2016年11月17日木曜日

ミルトン・エリクソンの系譜:エリクソニアン・アプローチ再考(その9)


                                                                                                                             
 特定の物事に囚われてしまっていると

 全体の構図が見えなくなる。

 <ひとりごと>



焦点を絞るが、より全体的なところを見る

  備忘録として書いておく。

  ネットにエリクソニアンのマイケル・ヤプコのドキュメントが落ちていた。タイトルは「What is Ericksonian Hypnosis?」[1]で比較表を含んでいる。さらに、これにちょっと追記して眺めてみた。


項目
古典(権威的)
標準(学術研究)    
エリクソニアン(利用)
個別対応
催眠状態は日常の延長
自然主義的
セラピストのスタンス
権威主義的
権威主義的/許容的
権威主義的/許容的
指示に従わせる
力関係
セラピストが強い
セラピストが強い
対等
指向
コンテンツ
コンテンツ
コンテンツ/プロセス
催眠導入の成功率
一部
かかる人だけが対象
一部
かからない人も統計を取る
基本的に全員
※催眠の定義の変更
抵抗の源泉
自己のみ
自己のみ
対人/自己
(家族療法への応用可)
抵抗への対処
対立もしくは解釈
対立もしくは解釈
利用
(ユーティライゼーション)
催眠の深さを強調
正規の催眠感受性テスト
治療プロセスの構造
直線的
直線的
モザイク
セラピストの洞察の価値
症状の意図の見方
否定的
否定的
肯定的
症状の原因
自己
自己
対人/自己
(家族療法への応用可)
症状に対処/動態に対処
両方/いずれか
症状に対処
両方/いずれか
二次利得の認識
無意識の性質
否定的
(問題の原因)
否定的
(問題の原因)
中立
(問題の原因、解決の資源)
無意識の役割
受動的
受動的
能動的
暗示の有効性を強調
(経験の再構築をより強調)
介入で示唆される因果
直線的
直線的
円環的
パラドクス介入
利用アプローチはなし
計画されたパラドクス
利用アプローチに加えて
パラドクス介入
カウンターパラドクス介入


 8つ目は、催眠導入の成功率だ。ミルトン・エリクソンは、トランスの定義を変えた。トランス状態は日常だれでも経験している自然な心身状態であり適切なファシリテーションがあれば誰でも例外なくこの状態に入れるとした。

 もちろん、学術的にはトランスは状態かどうか?という議論があるのは知っている。また、トランス状態はその人ひとり一人違っているし、その状態に入るやり方は千差万別色々な方法がある、またその状態に入るためには何でも使い倒すユーティライゼーション・アプローチになるというのがエリクソンのやり方になる。

 余談だがここにも、エリクソンの「ひとり一人は唯一無二の個人である。心理療法は個々人のニーズの独自性を満たせるように処方されるべきであり、人間の行動の理論を画一的にその人に当てはめるべきではない」という哲学が生きている。[2]

 また、トランス状態を経験するためには、まず、ベティ・エリクソンの自己催眠あたりからはじめてみるのもよいだろう。[3] エリクソンに「トランスの定義とは何か?」と聞くと「それをコトバで定義すること自体が制限になる」とある意味、Not Knowing (無知の知)アプローチを示唆するような答えになっている。[4] やはりその意味では実際に経験することと、経験をコトバで記述することの間には良くも悪くも深い何かが存在していることになる。

 以前書いたが、エリクソンは「さて、催眠それ自体が何かをするということはありません。しかし、催眠はうまくいくための好ましい(情緒的)雰囲気をあなたに与えてくれます。」とだけ言っている。[5]

 一般的に、クライアントは何かの問題や心配事に囚われた状態でセラピーにやってくる。この状態のままだとクライアントは過去の失敗への後悔、将来への漠然とした不安、自分は被害者だという自己中心的な視点、こういったことに焦点が当たってしまう。

 この状態を一旦保留して、ちょっと違うところに焦点を当てるきっかけとなるのがトランス状態だ。問題が起こっているより広い状況、現在の状況と将来のありたい姿、否定的なことの例外、自分の強みなど、エリクソンは、心身状態の変化を促すと共に、この状態でよりシステミックかつ戦略的に物事を見ることができるように誘導してくれることになる。

 もちろん、誘導する側もマインドフルネスな状態でクライアントのことをよく観察する必要がある。もちろん特定の物事に囚われるのではなく周辺視野も使ってより全体的なところをだ。[6] 物事はサイバネティクス的にいつも相互作用に焦点を当てなければならない。クライアントをマインドフルネスな状態に導くためには、まずセラピストがマインドフルネスな状態でなければらない。想定外の出来事が起きてもうろたえてはいけない。これを冷静に使い倒すのがエリクソンの本質であるユーティライゼーション・アプローチだ。[7]  こういった状況を想定して、ベティ・エリクソンの自己催眠の練習をしながらユーティライゼーションの練習もあわせてやってみるのもよいだろう。

    さて、もう少し学術的にトランスの特徴を知りたければ、座右の書でもあるエリクソニアンのスティーブン・ギリガンの「Therapeutic Trances」[8]を読むとよいだろう。ここに現象学的に見たトランス状態の12の特徴が書かれている。

(つづく)

文献
[1]https://www.hypnosisalliance.com/articles/What%20Is%20Ericksonian%20Hypnosis%20-%20Michael%20Yapki%20-%20Bernie%20Zilbergeld%20-%20Gerald%20Edelstein%20-%20Daniel%20Araoz.pdf
[2]http://ori-japan.blogspot.jp/2016/11/2.html
[3]http://ori-japan.blogspot.jp/2012/03/10_13.html
[4]http://ori-japan.blogspot.jp/2016/11/blog-post_12.html
[5]http://ori-japan.blogspot.jp/2016/07/blog-post_1.html
[6]http://ori-japan.blogspot.jp/2016/11/blog-post_2.html
[7]http://ori-japan.blogspot.jp/2016/10/blog-post_5.html
[8]https://books.google.co.jp/books?id=rNe8zXXAqDEC&pg=PA46

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