2016年11月13日日曜日

ミルトン・エリクソンの系譜:エリクソニアン・アプローチ再考(その5)


                                                                                                                            
 プロ野球のピッチャーの速球派?

 本当は多次元に物事を見ないと定義も何もあったものじゃない(笑)。

 <ひとりごと>



許容的アプローチとは何か?

  備忘録として書いておく。

  ネットにエリクソニアンのマイケル・ヤプコのドキュメントが落ちていた。タイトルは「What is Ericksonian Hypnosis?」[1]で比較表を含んでいる。さらに、これにちょっと追記して眺めてみた。

項目
古典(権威的)
標準(学術研究)    
エリクソニアン(利用)
個別対応
催眠状態は日常の延長
自然主義的
セラピストのスタンス
権威主義的
権威主義的/許容的
権威主義的/許容的
指示に従わせる
力関係
セラピストが強い
セラピストが強い
対等
指向
コンテンツ
コンテンツ
コンテンツ/プロセス
催眠導入の成功率
一部
かかる人だけが対象
一部
かからない人も統計を取る
基本的に全員
※催眠の定義の変更
抵抗の源泉
自己のみ
自己のみ
対人/自己
(家族療法への応用可)
抵抗への対処
対立もしくは解釈
対立もしくは解釈
利用
(ユーティライゼーション)
催眠の深さを強調
正規の催眠感受性テスト
治療プロセスの構造
直線的
直線的
モザイク
セラピストの洞察の価値
症状の意図の見方
否定的
否定的
肯定的
症状の原因
自己
自己
対人/自己
(家族療法への応用可)
症状に対処/動態に対処
両方/いずれか
症状に対処
両方/いずれか
二次利得の認識
無意識の性質
否定的
(問題の原因)
否定的
(問題の原因)
中立
(問題の原因、解決の資源)
無意識の役割
受動的
受動的
能動的
暗示の有効性を強調
(経験の再構築をより強調)
介入で示唆される因果
直線的
直線的
円環的
パラドクス介入
利用アプローチはなし
計画されたパラドクス
利用アプローチに加えて
パラドクス介入
カウンターパラドクス介入

 4つ目の項目は、ミルトン・エリクソンの権威主義的あるいは許容的アプローチ。この話は基本エリクソンの言葉使い特に示唆(あるいは暗示)と言われているスタイルについての説明だ。

   まず、薄っぺらい説明から始める。権威主義的アプローチとは学校の先生が生徒に命令するような口調で指示、あるいは示唆を行うこと。許容的アプローチとは、いくつもの選択肢を示し、Aもあれば、Bもあれば、Cもあります、どれが良いですか?という指示、あるいは示唆を指す。それで、ミルトン・エリクソンは字面からは許容的アプローチが多かったと言われている。大きな理由は、クライアントの抵抗を回避するためだ。

    もちろん、こういった単純な二元論は物事の本質をわかりにくくしている。あるいは、表面の現象だけを見て判断するような薄っぺらい認識論につながりやすい。

 野球のピッチャーに「速球派」か「変化球派」かといったような分類がある。もちろん、普通の人はなんとなく「速球派」のように分類して分かった気になってしまう。しかし、「速球派」とは何を指すのか?を考えると。

  • 最高速が155Km/h 以上の球を投げる
  • 平均球速が145km/h 以上である
  • ここぞという時の決め球がストレートである
  • ストレートを中心にストライクのカウントを稼ぐ
  • その他
 のように、評価の軸は定量、定性を含めた多次元になるのが普通だ。もっというと、物事は多次元に見ないと見えてこない。これは、人類学者のグレゴリー・ベイトソンが二重記述/多重記述せよと言っていたことと共通する。

 話をもとに戻そう。ネットにエリクソニアンのゴディン、ランクトン、ザイクの3人げエリクソンの示唆(暗示)を分析したドキュメントがアップされている。[2]

 面白いのは、ここで5つの軸が導入されていることだ。具体的には以下になる。

❶記憶の想起 vs.  指示順守(命令)
❷可視的 vs. 不可視的 (指示あるいは反応が見えるか否か)
❸許容的 vs. 否許容的
❹無意識の反応を暗示 vs. 反応を暗示しない
❺無意識の仲介 vs. 意識の仲介

   それで、前出の3人が調査したエリクソンの示唆(暗示)のパターンは以下。




 面白いのは、例えば、許容的アプローチについても8割がたはそうかもしれないが、2割は権威主義的な示唆を使っていることだ。これは、速球派のピッチャーでも変化球を投げないわけではない、というのと同じだ。あくまでも速い球を投げるのが目的ではなく、三振や打たせて取るというのが目的と同じで、クライアントの認識や行動の変化の支援のためには手段を選ばない、あくまでもこういった示唆は手段でしかないということだ。

 また、ここで分かるのは物事を多次元で見る重要性だ。もちろん、ここで5つの軸から見たからといってエリクソンが理解できるわけではない。しかし、相対的に一つの軸で二項対立だけ、ここの場合は許容的か権威主義的かだけの軸で見るよりは随分ましになっているのだろう。




(つづく)

文献
[1]https://www.hypnosisalliance.com/articles/What%20Is%20Ericksonian%20Hypnosis%20-%20Michael%20Yapki%20-%20Bernie%20Zilbergeld%20-%20Gerald%20Edelstein%20-%20Daniel%20Araoz.pdf
[2]https://www.hypnosisalliance.com/articles/Evocation%20And%20Indirect%20Suggestion%20-%20Godin%20Lankton%20And%20Zeig.pdf

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