2016年11月30日水曜日

ミルトン・エリクソンの系譜:エリクソニアン・アプローチ再考(その22)


                                                                                                                             
 過去経験した気持、感覚、思考、枠組み、その他諸々の資源・資質は、

 今ここでパフォーマンスを発揮することにも、将来の目標達成にも役に立つ、

 というかもっと役に立てろよ、と(笑)。

 <ひとりごと>



暗示ではなく経験の再結合で

 備忘録として書いておく。

  ネットにエリクソニアンのマイケル・ヤプコのドキュメントが落ちていた。タイトルは「What is Ericksonian Hypnosis?」[1]で比較表を含んでいる。さらに、これにちょっと追記して眺めてみた。   

項目
古典(権威的)
標準(学術研究)    
エリクソニアン(利用)
個別対応
催眠状態は日常の延長
自然主義的
セラピストのスタンス
権威主義的
権威主義的/許容的
権威主義的/許容的
指示に従わせる
力関係
セラピストが強い
セラピストが強い
対等
指向
コンテンツ
コンテンツ
コンテンツ/プロセス
催眠導入の成功率
一部
かかる人だけが対象
一部
かからない人も統計を取る
基本的に全員
※催眠の定義の変更
抵抗の源泉
自己のみ
自己のみ
対人/自己
(家族療法への応用可)
抵抗への対処
対立もしくは解釈
対立もしくは解釈
利用
(ユーティライゼーション)
催眠の深さを強調
正規の非暗示性テスト
治療プロセスの構造
直線的
直線的
モザイク
セラピストの洞察の価値
症状の意図の見方
否定的
否定的
肯定的
症状の原因
自己
自己
対人/自己
(家族療法への応用可)
症状に対処/動態に対処
両方/いずれか
症状に対処
両方/いずれか
二次利得の認識
無意識の性質
否定的
(問題の原因)
否定的
(問題の原因)
中立
(問題の原因、解決の資源)
無意識の役割
受動的
受動的
能動的
暗示の有効性を強調
(経験の再構築をより強調)
介入で示唆される因果
直線的
直線的
円環的
パラドクス介入
利用アプローチはなし
計画されたパラドクス
利用アプローチに加えて
パラドクス介入
カウンターパラドクス介入

 21個めは暗示の有効性を強調するかどうか?だ。この部分は自分で追加したところだ。エリクソンは暗示の有効性は強調しなかった。

   「ミルトン・エリクソン心理療法 〈レジリエンス〉を育てる」[2]の中に以下がある。これがエリクソンを理解する上での重要なポイントだ。


エリクソンが一度としてぶれたことのない領域は、「治癒」の捉え方であった。これは、彼自身が麻痺を克服したという体験から来ているのではないかと思う。彼は青年のころ、体験的なリソースが変化を発生させることを学んでいる。早くも1948年には、直接暗示はなんらかの形でクライエントに影響を与えるけれども、治癒はそうした直接暗示の結果ではなく、その問題の特定のコンテクストで必要とされる体験を再結合させることによって生じるものであることを認識していた(Erickson , 1980).


 学術系は違うのだろうが、日本ではネットに掲載されている情報でエリクソンに関する情報は99%までが誤解だと思って良いと思う。大体検索しても本当に理解して書いていると思う人は1%という感じだ。もちろん、砂の中から1粒2粒の砂金を見つける作業をしてもよいのだろうが、一番確実なのはエリクソンもしくはエリクソン財団がエリクソニアンと言っている人の書いた文献にあたって自分で検証してみることだ。

 まずエリクソンを理解するにはそのパラダイムから理解する必要がある。だいたいデカルトからベイトソンのパラダイム[3]の転換に近いが、エリクソンの場合は、フロイトからエリクソンへの転換ということになるだろう。そもそもエリクソンは過去の原因分析をしないし、過去が現在未来に直線的な因果で影響を与えていると考えていなかった、と後の研究者が明らかにしたところだ。

   以前、古典 vs 現代催眠と頭の悪そうな二項対立の比較表[4]を書いたが、やはりエリクソンの重視していたのは内的経験や未来を想起した経験の再結合だ。エリクソンの場合は、エリクソン自身がいっているように(情緒的)雰囲気[5]を変えるために催眠によるトランス状態を使っている。しかし、経験の再結合ができなければ何ら意味がないという具合だ。

 例えば、過去上手く言った経験の中から今後の目標達成のために使えそうな資源・資質を探して未来のリハーサルをするような格好を取ることになる。もちろんここでも基本は現状から理想を目指す戦略的[6]なやり方となる。確証バイアス[7]の問題はあるが、未来にこれが引き起こせるという確信をもって行動に移すことができればなお結構という具合で、これが体験の再結合というわけだ。また、これがエリクソンのやっていたデフレーミングとリフレーミング[8]ということになる。逆にいうと自己啓発的な「私はお金持ちです」みたいな直接暗示を100万回唱えてもほとんど意味がないということになる(笑)。

 また、ベイトソンの同僚だったポール・ウオツラィックによれば、催眠を使わなくても適切な状況設定とリフレーミングがあれば(第二次)変化は可能だと明らかにした。[9]

 さて、余談だがエリクソンはメタファー的な言語を話す。その意味、認知科学的にはUCバークレーで認知言語学を教えているジョージ・レイコフのフレーム理論、あるいは行動主義的にはスティーブ・ヘイズの関係フレーム理論あたりを理解の助けにするのも面白いだろう。[10]

(つづく)

文献
[1]https://www.hypnosisalliance.com/articles/What%20Is%20Ericksonian%20Hypnosis%20-%20Michael%20Yapki%20-%20Bernie%20Zilbergeld%20-%20Gerald%20Edelstein%20-%20Daniel%20Araoz.pdf
[2]http://ori-japan.blogspot.jp/2014/05/blog-post_13.html
[3]http://ori-japan.blogspot.jp/2016/11/blog-post_8.html
[4]https://finance.yahoo.com/quote/HPQ?ltr=1
[5]http://ori-japan.blogspot.jp/2016/07/blog-post_1.html
[6]http://ori-japan.blogspot.jp/2016/07/blog-post_14.html
[7]http://ori-japan.blogspot.jp/2013/01/blog-post_21.html
[8]https://helda.helsinki.fi/bitstream/handle/10138/22824/seeingth.pdf
[9]http://ori-japan.blogspot.jp/2012/01/blog-post_23.html
[10]https://contextualscience.org/files/49.Mastering%20The%20Metaphor_Ehrnstrom.pdf

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