2016年12月9日金曜日

ミルトン・エリクソンのアプローチとは?(その5)


                                                                                                                             
 業務内容:クライアントの人間関係の調整。

 日本語で言うと、縁結び、縁切り、縁の強弱の調整(笑)。

 エリクソンはこれを支援していた。
 
 <ひとりごと>



人間関係の結ばれあうパターン

  備忘録として書いておく。

 少し前に、エリクソニアンのマイケル・ヤプコの比較表を引いて心理療法家ミルトン・エリクソンのアプローチの特徴を書いた。

 今度は、同じエリクソニアンのスティーブン・ギリガンの「Therapeutic Trances」[1]からの比較表を眺めてみた。


権威的アプローチ
(古典催眠)
標準的アプローチ
(学術検証)
協力的アプローチ
(エリクソニアン)
使用される状況
ナイトクラブ、
治療(麻酔がない時代の外科手術、歯科)

学術的かつ実験的研究
心理療法、治療(歯科など)
目的
〈エンターテイメント〉
聴衆を楽しませる、誤解させる、驚かせる
〈学術研究〉
特定の現象を研究する
〈心理療法〉
認識や行動の変化を促す
焦点
催眠術師
被験者
セラピストと被験者の
協力的な関係
施術家のコミュニケーションのスタイル
直接的で威圧的な命令
標準化された変化の示唆(通常は許容的)
極度に柔軟、クライアントのパターンに適応的
被験者の一般的なタスク
異様で普通でないパフォーマンス
実験的な指示に従う
安全な人間関係の中で親密な人間関係を開発する
催眠導入の長さ
短い
短い
多様、しかし通常は30分から60分の催眠導入
催眠にかからない場合の反応の解釈
被験者は抵抗するものだ
被験者は催眠感受性が低い
セラピストはクライアントの特定のパターンに順応する必要
療法家の興味の対象
被験者の振る舞い
被験者の振る舞い
被験者の内的経験と結果としての振る舞いの変化

 4つ目は施術家のコミュニケーションのスタイルだ。エリクソンは、クライアントに対して極度に柔軟というのがある。

 スタイルの関係性の違いを簡単な図にしてみた。

古典催眠の例は、人間関係としては、極端な例で宴会芸にしか使えないので除くとする(笑)。ここで、較べてみたいのは、学術研究の催眠とエリクソン催眠の場合がどのように異なるのか?ということだ。

 学術研究というと思い浮かぶのはヒルガード[2]やウェイゼンホファー[3]ということになるのだろう。施術者と被験者の関係に着目すると、施術者のやることは徹底的に標準化され、何をやったら被験者の催眠現象を再現できるのか?この因果関係を探ろうとしたのがこの学術研究の目的ということになる。もちろん、こういった取り組みは企業の業務の標準化と同じ発想であるのは間違いない。ポイントは、直線的な因果関係[4]を想定し、誰がやっても同じ条件、同じ手順で実行すれば同じ現象が再現できる、あるいは同じ結果が得られるということだ。この場合の関係性に着目すると、『事務的』に行う、また、施術者は人によって対応を変えない、というのがポイントだろう。目的は前提条件や因果関係を明確にすることだからだ。

 実のところ、何をやればどのような催眠現象が起こるのか? あるいは何割くらいの人がこういった催眠状態になるのか? すでに研究され尽くされた感がある。1988年に、エリクソニアンのマイケル・ヤプコがウェイゼンホファーにインタビューでは、スタンフォードのヒルガードの研究室がとっくに閉鎖されたことを語っている。[5]   ヒルガードが引退したこともあるのだろうが、標準化された手順で催眠現象を起こす研究についてはもうやることは粗方やったということになるだろう。これはこれで非常に意味のあることだ。

 次に「エリクソンは一体何をしていたのか?」という問いになる。エリクソニアンのジェフリー・ザイクの「Injunctive Communication and Relational Dynamics: An Interactional Perspective」[6] にある記述はある意味究極の答えかもしれない。


Erickson was acutely attuned to styles of complementary and symmetry and he used strategic tasks, jokes and confusion techniques to disrupt inflexible patterns of behavior.

エリクソンは精緻にコンプリメンタリーおよびシンメトリーのスタイルの調整を行っていた、エリクソンは戦略的なタスク、ジョーク、混乱法を柔軟性のない振る舞いのパターンを壊すために使った。


 エリクソンは結局何をやってくれていたの?の答えを神社風に言うと、

  • 縁結び
  • 縁切り
  • および縁の強弱の調整
  • 上記の支援、以上
 ということになる(笑)。要は、クライアントとラポールを築いて介入を行うわけだが、結局変化するのは被験者と利害関係者の人間関係のスタイルだ、ということだ。結果、被験者の人間関係が変わる。逆にいうと人間関係のスタイルを変えるためには多少のハチャメチャはあり極度に柔軟ということになる。。(※ ただし、ブリーフセラピーカンファレンスのテーマで法と倫理の話があるので、最近はコンプライアンス的な話でどこまでハチャメチャは許されるのか?は結構重要だったりする。)

 例えば、コンプリメンタリーな関係を強め相手とより相補的な関係を気づく、役割は違うがお互い噛み合っているような関係だ、あるいはシンメトリーで対称的な関係を緩め、相手になんでも突っかかっていくスタイルをおとなしめにする、など答えは一つではないので色々考えられる。

 あまり大きな声では言えないが、関係性の変化ということについては、催眠は単なるおまけでしかない。エリクソン自身も「催眠それ自体が何かをすることはありません」[7]と言っている。つまり要点は以下の3つだ。

  • 催眠状態を恐怖心や抵抗を取り除くのに使うのはあり、
  • ただし、催眠状態になったからといって恒久的な変化が起こるわけではない
  • 適切な介入がないと認識(の枠組み)や行動の変化は起こらない(最近だと催眠+認知行動療法などという組み合わせもある)

 それで、関係性に対する適切な介入があって、はじめて、考え方あるいはその枠組みが変わる、結果、振る舞いやコトバが変わる、結果人間関係が変わる、反対に人間関係が変わる、結果振る舞いやコトバが変わる、結果考え方やあるいはその枠組みが変わる、当然心身状態や物事に対する(無意識の)反応が変わるということになる。


 もう少し、詳細な話をすると以下の3つの関係性の調整ということになるだろう。
  • 心の中の副人格同士(あるいは意識ー無意識)の関係性
  • 外側の人間関係
  • 上記2つの関係性
 コンプリメンタリー、シンメトリーの何れかの関係は、MRIのウオツラィックらの「コミュニケーションの試案的5つの公理」[8] に定義されていた、コンプリメンタリーとシンメトリーの関係だ。もちろん、この話をすると、ベイトソンがニューギニアのイアトムル族の集団の合併や分裂を観察してまとめた処女作「Naven」まで遡ることになる。


このあたりの話をはじめると小一日かかるので、省略するが・・・

・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・・

  このような前提を持って「アフリカスミレの女王」の話を心の中の関係性、外の人間関係、その相互作用の視点から読んで見ると面白い。

http://ori-japan.blogspot.jp/2016/11/blog-post_3.html
http://ori-japan.blogspot.jp/2016/11/blog-post_4.html

   あまり大きな声では言えないがこのあたりが分かってくると、催眠なしでMRIやミラノ派家族療法のように関係性が変わるように介入すればいい、というのが分かってくる。

(つづく)

文献
[1]https://books.google.co.jp/books?id=rNe8zXXAqDEC&pg=PA12#v=onepage&q&f=false
[2]https://en.wikipedia.org/wiki/Ernest_Hilgard
[3]https://en.wikipedia.org/wiki/Andr%C3%A9_Muller_Weitzenhoffer
[4]http://psychologydictionary.org/linear-causation/
[5]https://www.hypnosisalliance.com/articles/Andre%20M%20Weitzenhoffer%20Interview%20By%20Michael%20Yapko.pdf
[6]http://bscw.rediris.es/pub/bscw.cgi/d4523270/Zeig-Injunctive_communication_relational_dynamics.pdf
[7]http://ori-japan.blogspot.jp/2016/07/blog-post_1.html
[8]https://en.wikipedia.org/wiki/Paul_Watzlaw
[9]http://ori-japan.blogspot.jp/2016/09/blog-post_46.html

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