2016年11月26日土曜日

ミルトン・エリクソンの系譜:エリクソニアン・アプローチ再考(その18)


                                                                                                                             
 ここ一番のプレゼンの場面、

 用意しなければならないのはパラドクスを一服盛ったメタファーだなぁ(笑)。

 <ひとりごと>



急がばまわれ!

  備忘録として書いておく。

  ネットにエリクソニアンのマイケル・ヤプコのドキュメントが落ちていた。タイトルは「What is Ericksonian Hypnosis?」[1]で比較表を含んでいる。さらに、これにちょっと追記して眺めてみた。  

項目
古典(権威的)
標準(学術研究)    
エリクソニアン(利用)
個別対応
催眠状態は日常の延長
自然主義的
セラピストのスタンス
権威主義的
権威主義的/許容的
権威主義的/許容的
指示に従わせる
力関係
セラピストが強い
セラピストが強い
対等
指向
コンテンツ
コンテンツ
コンテンツ/プロセス
催眠導入の成功率
一部
かかる人だけが対象
一部
かからない人も統計を取る
基本的に全員
※催眠の定義の変更
抵抗の源泉
自己のみ
自己のみ
対人/自己
(家族療法への応用可)
抵抗への対処
対立もしくは解釈
対立もしくは解釈
利用
(ユーティライゼーション)
催眠の深さを強調
正規の非暗示性テスト
治療プロセスの構造
直線的
直線的
モザイク
セラピストの洞察の価値
症状の意図の見方
否定的
否定的
肯定的
症状の原因
自己
自己
対人/自己
(家族療法への応用可)
症状に対処/動態に対処
両方/いずれか
症状に対処
両方/いずれか
二次利得の認識
無意識の性質
否定的
(問題の原因)
否定的
(問題の原因)
中立
(問題の原因、解決の資源)
無意識の役割
受動的
受動的
能動的
暗示の有効性を強調
(経験の再構築をより強調)
介入で示唆される因果
直線的
直線的
円環的
パラドクス介入
利用アプローチはなし
計画されたパラドクス
利用アプローチに加えて
パラドクス介入
カウンターパラドクス介入

    17番目は、症状そのものを扱うか?その周縁の複雑な系の動態(Dynamics)を扱うのか?だ。エリクソンはどちから一方、もしくは両方を扱う。

  個人的に少し誤解していたところがあったので改めてネットに落ちていたヤプコの「Hypnotic and Strategic Intervention in the treatment of Anorexia Nervosa」[2]を読んでみた。1986年に American Journal of Clinical Hypnosis の学術論文へ記載とのキャプションがある。

 内容は、拒食症への対応だ。最初にお断りしておくが、単にこのドキュメントを読んでいるだけであり、ここではなんら医療的もしくは治療的アドバイスを与える意図はないことをお断りしておく。ただし、エリクソニアン的な治療戦略の理解には役立つし、日常生活や仕事の場面でも無意識のレベルから思考の枠組みや行動を変える支援をするためには役に立つだろう。理由は、軽いトランス状態でメタファー[3]を話しているだけだからだ。

 サマリーを読むと以下のようになる。

Direct Hypnotic suggestion has been used successfully in the treatment of anorexia nervosa. However, in those cases where resistance to such procedures can hamper progress , indirect approaches such as metaphors, behavioral prescriptions, reframing, and other strategies can be used.  The applications of these approaches to the four dynamics most commonly associated with anorexia , 1)family enmeshment, 2)delaying of maturity ,3) poor self-esteem, and 4)distorted body image, are discussed.

 直接的な催眠暗示は、神経性の拒食症の治療に成功裏に使用されている。しかし、そのような手順への抵抗が治療の進捗を妨げるようなケースでは、間接的アプローチ、例えば、メタファー、行動指示、リフレーミングなどが使われている。これらのアプローチは神経性の拒食症に関連する4つの動態、1)家族の摂食、2)(性的)成熟の遅れ、3)自尊心の欠如、および4)歪んだボディー・イメージへの応用が議論される。

 
 症状はそう単純ではない。しかし、症状そのものに対処しても問題は解決しないことも多い。だから動態へ働きかける。そのために、ここではエリクソニアンらしく間接暗示の形態のひとつとしてメタファーが使われていることになる。[4] エリクソニアンのメタファーなので原則セラピストが(クライアントの認識の枠組み Frame of reference や信念システム Belief System )へ働きかけるセラピストがつくったメタファーをデリバーする形式となる。

   ここでの、ねらいは、なんでも相手(家族)に合わせることはなく、自分で決めることは自分で決めてください、ということを間接的に示唆、しかもパラドクスを使って、ということなっている。もちろん、メタファーは含みがある。多重のメッセージが込められている。例えば、以下、 Swallow (一気に飲み込め)などを示唆しているのも興味深いところだ。エリクソンの言語パターンについては前につらつら書いた。[5]

 ちょっと読んで見る。もちろん、メタファーの部分をだ・・・




... the "hippies" of my generation rebelled against authority, grew their hair long, wore flowers and painted peace signs on their faces to be different ... and each wore the emblems of their ideals ... the faded and patched jeans , the tie-dyed shirts , and all thought of themselves as unique individuals ... but when all the hippies got together ... and all looked the same ... individuality was nowhere to be seen ... just one more long-haired hippie after another ... and each one has had to learn to express herself in her own way ... and having to look a certain way just to fit in at the cost of being one's self was too high a price for many to pay ... and each person must decide for herself when to swallow the fulfilling recognition that she can look the healthiest way she wants to ... and that's a healthy conclusion to reach ...

  ぼくらの世代の「ヒッピーたち」は、権力に反抗し、髪を伸ばしっぱなしにし、花を身につけピースサインを顔に書いて、違いをあらわすために理想を書いたエンブレムを縫い付けて.... 色あせてパッチのあたったジーンズをはいて、絞り染めのシャツを着て、自分たちは唯一無二の存在だという考えがすべてでした.... けれども、全部のヒッピーたちが集まった時... すべては同じように見えました... 個性はどこにも見られませんでした... どこを切ってもロン毛のヒッピーの金太郎飴だったのです...それぞれが自分のやり方で自分自身を表現することを学ばなければなりませんでした...そして自分自身であることを犠牲にしてぴったり合うように特定の方法を見なければならないことは、多くの人が支払うには高すぎる犠牲でした...それぞれの人は、自分自身(彼女自身)が望んでいる最も健康な方法をみつけるころができるという充実した認識を飲み込むとき、自分自身のために決める必要があります
... それがいきつく健全な結論です....


 日本語にすると多少ニュアンスが伝わりにくいところはある。しかし、面白いのは「個性をだそうと指向する人たちが集まることで逆に似たり寄ったりになっている」というパラドクスを示唆しているところから始まる。そして、集団同調することは必ずしもそれぞれのメンバーにとって有益なことではなく、害があることも多いという示唆だ。

 メタファーを聞いている側はこれを自分に重ねるだろう。特によく出来たメタファーはそうだろう。そうやって状況設定が行われることになる。この構図はバインドやダブル・バインド的だ。例えば、『不思議な国のアリス』にバタ付き蝶という名前の、頭が砂糖でできて、水を飲めば頭が溶けるし、飲まなければ飢え死にするという設定の蝶が出てきたことを思いだす。

 話を戻して、そこからぬけ出すためには周りに同調することなく自分で決断してもよいという示唆を行っていることになる。これがバインドを抜ける示唆にもなっている。[6] また、ここではクライアントに軽いトランス状態になってもらって、クリティカル・シンキングのモードを抑えてもらってこのメタファーを受け入れてもらう格好になっている。

 もちろん、ベイトソン的には、家族とこのクライアントのコンプリメンタリーもしくはメタ・コンプリメンタリー関係をすこし緩めて、すこし疎結合になるような関係をつくるためのメタファーと見立てるだろう。

 このプロセスなり構図なりがなかなか面白い。

(つづく)

文献
[1]https://www.hypnosisalliance.com/articles/What%20Is%20Ericksonian%20Hypnosis%20-%20Michael%20Yapki%20-%20Bernie%20Zilbergeld%20-%20Gerald%20Edelstein%20-%20Daniel%20Araoz.pdf
[2]http://www.hypnosisaustralia.org.au/wp-content/uploads/4.19-Hypnotic-Strategic-Interventionsin-the-Treatment-of-anorex.pdf
[3]http://ori-japan.blogspot.jp/2013/11/blog-post_4.html
[4]http://ori-japan.blogspot.jp/2013/03/blog-post_12.html
[5]http://ori-japan.blogspot.jp/2012_02_01_archive.html
[6]http://ori-japan.blogspot.jp/2012/05/blog-post_08.html

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