2016年11月22日火曜日

ミルトン・エリクソンの系譜:エリクソニアン・アプローチ再考(その14)


                                                                                                                             
 おバカな会社にとってPDCAサイクルはもはや宗教(笑)。

 もちろん、これがネガティブ・フィードバック・ループで

 偏差を縮小させて品質を安定させる目的が分かっているのならよいのだろうけれど(笑)。

 <ひとりごと>



ポジティブ・フィードバック・ループは一見いい加減にみえる

備忘録として書いておく。

  ネットにエリクソニアンのマイケル・ヤプコのドキュメントが落ちていた。タイトルは「What is Ericksonian Hypnosis?」[1]で比較表を含んでいる。さらに、これにちょっと追記して眺めてみた。  

項目
古典(権威的)
標準(学術研究)    
エリクソニアン(利用)
個別対応
催眠状態は日常の延長
自然主義的
セラピストのスタンス
権威主義的
権威主義的/許容的
権威主義的/許容的
指示に従わせる
力関係
セラピストが強い
セラピストが強い
対等
指向
コンテンツ
コンテンツ
コンテンツ/プロセス
催眠導入の成功率
一部
かかる人だけが対象
一部
かからない人も統計を取る
基本的に全員
※催眠の定義の変更
抵抗の源泉
自己のみ
自己のみ
対人/自己
(家族療法への応用可)
抵抗への対処
対立もしくは解釈
対立もしくは解釈
利用
(ユーティライゼーション)
催眠の深さを強調
正規の非暗示性テスト
治療プロセスの構造
直線的
直線的
モザイク
セラピストの洞察の価値
症状の意図の見方
否定的
否定的
肯定的
症状の原因
自己
自己
対人/自己
(家族療法への応用可)
症状に対処/動態に対処
両方/いずれか
症状に対処
両方/いずれか
二次利得の認識
無意識の性質
否定的
(問題の原因)
否定的
(問題の原因)
中立
(問題の原因、解決の資源)
無意識の役割
受動的
受動的
能動的
暗示の有効性を強調
(経験の再構築をより強調)
介入で示唆される因果
直線的
直線的
円環的
パラドクス介入
利用アプローチはなし
計画されたパラドクス
利用アプローチに加えて
パラドクス介入
カウンターパラドクス介入


13番目は治療プロセスだ。ミルトン・エリクソンの技法は直線的なプロセスではなく、モザイクになる。

 直線的なプロセスとは予め決められて手順を順番どおりに実行する方法だ。



 ミルトン・エリクソンはクライアントの反応によって都度対応を変えていることがあり、技法だけに着目するとモザイク状になる。つまり、手順は直線ではなく、あることを繰り返したり、ある手順を飛ばしたり、順番を変えたり、自由自在というわけだ。
 もちろん、これでは他の人が再現するのは困難だ。そこで、ベイトソンらのMRI(Mental Research Institute)の研究チームはここに(第二次)サイバネティクス[2]を持ち込んでこのプロセスの解明を試みた。もちろん、変化を促すセラピストの技法と変化するクライアントや家族の両方、あるいはその両方の関係性に適応した。

 結論から言うと、ミルトン・エリクソンの治療プロセスはポジティブ・フィードバック・ループとなる。だから、エリクソンのプロセスをPDCAのようなネガティブ・フィードバック・ループと同列に扱ってはならない。

 ネットに落ちていた資料にこんな記述がある。[3]


MRI therapists are guided by the principles derived from cybernetics. Cybernetics is the study of how information-processing systems are self-correcting, controlled by feedback loops. Feedback loops are the mechanisms or cycles of interactions through which information is returned to the system and exerts an influence on it. There are both negative and positive feedback loops.

MRIのセラピストたちは、サイバネティクスから派生した原則を指針とした。サイバネティクスは情報処理システムが自己補正的でフィードバック・ループによりどのように制御されているのかを研究する学問である。フィードバック・ループは、情報がシステムに戻され、それに影響を及ぼす相互作用のメカニズムもしくはサイクルである。これにはネガティブ・フィードバック・ループ(負の帰還ループ)とポジティブ・フィードバック・ループ(正の帰還ループ)がある。


話を続ける


Negative Feedback Loops are ways that families correct a deviation in family functioning so as to return it to a previous state of homeostasis.

ネガティブ・フィードバック・ループは、家族が恒常性の以前の状態に戻すように家族の機能における偏差を訂正する方法である。


 家族という組織にサイバネティクスを適用した例だ。要は現状維持を指向し、ある決められた基準から偏差が広がらないように制御されるのがネガティブ・フィードバック・ループとなる。例えば、エアコンで室温を23℃に設定すると、外気が寒くなれば23℃を維持するように部屋を温め、外気が暑くなれば23℃を維持するために部屋を冷やすような制御だ。


 これが家族や組織のような場合だと、恒常性を目的とした現状維持、同調圧力がこれにあたる。これが問題の要因となることもある。反対に、家族のみならず企業組織が新しいやり方を身に付ける場合、ネガティブ・フィードバック・ループのプロセスを回すことは適当ではない。理由はこれ自体が現状維持を目的としたものであり変化を指向するのとは正反対の方向にあるからだ。

話を続ける



Positive Feedback Loops (Deviation Amplification) arise as a family attempts to add new information into the system. This can occur as a part of the growth process or increasing levels of complexity.

ポジティブ・フィードバック・ループ(偏差増幅)は、家族が新しい情報をシステムに追加した時に起こる。これは、成長プロセスの一部として、もしくは複雑さのレベルの増加として発生する可能性がある。

Positive feedback loops are assumed to be responsible for the development of problems in families as they attempt solutions that worsen or maintain the problem.

 ポジティブ・フィードバック・ループは、問題を悪化させたり維持したりする解決策を試みる際に、家族の問題の発生の要因となると考えられている。

 For example, if a child misbehaves, i.e., deviates from the norm (the family problem) because he is jealous of a new sibling and the father responds with harsh or punishing behavior (an attempted solution), it confirms the child’s belief that he is loved less, and his behavior worsens (the deviation is amplified).

例えば、子どもの一人が悪戯をしているとする。問題は家族の基準(偏差)から外れている、それはこの子どもが兄弟への嫉妬と父親がその振る舞いを罰すること(問題の解決の試み)から起きている。これは悪戯する子どもの「自分は愛されていない」という信念と悪戯をさらに強化する(偏差の増加)につながる。

MRI interventions would be aimed at changing the pattern of interaction so that the father could help the child calm his behavior and show him that he is not loved less.

MRIの介入はやり取りのパターンを変えることを目的とするだろう。これは、父親が悪戯する子どもを大人しくさせるために、やりとりのパターンを変えてこ父親がその子どもを他の兄弟より愛していないわけではないと示すことが助けになるだろう。


この場合は、子どもと父親の関係はメタ・シンメトリカル[4]となる。子どもの要望は「父親をして、他の子どもと同じように扱え」という関係だ。これが現在はエスカレーションしているような状態となっている。そこで、このメタ・シンメトリカルな関係を崩すのがここでの介入となる。

もちろん、ミルトン・エリクソンやブリーフセラピーの技法は、対象となるシステムが変化を促進できるように人間関係にあるポジティブ・フィードバック・ループを崩すあるいは促進するような介入となる。また、セラピスト自体がポジティブ・フィードバック・ループを使った介入になる。

 余談だが、最近ビジネス上で着目されている今までのやり方からの変化を指向したサイクルとしてはOODAなどが着目されている。[5]


(つづく)

文献
[1]https://www.hypnosisalliance.com/articles/What%20Is%20Ericksonian%20Hypnosis%20-%20Michael%20Yapki%20-%20Bernie%20Zilbergeld%20-%20Gerald%20Edelstein%20-%20Daniel%20Araoz.pdf
[2]http://ori-japan.blogspot.jp/2012/06/blog-post_27.html
[3]https://fso.com/pdf/sg_chpt4.pdf
[4]http://ori-japan.blogspot.jp/2016/09/blog-post_46.html
[5]https://en.wikipedia.org/wiki/OODA_loop

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