2016年11月14日月曜日

ミルトン・エリクソンの系譜:エリクソニアン・アプローチ再考(その6)


                                                                                                                            
 変えられることがあるとすれば、それは関係性だけ。

 変えられることがあるとすれば、それは関係性だけ。

 それ以外のことを変えようとすると、すげー大変(笑)。

 <ひとりごと>



変化=(関係性への介入)✖(ユーティライゼーション)

  備忘録として書いておく。

  ネットにエリクソニアンのマイケル・ヤプコのドキュメントが落ちていた。タイトルは「What is Ericksonian Hypnosis?」[1]で比較表を含んでいる。さらに、これにちょっと追記して眺めてみた。

項目
古典(権威的)
標準(学術研究)    
エリクソニアン(利用)
個別対応
催眠状態は日常の延長
自然主義的
セラピストのスタンス
権威主義的
権威主義的/許容的
権威主義的/許容的
指示に従わせる
力関係
セラピストが強い
セラピストが強い
対等
指向
コンテンツ
コンテンツ
コンテンツ/プロセス
催眠導入の成功率
一部
かかる人だけが対象
一部
かからない人も統計を取る
基本的に全員
※催眠の定義の変更
抵抗の源泉
自己のみ
自己のみ
対人/自己
(家族療法への応用可)
抵抗への対処
対立もしくは解釈
対立もしくは解釈
利用
(ユーティライゼーション)
催眠の深さを強調
正規の催眠感受性テスト
治療プロセスの構造
直線的
直線的
モザイク
セラピストの洞察の価値
症状の意図の見方
否定的
否定的
肯定的
症状の原因
自己
自己
対人/自己
(家族療法への応用可)
症状に対処/動態に対処
両方/いずれか
症状に対処
両方/いずれか
二次利得の認識
無意識の性質
否定的
(問題の原因)
否定的
(問題の原因)
中立
(問題の原因、解決の資源)
無意識の役割
受動的
受動的
能動的
暗示の有効性を強調
(経験の再構築をより強調)
介入で示唆される因果
直線的
直線的
円環的
パラドクス介入
利用アプローチはなし
計画されたパラドクス
利用アプローチに加えて
パラドクス介入
カウンターパラドクス介入

5番目は、指示に従わせる度合い、だ。確かに、エリクソンはクライアントに指示を出しそれを順守するように言うこともある。ただし、この度合いは低い。

 また、エリクソンの示唆は、ほとんどの場合関係性を変えるために行う。しかもほぼ例外なくユーティライゼーション(利用)アプローチとなる。[2]   つまり、エリクソンの示唆は現在の関係のアヤを利用し、この関係自体に介入するやり方になる。もちろん、こう考えたのはベイトソンを中心とする後の研究者たちだ。

 余談だが、自己啓発などで「紙に書けば願いは叶う」とか「夢を脳にインストール」などとわけの分からない表現は多い。もちろん、これは単なる手段であって、「紙に書こうが」「脳にインストール」などといっても結局は、実体としての関係が(ゴールを達成できる可能性が上がるように)変われば何か変化が起こるし、変わらなければ何も起こらない、というただこれだけの話ではある(笑)。ただし、ある程度確立されたお作法は守る必要がある。これ以外の方法がないわけではないのだろうが、おそらくこのお作法を守らずに新しい方法を探すとなると、大量の砂からほんの一粒、2粒の砂金を見つける、ような努力が必要なると予想されるからだ。

 さて、非常に単純化すると、関係には、2種類ある。一つは外的な世界での対人関係。もうひとつは、個人の心の中の関係だ。もちろん、この2つは相互作用する。自己の投影としての世界、それと世界の投影としての自己。これらの循環を考える。ある意味、仏教的な世界観[3]であり、ベイトソンの円環的因果関係[4]ということになる。

 これを勝手に図に起こすと以下のようになるだろう。ここでは単純化するために、振る舞いや反応、あるいは認識の粒度は考えていない。

対人関係
 
  クライアントの視点から考える、例えば、対人関係についていくつかの介入方法が考えられる。一つは、自分と相手との関係性。エリクソンからみたらAさんとBさんとの人間関係。これは後の研究者はコミュニケーションの公理[5]などのフレームワークを当てて見る。ここで方向性は2つ。コンプリメンタリーな関係を強化するか?シンメトリカルなエスカレーションを止めるか?ということになるだろう。エリクソンの事例だと、コンプリメンタリーな関係が行き過ぎてお互い興味を持てなくなったアル中の奥さんがいるご夫婦のコンプリメンタリーな関係を強化した事例がみつかる。[6]

 また、対人関係には、組織としての全体とクライアント個人の関係のような円環的因果関係を考慮した関係が考慮される。例えば、夫婦仲が悪くて、子どもが家族療法でいうIPとなって悪戯ばかりしているような場合だ。この場合は子どもに介入するというより、夫婦間の関係に介入するような方法を取るということになるだろう。この事例では、エリクソンでは有名な「アフリカスミレの女王」の例があるだろう。教会に参加しているが、信者の集団とはコンプリメンタリーな関係が行き過ぎて、ほとんど話をしないということが考えられる。この場合、信者の集団とのコンプリメンタリーな関係を強化した事例が見つかるということになる。

 後は、同じように個人とコンテクストあるは集団との関係をユーディライズ(利用)するような形式での示唆(暗示)を考えるということになる。

個人の心の中の関係

 2つ目は、に個人の心の中の関係考慮する。非常に単純化すると、意識に上がっていること、意識に上がっていない無意識のことの2だ。もちろん、ここでは単純な2元論で敢えて語っている。さらに、ここに円環的因果関係を考慮して、意識に上がっている一部としての意識、意識に上がってない全体的な集合としての無意識という具合だ。このあたりを体系化したのが例えばエリクソニアンのスティーブン・ギリガンの自己間関係理論/療法(Self-Relation theory/therapy)[7]となる。ここらへんで書いたが、「アフリカスミレの女王」の話もギリガンの見立てでは、自己間関係理論で見て3つの副人格で見立てを行っていた。

 これと類似では、意識している心Aと意識している心Bの関係性に介入するやり方としては、MRIにも在籍した、家族療法家のバージニア・サティアの「Part's Party」[8]がある。

 また、意識と無意識の関係を変えるには、エリクソニアンのスティーブン・ランクトンの示唆(暗示)もしくは意識−無意識のダブル・バインドのパターンを使うということになる。[9]

変化は必ず時系列

 3つ目は、時系列的な変化は、さらに関係性の時系列的な変化を示唆するようなことを行う。エリクソン+ベイトソン派生のミラノ派家族療法の質問を読むとこれがよく理解できる。[10] 例えば以下のような感じだ。

・その関係が問題となったのはいつぐらいからか?
・関係悪化が最も憂慮されたのはいつか?
・関係悪化があまり気にならなかったのはいつごろか?
・その関係はいつ頃解決されると思うか?
・その関係の修復を早める/遅らせるためにはどうしたらよいか?
・関係の修復の手助けとなる/障害となる人は誰か?その関係性をどうしたらよいか?

 もちろん、エリクソンはこういった趣旨の示唆を例えば、メタファーを使ったり、第三者的な視点を示唆したりと間接的[11]に行うことになる。

 で、このあたりのことはリフレーミングのところで書いたが、[12] ベイトソンの世界観、あるいはウンベルト・マトゥラーナやフランシスコ・ヴァレラの世界観にでもよいかもしれないが、より構成主義的な世界観で見ないと見えてこないところではある。

 もちろん、この何がよいのか?

 このあたりまで理解できて、はじめて個人のコーチングから企業組織の変革あたりまで統合的に同じ理屈で取り扱えるようになる、ということだ。


(つづく)

文献
[1]https://www.hypnosisalliance.com/articles/What%20Is%20Ericksonian%20Hypnosis%20-%20Michael%20Yapki%20-%20Bernie%20Zilbergeld%20-%20Gerald%20Edelstein%20-%20Daniel%20Araoz.pdf
[2]http://ori-japan.blogspot.jp/2016/10/blog-post_5.html
[3]http://www.middlebury.edu/media/view/440049/original/waldron_buddhist_steps_to_an_ecology_of_mind0.pdf
[4]https://www.researchgate.net/profile/Paul_Dell/publication/227845207_In_Defense_of_Lineal_Causality/links/544008710cf21227a11ba1a2.pdf
[5]https://en.wikipedia.org/wiki/Paul_Watzlawick
[6]http://ori-japan.blogspot.jp/2013/02/blog-post_10.html
[7]https://en.wikipedia.org/wiki/Self-relations_psychotherapy
[8]https://journals.uvic.ca/index.php/satir/article/download/15083/6027
[9]http://lankton.com/handouts/suggestion.pdf
[10]http://ift-malta.com/wp-content/uploads/2013/06/Circular-Questioining-an-introductory-guide.pdf
[11]http://ori-japan.blogspot.jp/2013/03/blog-post_12.html
[12]http://ori-japan.blogspot.jp/2016/11/blog-post_8.html

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