2016年12月10日土曜日

ミルトン・エリクソンのアプローチとは?(その6)


                                                                                                                             
 エリクソンの技法のゴールは?

 「よい縁の結び方」これを研究したということなのだよねぇ。

 天下のMRI、スタンフォードあたりの研究者が(笑)。

 <ひとりごと>



セラピストとクライアントの関係は?

  備忘録として書いておく。

 少し前に、エリクソニアンのマイケル・ヤプコの比較表を引いて心理療法家ミルトン・エリクソンのアプローチの特徴を書いた。

 今度は、同じエリクソニアンのスティーブン・ギリガンの「Therapeutic Trances」[1]からの比較表を眺めてみた。


権威的アプローチ
(古典催眠)
標準的アプローチ
(学術検証)
協力的アプローチ
(エリクソニアン)
使用される状況
ナイトクラブ、
治療(麻酔がない時代の外科手術、歯科)

学術的かつ実験的研究
心理療法、治療(歯科など)
目的
〈エンターテイメント〉
聴衆を楽しませる、誤解させる、驚かせる
〈学術研究〉
特定の現象を研究する
〈心理療法〉
認識や行動の変化を促す
焦点
催眠術師
被験者
セラピストと被験者の
協力的な関係
療法家のコミュニケーションのスタイル
直接的で威圧的な命令
標準化された変化の示唆(通常は許容的)
極度に柔軟、クライアントのパターンに適応的
被験者の一般的なタスク
異様で普通でないパフォーマンス
実験的な指示に従う
安全な人間関係の中で親密な人間関係を開発する
催眠導入の長さ
短い
短い
多様、しかし通常は30分から60分の催眠導入
催眠にかからない場合の反応の解釈
被験者は抵抗するものだ
被験者は催眠感受性が低い
セラピストはクライアントの特定のパターンに順応する必要
療法家の興味の対象
被験者の振る舞い
被験者の振る舞い
被験者の内的経験と結果としての振る舞いの変化

 5番目は、被験者のタスクだ。被験者は何をするのか?あるいは、何をしたらよいのか?ということになる。ただ、この前提としてセラピストがクライアントとどのような関係を築いてクライアントにどのように指示、示唆をしていたのか?は重要なところだろう。

<古典催眠>

 古典催眠について、被験者は催眠術師に催眠をかけられ(あるいはかけられた振りをして)面白おかしく振る舞う、あるいは聴衆にあっと驚くようなことを行う、というのが一般的なタスクとなる。もちろん、このあたりは心理療法とは関係ないので無視してよいだろう。エンターテイメントだからしっかり観客を楽しませろよ、というだけの話だからだ。

<学術研究の催眠>

 学術研究の催眠について、被験者は実験的な指示に従う、というのがそのタスクになる。ある意味、実験なので実験的な指示に「事務的に」従うというのがここでのポイントだろう。もちろん、なんらかの目的によって選ばれた被験者に対して、何をやったらどのような現象が引き出されるのか?の(直線的)因果関係を探り、最終的には複数の被験者の検証結果を統計処理して因果関係や相関関係見るのが目的となる。

<エリクソニアン>

 エリクソニアン・アプローチの場合、コトバは悪いが、被験者はセラピストとラポールを取らされるような格好になる、もちろん指示的ではなく極自然に。そして、セラピストの指示あるいは示唆にしたがって、家族なりの組織の利害関係者とよい人間関係の構築を目指す、というのが被験者のタスクになる。もちろん、クライアントが引きこもりのようなケースがあるだろう、その場合はセラピストとよい関係を構築するのが、今後、他の人との関係構築の第一歩ということになるだろう。

 ミルトン・エリクソンの研究を行ったMRIの研究者はエリクソンの技法を①戦略性、②コミュニケーション、の主に2つに還元して研究した。ここでは、2つの視点からクライアントのコミュニケーションに焦点があたっている。つまり、現状のコミュニケーションのパターンはどうなのか?理想的なコミュニケーションのパターンは何か?それによってクライアントを取り巻く人間関係はどのように変化するのか?のような現象-理想の戦略ということだ。

 これを踏まえて、エリクソニアンのジェフリー・ザイクの「Injunctive Communication and Relational Dynamics: An Interactional Perspective」[2] を読んで見ると面白いだろう。もちろん、ここでのテーマは「クライアントのタスク」だから、「セラピストの役割」をヒックリ返して読むことになる。

The Therapist's Role
セラピストの役割

One of the therapist's main goals is to induce more effective roles. As a result, it is important to diagnose rigid power dynamic styles, keeping in mind the power dynamics of the clinician-patient relationship itself. 

セラピストの主なゴールの一つは(クライアントがその人間関係において)より効率的な役割を担うことを引き出すことだ。結果、臨床家-クライアントの関係自体の動力学を頭の中において、融通が利かない人間関係の動力学のスタイルを診断することが重要である。

To induce change, the therapist must be one-up. If the patient is one-up, the therapy will not be successful.`Right hemisphere' techniques are valuable for this because they work to unexpectedly disconnect habitual sets. 

変化を誘発するために、セラピストは(クライアントより)一段上の立場でなければならない。もし、クライアントが(セラピストより)一段上の立場であるなら、心理療法は成功しないだろう。(イメージを喚起させるような)「右脳」の技法は、予期せず一連の習慣から切り離すことができるので有効である。

The therapist can cripple his or her therapeutic effectiveness by adhering to inflexible, preordained expectations for change which can concede the one-up position to the patient. If the patient is consistently one-up,therapy should be terminated since there will be no leverage for change.I am not promoting a Machiavellian stance for the therapist. 

セラピストは、柔軟でない、前もって定められた変化への期待に固執することで、クライアントに一段上の立場を取ること譲り治療の効果を損なわせることができる。もし、常にクライアントが一段上の立場を取りつづけるのであれば、変化へのてこの支点が見つかることはないため、治療を中止するべきである。私はセラピストにマキャベリストの立場を取ることを勧めてはいない。

The job of the therapist is to work on the patient's behalf to elicit change. This can only be accomplished when the therapist controls, defines and induces different roles by assuming the one-up position.

 セラピストの仕事はクライアントの利益に沿って変化を引き出すことだ。これは、セラピストが一段上の立場で、(クライアントの)役割を制御、定義し引き出すことでできた時に達成される。

 
 これを読むと、ザイクはセラピストとクライアントの非対称な関係について語っていることになる。時々、エリクソンは子どものように Not Knowing アプローチを使う。簡単に言うと、「私には分かりませんが、あなたは分かっているのではないですか?」というようなアプローチだ。

 ザイクのエッセーを読むと、ここにはあくまでも非対称な関係が成り立っていて、あくまでも方便として聞いていなければならないということが分かる。つまり、非対称とは医師ー患者、先生ー生徒のように、医師や先生が圧倒的な知見を持っていなければいけないという関係ということになる。逆にいうと患者に特別な知識は必要ない。

 もちろん、MRIの「コミュニケーションの5つの試案的公理」によれば、対称つまりシンメトリカルなコミュニケーションの反対はコンプリメンタリーつまり相補だったので、ここではザイクは、セラピストークライアントの関係をセラピストが一段上の立場にたったコンプリメンタリーな関係を想定しているという具合だ。もっというとセラピストの立場が一段上のメタ・コンプリメンタリーな関係ということになる。もちろん、プロフェッショナルとしての非対称な知識を持ちながら、かつクライアントに対してメタ・コンプリメンタリーな関係を構築できて心理療法が成功すると言っているのが面白いところだ。あまり大きな声では言えないが、いわゆる「ラポール」は大事が「ラポール」だけとっても意味がないということでもある(笑)。

(つづく)

文献
[1]https://books.google.co.jp/books?id=rNe8zXXAqDEC&pg=PA12#v=onepage&q&f=false
[2]http://bscw.rediris.es/pub/bscw.cgi/d4523270/Zeig-Injunctive_communication_relational_dynamics.pdf

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