2016年11月15日火曜日

ミルトン・エリクソンの系譜:エリクソニアン・アプローチ再考(その7)


                                                                                                                            
 言葉は、「イコールパートナーシップ」というけれど、

 これを関係として維持していくのは仕事上でも日常生活でも案外難しい(笑)。

 <ひとりごと>



弱い立場は強い立場?

  備忘録として書いておく。

  ネットにエリクソニアンのマイケル・ヤプコのドキュメントが落ちていた。タイトルは「What is Ericksonian Hypnosis?」[1]で比較表を含んでいる。さらに、これにちょっと追記して眺めてみた。

項目
古典(権威的)
標準(学術研究)    
エリクソニアン(利用)
個別対応
催眠状態は日常の延長
自然主義的
セラピストのスタンス
権威主義的
権威主義的/許容的
権威主義的/許容的
指示に従わせる
力関係
セラピストが強い
セラピストが強い
対等
指向
コンテンツ
コンテンツ
コンテンツ/プロセス
催眠導入の成功率
一部
かかる人だけが対象
一部
かからない人も統計を取る
基本的に全員
※催眠の定義の変更
抵抗の源泉
自己のみ
自己のみ
対人/自己
(家族療法への応用可)
抵抗への対処
対立もしくは解釈
対立もしくは解釈
利用
(ユーティライゼーション)
催眠の深さを強調
正規の催眠感受性テスト
治療プロセスの構造
直線的
直線的
モザイク
セラピストの洞察の価値
症状の意図の見方
否定的
否定的
肯定的
症状の原因
自己
自己
対人/自己
(家族療法への応用可)
症状に対処/動態に対処
両方/いずれか
症状に対処
両方/いずれか
二次利得の認識
無意識の性質
否定的
(問題の原因)
否定的
(問題の原因)
中立
(問題の原因、解決の資源)
無意識の役割
受動的
受動的
能動的
暗示の有効性を強調
(経験の再構築をより強調)
介入で示唆される因果
直線的
直線的
円環的
パラドクス介入
利用アプローチはなし
計画されたパラドクス
利用アプローチに加えて
パラドクス介入
カウンターパラドクス介入


    6つ目の項目は、セラピストとクライアントの力関係だ。

 ミルトン・エリクソンの場合は、クライアントの力関係は「対等」を取る。もちろん、これは後の研究者の研究によって明らかにされていることだ。力関係はコミュニケーションのパターンに現れる。

 さて、「対等?だからどうした?」と思考停止になってはいけない。逆に「対等ではない」力関係ならどうなるのか?を考えてみると案外面白くて深い。

 もちろん、ここではネットに溢れているような古典催眠厨の「お前を支配してやる〜」のような単純な支配ー非支配者の関係を言っているのではない(笑)。

 本当に厄介なのは、クライアントがセラピストに「ちゃんと私の治療結果に責任を持ってくださいね。あなたプロなんでしょう?」「私は弱い立場なんだからちゃんとかまってくださいね」というような暗黙的な態度でクレーマーになるわけでもなく、自分の決断や行動にコミットするわけでもなく、エリクソンの文献的に言うと、メタ・コンプリメンタリー(後述)な関係でセラピストがバインド(ダブルバインド)されてダラダラ続くのが問題なのだ。

 このあたりで書いたが、クライアントがへりくだって「いつになったら助けてくれるのですか?」とうつろな目でつぶやく。セラピストは自信たっぷりに「任せてください」といったものか、あるいは「他と一緒であまり期待しないでくださいね」といったものか?ある意味バインドされてしまう、というような場合だ。

 もちろん、ここで書いたが、ベイトソンたちがマジックミラーを使ってセラピスト自体をスーパーバイズできるような仕組みにもしているのは、こういった状況に陥った時に、セラピストにメタの視点からそのバインドを外せるように示唆をするためでもある。
 

 さて、ブリーフセラピーの理論の一つになっているのは、「コミュニケーションの(試案的)公理」[2]だ。これはグレゴリー・ベイトソンのニューギニアでのイアトムル族のフィールドワークから出発している。

  で家族療法の文献を読むとコミュニケーションのパターンとして以下が提示されている。[3]

①シンメトリカル
②コンプリメンタリー
③レシプロカル
④メタ・シンメトリカル
⑤メタ・コンプリメンタリー

 それで、メタ・シンメトリカルは「私のことを同等に扱って」と相手に押し付けるような関係、メタ・コンプリメンタリーは「私のことに責任を持って」と相手に押し付けるようなパターンだ。エリクソンはクライアントを同等に扱っていたわけだから、問題になるのは、メタ・コンプリメンタリーな場合だ。

 ここで少し書いたが、要はメタ・コンプリメンタリーな関係はバインド(ダブルバインド)の一種でセラピストが拘束されている状態だと考えられる。この関係を変えるためにエリクソンは逸話、あるいはメタファーを使ったことが報告されている。このあたりの対処は、「Metaphoria」[4]に書いてあった。

 何れにしても、一口にクライアントとセラピストとの関係で「対等」と言っても、セラピスト側がラポールを取る以外にもっと高度な技法でバインドから抜け出さないと構築できない場合もあることはあるのだろう。上で書いたが、本当はメタの視点からそのバインドを外すための示唆があればこころ強い。

 さて、セラピストではなくても、日常生活でも仕事の場面でも、強権的に何かを命令されているわけではないが、なんとなく言うことを聞かなければいけないような雰囲気にハマっていることはある。

 この状況はメタ・コンプリメンタリーな関係でバインドされて起こっているいる可能性がある。このような状況から抜けだして相手と「対等」な関係を築きたかったらエリクソンの技法が参考になるだろう。


(つづく)

文献
[1]https://www.hypnosisalliance.com/articles/What%20Is%20Ericksonian%20Hypnosis%20-%20Mic
hael%20Yapki%20-%20Bernie%20Zilbergeld%20-%20Gerald%20Edelstein%20-%20Daniel%20Araoz.pdf
[2]https://en.wikipedia.org/wiki/Paul_Watzlawick
[3]http://ori-japan.blogspot.jp/2016/09/blog-post_46.html
[4]http://ori-japan.blogspot.jp/2013/11/blog-post_4.html

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