2016年12月19日月曜日

ミルトン・エリクソンの系譜:お悩みの構図はパラドクス(その1)


                                                                                                                             
 ミルトン・エリクソンはパラドクス介入を行った。

 あるいは、パラドクスにカウンター・パラドクスを当てた。

 クライアントに現状の枠組みを超えてもらうのに必要だったからだ。

 <ひとりごと>



パラドクスを構成する4つの要素

  備忘録として書いておく。

  いい大人でも悩むことがある。確かにたいていの問題は自力でなんとかできるだろう。でもやはりいい大人が悩むのである。それはなぜか? その問題がパラドクスを含むからだ。

 パラドクスとは一体何か?

  Wikipediaを読むと「パラドックス(paradox)とは、正しそうに見える前提と、妥当に見える推論から、受け入れがたい結論が得られる事を指す言葉である」[1]と定義されている。ここではこれを少し拡張して、「正しそうに見える前提と、妥当に見える推論から、実際に行動し、受け入れがたい結論が得られる」としている。要は、こうだからいい大人が悩むのだ。

 日常生活の場面でも、仕事の場面でもよい、過去上手く言った経験則で同じような条件を整えて同じような行動をとってみる。結果、はどうだったのか?

 過去上手くいったことが上手くいかない。あるいは、まったく過去と反対の結果が得られる。もちろん、自分なりに試行錯誤をしてみる。しかし、上手くいかない。それも衝撃的なくらいに。

 こういう状況を経験するので、いい大人が悩むのだ。もっとも、これは受け身というより、何か新しいプロジェクトなどに挑戦していると遭遇することなのかもしれない。過去の延長に無い新規のプロジェクトなどで重たい課題はおおよそパラドクスとして目の前に立ちはだかるからだ。[参考]

 これを解決に導く、あるいは理想の解決に行かなくても、落とし所を探る方法は何かあるのか?できれば、一見都合の悪いこの状況をエリクソンのように利用(Utilize) して、と考えてみる。

 結論から言ってしまえば、前提を変えてみればよい、となる。しかし、これが結構難しいのだ。一つは簡単にいってしまうと前提とは「人間の器」でもあるからだ。器を大きくするためには何らかのきっかけが必要だ。その意味では、パラドクスに遭遇するということは千載一遇のきっかけではある。

 また、技術論の話をすると、、普段、人はこういった前提を意識することは少ない。だから明示的に意識しろとっても結構難しいというのがその理由のひとつだ。つまり、暗黙の前提の元で手なりにやっていることが多い。突然、上手くいかなくなったからといって、前提を意識しろというのは少し無理があるようにも思う。また、これを意識するためにはけっこうシステム論的なことを考える必要がある。これはやはり普通の人にはやはり難しいのだ。もちろん、このあたりが理解できているコーチやコンサルタントの支援を受ければ可能なのかもしれないが、おそらくこういう人間はそう多くはない。

 さて、パラドクスを解決するためにはパラドクスをもっと知る必要がある。このようなわけでつらつらと書いていく。

 そもそもパラドクスは何から出来ているのか?

 ネットに落ちていた「Dilemmas and Tensions and Binds, Oh My!」[2] を読むと面白い。

 まず、パラドクスはおおよそ4つの要素からなっているようだ。これがすべてを漏れなくダブリなくカバーしているかどうかは分からない。しかし、パラドクスからぬけ出すヒントにはなるだろう。余談だがパラドクスを利用する問題解決手法として TRIZ[3]がある。この手法は、製造業で作成されるモノを対象としていた。解決のヒントとして矛盾マトリックスを使う。

 これと比較すると、ここで取り上げるエリクソンの手法は、人の認知ー行動の全般を対象としているところが少し異なる。例えば、パラドクスの認識に対してカウンターパラドクスを含むメタファーを話して聴かせる。[4]もっと厳密にいうと、TRIZは第一次サイバネティクスの話で、エリクソンの技法は第二次サイバネティクスの話ということになる。[5]

 さて、以下の表を眺めてみる。

 パラドクスの4つの要素


パラドクスの要素
説明
Poles
正反対/両極端
<帯に短し襷に長し>
両極端はパラドクスに内在する矛盾である。両極端は、デジタルな世界の相互に排他的な1もしくは0のようなもの、もしくはアナログな世界でのひとつの連続したつながりとして現れる。
Splits
分断/股裂き
<二兎を追うものは一兎も得ず>
分断は行為であり、パラドクスの被害者が2つ以上の方向や意思決定事項に同時に引っ張られる原因になる。また、パラドクスの被害者はどれを選んでも損をするように感じられる。
Loops
一連のループ
<堂々巡り>
一連のループは行為であり、パラドクスの被害者が堂々巡りをしているように感じられる原因となる。多少損をするか、多少得をして振り出しに戻る。
Flips
ひっくり返す
<どんでん返し>
ひっくり返しは行為であり、パラドクスの被害者が当初の意図や欲しかったものと反対のことしか得られなかったと感じる。

 おおよそ、世の中のパラドクスはこの4つの何れか、あるいは複合で起こっているものと分類可能なようだ。もっとも、面白いのは日本語のことわざなりを考えてみると、これに対応したものが見つかる。逆にいうと技術や社会の様相は変わっても人の悩みのパターンというのは普遍なのかもしれない。

 続きはこれ以降に書く。

(つづく)

文献
[1]https://ja.wikipedia.org/wiki/パラドクス
[2]http://www.gwiznlp.com/wp-content/uploads/2014/08/Dilemmas-Tensions-and-Binds-Oh-My.pdf
[3]https://en.wikipedia.org/wiki/TRIZ
[4]http://ori-japan.blogspot.jp/2016/12/blog-post_2.html
[5]http://ori-japan.blogspot.jp/2016/12/blog-post_14.html

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