2016年12月17日土曜日

ミルトン・エリクソンの系譜:子どものための101の物語


                                                                                                                             
 人が学び、癒され、変化するのは物語やメタファーの力だ、

 変化は物語やメタファーによるリフレーミングで起こる、

 断じて、催眠の力ではない(笑)。

 <ひとりごと>



この本は案外盲点かも(笑)

  備忘録として書いておく。

 心理療法家のミルトン・エリクソンの技法だが、「催眠」というところに囚われると案外本質が見えにくくなる。結局、エリクソンの技法の本質は何か?と問われると、①ユーティライゼーション、②間接的アプローチ、③戦略的な介入ということになるからだ。[1] 

 もちろん、ここで間接的アプローチ[2]の中に様々な方法が存在する。この中で、構成主義や第二次サイバネティクスの視点から見てバカに出来ないのが、メタファー[3]やストーリー・テリング、ナラティブの技法ということになる。結局、人が何かを学び、(暗黙的な)リフレーミングが行われて、行動が変化するのは、メタファーやストーリーの力が大きいということになる。戦略的介入もある意味、よく考えられたメタファーやストーリーでこそ、抵抗を抑えて[4] 行うことが可能だ。結局、人は心の琴線に触れる物語を聞いた時、変化し始めるからだ。

 このあたりの元ネタは結構古くてエリクソンが1935 年頃に実験していた内容を1945年に一般的な心理学の学会に発表した論文「THE METHOD EMPLOYED TO FORMULATE A COMPLEX STORY FOR THE INDUCTION OF AN EXPERIMENTAL NEUROSIS IN A HYPNOTIC SUBJECT」の中で確認することが出来る。この論文はエリクソン全集に含まれている。

 もっとも、この中ではエリクソン自身が言葉とそれがどのように神経学的な現象を引き出すのか?を分析しているのだが、エリクソン自身が言語学者でも神経学者でもないため、案外素朴な分析手法が取られており、分析というよりエリクソンが言葉や文章に対する感想みたいなものが綴られていて読んでいてほのぼのとするところである。ただし、軽い催眠状態で物語やメタファーが神経学的な影響を及ぼしていることをしっかり観察している点では非常に興味深いところでもある。

 そう考えると単純に「催眠」導入の技法などを練習するより、ベッドタイム・ストーリーとしてのメタファーやストーリー・テリング、ナラティブを練習したほうがエリクソニアンぽくなるのでは?という仮定が生まれても不思議ではない。

 そこで案外盲点なのが、「101 Healing Stories for kids and teens」[5]という著作だ。読んでいて結構面白い。「催眠」などという気持ちの悪い言葉や技法を明示的に使わなくても、エリクソンの技法を学んで使えるようになるには、どうしたらよいのか?が案外この本の大きなテーマだ(笑)。本当に目指すのは「催眠療法士」のような胡散臭いものではなく偉大な「ストーリーテラー」だ。



 本書はオーストラリア人の著者が書いたものだが、まず、エリクソニアンのマイケル・ヤプコ、スティーブン・ランクトン、ジェフリー・ザイクの推薦がついている。要は、エリクソンの重鎮先生たちがお墨付きを与えている良書だということだ。

 また、対象がおそらく物心がついた幼稚園からティーン・エイジャー向けということで、物語の内容が理解しやすい、しかし、この中に認識をリフレーミングし行動に変化を起こすだろうと仮定されたロジックが暗黙に組み込まれている点だ。こういった物語の例が変化したい方向の目的別に101話収録されている。

 また、エリクソンはユーティライゼーションで変化するための偶発的な出来事や都合の悪い振舞などなんでも利用していたことが知られているが、こういったロジックを組み込んで自分で物語をつくる方法も提示されているのが嬉しいところだ。

 嬉しいのは、ベッドタイム・ストーリーとして物語を読み聞かせるような形式になっているので、催眠を必須としておらず、怪しくないし、何より平易でとっつきやすいのが本書のよいところだろう。

    もちろん、この背景にある物語の力が分かってくると小説でも、映画でも、ドラマでも、アニメでも、・・・・はたまたみちに転がっている「路傍の石」[6]にでも、物語や意味を見つけ、学びや変化の資源・資質(リソース)として活用できるようになるだろう(笑)。

 その意味、案外、身の回りからメタファー、ストーリー、ナラティブを見つける能力というのは重要なのだと思う。

(つづく)

文献
[1]http://ori-japan.blogspot.jp/2016/12/blog-post_6.html
[2]http://ori-japan.blogspot.jp/2013/03/blog-post_12.html
[3]http://ori-japan.blogspot.jp/2013/11/blog-post_4.html
[4]http://ori-japan.blogspot.jp/2016/07/blog-post_14.html
[5]https://www.amazon.co.jp/dp/0471471674/
[6]http://ori-japan.blogspot.jp/2016/08/blog-post_23.html

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