2016年12月11日日曜日

ミルトン・エリクソンのアプローチとは?(その7)


                                                                                                                             
 エリクソンの催眠導入を英語で音読すると、あたまがすっきりするのだが、

 きっと、暗黙的なリフレーミングと治療的ダブルバインドが効いている

 のだろうなぁと(笑)。古典ではこうならないのに(笑)。

 <ひとりごと>



エリクソンの催眠導入は長風呂のように長い

   備忘録として書いておく。

 少し前に、エリクソニアンのマイケル・ヤプコの比較表を引いて心理療法家ミルトン・エリクソンのアプローチの特徴を書いた。

 今度は、同じエリクソニアンのスティーブン・ギリガンの「Therapeutic Trances」[1]からの比較表を眺めてみた。


権威的アプローチ
(古典催眠)
標準的アプローチ
(学術検証)
協力的アプローチ
(エリクソニアン)
使用される状況
ナイトクラブ、
治療(麻酔がない時代の外科手術、歯科)

学術的かつ実験的研究
心理療法、治療(歯科など)
目的
〈エンターテイメント〉
聴衆を楽しませる、誤解させる、驚かせる
〈学術研究〉
特定の現象を研究する
〈心理療法〉
認識や行動の変化を促す
焦点
催眠術師
被験者
セラピストと被験者の
協力的な関係
施術家のコミュニケーションのスタイル
直接的で威圧的な命令
標準化された変化の示唆(通常は許容的)
極度に柔軟、クライアントのパターンに適応的
被験者の一般的なタスク
異様で普通でないパフォーマンス
実験的な指示に従う
安全な人間関係の中で親密な人間関係を開発する
催眠導入の長さ
短い
短い
多様、しかし通常は30分から60分の催眠導入
催眠にかからない場合の反応の解釈
被験者は抵抗するものだ
被験者は催眠感受性が低い
セラピストはクライアントの特定のパターンに順応する必要
療法家の興味の対象
被験者の振る舞い
被験者の振る舞い
被験者の内的経験と結果としての振る舞いの変化

6番目は催眠導入の長さだ。ここではいくつかの誤解があるように思う。

 古典はエンターテイメントが目的なので、ステージでそのまま催眠導入に入る、しかも短い。また、学術研究は催眠現象自体が目的なのでそのまま催眠導入に入る、これも短い。エリクソニアンは1回目はおおよそ問診となる。そしてたいていは2回目以降でクライアントを催眠に導く。また、1回あたりの催眠導入が30分〜1時間と前の2つに比較すると長い。また、催眠導入自体に介入やメタファーが埋め込まれている。これが大きな違いだ。

 エリクソニアンの場合は催眠導入と介入が明示的に区別できないことも多い。だから、日本でありがちなエリクソンを謳っていながら「5分から10分で催眠に導く」というのは、学術論文を読んでない人間のたわごとと思ってよい。もちろん、Complete Works を読むとそういう事例がないわけではないが、一般的にエリクソニアンは長風呂のように時間をかけて行うものだ。もちろん、催眠の目的はエリクソン自身が語っているようにクライアントの「(情緒的)雰囲気」を変えるためだけに活用される。ここに何か不思議な力を求めてはいけない。結局、催眠はおまけで、適切な状況設定とリフレーミングができなければクライアントの認識や行動は何も変化しないし、その支援が出来ないからだ。

 また、古典の催眠導入とエリクソニアンの催眠導入とでは明示的に区別することができる。古典は直接的で行動を制限するコトバが繰り返されてギクシャクするが、エリクソニアンは間接的で治療的ダブルバインドなどが埋め込まれていて聞いていて、自然で非常に気持がよい導入だからだ。また、エリクソニアンはクライアントの顔を見ながら対応を変える、台本をまるまる読むようなアプローチにはならない。

 で、導入がどのようなものかを知りたければいくつかの書籍が参考になる。もちろん、ここに掲載されているトランスクリプトを丸暗記して読むというのはご法度だ。一つは、「Ericksonian Approaches 」[2]この中に古典とエリクソニアンの導入が比較されて掲載されている。具体的には、以下となる。

第7章
A. 催眠導入
B.古典催眠導入
 #1短時間の催眠導入
    #2リラックス法
 #3イメージ法
 #4権威的な命令による催眠導入
    #5拍手導入
C.非伝統的導入(エリクソニアン)
 #1凝視法
    #2アーリーラーニングセット
 #3腕浮遊
    #4質問による掌浮遊
    #5数を数える導入
第8章
A.導入の応用(エリクソニアン)
B.知覚変容の導入
   #1 マイ・フレンド・ジョン・テクニック
   #2 多重知覚の導入
   #3 水晶凝視の導入
C.浮遊による催眠導入
   #4幻覚の浮遊
   #5掌の浮遊
   #6否定的な幻覚のような経験の多重分離
D.カタレプシーによる催眠導入
   #7 ハンドシェイク導入
   #8拡張ハンドシェイク導入
   #9イデオダイナミクス導入
E.パントマイム
F.混乱法
   #10非言語アプローチ
   #11言語アプローチ
G.抵抗への対処
H.自発的導入
   #12直接暗示
   #13自発的再導入

 また、邦訳されているが「Handbook of Hypnotic Inductions」[3]は著者たちはエリクソン財団でトレーニングを受け、ASCH(American Society of Clinical Hypnosis)の学術団体に論文を投稿しているような人だから非常に正確で読んでいて気持ちの良い本だ。英語でエリクソン風に音読していると非常に調子がよくて気持よくなってくるし、覚めてからしばらく爽快感が続くのだが、邦訳は英語↔日本語の構造的な理由もあって結構難しそうに思える。

 内容は、4つの切り口、①一般的な会話による催眠導入、②意味が埋め込まれた催眠導入、③混乱による催眠導入、④指示的な催眠導入がカバーされている。さらに面白いのは子ども向けの催眠導入法が書かれていることだろう。これは難しい概念を理解できない人に対する導入という意味ではこれは非常に興味深い。

 さて、まとめておくとエリクソンは標準的に30〜60分をかけて催眠導入を行った。もちろん、催眠導入自体が目的ではない。この中に介入が含まれており、治療的ダブルバインドやメタファーでクライアントの認識の枠組み(Frame of Reference)や信念システム(Belief System )に働きかけるようなメタファーなり治療的ダブルバインドを含まれていることになる。だから、催眠導入だけ成功してもリフレーミングが成功しなければクライアントの認識の枠組みや行動は恒久的には変化しないとなる。逆に、これができればコーチングでもファシリテーションでも認識や行動の変化が期待できることになる。余談だが、「Ericksonian Hypnotherapeutic Group Induction」[4]によい意味での集団、グループを対象にした催眠導入が示されていて面白い。

(つづく)

文献
[1]https://books.google.co.jp/books?id=rNe8zXXAqDEC&pg=PA12#v=onepage&q&f=false
[2]http://ori-japan.blogspot.jp/2012/07/blog-post_21.html
[3]https://www.amazon.co.jp/dp/039370324X
[4]https://www.amazon.co.jp/dp/0876305885

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