2016年11月16日水曜日

ミルトン・エリクソンの系譜:エリクソニアン・アプローチ再考(その8)


                                                                                                                             
 分けたら→分かる、だけだったら

 第二次サイバネティクスはいらない(笑)。

 <ひとりごと>



コンテンツかプロセスか?

備忘録として書いておく。

  ネットにエリクソニアンのマイケル・ヤプコのドキュメントが落ちていた。タイトルは「What is Ericksonian Hypnosis?」[1]で比較表を含んでいる。さらに、これにちょっと追記して眺めてみた。

項目
古典(権威的)
標準(学術研究)    
エリクソニアン(利用)
個別対応
催眠状態は日常の延長
自然主義的
セラピストのスタンス
権威主義的
権威主義的/許容的
権威主義的/許容的
指示に従わせる
力関係
セラピストが強い
セラピストが強い
対等
指向
コンテンツ
コンテンツ
コンテンツ/プロセス
催眠導入の成功率
一部
かかる人だけが対象
一部
かからない人も統計を取る
基本的に全員
※催眠の定義の変更
抵抗の源泉
自己のみ
自己のみ
対人/自己
(家族療法への応用可)
抵抗への対処
対立もしくは解釈
対立もしくは解釈
利用
(ユーティライゼーション)
催眠の深さを強調
正規の催眠感受性テスト
治療プロセスの構造
直線的
直線的
モザイク
セラピストの洞察の価値
症状の意図の見方
否定的
否定的
肯定的
症状の原因
自己
自己
対人/自己
(家族療法への応用可)
症状に対処/動態に対処
両方/いずれか
症状に対処
両方/いずれか
二次利得の認識
無意識の性質
否定的
(問題の原因)
否定的
(問題の原因)
中立
(問題の原因、解決の資源)
無意識の役割
受動的
受動的
能動的
暗示の有効性を強調
(経験の再構築をより強調)
介入で示唆される因果
直線的
直線的
円環的
パラドクス介入
利用アプローチはなし
計画されたパラドクス
利用アプローチに加えて
パラドクス介入
カウンターパラドクス介入


 7つめは、プロセス指向かコンテンツ指向か?という話だ。エリクソンはこの何れか?あるいは両方を扱う。

 まず、比喩から始める。プロジェクト・マネジメントで作成する成果物の一つでWBSというのがある。[2] これは行う作業、あるいは作成される成果物をロジック・ツリーの構造にまとめた図だ。作業内容、担当者、期日などが明示される。それで、このWBSには3三種類がある、❶プロセス指向、やるべき行動を切り口にまとめる、❷成果物指向、つくるモノを切り口にまとめる、❸前者2つの混在、それぞれに作成したもの。


 エリクソンの場合もこれに似ている。最終的に到達したいゴールを思い浮かべるようにクライアントに促す。この場合、WBSと同じように、行動に焦点を当て、「どの順番で何をすればよいのか?」これがプロセス指向ということになる。また、得られるモノに焦点を当て「何を得たいのか?」のモノ明示を促す。これがコンテンツ指向ということになる。もちろん、プロジェクトの場合と異なり、エリクソンの場合は、ここになりたい自己とか心身状態とか人間関係も含まれることになる。

 で、どちらがよいのか?

 そういう問いはあまり建設的ではない。何か困った時は、相互に翻訳してみることだ。大抵の人は得られるモノだけに焦点が当たってる。この場合、これをプロセス指向で記述してみる。また、これをコンテンツ指向に変換してみる。また、これをプロセス指向で記述してみる。これを何回かやってみる。得たいモノがぼやけていても、これを明示するというプロセスは定義できる。同じことをプロセス指向、コンテンツ指向の両方で記述してみるというのは、ベイトソンの二重記述、多重記述の変奏でもある。[3]

 細かい話を書いておくと、プロジェクト・マネジメントの場合は心身二元論のデカルトの世界での構造化、エリクソンの場合はベイトソンの非二元論で一時的に認識を分割するようなやり方になる。[4]

   したがって、組織や人の認識や行動を扱う時は、単なる無生物の製品等を作成するようなノリでロジック・ツリーやWBSを作成すると上手くいかないということになる。逆に言うと生き物を扱う場合は、ベイトソンではないが必然的に円環的因果関係を扱うことになる。このあたりの話は、コンサルタントが使う二元論のツールはどのような限界があるのか?またその限界を超えるにはどのような方法があるのか?を元マッキンゼーのコンサルタントが第二次サイバネティクス[5]やオートポイエーシスの文脈で書いた「循環思考」[6]を読むとよいだろう。


(つづく)

文献
[1]https://www.hypnosisalliance.com/articles/What%20Is%20Ericksonian%20Hypnosis%20-%20Mic
hael%20Yapki%20-%20Bernie%20Zilbergeld%20-%20Gerald%20Edelstein%20-%20Daniel%20Araoz.pdf
[2]https://en.wikipedia.org/wiki/Work_breakdown_structure
[3]http://link.springer.com/chapter/10.1007%2F978-1-4020-6706-8_6#page-1
[4]http://ori-japan.blogspot.jp/2016/11/blog-post_8.html
[5]http://ori-japan.blogspot.jp/2012/06/blog-post_27.html
[6]https://www.amazon.co.jp/dp/4492557075/

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