2016年12月12日月曜日

ミルトン・エリクソンのアプローチとは?(その8)


                                                                                                                             
 柔軟でないクライアントはいない、

 柔軟でないセラピストがいるだけだ。

 って、誰が言ったのだろう? エリクソンが言った事実が見つからないのだが(笑)。 

 <ひとりごと>



柔軟性を追求した故の多種多様な間接技法

   備忘録として書いておく。

 少し前に、エリクソニアンのマイケル・ヤプコの比較表を引いて心理療法家ミルトン・エリクソンのアプローチの特徴を書いた。

 今度は、同じエリクソニアンのスティーブン・ギリガンの「Therapeutic Trances」[1]からの比較表を眺めてみた。



権威的アプローチ
(古典催眠)
標準的アプローチ
(学術検証)
協力的アプローチ
(エリクソニアン)
使用される状況
ナイトクラブ、
治療(麻酔がない時代の外科手術、歯科)

学術的かつ実験的研究
心理療法、治療(歯科など)
目的
〈エンターテイメント〉
聴衆を楽しませる、誤解させる、驚かせる
〈学術研究〉
特定の現象を研究する
〈心理療法〉
認識や行動の変化を促す
焦点
催眠術師
被験者
セラピストと被験者の
協力的な関係
施術家のコミュニケーションのスタイル
直接的で威圧的な命令
標準化された変化の示唆(通常は許容的)
極度に柔軟、クライアントのパターンに適応的
被験者の一般的なタスク
異様で普通でないパフォーマンス
実験的な指示に従う
安全な人間関係の中で親密な人間関係を開発する
催眠導入の長さ
短い
短い
多様、しかし通常は30分から60分の催眠導入
催眠にかからない場合の反応の解釈
被験者は抵抗するものだ
被験者は催眠感受性が低い
セラピストはクライアントの特定のパターンに順応する必要
療法家の興味の対象
被験者の振る舞い
被験者の振る舞い
被験者の内的経験と結果としての振る舞いの変化

7つ目は催眠にかからない場合の反応の解釈だ。古典は被験者は抵抗するものだ、と考える。学術系は催眠感受性が低いと考える。エリクソンは特定のパターンに適応できていないセラピストの柔軟性が低いためセラピストがもっと柔軟である必要があると考える。

   この前提として以下がある。まずエリクソンはトランス状態は自然な現象で日常生活で毎日経験している状態である、と定義を変えた。例えば、集中して車を運転していて何時間ものドライブがほんの数分のように感じられる時、本を読んでいて集中して本の中に入り込んでいる時、映画を見てその映画に入り込んでいる時など・・・もちろん、ギリガンの定義によれば外向と内向のトランスがある。外向きとは古武道の向き合いのように感覚が今ココの外向きの知覚に焦点を当てているような状態だ。[2]  これについて、 状況に合わせて外向きのトランスでも内向きのトランスでもどちらかを引き出せばよいだろう。これについてはエリクソンの妻のエリザベス・ムーア・エリクソンの自己催眠をネタにして書いた。[3] 

 したがって、エリクソンが引き出したいのはクライアントのこのような心身状態だ。理由はクライアントが問題解決をしたり、理想の未来を思い描くために資源・資質(リソース)を引き出すのに最適な状態だと考えているからだ。もちろん、この状態は一人ひとり違う。逆の場合を考えてみるとよい、クライアントが極度の不安や怒りなどに支配されていれば理想の未来を考えるどころではないだろう。不安に支配されて余計な振る舞いをしてしまう。これを防ぐだめのトランス状態だというわけだ。もちろんよいトランス状態は現状がいくらテンパった状態でもそれを冷静にメタ認知できているような状態になる。もちろん、エリクソンはそれ自体が何かをするわけではないと言っている。[4]  ただし、このメタ認識の視点は重要だ。もっというと、ここでよい心身状態で思考実験が出来て、結果、リフレーミングが行われないと(利害関係者との適切な人間関係の構築をゴールにした)恒久的な認識やその枠組み、あるいは行動の変化は期待できないことになる。分かりやすく言うと、今までダメだったからこれからもダメだろうと過去の延長で考える枠組みの転換だ。つまり、今までダメだったからといって良い意味で将来はそうならない可能性がある、という確信のようなものだ。逆にいうと、これができれば明示的な催眠がなくても心理療法が機能することになる。エリクソン派生のMRIやソリューション・フォーカスト・アプローチやミラノ派などが機能する理由でもある。

 もちろん、「セラピストの柔軟性とは何か?」ということがここでのテーマとなる。エリクソンの場合は、間接技法あるいは間接暗示の技法となる。[5] エリクソン&ロッシの「Hypnotic Realities 」に取り上げられていたが、①注意の固定、②意識の判断を緩める、③無意識の探索、④無意識の反応、⑤催眠の反応の切り口で技法がてんこ盛りになっている。もちろん、これはセラピストになるためのという範囲に限らず、優れたコミュニケーターになるための技法と範囲を広くとったほうが有効だろう。つまり、メタファーやダジャレや冗談などを含むこの技法は、仕事上のコミュニケーションやファシリテーションから漫才師でも落語家でも政治家でも誰でも活用できる技法となる。もっとも、「押し付け」ではなくて、やっていて楽しいし、誰でも意識しないでも使っている技法というのが面白いところなのだろう。

 要は、日常生活でも自分が状況や相手に対して柔軟ではないと感じた時は、間接的なコミュニケーションの技法を手を変え品を変えて試行錯誤してみるのは案外有効であることも分かってくるのではあるのだが・・・・・

(つづく)

文献
[1]https://books.google.co.jp/books?id=rNe8zXXAqDEC&pg=PA12#v=onepage&q&f=false
[2]https://books.google.co.jp/books?id=rNe8zXXAqDEC&pg=PA46
[3]http://ori-japan.blogspot.jp/2016/07/blog-post_76.html
[4]http://ori-japan.blogspot.jp/2016/07/blog-post_1.html

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