2016年12月13日火曜日

ミルトン・エリクソンのアプローチとは?(その9)


                                                                                                                             
 人の認識や行動の変化は催眠だけでは起こらないのだが(笑)。

 <ひとりごと>



ゴールはよりよい変化

   備忘録として書いておく。

 少し前に、エリクソニアンのマイケル・ヤプコの比較表を引いて心理療法家ミルトン・エリクソンのアプローチの特徴を書いた。

 今度は、同じエリクソニアンのスティーブン・ギリガンの「Therapeutic Trances」[1]からの比較表を眺めてみた。


権威的アプローチ
(古典催眠)
標準的アプローチ
(学術検証)
協力的アプローチ
(エリクソニアン)
使用される状況
ナイトクラブ、
治療(麻酔がない時代の外科手術、歯科)

学術的かつ実験的研究
心理療法、治療(歯科など)
目的
〈エンターテイメント〉
聴衆を楽しませる、誤解させる、驚かせる
〈学術研究〉
特定の現象を研究する
〈心理療法〉
認識や行動の変化を促す
焦点
催眠術師
被験者
セラピストと被験者の
協力的な関係
施術家のコミュニケーションのスタイル
直接的で威圧的な命令
標準化された変化の示唆(通常は許容的)
極度に柔軟、クライアントのパターンに適応的
被験者の一般的なタスク
異様で普通でないパフォーマンス
実験的な指示に従う
安全な人間関係の中で親密な人間関係を開発する
催眠導入の長さ
短い
短い
多様、しかし通常は30分から60分の催眠導入
催眠の反応の解釈
被験者は抵抗するものだ
被験者は催眠感受性が低い
セラピストはクライアントの特定のパターンに順応する必要
施術家の興味の対象
被験者の振る舞い
被験者の振る舞い
被験者の内的経験と結果としての振る舞いの変化

 8つ目は施術家の興味の対象だ。古典は、催眠厨の被験者の振る舞いだ。極端な話、「あなたは犬になった、吠えろ」とかそういう感じのヤツ。これは単なる宴会芸なのでここでは無視する。 学術系の催眠は、主に催眠にかかっている時の被験者の振る舞いを催眠感受性尺度などで観察し、可能ならば定量的なデータを取る、というのが対象になる。エリクソニアンの場合は、催眠中に行った介入の結果、どのように被験者の振る舞いが変化し、結果、被験者を取り巻く利害関係者との関係がどのように変化する、あるいはしたのか?が対象となる。このためエリクソンのアプローチは形を変え、一見外側から見ただけで分からない形式で家族療法の技法に取り込まれていることになる。

 Complete Works などを読むと、エリクソンの心理療法を受けた後は、おおよそクライアントを取り巻く人間関係がよい意味で変化しているのが分かる。大まかな方向としては、シンメトリカルでエスカレーションした関係を少し緩めるか、コンプリメンタリーでお互い興味がなくなった関係を再度興味が向くような方法に手を変え品を変え、奇想天外な方法で変えるように行動指示を行う、というような感じになる。

 要はエリクソニアンは催眠導入だけ出来たって適切な介入がないと成り立たない世界なので、個人的には家族療法なり戦略的短期療法なりの介入が出来るようになって、おまけで催眠導入を使うくらいで丁度よいのではないかと考えている。

 これについてMRIに在籍したポール・ウォツラィックと現在ミラノで活躍しているジョルジオ・ナルドネの共著「The Art of Change: Strategic Therapy and Hypnotherapy Without Trance」[2]を読むと、要は(よりよい人間関係構築のための)認識や行動の変化が重要なのであって、エリクソンのスタイルを継承するものの、要は状況設定+リフレーミングが重要であって催眠誘導はかならずしも必要ではないことが書かれている。逆に言うと、この研究(認識や行動の変化に催眠は必須ではない)がパンドラの箱を開いてしまったのでエリクソンを継承するブリーフセラピーが見てくれは催眠を使う流派も使わない流派も入り乱れてのの百花繚乱につながっているところではあるのだが(笑)。



 

(つづく)

文献
[1]https://books.google.co.jp/books?id=rNe8zXXAqDEC&pg=PA12#v=onepage&q&f=false
[2]https://www.amazon.com/Art-Change-Strategic-Hypnotherapy-Behavioral/dp/1555424996

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