2016年12月7日水曜日

ミルトン・エリクソンのアプローチとは?(その3)


                                                                                                                             
 目的に合わせた手段を取るのは、基本中の基本(笑)。

 
 <ひとりごと>



クライアントの認識や行動の変化を促すのが目的

 備忘録として書いておく。

 少し前に、エリクソニアンのマイケル・ヤプコの比較表を引いて心理療法家ミルトン・エリクソンのアプローチの特徴を書いた。

 今度は、同じエリクソニアンのスティーブン・ギリガンの「Therapeutic Trances」[1]からの比較表を眺めてみた。


権威的アプローチ
(古典催眠)
標準的アプローチ
(学術検証)
協力的アプローチ
(エリクソニアン)
使用される状況
ナイトクラブ、
治療(麻酔がない時代の外科手術、歯科)

学術的かつ実験的研究
心理療法、治療(歯科など)
目的
〈エンターテイメント〉
聴衆を楽しませる、誤解させる、驚かせる
〈学術研究〉
特定の現象を研究する
〈心理療法〉
認識や行動の変化を促す
焦点
催眠術師
被験者
セラピストと被験者の
協力的な関係
施術家のコミュニケーションのスタイル
直接的で威圧的な命令
標準化された変化のの示唆(通常は許容的)
極度に柔軟、クライアントのパターンに適応的
被験者の一般的なタスク
異様で普通でないパフォーマンス
実験的な指示に従う
安全な人間関係の中で親密な人間関係を開発する
催眠導入の長さ
短い
短い
多様、しかし通常は30分から60分の催眠導入
催眠にかからない場合の反応の解釈
被験者は抵抗するものだ
被験者は催眠感受性が低い
セラピストはクライアントの特定のパターンに順応する必要
療法家の興味の対象
被験者の振る舞い
被験者の振る舞い
被験者の内的経験と結果としての振る舞いの変化

2つ目は、それぞれのアプローチの目的だ。

 この表の前提として催眠それ自体が何かをするわけではないということがある。これはミルトン・エリクソンも「催眠それ自体が何かをするわけではありません」[2]といっている。結局、クライアントの認識や行動の変化は、適切な状況設定とリフレーミングなどの(パラドクス、カウンター・パラドクス)介入によって起こる。[3] だから、エリクソン派生の催眠を使わないMRIやソリューション・フォーカスト・アプローチやミラノ派家族療法も効果があるということにもなる。これについて、エリクソンを研究したポール・ウオツラィックと弟子のジョルジョ・ナルドネの著作「The Art of Change: Strategic Therapy and Hypnotherapy without Trance」[4]が参考になるだろう。

 もちろん、エリクソニアン・アプローチは催眠を活用することが多い。ある意味、これがエリクソンのスタイルだからだ。ただし、繰り返すが催眠導入に成功したからといって、クライアントの認識や行動が変化するわけではない。もちろん、深い催眠に導けば、変化が大きくなる、というな思い込みも単なる迷信に過ぎない。エリクソン自身が直感的に「催眠それ自体が何かをするわけではありません」といったのは深い真理をついている。

 さて、話を表に戻そう。これについて、思考実験として目的外使用を考えてみると面白いのだろう。

 例えば、古典催眠をエリクソン催眠として使えるか?という問いだ。答えは、NOとなる。エリクソニアン・アプローチの特徴は、端的に言うと、1)ユーティライゼーション、2)間接的アプローチ、3)戦略的アプローチがあげられた。[5] 古典は手順どおりに直接的な指示により行うものであり、戦略性もない。したがって、まったく別物ということになる。逆に、エリクソニアン・アプローチは、間接的アプローチであり宴会芸には最適化されていないので見ても面白くはない(笑)。

 さらに、エリクソニアン・アプローチが学術系の実験に使えるか?だ、これも答えはNOとなる。学術研究の催眠は誰がやっても同じ手順になるように手順を明示し、属人性を排して現象の再現性を探るのが目的だ。エリクソニアン・アプローチは状況を見て都度クライアントに合わせてユーティライゼーションを使う。したがって、エリクソニアン・アプローチは、属人性を排した実験には向いていないということになる。

 要点は結局、目的に合わせた手段を取るということになるだろう。

(つづく)

文献
[1]https://books.google.co.jp/books?id=rNe8zXXAqDEC&pg=PA12#v=onepage&q&f=false
[2]http://ori-japan.blogspot.jp/2016/07/blog-post_1.html
[3]http://ori-japan.blogspot.jp/2012/01/blog-post_23.html
[4]https://www.amazon.com/Art-Change-Strategic-Hypnotherapy-Behavioral/dp/1555424996
[5]https://www.hypnosisalliance.com/articles/A%20Cybernetic%20Model%20Of%20Ericksonian%20Hypnotherapy,%20One%20Hand%20Draws%20The%20Other,%20Matthews%20&%20Lankton.pdf

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