2017年4月30日日曜日

ミルトン・エリクソン論文全集を読む 120日目


                                                                                                                            
 叶わないから夢を見るのか?

 夢を追い続けるからそれが叶うのか?

 の違いは、とても大きな世界観の違いなのだろうなぁと(笑)。

 <ひとりごと>




はじめに

 備忘録として、



 お正月から、ミルトン・エリクソンの論文全集『The Collected Papers Milton H. Erickson』[1] を読んでいる。読み方のルールはここで書いた。

 120日目について書いておきたい。

人はいくつから夢を見るのか?

 「On the Possible Occurrence of a Dream in an Eight-Month-Old Infant(1941)」著者はミルトン・エリクソン。

 1941年は、ちょうど日米が開戦した年にあたる。エリクソンは丁度40歳くらい。そんな時代背景のエッセーということになる。

ここでのテーマは「人はいくつから夢を見るのか?」だ。ここでの夢は比喩的な夢ではなく、文字通り眠っている時に見る夢ということになる。

 このエッセーが精神分析関係の会報に投稿されたことを考えると、また、興味深い。また、時代背景を考えると脳波計などもなく、神経外科などでもあまり十分研究されていない時代だ。

 エリクソンはまず他者の先行研究として、2歳4ヶ月の赤ん坊が夢を見ている例をあげている。そして、赤ん坊の実際の振る舞いを観察することでコトバを身につける前の8ヶ月くらいから既に夢を見ているのではないか?と推論を行う。また、夢は、それまでの経験がもとになって起こっている現象ではないと推論しているのがここでの内容だ。

 観察からの推論が行われているだけで、あまり深い推論がなされているわけではない。

 おそらく、このエッセーだけを見ても白紙の上に点が一つ打たれたような格好になっているので、その後どこにつながっているのか?を考える必要があるのだろう。
 
・・・・・・・・・・・
  

随考

 ここでの面白さは精神分析学派とは異なる技法を発展させることになったエリクソンが精神分析学派の会報にエッセーを寄せていることだろう。エリクソンは技法として夢分析のようなことは行わないが、エリクソン自身が「夢とは何か?」をどのように捉えていたかを探るのは面白いテーマの一つであるかもしれない。

 さて、エリクソンの晩年に近い1976年のロッシとの共著の中でエリクソンは以下のように語っているところがあって興味深い。


You have all the protection of your own unconscious, which has been protecting you in your dreams,permitting you to dream what you wish, when you wish , and keeping that dream as long as your unconscious thought necessary, or as long as your conscious mind though would be desirable.

あなたは、あなた自身の無意識によって全て保護されています、それは夢の中であなたを守ってきました、あなたが望むことを夢見ることを許してきました、あなたが望むことを、あなたが望んだ時に、あなたの無意識がそれを必要としているかぎり、あるいはあなたの意識がそれを渇望しているかぎり、そうです。
 

 
 また、論文全集に収録されているロッシとの共著で「Varieties of Hypnotic Amnesia」の「Amnesic Material in Dreams」に以下があったのは記憶に新しい。


In summary, this hypnotic subject developed spontaneous amnesia for trance experiences but spontaneously recovered that amnesic material in the form of dreams. She thus had a complete amnesia for one experience (trance) and a full awareness of an entirely different kind of an experience (dream)with an identical content. 


要約すると、この催眠被験者は、トランス経験のための自発的記憶喪失を発症したが、自発的にその記憶喪失の内容を夢の形で回復した。 彼女はこのように1つの経験(トランス)の完全な記憶喪失と全く同じ種類の経験を持つ異なる種類(夢)の完全な同一の内容である認識を持っていた。

 
 ここでは、経験が夢にメタ・マッピングされているような現象を観察していることが伺える。

 何れにしてもエリクソンは解釈するのではなく、現象としての夢を追いかけているようにも思える。もっとプラグマティックに言うと、「夢は何かの役に立つの?」ということだ。こう言われると元も子もないかもしれないが(笑)。

 夢が認識の枠組み、あるいは振る舞い、それぞれの構築や変化にどのような影響を与えているのか?を考えると興味は尽きない。

 確かに、エリクソンは夢のコンテンツ自体を解釈したりはしないが、実際これが精神分析学派とは違った確度での深いテーマであることには違いないのだろう。


4月30日の進捗、952ページまで(全体 2,648ページ、進捗率 36.0%)

Volume III
HYPNOTIC   INVESTIGATION OF   PSYCHODYNAMIC PROCESSES

On the Possible Occurrence of a Dream in an Eight-Month-Old Infant Milton H. Erickson Reprinted with permission from The Psychoanalytic Quarterly, July, 1941, Vol. X, No. 3.






(つづく)

文献
[1]http://ori-japan.blogspot.jp/2017/01/collected-papers.html

記事の内容の正誤について、執筆者は一切保証いたしません。また、本書の内容、エクソサイズなどを実行した結果被った被害などについて著者は一切責任を負わないこととします。本ニュースレターの内容は、以下クリエイティブ・コモンズ・ライセンスに従うものとします。但し、引用元の著作権は引用元に所属します。ご意見、ご感想は次へ tritune'`@''gmail.com
https://www.facebook.com/Okirakusoken-236949276723679

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2017年4月29日土曜日

ミルトン・エリクソン論文全集を読む 119日目


                                                                                                                            
 エリクソンが重要視するのは、

 過去学んだことを、今どのように利用できるかであって、

 それがなぜ起こったのかではない(笑)。

 <ひとりごと>



はじめに

 備忘録として、



 お正月から、ミルトン・エリクソンの論文全集『The Collected Papers Milton H. Erickson』[1] を読んでいる。読み方のルールはここで書いた。

 119日目について書いておきたい。

退行催眠で思い出す記憶の正確さ?

 「Past Weekday Determination in Hypnotic and Waking States ( 1962)」から。内容は発表されなかった原稿。著者は、ミルトン・エリクソンと三男のアラン・エリクソン。

 原稿の日付は、1962年でエリクソンは既に還暦を過ぎているが、1920年代と1930年代に行った退行催眠の実験についての振り返りとなっている。

 簡単にいうと、覚めた状態で、被験者の7歳とか8歳とか9歳の誕生日などの出来事が何曜日だったか?と聞く。さらに退行催眠と使って同じ質問をする。これに違いがあるかどうかを観察するというもの。

 要は、覚醒時と催眠時の記憶の正確さの違いのようなものを比較したかったのだと思う。

 ここで行っているのは本当に純粋な実験。 
 
・・・・・・・・・・・
  

随考

    ネットにエリクソンの退行催眠の技法について書かれているドキュメント「Age regression」が落ちていた。

 論文全集の中にあった記憶があるので素性は怪しくない。ただし、エリクソンは色々創造的な技法を使うので、ここで書かれている3つの技法だけを使っていたわけではない。

   また、エリクソンが退行させるのは物心ついてから現在までの経験の範囲での時系列だ。その意味、前世だ来世だというような変なオカルトとは無縁の話だ。

 さらに、エリクソンの文章だと「学習」というコトバが頻繁に登場する。つまり、年齢退行はあくまでも「学習」の文脈で使われる。

 Wikipeidaに「State-dependent Memory」という項目がある。 状態依存の記憶や状態依存の学習と呼ばれる概念だ。これは、学習したことを思い出すのに、それを学習した時と同じ心身状態になることでそれを容易に思い出せるということだ。もちろん、今、学習する時にもその心身状態は有効だろう。

 これは、何かを学んだ経験、学ぶ時の心身状態、学び方のプロセスなど・・・今どのように活かせるのか?という意味での「状態依存」の振り返りがエリクソンの退行催眠だということだ。当然、現在、狼狽していたり、恐怖を感じたり、テンパったりしていたら、学習したことを思い出すのは難しい。だから、「学習」した時と同じ状態になり、そのよい状態を思い出し、学習したコンテンツなり法則なりを思い出し、現在の問題解決なりに活かすために退行して取ってくるということになる。

 その意味、探求するのは「学習」ということであって、その出来事の原因ではないということだ。エリクソンは精神分析学派とはまったく違うことを行っているので、出来事の原因分析という枠組みでも見てもまったく理解できない。もちろん、エリクソンの場合はアンラーニング、つまり今新しいことを学ぶ足かせになっている過去の制約をリフレーミングする、あるいは忘れる支援をするという場合もある。

 さて、ドキュメントを読むと3種類の退行催眠の誘導方法が例示されている。

 一つは、混乱技法。要は、昨日、先週、1年前、明日、明後日・・・のようにワーキングメモリーのオーバーフローを利用した形式で、混乱させながら、コトバにある時間のインデックスを遡りながら記憶を退行してもらう形式になる。

 二つ目は、映画のスクリーンを思い浮かべる技法。ここに何か映画が上映され観客席からイメージ見ていることをイメージしてもらう。そして、エリクソンは「その小さな子どもはあなたのようでもありますね」と、ぽつりとつぶやく。要は、解離というかメタ認知を促しているような格好になっているのは興味深い。

 三つ目は、エリクソンの奥さんのベティー・エリクソンの技法。道を歩きながら、右に、左に右に右にに左へ・・・・とやってバリケードに囲まれた場所に歩いていくことをイメージする方法。

 もちろん、これだけやってもだめで、過去の学びを今のリソースとして持ってくるというのが基本ということになる。その意味、点と点が線になり、線と線が面になるように利用するということだ。

 

4月29日の進捗、946ページまで(全体 2,648ページ、進捗率 35.7%)

Volume III
HYPNOTIC   INVESTIGATION OF   PSYCHODYNAMIC PROCESSES

Past Weekday Determination in Hypnotic and Waking States
Milton H. Erickson and Allan H. Erickson Unpublished manuscript written with Allan Erickson, 1962.





(つづく)

文献
[1]http://ori-japan.blogspot.jp/2017/01/collected-papers.html

記事の内容の正誤について、執筆者は一切保証いたしません。また、本書の内容、エクソサイズなどを実行した結果被った被害などについて著者は一切責任を負わないこととします。本ニュースレターの内容は、以下クリエイティブ・コモンズ・ライセンスに従うものとします。但し、引用元の著作権は引用元に所属します。ご意見、ご感想は次へ tritune'`@''gmail.com
https://www.facebook.com/Okirakusoken-236949276723679

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2017年4月28日金曜日

ミルトン・エリクソン論文全集を読む 118日目


                                                                                                                            

 実験、実験、実験、観察、そして実践。

 これが、エリクソンのスタイル。

 理論の構築はベイトソンらにおまかせ(笑)。

 <ひとりごと>



はじめに

 備忘録として、



 お正月から、ミルトン・エリクソンの論文全集『The Collected Papers Milton H. Erickson』[1] を読んでいる。読み方のルールはここで書いた。

 118日目について書いておきたい。

解釈の固執とトランス状態の使用

 一つ目は、「Literalness and the Use of Trance in Neurosis(1974)」から。内容はミルトン・エリクソンとアーネスト・ロッシの会話の録音を書き起こしたスクリプト。

 エリクソンの会話のスクリプトを読むとと、どうしてもスターウォーズのヨーダと話しているような錯覚に陥る(笑)。その意味、話している内容が一々示唆深い。

さて、Literalness というのは文字通り「何かの具体的な解釈に固執すること」となる。余談だが解釈というのはその人のなりの主観的な意味をつくる認知上のプロセスのことだ。何かの枠組みを当てると意味論(Semantics)の話になる。

 単純化すると、一般的に人間は経験を帰納して認識の枠組みをつくり、何かの出来事が起こるとそれを演繹的に当てはめて解釈しているようなやり方で動いている。そして普通はその見方、聞き方、感じ方が「常識」として固定化されてしまう。

 極端な例だ、

 前月、目玉焼きを焼いたら雨が降った。

 三日前も、目玉焼きを焼いたら雨が降った。

 昨日も、目玉焼きを焼いたら雨が降った。

 これで、帰納的に「目玉焼きを焼くと、雨が降る」という「常識」が形成される。あくまでもその人の主観的な「常識」だ。また、帰納法が含むロジックとして正しい推論ができない例でもある。

 人はその主観的な「常識」を通してのみ見たり、聞いたり、感じたりすることが可能で、いつしかそのやり方に固執してそれ以外の解釈を取ることができないことになってしまう、というのがここでの前提だ。明日、目玉焼きを焼くと雨が降るだろう、と「常識」を演繹的に当てはめる。

 それで、抵抗を回避して、その凝り固まった「常識」ではないやり方で物事を見ることができるようにするのがトランス状態だというのが、まずここでの話。

 つまり、なぜトランス状態を使うのか?

 答えは、常識にとらわれずに他の可能性に目を向けるためだ、となる。

 そして、エリクソンのやり方は、その「常識」を否定するのではなく、新しい代案を提示するというのがここでのやり方になる。これについて、以前、目標達成における「ゴール設定のガイドライン」について書いたが、この中で、何かを終わらせる形式ではなく、何かを始める形式で設定するというのは、このエリクソンの影響を受けていると思って間違いないだろう。

 また、そもそも論の話をすると、コーチングやファシリテーションでも「常識」を通した過去の延長上にあるゴール設定を行うと大した成果は得られないという話もこのあたりから来ていることになる。

 つまり、コーチングのゴールは「常識」の枠組みの外に設定しなさいという話もこのあたりから来ている。
 
 このために、エリクソンは、コンサルタントが言う「ゼロベース思考」を、トランス状態をつかってクライアントがこれが出来るように支援していたということになる。

 こうやって論考を深めていくと短いスクリプトだが、一々示唆深いのは確かだ(笑)。

・・・・・・・・・・・



退行催眠についての2つ研究の断片

   二つ目は、「Age Regression: Two Unpublished Fragments of a Student’s Study(1922,1931)」。著者はミルトン・エリクソン。

 内容は、1922年のエリクソンがウィスコンシン大学の学生だったころ、もう一つはそれから9年後の1931年に書かれた退行催眠についての研究の断片ということになる。

 最初は、元々精神分析学派から発展してきた技法の一つである退行催眠についての理解と課題を考察しているのが最初の断片。

 二本目は間接的暗示をつかって退行に介入しようとしている実験。一般的に退行催眠というと自由連想を思い起こすが、エリクソンの場合はこれとは違うやり方で退行を制御しなんからの状態を引き起こそうとしたことが分かる。おおよそ以下の感じだ。

 もちろん、これはエリクソンが色々変数を変えておこなっている実験に過ぎない。

1.被験者をトランス状態にして望む過去の時間を思い出すように導く

2.臨床的に有効と判明している暗示を与える

3.さらに被験者に一連の(間接的)暗示を与える

 a.感情に対する無関心と対象への無関心
 b.混乱と不確実性に対する示唆
 c.今日、今週、今月の特定の出来事がゆっくり進む、起こったかどうか不確実
 d.出来事について、人、場所、時間の見当違いの情報を与える
 e.今日、今週、今月の出来事についての記憶喪失
    f.過去1年、その前後の記憶喪失を起こす、年単位
    g.全ては変わっているという感覚、過去を思い出し、同時にそれが積み重なって遠い現在に居るという感覚、
 h.特定の年齢の心地よい経験、感覚を思い出す
 i. 過去だけではなく、現在、未来にもこの心地よい感覚を持つだろう感覚を持って目覚める
4.8歳から18歳までの経験で上を繰り返し行う

 ざっくりメモだけしておくとこんな感じだ。

 後にエリクソンは退行催眠を使う場合、特定の出来事が起こる直前まで退行させて、そこからメタ認知あるいは感覚を解離させた状態で時間を進行させ、リフレーミングするなり、時間歪曲や健忘を使うなりとしているところがある。要は、経験のコンテンツを利用するが、実際には経験を構築するプロセスに介入する方法だということだ。この、詳細については今後の愉しみにとっておきたい。

    さて、退行催眠というどうしても虚偽記憶の問題があるが、エリクソニアンのマイケル・ヤプコの「Trancework」に虚偽記憶に陥らずに退行させる方法について書いてあった記憶がある。要は、虚偽記憶をつくらない方法は分かっているのでクライアントの利益第一で安全にやりなさいということだ。
  

随考

   ミルトン・H・エリクソン財団からお知らせが来ていたのでご紹介しておこう。

 今年の12月13日〜17日、米国カリフォルニア州のアナハイムで、心理療法家の祭典である「The Evolution of Psychotherapy 」が開催予定となっている。

  4年に1回の開催だが、エリクソニアンな方々は言うまでもなく、 第一回の開催からご参加の重鎮中の重鎮であるアーロン・ベックやACTのスティーブ・ヘイズ・・・・・とかなり流派横断になっているところが面白いところなのだろう。
 

4月28日の進捗、938ページまで(全体 2,648ページ、進捗率 35.4%)

Volume III
HYPNOTIC   INVESTIGATION OF   PSYCHODYNAMIC PROCESSES

Literalness and the Use of Trance in Neurosis Milton H. Erickson and Ernest L. Rossi Dialogue between Milton H. Erickson and Ernest L. Rossi, 1973.

Age Regression: Two Unpublished Fragments of a Student’s Study
 Milton H. Erickson Written between 1924 and 1931.



(つづく)

文献
[1]http://ori-japan.blogspot.jp/2017/01/collected-papers.html

記事の内容の正誤について、執筆者は一切保証いたしません。また、本書の内容、エクソサイズなどを実行した結果被った被害などについて著者は一切責任を負わないこととします。本ニュースレターの内容は、以下クリエイティブ・コモンズ・ライセンスに従うものとします。但し、引用元の著作権は引用元に所属します。ご意見、ご感想は次へ tritune'`@''gmail.com
https://www.facebook.com/Okirakusoken-236949276723679

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2017年4月27日木曜日

ミルトン・エリクソン論文全集を読む 117日目


                                                                                                                            

 コミュニケーションのほとんどは人間関係の力関係によって決まる(笑)。

 <ひとりごと>



はじめに

 備忘録として、



 お正月から、ミルトン・エリクソンの論文全集『The Collected Papers Milton H. Erickson』[1] を読んでいる。読み方のルールはここで書いた。

 117日目について書いておきたい。


質問に対する反応の違い

 「Literalness: An Experimental Study (1940s)」から。著者はミルトン・エリクソン。実際には発表されなかった原稿。

 この実験も1920年代から1940年代に渡って足掛け25年に渡って行われており非常に足が長い話だ。簡単に言うとと以下のような検証だ。日常で合う人に質問する。例えば以下のような質問だ。「お名前を教えてもらえますか?」「立ってもらえますか?」等、こういった質問を、日常の覚めた状態にある人、トランス状態にある人に尋ね、その反応にどのような違いがあったのか?観察するというのがここでの趣旨となる。

 ただし、被験者の数が合計4000人、このうちトランス状態にある人が1800人。でもグラフィックとしては4歳から80歳までの男女、人種は、白人、黒人、アジア人・・・・と多種多彩。

 詳細な設定と結果は論文に譲るとして、覚醒状態の時は95%の人が質問の内容を受け入れで実行してくれているが、トランス状態の時は、軽いトランス時で80%、中程度のトランス時で90%が、深いトランス時に97%が「嫌だ」と答えている結果が得られている。
   
 この違いをどう見るのか?の考察は論文に譲るにしても、覚めた状態とトランス状態で真逆の結果が出てるのが興味深いところなのだろう。少なくとも催眠状態にあると、被験者は実験者の言うことを拒否できずに自分の意志とは関係なく自由に操られるなどというのは都市伝説のようにも思えてくる。

・・・・・・・・・・・

随考

   今日の論文で面白いところは、エリクソンが実験者と被験者の「関係性」というのをほとんど考慮していない点だ。人間関係とか力関係とかそういう意味での「関係性」。

 これについてNCBIのデータベースを参照すると「Metacommunication in waking and hypnotic states」という論文のサマリーが見つかる。

 覚めた状態、それとトランス状態にある時ではメタ・コミュニケーションに何らかの違いがあるのか?という考察だ。ある意味、関係性を含んだコミュニケーションがメタ・コミュニケーションでもあるだろう。

 要は、パロアルトのMRIの人たちがベイトソンの人間関係のパターンをコンプリメンタリー、シンメトリー、メタ・コンプリメンタリー、メタ・シンメトリーという具合に分けて考えたところから来ている。このサマリーでは、この用語の表現が少しが変えられているが、コミュニケーションのやりとり、あるいはその結果は関係性に大きく依存しているのだろうということだ。

 関係性については、このあたりで書いた。

 メタ言語的とメタ・コミュニケーション的の違いについてはここらで書いた。

 それで、エリクソンの論文のメモ書きに追加することがあるとすれば、この関係性ということがあるのだろう。
 

4月27日の進捗、930ページまで(全体 2,648ページ、進捗率 35.1%)

Volume III
HYPNOTIC   INVESTIGATION OF   PSYCHODYNAMIC PROCESSES

Literalness: An Experimental Study
Milton H. Erickson Unpublished manuscript, circa 1940s.



(つづく)

文献
[1]http://ori-japan.blogspot.jp/2017/01/collected-papers.html

記事の内容の正誤について、執筆者は一切保証いたしません。また、本書の内容、エクソサイズなどを実行した結果被った被害などについて著者は一切責任を負わないこととします。本ニュースレターの内容は、以下クリエイティブ・コモンズ・ライセンスに従うものとします。但し、引用元の著作権は引用元に所属します。ご意見、ご感想は次へ tritune'`@''gmail.com
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2017年4月26日水曜日

ミルトン・エリクソン論文全集を読む 116日目


                                                                                                                            
 コーチングの質問で「何の制約もなかったら、どうする?」があるが、

 エリクソンにかかると、間接暗示で、この制約自体を忘れさせるような

 技法を使うことができるということなのだよなぁ(笑)。

 <ひとりごと>



はじめに

 備忘録として、



 お正月から、ミルトン・エリクソンの論文全集『The Collected Papers Milton H. Erickson』[1] を読んでいる。読み方のルールはここで書いた。

 116日目について書いておきたい。


様々な健忘、記憶喪失

 「Varieties of Hypnotic Amnesia (1974)」の続きから。著者はミルトン・エリクソンとアーネストロッシ。内容は、種々の健忘、記憶の喪失について。

   要は、クライアントの状況を利用して起こされるエリクソンのある意味「創造的」な健忘について書かれているのがここでの要点。実験室での標準的な手順に基づいた再現性を重んじるアプローチとは方向が違うということだ。

 細かいトランスクリプトは掲載されていないので、エリクソンとジェイ・ヘイリー、それとMRIのジョン・ウィークランドが書いた論文を探してみたいところだ。自分持ちのがあったはず(笑)。

 さて、論文は、心理療法への応用というところで終わっているが、これについて少し書いておく。

 研究室での「Posthypnotic Amnesia」についてかなり研究されているところがある。しかし、結局ここでの要点は何かというと、クライアントのトランス状態とトランスが覚めた時の状態を健忘の現象をどのように利用してブリッジングし元々の問題に対処するのか?が課題ということになる。つまり、トランス状態にして健忘を誘発し、トランスから覚めた時に、何が良くなっているのか?という考察だ。

 コーチングで「何も制約がなければどうしたいか?」のように尋ねる質問がある。おそらくこれはエリクソンが元になっている。制約は当然過去の経験から構築されている。一時的にでもこれを忘れることができれば、普段とは違う考えや振る舞いができるようになるはずだ。エリクソンはこれをトランス状態+間接暗示でクライアントの意識しないところで生み出す。そしてこれを利用する。どの事例もおおよそこんな感じだ。

 余談だが、UCバークレーのサイトに「Hypnosis , Memory , Amnesia」というのがあったが、1990年代後半の研究なので比較的新しい研究なのだろう。パラパラ読んでみた。

・・・・・・・・・・・

随考

 さて、このあたりを読むと、後にエリクソン派生の心理療法の技法が色々あるが、これはこのあたりをモデル化したのだなとか、あれはこのあたりをモデル化したのだなとかが分かって面白い。

    あまり大きな声では言えないが例えば、NLPのタイムラインなんかもそうだろう。出来はよくないが(笑)。エリクソンは技法として、時間を退行、前進させて、時間歪曲(Time Distortion)、健忘(Amnesia)、幻覚(Hallucination)、感覚消失(Anesthesia)、解離(Dissociation)など催眠現象を誘発し、トランス状態で発見した資源を上手にトランス状態から覚めたところにブリッジングする技法を非常に緻密に駆使しているのがNLPとの違いだ。

 結局、このあたりの現象をきちんとユーディライズできるのがエリクソンであって、単に床に書かれた線の上を歩いても普通のイメージトレーニングにしかならないことを考えると、これは大きな違いなのだろう。だからNLPを普通に使ってもあまり大きな変化は起こらない。

 もちろん、タイムラインも理解の助けくらいにはなるのだろうが、現象を起こしてそれを課題に対してきちんとユーディライズできていないとすれば、しょぼい技法のままであるのには変わりないようには思うのだ(笑)。
 

4月26日の進捗、922ページまで(全体 2,648ページ、進捗率 34.8%)

Volume III
HYPNOTIC   INVESTIGATION OF   PSYCHODYNAMIC PROCESSES

Varieties of Hypnotic Amnesia
Milton H. Erickson and Ernest L. Rossi Reprinted with permission fromThe American Journal of Clinical Hypnosis, April, 1974, Vol. 16, No. 4.


(つづく)

文献
[1]http://ori-japan.blogspot.jp/2017/01/collected-papers.html

記事の内容の正誤について、執筆者は一切保証いたしません。また、本書の内容、エクソサイズなどを実行した結果被った被害などについて著者は一切責任を負わないこととします。本ニュースレターの内容は、以下クリエイティブ・コモンズ・ライセンスに従うものとします。但し、引用元の著作権は引用元に所属します。ご意見、ご感想は次へ tritune'`@''gmail.com
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2017年4月25日火曜日

ミルトン・エリクソン論文全集を読む 115日目


                                                                                                                            
 思いついたことは、

 すぐメモしないとアイディアは羽が生えてどこかへ行ってしまう(笑)。

 だから24時間、アイディアを追わなくてもすむように片時もメモが手放せない。

 <ひとりごと>



はじめに

 備忘録として、



 お正月から、ミルトン・エリクソンの論文全集『The Collected Papers Milton H. Erickson』[1] を読んでいる。読み方のルールはここで書いた。

 115日目について書いておきたい。


様々な健忘、記憶喪失

 「Varieties of Hypnotic Amnesia (1974)」の続きから。著者はミルトン・エリクソンとアーネストロッシ。内容は、種々の健忘、記憶の喪失について。

  まず、Amnesiaの定義について少し書いておく。エリクソンはこの論文で Amnesiaの厳密な定義をしていない。しかし、後に弟子筋によって書かれた「Ericksonian Approaches」を読むとこの定義が登場する。まずは、古典的な定義だが「個人が特定の出来事や期間のことを忘れるように暗示すること」となる。そして、退行などを行う場合、トラウマ的な出来事を直接思い出すことからクライアント保護する場合に使われる、云々・・・

 しかし、ネオ・エリクソニアンのザイクやランクトンの「State of Art 」によると少し異なった定義がされている。一つは、Amnesiaは「忘れること」と同じではない、つまり何らかの手がかりで忘れたり思い出したりできる古典的な Reversible Amnesiaに言及されており、さらにエリクソニアン的には心理療法に用いられる Amnesia は Therapeutic Amnesia として区別している。おそらくエリクソンは Amnesia を一時的な状態、敢えて日本語でいうと「物忘れ」あるいは「ど忘れ」のような状態と考えているようだが、このあたりの細かい違いの区別は今後の課題としておきたい。

 内容のインデックスを書いておく

 気のそらしによる健忘

 間接暗示による健忘

 夢の中の健忘となる要素

 記憶の置き換えや歪曲による健忘

 構造化された健忘(時間の再配置による健忘)

・・・・・・・・・・・

随考

 エリクソンは理論化、体系化を自分では行っていないが、臨床の現場から様々な実証をして帰納的に結果を集めているようなところがある。しかもこれを20年とか30年がかりでやっている。おそらく数少ない結果から理論めいたものをつくるより、徹底的に現場の情報を収集して似たような事例についてはとりあえず、ゆるい分類で同じ箱に入れておく。こういったスタイルで仕事を進めていた人のように思えてくる。

 また、実験を行う場合と臨床を行う場合を分けている。ある程度理想的な条件を整えて実験を繰り返すが、それを現場に適用する場合は、コンテクストや状況を考えてなんらか調整しないといけないというようなやり方をしている。

 そして、エリクソンはエリクソンは演繹的になにかの理論や枠組みを当てはめるのではなく、一人ひとりのクライアントを観察しながら、「これはあの箱にはいっていた事例とちょっと似ている」と引き出しを意識しつつも、そこで起こっていることの観察は怠りなくやるというスタイルで仕事をしていた人なのだろうと推測できる。

 こういうスタイルはやはり一般的な仕事の場面でも現場に出た時に強い。
 

4月25日の進捗、916ページまで(全体 2,648ページ、進捗率 34.6%)

Volume III
HYPNOTIC   INVESTIGATION OF   PSYCHODYNAMIC PROCESSES

Varieties of Hypnotic Amnesia
Milton H. Erickson and Ernest L. Rossi Reprinted with permission fromThe American Journal of Clinical Hypnosis, April, 1974, Vol. 16, No. 4.


(つづく)

文献
[1]http://ori-japan.blogspot.jp/2017/01/collected-papers.html

記事の内容の正誤について、執筆者は一切保証いたしません。また、本書の内容、エクソサイズなどを実行した結果被った被害などについて著者は一切責任を負わないこととします。本ニュースレターの内容は、以下クリエイティブ・コモンズ・ライセンスに従うものとします。但し、引用元の著作権は引用元に所属します。ご意見、ご感想は次へ tritune'`@''gmail.com
https://www.facebook.com/Okirakusoken-236949276723679

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