2016年11月18日金曜日

ミルトン・エリクソンの系譜:エリクソニアン・アプローチ再考(その10)


                                                                                                                             
 低気圧と高気圧の差異で風が生まれる。

 ある認識とある認識の差異で抵抗が生まれる(笑)。

 <ひとりごと>



変化に抵抗はつきものだ

  備忘録として書いておく。

  ネットにエリクソニアンのマイケル・ヤプコのドキュメントが落ちていた。タイトルは「What is Ericksonian Hypnosis?」[1]で比較表を含んでいる。さらに、これにちょっと追記して眺めてみた。

項目
古典(権威的)
標準(学術研究)    
エリクソニアン(利用)
個別対応
催眠状態は日常の延長
自然主義的
セラピストのスタンス
権威主義的
権威主義的/許容的
権威主義的/許容的
指示に従わせる
力関係
セラピストが強い
セラピストが強い
対等
指向
コンテンツ
コンテンツ
コンテンツ/プロセス
催眠導入の成功率
一部
かかる人だけが対象
一部
かからない人も統計を取る
基本的に全員
※催眠の定義の変更
抵抗の源泉
自己のみ
自己のみ
対人/自己
(家族療法への応用可)
抵抗への対処
対立もしくは解釈
対立もしくは解釈
利用
(ユーティライゼーション)
催眠の深さを強調
正規の催眠感受性テスト
治療プロセスの構造
直線的
直線的
モザイク
セラピストの洞察の価値
症状の意図の見方
否定的
否定的
肯定的
症状の原因
自己
自己
対人/自己
(家族療法への応用可)
症状に対処/動態に対処
両方/いずれか
症状に対処
両方/いずれか
二次利得の認識
無意識の性質
否定的
(問題の原因)
否定的
(問題の原因)
中立
(問題の原因、解決の資源)
無意識の役割
受動的
受動的
能動的
暗示の有効性を強調
(経験の再構築をより強調)
介入で示唆される因果
直線的
直線的
円環的
パラドクス介入
利用アプローチはなし
計画されたパラドクス
利用アプローチに加えて
パラドクス介入
カウンターパラドクス介入

 9つ目は抵抗の源泉だ。人は変化に対して抵抗する。エリクソンは、この抵抗について

  • 自分自身の変化への抵抗
  • 他人から受ける変化への抵抗
 
 この両方を取り扱う。これは、ミルトン・エリクソンの研究を行った米国カリフォルニア州パロアルトにあるMRI(Mental Research Institute)の研究者がエリクソンの技法を、研究した結果だ。彼らは、エリクソンの技法を戦略とコミュニケーションの2つに還元して考えた。

  • (戦略)現状から理想に成り行く戦略
  • (コミュニケーション)自己間、あるいは対人間のコミュニケーション
 
 抵抗とは、ある人が変化を起こそうとして、既存の枠組み(Frame of reference)や信念システム(Belief System) に抗して何か新しいことを考え、あたらしい行動を起こすことに対しての抵抗や摩擦となる。

 もちろん、抵抗が際立ってくるのはエリクソンの根底にあるのが(現状から理想に成り行く)戦略的なモデルだから、というのがある。[2] 力学的には作用・反作用があり、押せばおすほど押し返す力は強くなる。また、コミュニケーション、特に特定のメタ・コミュニケーションの元ではダブルバインドの状態が生まれ統合失調症の原因となりうることを指摘したのもMRIの研究チームだ。[3] もちろん、現在、統合失調症の原因仮説としてダブルバインドは随分怪しくなっているようだが、治療プロセスとしての治療的ダブルバインドのほうは健在のようだ・・・・


 抵抗を考えてみると以下のようになるだろう。


   

抵抗1:わたし、わたしたちに問題、課題は存在していない。(現状)
抵抗2:あなたには、わたしたちの問題、課題が分かっていない。(現状)
抵抗3:問題の解決方向、方針に同意できない。(理想)
抵抗4:その解決策では望んだ結果を生まない。(理想)
抵抗5:解決策はよいが、思わぬ副作用を生む可能性が高い。(理想)
抵抗6:解決策を実行することが非常に困難である。(方法、プロセス)
抵抗7:変化することに、コトバに言えないほど恐怖を感じる。(方法、プロセス)

 
 例えば、自分自身での変化への抵抗を考えてみる。


  • 問題を抱えていても、問題は存在していない、とフタをしている
  • 現状の問題、課題を直視していない、あるいは目をそむけている
  • 問題の解決方向、方針が分からない
  • 何かやろうとしてもそれでは望んだ結果を生まないと途方にくれている
  • それをやってもよいけれど、大きな副作用を生みそうで躊躇している
  • 解決策を実行するのに時間やお金や労力が掛かり過ぎる
  • 考えたり、実行することにコトバに言えないほど恐怖を感じる
 
 というようなことがある。ここでは個人の心の中の問題、課題を中心に取り扱うことになる。もちろん、病理を扱う場合は心理療法の形式になり、病理を扱わない場合はコーチングやコンサルティングというようなことになるだろう。

 余談だが、通常コンサルティングは基本的に戦略モデルなので同じモデルを持つミルトン・エリクソンとは非常に相性がよい。もちろん、通常のコンサルティングはデカルトの二元論に陥りやすいが、エリクソンの場合はベイトソン的な非二元論のモデルになる。[3]といっても難しく考える必要はない、要は循環、つまり悪循環や善循環のパターンまで考えるということだ。

 また、家族や集団の場合は以下のようになるだろう。

  • 誰もが問題は存在していないと、とフタをしている。あるいは、特定の人間が問題、問題と指摘していてウザい
  • 誰もが問題、課題を直視していない、あるいは目をそむけている。あるいは、特定の人間が問題を直視しろと騒いでいてウザい
  • 誰もが問題の解決法、方針が分からない。あるいは言っていることがそれぞれバラバラでまとまりがない
  • 何かをやろうとしても望んだ結果を生まないと騒いでいる人間がいてウザい
  • 何かをやろうとしても副作用が大きいと騒いでいる人間がいてウザい
  • 解決策を実行するのに時間やお金や労力が掛かり過ぎると言う人間がいてウザい
  • 感情だけで何にでも反対している人間がいてウザい

 2人以上人が集まれば、どこにでもありそうな光景だ。もちろん、誰かが騒ぎ始めればよいのだろうが、仕事の場面だとニコニコされて「やり過ごされる」というようなことが多くありそうだ。これもある意味抵抗のパターンだが、ある意味対処がもっとも厄介なパターンでもある。

    さて、集団を取り扱おうとすると家族療法のような形式になる。これは、エリクソン+MRI派生のミラノ派家族療法のところで書いた話になってくる。[4] この場合、現状の課題を明示共有し、現状のダブルバインド的なコミュニケーションの構図にパラドクスやカウンター・パラドクスを当てそのコミュニケーションのパターンからぬけ出す方法あたりまで書いた。

 何れにしても、エリクソニアン・アプローチは個人の問題・課題でも家族、組織のような問題・課題の何れにも適応可能だし、その技法もあるということになる。

(つづく)

文献
[1]https://www.hypnosisalliance.com/articles/What%20Is%20Ericksonian%20Hypnosis%20-%20Michael%20Yapki%20-%20Bernie%20Zilbergeld%20-%20Gerald%20Edelstein%20-%20Daniel%20Araoz.pdf
[2]http://ori-japan.blogspot.jp/2016/07/blog-post_14.html
[3]https://en.wikipedia.org/wiki/Double_bind
[4]http://ori-japan.blogspot.jp/2016/11/blog-post_8.html
[5]http://ori-japan.blogspot.jp/2016/10/blog-post_11.html

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