

余談だが、パロアルトのMRI(Mental Research Institute)はメーシー財団などの研究資金を投じて統合失調症に対するミルトン・エリクソン派生の心理療法の研究を行い検証して論文を書いた。ほとんどのメンバーは、スタンフォード・メディカル・スクールの先生。ここで書いた、こういう経路も見えてくるわけで、やはりこの地道な努力は後々ボディーブロウのように効いてきている(笑)。

(つづく)

文献
[1]https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3481516/

記事の内容の正誤について、執筆者は一切保証いたしません。また、本書の内容、エクソサイズなどを実行した結果被った被害などについて著者は一切責任を負わないこととします。本ニュースレターの内容は、以下クリエイティブ・コモンズ・ライセンスに従うものとします。但し、引用元の著作権は引用元に所属します。ご意見、ご感想は次へ tritune'`@''gmail.com
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2016年9月28日水曜日

ミルトン・エリクソンの系譜:エビデンスを読む


                                                                                                                             
 データは行間を読むのが面白いのだよなぁ〜。

 色々な訓練にもなるし・・・・・・(笑)。
 
 <ひとりごと>



データは嘘が少ない

  備忘録として書いておく。

  ここでは、個人的な趣味でデータを読むことを楽しんでいるだけであり、何ら医療的、治療的助言を与えるものではないことを予めお断りしておく。

エリクソン催眠のエビデンス》NCBIのデータベースに「Ericksonian hypnosis in tinnitus therapy (耳鳴りの治療に対するエリクソン催眠)」[1]を見つけ、これを読んでみた。題のとおりに、ランダムではない方法で選ばれた耳鳴りのクライアントに対して、エリクソニアン・アプローチを使い、実際に効果があったのか?をエビデンス・ベースドで検証した文章だ。余談だが、ここでは、二重盲検もやっていなければ、メタ分析もしていないデータが掲載されている。

PATIENTS:A total of 49 patients underwent hypnosis therapy. Fourteen patients failed to finish the therapy (drop-out rate: 35%). Of the 35 patients who completed the therapy, 20 were male and 15 female. The average age was 46.3 years (range 17-78).

患者:総数、49名の患者に対して催眠療法が進められた。14人の患者は治療を最後まで完了できなかった。(脱落率は、35%)。残り35人の患者は治療を完了した。内訳は、男性20人、女性15人。平均年齢は46.3(範囲は17〜78歳)。


脱落の理由が気になる》介入方法は、以下にあるが、患者の約1/3が脱落している。理由は書かれていないが、仮説として推論してみるのは面白い。例えば、方法が胡散臭さ過ぎて最初からついて行く気がなかったとか・・・・方法が難しかったとか・・・・・

INTERVENTION:

The treatment is based on the principles and approaches of Ericksonian hypnosis. The first session was mainly dedicated to the evaluation of the impact of tinnitus on the patient's life and to an explanation of hypnosis therapy. The next sessions were "learning sessions" based on relaxation and mental imaging. Exercises were first based on all senses other than hearing. Then they focused on hearing, teaching patients how to modulate sound intensity, and finally how to modulate tinnitus intensity. Patients also learnt self-hypnosis.
介入:治療は、エリクソン催眠の原則とアプローチに基づいて行われる。最初のセッションは、耳鳴りが患者の生活にどれだけの影響を与えているかの評価、および催眠療法についての説明。次のセッションは、リラックス法とメンタルイメージ法に基づいた「学習セッション」。訓練は、聞くというより全ての五感を使うことで行われる。そして、患者に音の強度を調整する方法を教えた後で、聞くことに焦点を当ててもらう、最終的には、耳鳴りの強度を調整する方法を学んでもらう。患者はさらに、自己催眠を学ぶ。

実際に使われているのは標準アプローチ》マイケル・ヤプコの資料を引いて書いたが、[2]博士号持ちの臨床家は、催眠療法のアプローチを①古典、②標準、③エリクソニアンと3つの比較をする。①古典はおいておくとして、②はスケートでいうと規定演技、武道でいったら演舞、③はスケートでいうとフリースタイル、武道でいうと試合のようなプローチになる。当然、エリクソニアン・アプローチはJazzの即興演奏のように《クライアント毎の個別アプローチ》+《インプロビゼーション》込なので、こういう検証には向いていないという性質を内包していることになる。

自己催眠はどこまで使うのか?》また、自己催眠のやり方は、このあたりで書いた。実際には、外向きトランスだけを使うのか?内向きトランスまで使うのか?の疑問はあるのだが。


MAIN OUTCOME MEASURE(S):

To evaluate the effect of the treatment, tinnitus was assessed with the Tinnitus Handicap Inventory questionnaire before and after the therapy.
主な結果の検証方法:この結果の評価は、治療の前後でTHI [3]の問診で行われる。

RESULTS:

After 5 to 10 sessions (mean: 8.09 + -1.92) of Ericksonian hypnosis therapy, the 35 patients were capable of self-hypnosis with the aim of modulating their tinnitus, and the measured THI score fell for all patients. The global score improved significantly from 60:23 before EH therapy to 16.9 at discharge. Within the group, the initial score was distributed as follows: 0% slight, 14% mild, 31% moderate, 31% severe and 23% catastrophic. The t-test for dependent variables revealed significant improvements in all subgroups (p < or = 0.005).
結果:エリクソン催眠療法の後、5〜10セッション(平均:8.09+-1.92)のエリクソン催眠療法の後、35人の患者が彼らの耳鳴りを調節する目的で、自己催眠することができ、測定THIスコアはすべての患者で低下した。グローバルなスコアは退院時16.9になり、EH療法の前の60:23から大幅に改善した。グループ内では、初期の分布は以下:わずか0%、14%、軽度、中等度31%、31%、重度と23%。従属変数のt検定は、重要なすべてのサブグループで改善した(p <または=0.005)ことが明らかになった。

CONCLUSIONS:

The results of this clinical trial demonstrate that Ericksonian hypnosis, in particular using self-hypnosis, is a promising technique for treating patients with tinnitus.
結論:この臨床試験の結果は、エリクソン催眠は、特定の使用の自己催眠で、耳鳴を持つ患者を治療するための有望な技法であることを示している。
 
セッションは5から10回》治療のゴールをどこに設定するのか?はクライアントとの合意になるが、少なくともセッションが複数回必要だったのは面白い点だろう。エリクソンの名前を出すと1回で治療が完了するといった非現実的な妄想を抱いている人もすくないない。

結果は?》母数が少ない、それと脱落率が高いのは気になる。が、検証結果は、まぁ肯定的だ。何れにしても、事実のデータを読んで、色々推論をするのは結構面白い。

余談だが》個人的には、病理というより、もっと建設的に、演奏する時にもっと聞こえる耳や、リズムに乗れる身体とか、知覚を鍛える方向でエリクソニアン・アプローチを活用できないか?を考えるのは面白いのだろう。まぁ、個人的には、実際にやっているけれど(笑)。
 
(つづく)

文献
[1]https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18225612
[2]http://ori-japan.blogspot.jp/2016/09/blog-post_59.html
[3]https://www.ata.org/sites/default/files/Tinnitus_Handicap_Inventory.pdf

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2016年9月27日火曜日

ミルトン・エリクソンの系譜:《アフリカスミレの女王》 by エリクソン本人


                                                                                                                             
 《ミルウォーキーのアフリカスミレの女王》
 
 エリクソニアンな人たちの間では既に古典落語的な演題のひとつ、

 でも、単なる人情話で終わってはもったいない(笑)。

 <ひとりごと>



人は一人ひとりが唯一無二の存在である・・・・・だから・・・・

   備忘録として書いておく。

逸話から何を学ぶのか?》「ミルウォーキーのアフリカスミレの女王」、有名な話なので、解説する必要もないだろう。知らない人は、「アフリカスミレの女王」で検索してみるとよい。誰かが説明してくれているサイトがみつかるだろう。

 個人的には、エリクソニアンのスティーブン・ギリガンの「The Legacy of Milton H. Erickson : Selected Papers of Stephen Gilligan」[1]の中で読んだのが最初だった記憶がある。もちろん、ジェフリー・ザイクらエリクソニアンと思しき人たちの著作などでもよく見かける逸話であることには違いない。

 面白いことにYoutubeにエリクソン本人が語る「ミルウォーキーのアフリカスミレの女王」がある。ほとんど古典落語の人情話のようなノリなのだが、エリクソン本人が語っているというのが面白いところなのだろう。キャプションは「うつ病」の症例なのだが、この打ち手が万人に使えるわけではないのはそのとおりだ。これから何を学ぶのか?もっと色々なことが学べるようにも思えるのだが、何回が聞いてみるとよいのだろう。その学びも一人ひとり違うのだろうから。

 また、エリクソンがここで書いたエリクソニアン・アプローチのいくつの要件について話しているのか?を考えてみるのも面白いだろう。例えば、エリクソンは精緻な観察に基づいた個別対応をしているし、人と人とのつながりのような外部にある資源・資質(リソース)を活用することを暗黙的に提案している。
 



オハンロン版のアフリカスミレの女王》Youtubeに同じように、エリクソニアンのビル・オハンロンが語る「アフリカスミレの女王」の話が落ちている。オハンロンがエリクソンのこの逸話から何を学んだのか?の視点で聞いてみるのも面白いのだろう。




(つづく)

文献
[1]https://www.amazon.co.jp/dp/1891944908/

記事の内容の正誤について、執筆者は一切保証いたしません。また、本書の内容、エクソサイズなどを実行した結果被った被害などについて著者は一切責任を負わないこととします。本ニュースレターの内容は、以下クリエイティブ・コモンズ・ライセンスに従うものとします。但し、引用元の著作権は引用元に所属します。ご意見、ご感想は次へ tritune'`@''gmail.com
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2016年9月26日月曜日

ミルトン・エリクソンの系譜:クライアントのコトバで話せ


                                                                                                                             
 「セラピストはクライアントのコトバで話せ!」

 でも、バックトラックばかりしても、変化は導けない。

 だったら、クライアントが使っているメタファーを活用しようよ(笑)。

 <ひとりごと>



一つの実装としてのクリーンランゲージ

  備忘録として書いておく。

ミルトン・エリクソンは鏡》心理療法家のミルトン・エリクソンは自身の心理療法を暗黙知としてしか残さなかった。残っているのはクライアントとの対話録、話したメタファー、あるいは逸話くらいだ。

「エリクソンはこう考えた」「エリクソンはこうやった」として残っているのはその研究者や弟子筋の人たちによって体系化されものがほとんどだ。例えば、人類学者のグレゴリー・ベイトソンはサイバネティクスを持ち込み、エリクソンの技法についての理論やモデルを構築した。アーネスト・ロッシは心理学の知識を総動員してエリクソンと本を書いた。グリンダー&バンドラーは初期の生成文法を持ち込み「ミルトン・エリクソンの催眠テクニック」[1][2]にあるモデルをつくった。ジェフリー・ザイクは説明用にエリクソニアン・ダイヤモンドという名称のモデルを使っている・・・・・・・。もし、物理学を持ち込んだ人がいればTOC(Theory of Constraints)のような体系ができていたのかもしれない。しかし、何れの形式知もミルトン・エリクソンそのものではない。海水から塩は出来たが、それを水に溶かしたからと言って海に戻るわけではないのと同じだ。

 もちろん、ここには危険性もある、科学的な思考ができない人がエリクソンを観察すると、「エリクソンは超能力を使っていた」「エリクソンはクライアントの心が透視できた」「エリクソンの体から謎の光線が出てそれが患者を癒やしていた」とかへんてこなスピリチュアルな神話や都市伝説みたいなものが出来上がるという具合だ(笑)。エリクソンは暗黙知しか残していない、そのためエリクソンはその観察者を映す鏡のような働きをする。観察者が科学的なら、科学的に映るし、科学者がスピリチュアルならスピリチュアルに映るという構図がここにある。これは今後もこういう構図が変わることはないだろう。ただ、もっと肯定的に考えると、良くも悪くもエリクソンはクライアントに「ありのままの自分」が見えるの姿見(鏡)を提供していたことになる(笑)。

リッターマンが観察すると》しかし、幸いなことにエリクソンを観察したのは、ほとんどの人は修士号や博士号をもったまともな人だったということだ。例えば、ミシェル・リッターマンはエリクソンの技法を以下のような8原則として捉えている。[3]
  1. 楽天主義者でも悲観主義者でもなく、現実主義者であれ。
  2. セラピストは変化が起こりえる環境をつくるだけで、実際に変化を起こすのはクライアント自身である。
  3. セラピストは必ずクライアントのコトバを用いて語れ、それ以外はあり得ない
  4. 自分の「痛み」を自分の師とせよ。
  5. 変えることのできないことを受け入れよ。
  6. 人の振る舞いを徹底的に観察せよ。理論ではなく、この観察だけが、その状況に即した唯一無二の介入へと導く。
  7. セラピストは「神」ではない、単なる「道先案内人」に過ぎない。
  8. セラピストが「答え」を与える必要はない。セラピストは、クライアントが心を開いて「見る」「聴く」「体験する」手伝いをするだけの存在である。

クライアントのコトバで語るのは難しい》ネットにある映像を見たり、購入した著作を読むと、確かにエリクソンはクライアントの話したコトバを利用して話している。[4] これは非常に重要な点だ。逆に言うと、ネットにある、エリクソンを謳っていながらも、セラピストが、ハイヤーセルフだの、インナーチャイルドだの、前世だの、潜在意識(エリクソンはクライアントには、無意識に、無意識がしか言わない)だの、クライアントが言っていないのに使うのは、そもそも「どインチキ」だということだ(笑)。エリクソン財団のトレーニング・ガイドライン[5]にもそんな話は一切出てこない。もちろん、エリクソンとは無関係の単なるスピリチュアルとしてやる分には勝手にすればよいと思う。誰にでも表現の自由はある。もちろん、反面教師としての学びもある。

 だが、案外「セラピストは必ずクライアントのコトバを用いて語れ、それ以外はあり得ない」という原則は重たい。中途半端なセラピストほど、スピリチュアルでなくても、クライアントのコトバや世界観を傾聴することから始めないで、自分のコトバ、自分の自分の信じていることや概念を押し付ける傾向にあるからだ。

バックトラックだけでは変化は導けない》上を通過しても、セラピストは二項対立に陥る可能性がある。「クライアントのコトバで話さなければならない」が、「バックトラック(オウム返し)だけしていたのでは変化は導けない」という二項対立だ。確かに、オウム返しだけしていても、クライアントの認識の枠組みの変化や行動の変化を支援し、理想の状態に近づくように支援するのは難しい。ミラーリング、バックトラック、ペーシングだけやってラポールをとってもクライアントが変化するわけではないのは明確だ。へっぽこセラピストもどきが陥る落とし穴と言ってもよいかもしれない(笑)。

クライアントのメタファーの変化を支援する》ベイトソンの「Theory of Mind」[6]からすれば、行動や認識の変化のためにはより論理階梯の高いレベルでの変化を支援する必要がある。ということになる。簡単に言えば、クライアントからメタファーを引き出して、これを変化させればよいということになる。これは、リチャード・コップの「クライアント生成メタファー」[7]で説明したところだ。結構学術的だが・・・クライアントの変化を支援する技法の要件のようなものは見えてくる。例えば以下だ。

❶クライアントのコトバだけを使う
❷クライントを制限している枠組みを見つける(ただし、間接的に)
❸クライアント自身でその枠組みを変化させてもらう(ただし、間接的に)
※セラピストのコトバ、信念、価値観をクライアントに押し付けない

普通の人が簡単にメタファーを使うために》自分の思考の枠組みを明示しないで、この要件を満たす技法は何かないか?個人的には、UCバークレーで認知言語学者を教えているジョージ・レイコフの「Philosophy in the flesh」[8]あたりまで手を伸ばしながら、身体表現や身体感覚までを取り扱ったメタファーについて色々探しまわりはじめた。答えは、案外早くみつかる、その一つは「Metaphors in Mind: Transformation Through Symbolic Modeling」[9]というタイトルのシンボリックモデリングとクリーンランゲージと呼ばれる手法について書かれた著作だ。もちろん、こちらには入門書もある、こちが邦訳も出ている「クリーンランゲージ入門」[10]という著作だ。



実は2009年くらいに出版社さんに原書を紹介しておいた本だ。もちろん、個人的には「こんなのありますよ」とご紹介しただけで、翻訳、編集、出版に至る99.9999・・・・%は出版社さん、編集者さん、翻訳者さんの努力の賜物だ。(ただ、まだ重版になっていないのは陳謝いたします)。さて、クリーンランゲージにはいくつかよいことがある。まずは、明示的な「催眠誘導」が必要ないということだ。もちろん、「催眠誘導」に成功したからといって変化に導けるわけではない。これは、エリクソン自身が語っていることだ。[11] また、上で書いた3つの要件を満たしている。つまり、セラピストが自分のコトバ、信念、価値観をおしつけることなく、クライアントの枠組みを変化させるファシリテーション、コーチングが出来るようになる(可能性は高い)ということだ。もちろん、それがウオツラウィックのいう《第一次変化》(既存の枠組みの元での改善)なのか《第二次変化》なのか?(枠組みを超えたイノベーション的変化なのか)はおいておくとして(笑)。

 その意味、最初にここから始めるという考えは悪くないように思う。例えば、肝心なところで気持ちがいつも焦るというクライアントの、『胸にあるバニラアイスクリームがいつも溶けそうな感覚で』とか、『お腹にある砂時計がいつも下に向かって大量に落ちていて、落ち着かない』という(クライアント毎にユニークな)メタファーを引き出してそれを変化させるというのがミソだ。詳細は、著作を読むとよいだろう。もちろん、個人的には普通にエリクソニアンのメタファーを使っているので、ここで立ち止まっている理由は何もないし、正規のトレーナーがいるだろうからそちらにお任せしたい。

クライアントがスピリチュアルだったら?》ちょっと書いておこう。もちろん、クライアントがスピリチュアルだったとしても原則は変わらない。このあたりでちょっと書いた。「セラピストは必ずクライアントのコトバを用いて語れ、それ以外はあり得ない」という原則は相手が誰であっても同じだ。プロフェッショナルは相手によってころころ言うことを変えてはいけない。これは、会社員時代から厳しく言われていることでもある。

 仮ににスピリチュアルがこうじて日常生活に支障をきたしているとしても、説教みたいなのはもっての他だ。エリクソンが取ったアプローチでも分かる。クライアントがスピリチュアルでハイヤーセルフだの、インナーチャイルドだの前世といっている場合も、それをメタファーとすると同じ対応になる。まず、①ラポールをつくってその世界観を認める②メタファーを引き出し、変化させる、③それが実生活でどのような資源・資質となるのか?あるいは、そこから具体的に役立つどんなアイディアが得られたのか?自分の信念や価値観を反映させずに聞くということになるだろう。

 クライアントが言っている変なスピリチュアル用語もクライアントにとって重要なメタファーと考えれば腹も立たないだろう(笑)。エリクソンは、自分はキリストの生まれ変わりだという男に、大工道具を渡した。おそらくこれは、「楽天主義者でも悲観主義者でもなく、現実主義者であれ」の原則に基づく対応だ。重要なのは、妄想のようなメタファーでも、それを現実に適用した時、どのように役立つのか?の現実的な視点に気づいてもらうことだ。

さて、長々と書いた。

結論》人の認識や行動を支援するには、メタファーの活用が必要だ。セラピストが自分のコトバや信念・価値観をクライアントに押し付けないで、クライアントのコトバを使ってクライアントの変化の支援をするのは結構格好がよいことだ。で、その一つの方法としてクリーンランゲージから始めるのはありだ、というのが今日の結論になる。
参考:
Power of Six: 未来を創発させる質問(その1)
http://ori-japan.blogspot.jp/2016/07/the-power-of-six_5.html

Power of Six:未来を創発させる質問(その2)
http://ori-japan.blogspot.jp/2016/07/the-power-of-six_6.html

(つづく)

文献
[1]https://www.amazon.co.jp/dp/4393361237
[2]https://www.amazon.co.jp/dp/4393361245
[3]http://micheleritterman.com/Ten%20Points%20Ericksonian.pdf
[4]http://ori-japan.blogspot.jp/2016/08/195811.html
[5]http://ori-japan.blogspot.jp/2014/08/h.html
[6]http://www.narberthpa.com/Bale/lsbale_dop/gbtom_patp.pdf
[7]http://ori-japan.blogspot.jp/2016/07/blog-post_8.html
[8]https://www.amazon.co.jp/Philosophy-Flesh-George-Lakoff/dp/0465056741
[9]https://www.amazon.co.jp/dp/0953875105/
[10]https://www.amazon.co.jp/dp/4393366336/
[11]http://ori-japan.blogspot.jp/2016/07/blog-post_1.html

記事の内容の正誤について、執筆者は一切保証いたしません。また、本書の内容、エクソサイズなどを実行した結果被った被害などについて著者は一切責任を負わないこととします。本ニュースレターの内容は、以下クリエイティブ・コモンズ・ライセンスに従うものとします。但し、引用元の著作権は引用元に所属します。ご意見、ご感想は次へ tritune'`@''gmail.com
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2016年9月25日日曜日

ミルトン・エリクソンの系譜:NLPのエビデンス


                                                                                                                             
 「効くんだって」の都市伝説だけでは、

 「実際に効果があった」の統計で検証している本流からは

 永久に相手にされない(笑)。

 <ひとりごと>



人心理療法としてのNLP?

  備忘録として書いておく。

  もちろん、個人的には心理療法家というわけではない。単に情報を収集しているだけで、特定の技法を推奨するつもりもないことは予めお断りしておく。

NLPのエビデンス》ネットには情報があふれている。いい加減な情報から、統計的に検証されたある程度の確度を持った情報まで様々だ。

 この中で確度をもったほうの情報として、米国NCBIに掲載されていたのでリンクしておく。

 この情報の内容は、カナダ医薬品・医療機器検査機構が2014年に出版した「Neuro-Linguistic Programming for the Treatment of Adults with Post-Traumatic Stress Disorder, General Anxiety Disorder, or Depression: A Review of Clinical Effectiveness and Guidelines」[1]だ。

 簡単に言うと、大人の①PTSD、②不安障害、③鬱の3つの病状について、NLP(神経言語プログラミング)は効果があるのか?の検証、それとセラピストはこの手法について活用するべきか否かのガイドラインがあるか?についての情報が提供されている。

結論の要約》結論は以下のようになっている。要は、検証しようにもなぁ〜にも学術的に書かれた論文がないので検証しようがない。逆にいうとはなっから都市伝説だけでひっぱる作戦なのだろう(笑)。『証拠がないからといって、利かないということではない』は、論理学の「悪魔の証明」であって詐欺のロジックにしかならない(笑)。


There was no clinical evidence identified on NLP for the treatment of adults with PTSD, GAD, or depression. No guidelines on the use of NLP on patients with PTSD or GAD were found. 

NLPの成人に対する、PTSD、不安障害もしくは鬱に対する治療についての臨床的エヴィデンスは同定されていない。PTSD、もしくは不安障害についてのNLP適用のガイドラインも存在しない。

One SIGN guideline on non-pharmacologic treatments for depression reported that no evidence specific to depression and meeting guideline inclusion criteria was identified for NLP. 

鬱病に対する非薬理学的治療上の1つSIGNガイドラインは、NLPに対する鬱病と面接ガイドラインの採用基準に特定の証拠は同定されなかったことを報告した。

Even though NLP has been suggested for a wide variety of psychological conditions, there are limitations in clinical evidence validating its assumptions. 

NLPは多種多様な心理的なの状態改善のために提案されているにもかかわらず、その仮定を検証する臨床的証拠は限られている。

Reviews and dissertations on NLP have agreed that there is little evidence that NLP interventions improve health-related outcomes in patients with speech anxiety, social anxiety, panic disorder, phobia, or PTSD.

NLPを取り上げた論評および学術論文では、NLPの介入がスピーチ不安、社会不安、パニック障害、恐怖症、またはPTSDの患者における健康関連の成果を改善することについて、ほとんど証拠がないことに合意している。

14–19 In summary, given the lack of available evidence, NLP validity in the treatment of PTSD, GAD or depression is difficult to ascertain.

14-19章の要約として、入手可能な臨床的証拠は限られており、NLPのPTSD、不安障害、鬱病の治療に対する有効性は確認困難である。

 
効果を証明するのは大変だ》このあたりの研究ではCBTが先行していることは認識している。それで、ある技法が既存のCBTより効果があると証明するためには①個別の検証(二重盲検などを含む)②先行事例より効果があることを示す③他の人による追試、④メタ分析、みたいな流れで検証し、先行の方法論より効果があると示さないといけない。このあたりは人の命がかかっていることもあるので責任重大だ。で、その意味ではNLPは、はなっから真面目に検証するのを放棄している、ということにもなる。

 これが今後どのように影響するのは不明だが、効果検証がなされていないことは、少なくとも、現在、病院や公共機関や教育の分野ではNLPが用いられていない大きな理由の一つとなっているのは確かだ。そうなると、結局は自己啓発やセラピーもどき、コーチングなどの分野へ押し出されて行かざるを得ないのだが、個人的には覚めた目で生暖かく見守りたいところだ(笑)。

余話として》同じエリクソン派生のソリューション・フォーカスト・アプローチの場合は、一例として「Effectiveness of solution-focused brief therapy: a systematic qualitative review of controlled outcome studies」[2]というのが見つかる。CBTののっている土俵にやっと幕内下位番付で対戦する権利を得たくらいの位置づけなのだろうが、今後には期待したいところだ。個人的には、ゴルゴ13ではないが、プロの使用に足る検証された道具を使いたいというのはある(笑)。

(つづく)

文献
[1]http://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK254043/
[2]http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmedhealth/PMH0056400/

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2016年9月24日土曜日

家族療法の系譜:実験的家族療法


                                                                                                                             
 「人類の限界に挑戦!」

 そんな時代の実験的家族療法。

 今はコンプライアンスがきつくて、そんな実験は難しい(笑)。

 <ひとりごと>



実験的家族療法

  備忘録として書いておく。

ウィタカーとサティア》心理療法の一派として「家族療法」[1]がある。エビデンス・ベースド・アプローチが取られているのと、現在でも大学などで継続されて研究されている手法の一つだ。個人的には組織マネジメントの理論・技法として平和利用させてもらっている(笑)。家族療法の一流派でウィタカーとサティアにより行われた「実験的家族療法」についてのよくまとまったスライドが公開されていたのでリンクしておく。




実験的家族療法のはじまり》実験的家族療法は、1960年代の人間回帰やヒューマン・ポテンシャル・ムーブメントを背景にし、①ゲシュタルト療法、②サイコドラマ、③エンカウンター・グループなどを背景として登場した心理療法だ。ここで、重要な役割を果たすのがカール・ウィタカー(1912-1995)とヴァージニア・サティア(1916-1988)の2人だ。個人的には観光でサティアが教えていたカリフォルニアのエサレン研究所にも立ち寄ったことはあるのだが、現在は「人間の限界に挑戦」から「癒やしまったり」系に変わったというのを昔ワークショップに参加したことがあるという複数人から聞いた。このようなワークショップは、1960年代「人類を月へ送る」「俺たちに限界はない!」のような少しクレージな時代に、すこし頭のネジの外れた人たちによって「人間の限界に挑戦!」のようなノリで行われていたというのは頭の片隅に入れておく必要があるだろう。

ある意味大雑把》ある意味、この学派の特徴は大雑把だ、家族に存在する根本原因は、「感情の抑圧」にあると考える、相手に対して自分の弱みをさらけ出すことで、相手はあなたに対して慈愛を示す、みたいな考え方だ。で、理論ははっきりしないがエンカウンター的なエクソサイズをグループでやってみる、自分の弱みをさらけ出す、相手はそれを受け止める・・・・。大雑把に言えばこんな感じで、やっていることも大雑把だ。だから、大雑把な人には合っているだろう。大雑把だから自己啓発にも取り入れるのが容易だ(笑)。エンカウンターをやたら大人数でやっているのが、なんたら〜・ロビンズ(笑)。自分の秘密を相手と共有することで、つながりができたような錯覚に陥る。実施の効果より、自分を認めてもらう集団に対して宗教のようにはまっていく性質があるのは要注意だ。

代表的なエクソサイズ》この流派の代表的なエクソサイズは以下のようなものがある。詳細はスライドの説明を参照。

  • 家族スカルプティング
  • 家族パペットインタビュー
  • 動物への回帰
  • 家族アート療法
  • 家族お絵かきガッチャンコ
  • プレイセラピー
  • ロールプレイ
  • ゲシュタルトの技法(エンプティ・チェア)
サティアはサティア・カテゴリーの見立てはやっていたようだが[2]、単に実施する分にはあまり頭を使わないものばかりだ。もちろん、最終的なゴールは楽しむことではなくて、彼らの定義する、自分の副人格であるパート(Parts)同士の調和(Congruence)と家族の調和ということになる。

 この副人格同士の葛藤を調整するエクソサイズとしては「Parts Party 」という名前で知られているが、このあたり[3]と読むと詳しく書いてある。もっとも、簡単いうと単なる弁証法的なアプローチということになる。もちろん、最近はこれをパクったNLP(Neuro-Linguistic Programming)の連中のほうが偉そうにしているので、こちらのほうで知られているのかもしれない。

   何れにしても、大雑把の中にも緻密さを求めるような方向で行かないと単なる自己啓発のクソゲーに陥るように思えてくるのが心配な流派ではある(笑)。

(つづく)

文献
[1]http://ori-japan.blogspot.jp/2016/07/blog-post_20.html
[2]http://ori-japan.blogspot.jp/2016/06/40.html
[3]http://www.psychotherapy.net/data/uploads/5113e4b6b7d5d.pdf

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2016年9月23日金曜日

ミルトン・エリクソンの系譜:INSEADの組織変革コーチング


                                                                                                                             
 着飾っていても、中身が変わるわけじゃない(笑)。

 <ひとりごと>



結局は変化の理屈と実践(笑)

  備忘録として書いておく。

成分表示が嬉しい》INSEAD[1]のサイトに掲載されていたリーダー・シップコーチングの資料を読んだ。[2]  このコーチングは、個人や組織を対象にリーダー・シップを発揮して組織へ変革をもたらすために活用されるコーチングとして開発されている、との但書がある。面白いと思ったのは、「変化をファシリテートするモデルとして」心理療法の理論や知見が取り入れられて、それが成分表示されている点だ。具体的には以下になる。

  • 精神分析/短期的な動的心理療法
  • パラドクス介入
  • 肯定的リフレーミング
  • 組織の動力学理論
  • 認知/行動への介入
  • AI(アプリシエイティブ・インクワイアリー)
  • マネジメント理論
  • 動機付けの面接

ミルトン・エリクソンの影響下にある》で、さらに面白いのは「パラドクス介入」は米国カリフォルニア州パロアルトにあった心理療法の研究機関であるMRI(Mental Research Institute)のポール・ウォツラィックからの引用[3]、で「肯定的リフレーミング」はこの資料ではアルバート・バンドゥーラの「自己効力感」を向上させるため、と書いてあるが、最初にリフレーミングと命名したのはやはりウォツラィックらだ[4]

 ウォツラィックらのもう一つの肩書はスタンフォード・メディカル・スクールの教員+元々はオーストリア出身、また論文も色々あるし、INSEADのような欧州を代表する教育機関で素性のはっきりしない研究を引用できない立場の人たちからすると使い勝手がよいということなのだろう。で、ウォツラィックらを手繰っていくと当然、心理療法家のミルトン・エリクソンに行き着くということになる。少なくとも、パラドクス介入とリフレーミングについてはそうだ。

催眠がなくても変化は起こせる》ウォツラィックらの功績の一つは、催眠を使わなくても、適切な状況設定と介入があれば、催眠を使った場合と同じように認識や行動に変化が起こせることを明示した点だろう[5]。これによって普通の対話によるコーチングでも変化が起こる、という理屈が確立されたことになる。やはりビジネスの場面では、催眠、催眠というのはセンスが悪い。

個人的な再編集》INSEADのコーチングを個人的にはどう組み立て直すだろうか?こういうことを考えるのはとても面白い。個人的には以下のようにしたい。

  • 精神分析/短期的な動的心理療法 →バッサリ削除
  • パラドクス介入 → 残す、ただしエリクソン、MRI、ミラノ派の濃いやつにする
  • 肯定的リフレーミング → 残す、ただし、エリクソン、MRI色を濃くする
  • 組織の動力学理論 → ベイトソンと家族療法の知見を入れる
  • 認知/行動への介入 →  MRIとソリューション・フォーカスにする
  • AI(アプリシエイティブ・インクワイアリー)→そのまま残す、システム思考を強化
  • マネジメント理論 → ベイトソンと家族療法の知見を入れる
  • 動機付け → アルバート・バンドゥーラの自己効力感の理論にする
  • おまけ → 西海岸系のゆるゆる風味をプラス(笑)
 いつもとやっていることは、あまり変わらないのかもしれないが、自分であれこれやり始めると、ベイトソン味とエリクソン味を混ぜ混ぜしたかなり濃い味のものになるのは間違いない(笑)。

(つづく)

文献
[1]https://ja.wikipedia.org/wiki/INSEAD
[2]http://sites.insead.edu/facultyresearch/research/doc.cfm?did=38545
[3]http://ori-japan.blogspot.jp/2012/04/blog-post_14.html
[4]http://ori-japan.blogspot.jp/2015/12/2015.html
[5]http://ori-japan.blogspot.jp/2012/01/blog-post_23.html

記事の内容の正誤について、執筆者は一切保証いたしません。また、本書の内容、エクソサイズなどを実行した結果被った被害などについて著者は一切責任を負わないこととします。本ニュースレターの内容は、以下クリエイティブ・コモンズ・ライセンスに従うものとします。但し、引用元の著作権は引用元に所属します。ご意見、ご感想は次へ tritune'`@''gmail.com
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2016年9月22日木曜日

ミルトン・エリクソンの系譜:セラピストとクラアントとの関係性は?


                                                                                                                             
 コミュニケーションのスキル、

 ミラーリング、ペーシング、マッチング、

 ただし、関係性に介入できないで終わるのは単なるノータリン(笑)。

 <ひとりごと>



セラピストとクライアントの関係性は?

  備忘録として書いておく。

グレゴリー・ベイトソンに学ぶ》別に心理療法をやっているわけでも、やりたいわけでもないが、ベイトソンが処女作「Naven」で観察した人や組織の関係性は①組織のマネジメント、②コーチング、はたまた③個人的な人間関係の構築・維持および縁切り(笑)などに適用可能で、その応用範囲は限りなく広い。だから、これを学んでいる、ということになる。

以前書いた記事の続きだが、エリクソニアンのジェフリー・ザイクの著作にベイトソンを引いたヘイリーを引いた以下の説明がある。[1]ここから話を始めたい。おばぁちゃんと孫の対話だが、へりくだったおばぁちゃんが孫を振り回しているような会話が前段にある。

(訳は適当)


While Grandma presents herself in a clearly one-down role, she is, however,controlling and defining the relationship in much the same way as a one-up person might. Bateson described this position as metacomplementary ( Haley, 1963).

おばぁちゃんは、(孫より)一段下手に出ているにもかかわらず、一段上手に出ている人と同じように関係を決めて制御している。ベイトソンはこの立ち位置を「メタ・コンプリメンタリー(メタ相補)」と表現した(ヘイリー, 1963)。

A metacomplementary bind occurs when a person goes one-down in order to get one-up. It is a bind because these individuals do not experience themselves as one-up.All symptoms are to some extent metacomplementary binds. In traditional psychiatric nomenclature, this process is known as `secondary gain.'

メタ・コンプリメンタリーの拘束は、ある人が一段下手に出て、相手を一段上に押し上げた時におこる。これは拘束である、理由は(一段上に押し上げられた)個々人は、自分では押し上げられたと気がついていないためだ。これは伝統的な精神医学の用語では、このプロセスは「二次利得」として知られている。

 
別に日本だけの専売特許ではない》これは、日本語でいうと謙譲語のような世界だが、身の回りでも思いたることは多い。例えば、一段へりくだって旦那さんを立てているようだが、実は手綱をしっかり握っている奥さん。一段へりくだって社長を立てているようだが、実は仕事の日程と量をしっかり管理して社長を動かしている秘書さん。一段へりくだってお客さんを持ち上げながらも、しっかり自分の要求を通す営業・・・・・など事例にはことかかない。こういった関係は、なまじ喧嘩腰でくるわけではないので面倒臭い関係でもある(笑)。もっと笑うところはベイトソンは相手に要望を聞いてもらうために強権を発動しない一つのやり方としてこんな関係はお見通しだったということだ。また、心理療法家のミルトン・エリクソンは一段へりくだって自分を振り回そうとするクライアントに対して関係を変えることなく上手に対処していた、ということになる。

関係は変化する》ベイトソンはサイバネティクスを持ち込んでこんな関係を取り出したが、この関係にも限度はある。行き過ぎると関係は壊れてしまうことになる。ここでは、関係が壊れるプロセスと壊さないようにするための打ち手はそのうち書くことにする。興味があれば調べてみるとよいだろう。

 《プロのクライアントに振り回されるな》上と同じザイクの著作におなじようにヘイリーを引いた以下の説明がある。[2] ここではクライアントがセラピストから一段へりくだった状態で、いつものようにセラピストを振り回そうとする、というのが前提となっている。セラピストは面倒臭いプロのクライアントに振り回されないようにするにはどうするのか?相手を一段へりくだったままにしておいて拘束を受けないようにするのはどうするのか?がここでのテーマとなる。もちろん、この技法は、一段へりくだって旦那さんを持ち上げながらもしっかり手綱を握っている奥さんとの関係で主導権を少しでも引き戻そうとしている旦那さんにも応用可能だ(笑)。


5) To therapeutically control the relationship: Patients often learn maladaptive, manipulative and self-defeating relationship patterns. Anecdotes are an effective tool that can be used in controlling the relationship so that the patient is kept in a "one-down" complementary position (d., Haley, 1963).

関係を治療的に制御するために:患者はしばしば、不適合や巧みな操作、それに自己破壊的な関係のパターンを学ぶ。逸話は、患者が「一段へりくだった」相補的位置に保持されたままで、関係を制御するのに使用することができる効果的なツールである。

Such a tactic by the therapist can be therapeutic for some patients who are rigid and who have problems being comfortable and effective when in a one-down position. Through the use of anecdotes, they can learn something about being secure although in a one-down position in a relationship.

セラピストによるこのような戦術は一段へりくだった立場で、抱えている問題が効果的で快適だと思っている頑ななクライアントに対して治癒的に作用する。逸話を活用することで、クライアントは一段へりくだった立場にいるにもかかわらず自分の立場が安全であることを学ぶことができる。

Anecdotes can keep a patient "off balance," so he/she cannot use habitual methods to control relationships. Through the use of anecdotes, patients can become secure in the knowledge that there is someone that they cannot manipulate with their symptomatology.

逸話は、患者が不意をつかれた状態にしておくことができる、そのため患者は関係を制御するいつもの方法を使うことができない。逸話を使うことをとおして、患者は彼らの症状を使って彼らを操作する人が居ないということが分かって平静を保つことができる。

 
エリクソンの逸話について、Youtubeを参照すると以下のようなものがみつかる。逸話の内容は、物事を先送りをしていた同僚マックスの話だ。


どのような関係性のもとで話されたか?》 ここでは、話の内容というより、例えば、クライアントがエリクソンより一段へりくだったメタ・コンプリメンタリーな関係にある場合に、何の意図を持ってクライアントに話したのか?を想像力を働かせて考えてみるのも面白いのだろう。何が話されたのかより、どのような関係性のもとでそれが話されたのかを考えることで、色々なものが見えてくるようにも思えるのだが。


参考:心理療法におけるメタファーの活用
http://ori-japan.blogspot.jp/2013/11/blog-post_4.html

(つづく)

文献
[1]http://bscw.rediris.es/pub/bscw.cgi/d4523270/Zeig-Injunctive_communication_relational_dynamics.pdf
[2]https://www.hypnosisalliance.com/articles/Ericksons%20Use%20Of%20Anecdotes%20-%20A%20Teaching%20Seminar%20With%20Milton%20Erickson.pdf

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2016年9月21日水曜日

ミルトン・エリクソンの系譜:入門編のゴニョゴニョゴニョ


                                                                                                                             
 言われていることは、そこそこ重要。

 言われていないことは、もっともっと重要(笑)。

 <ひとりごと>



エリクソニアンな人たちは今でも仲良しな感じはする(笑

   備忘録として書いておく。


エリクソンのドキュメンタリーを視聴》 Youtubeに落ちていたミルトン・エリクソンのドキュメンタリーを視聴。細かい話は論文・著作を読んで確認しないといけないとは思うのだが、これはこれで面白い。




感想文+ネタ帳

  • ケイ・トンプソンもジョン・ウィークランドもエリクソンのことを話している時は子供に戻ったみたいなよい顔をしている。
  • Evolution of Phycotherapy は未だに続いている、次回は2017年12月のアナハイム [1]
  • ジェフリー・ザイクやアーネスト・ロッシが若い[2]
  • エリクソン家の人たちがやたら高学歴[3]
  • 登場人物の多くが博士号持ち
  • 長女のキャロル・エリクソンさんが出ていないのはゴニョゴニョゴニョ[4]
  • ランクトンさんは昔からスーツできちんとしている[5]
  • ランクトンさんの奥さんが可愛い
  • ちょっと昔のヘイリーさんはガリ勉くんみたいな感じ
  • ヘイリーさんの奥さんがやたら美人
  • アーネスト・ヒルガードが角川映画の要人のチョイ役みたいな感じで登場[6]
  • ギリガンさんが解散前のビートルズのメンバーみたいな感じで登場[7]
  • エリクソンさんの奥さんの髪型が黒柳徹子さん風[8]
  • 時代背景とか雰囲気はつかめる、が技法は何も分からない
  • その他、ゴニョゴニョゴニョ(笑)



(つづく)

文献
[1]http://www.evolutionofpsychotherapy.com/
[2]http://ori-japan.blogspot.jp/2012/07/blog-post_22.html
[3]http://ori-japan.blogspot.jp/2012/05/blog-post_29.html
[4]http://ori-japan.blogspot.jp/2014/07/blog-post_21.html
[5]http://ori-japan.blogspot.jp/2013/03/blog-post_8.html
[6]http://ori-japan.blogspot.jp/2016/06/blog-post_18.html
[7]http://ori-japan.blogspot.jp/search/label/%E5%8F%82%E8%80%83%E6%96%87%E7%8C%AE
[8]http://ori-japan.blogspot.jp/2012/03/10_13.html

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