2016年12月6日火曜日

ミルトン・エリクソンのアプローチとは?(その2)


                                                                                                                             
 ミルトン・エリクソンの運がよかったのは、

 まわりにサイバネティクスが分かる人物がいたこと。

     これ以降、人の認識と行動の変化は催眠からシステム論的な話に変わる。
 
 <ひとりごと>



結局はシステム論的なもっと全体的な話に行き着く

  備忘録として書いておく。

 少し前に、エリクソニアンのマイケル・ヤプコの比較表を引いて心理療法家ミルトン・エリクソンのアプローチの特徴を書いた。

 今度は、同じエリクソニアンのスティーブン・ギリガンの「Therapeutic Trances」[1]からの比較表を眺めてみた。


権威的アプローチ
(古典催眠)
標準的アプローチ
(学術検証)
協力的アプローチ
(エリクソニアン)
使用される状況
ナイトクラブ、
治療(麻酔がない時代の外科手術、歯科)

学術的かつ実験的研究
心理療法、治療(歯科など)
目的
〈エンターテイメント〉
聴衆を楽しませる、誤解させる、驚かせる
〈学術研究〉
特定の現象を研究する
〈心理療法〉
認識や行動の変化を促す
焦点
催眠術師
被験者
セラピストと被験者の
協力的な関係
施術家のコミュニケーションのスタイル
直接的で威圧的な命令
標準化された変化のの示唆(通常は許容的)
極度に柔軟、クライアントのパターンに適応的
被験者の一般的なタスク
異様で普通でないパフォーマンス
実験的な指示に従う
安全な人間関係の中で親密な人間関係を開発する
催眠導入の長さ
短い
短い
多様、しかし通常は30分から60分の催眠導入
催眠にかからない場合の反応の解釈
被験者は抵抗するものだ
被験者は催眠感受性が低い
セラピストはクライアントの特定のパターンに順応する必要
療法家の興味の対象
被験者の振る舞い
被験者の振る舞い
被験者の内的経験と結果としての振る舞いの変化

1番目の項目は、使用される状況だ。この表は時系列的な推移も考慮して書かれたと推定される。全体的な歴史は wikipedia の History of Hypnosis[2]に詳しい。

 手短に見ていく。

 まず、古典催眠をなんらかの療法につかっていた主要人物は、ジェームズ・エスデール(1808-1859) [3] やジェームズ・ブレイド(1795-1860)[4]らだ。日本だと安政の大獄が1859年だから、彼らが活躍したのは日本でいうと江戸時代の末期になる。もちろん、この時代の医療と言えば、司馬遼太郎の歴史小説『花神』や手塚治虫の漫画『陽だまりの樹』で描かれた緒方洪庵らの蘭方医が台頭してきた時期ということになる。この時、エスデールは麻酔が発展していない時代に催眠状態で患者を眠らせて手術をした、こういった事例が残されている。もちろん、今ではこういった用途は考えられないのだろうから古典催眠の主要な用途はナイトクラブなどのでエンターテイメントのためということになる。

 2番目の学術研究の主要人物は、例えば、東海岸系であればクラーク・ハル(1884-1952)[5]、セオドア・サービンら、西海岸系であればアーネスト・ヒルガード(1904-2001)[6]、アンドレ・ウエィゼンホファー(1924-2004) [6]らということになるだろう。彼らは色々な心理学を体系化し催眠も客観的な再現性を持つように感受性尺度なりをつくり研究した、という言い方が正しいのだろう。スタンフォードのヒルガードの研究室はとっくに閉鎖されているが、心理学百科事典はいまだに更新されているようなところがある。何れにしても、催眠現象を催眠現象として研究していたいたような古き良き時代の研究でもある。

  3番目の主要人物が、ミルトン・エリクソン(1901-1980)[7]ということになる。エリクソンが幸運だったのは、研究者や弟子達によって発展途上だった(第二次)サイバネティクス[8]を当てて、催眠という次元ではないシステム論的な視点から研究されたことだろう。特に、サイバネティクスを持ち込んでエリクソンを観察したグレゴリー・ベイトソンの功績は大きい。これ以降、人の認識と行動の変化は催眠ではなくシステム論の視点へと移ることになる。

 弟子のスティーブ・ランクトンによれば、エリクソンの技法のサイバネティクス的視点からの特徴は、①ユーティライゼーション、②間接アプローチ、③戦略的介入の3つということになる。[9]  ①ユーティライゼーションとは偶発的におこる外的な出来事、あるいはクライアントの都合の悪い言動などの内的なことをクライアントの思考や行動の変化のために利用するというアプローチである。[10]  間接アプローチは、クライアントの抵抗を抑えるために間接的な示唆を使うアプローチ。[11] また、戦略的介入とは現状ー理想を目指すようなアプローチである。[12]


 サイバネティクスを当てることで、これ以降、催眠が必須ではない、MRIアプローチ、ソリューション・フォーカスト・アプローチ、あるいはミラノ派家族療法、戦略的短期療法、あるいはこれらをベースとしたコーチングやファシリテーションの技法などの発展へとつながる。

(つづく)

文献
[1]https://books.google.co.jp/books?id=rNe8zXXAqDEC&pg=PA12#v=onepage&q&f=false
[2]https://en.wikipedia.org/wiki/History_of_hypnosis
[2]https://en.wikipedia.org/wiki/James_Esdaile
[3]https://en.wikipedia.org/wiki/James_Braid_(surgeon)
[4]https://en.wikipedia.org/wiki/Clark_L._Hull
[5]https://en.wikipedia.org/wiki/Ernest_Hilgard
[6]https://en.wikipedia.org/wiki/Andr%C3%A9_Muller_Weitzenhoffer
[7]https://en.wikipedia.org/wiki/Milton_H._Erickson
[8]https://en.wikipedia.org/wiki/Second-order_cybernetics
[9]https://www.hypnosisalliance.com/articles/A%20Cybernetic%20Model%20Of%20Ericksonian%20Hypnotherapy,%20One%20Hand%20Draws%20The%20Other,%20Matthews%20&%20Lankton.pdf
[10]http://www.asch.net/portals/0/journallibrary/articles/ajch-51/51-4/ericksonclinical51-4.pdf
[11]http://ori-japan.blogspot.jp/2013/03/blog-post_12.html
[12]http://ori-japan.blogspot.jp/2016/07/blog-post_14.html

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