2017年5月31日水曜日

ミルトン・エリクソン論文全集を読む 151日目


                                                                                                                            
 
     第二次大戦中、米国政府の委託を受けて、

 エリクソンが何をしていたのかは今もって秘密のままだ。


   <ひとりごと>




はじめに

 備忘録として、



 お正月から、ミルトン・エリクソンの論文全集『The Collected Papers Milton H. Erickson』[1] を読んでいる。読み方のルールはここで書いた。

 151日目について書いておきたい。


戦争における急性精神障害の治療のための催眠技法

「HypnoticTechniques for the Therapy of Acute Psychiatric Disturbances in War (1944) 」から。著者はミルトン・エリクソン。正確には1944年に米国精神医療学会で発表内容が1945年に出版という流れだ。

1944年は第二次大戦の後期で、連合国軍がノルマンディーに上陸する1ヶ月くらい前に行われた発表ということになる。エリクソンの住む米国本土が攻撃を受けたわけではないが、ヨーロッパやアジア・太平洋戦線から米国に帰還した兵士の中に何らかの精神障害を訴える兵士がいたことは想像に難くない。

 そのような背景の中で催眠の効用について語っているのがこの論文となる。ただし、エリクソンの一般的な見解について述べられたものであり、個別の事例については書かれていない。

 エリクソンによって語られているのは、クライアントが色々な問題に一気に取り組もうとすることで、圧倒されてしまう気持ちについて、催眠を使うことで自分を客観視することができるようになり、資源や資質や能力についての目録を作成し、一つひとつにの問題に取り組めるように方向性を与えることができる、と述べている。

 また、催眠は思考を制御し、指示し、記憶や考えを取捨選択し、クライアントによって選択された項目について適切に処理する機会を提供することでもある。

 結局、催眠を使うことで、クライアントにもセラピストにもクライアントの無意識に容易にアクセスできるようにすることでもあり、クライアントを混乱させている無意識を直接扱うことができるようになり、(戦争が原因の)人格障害のようなケースについても有効であると主張している。

・・・・・・・・・・
 
 第二次大戦中のミルトン・エリクソン、グレゴリー・ベイトソン、マーガレット・ミードらの足取りについては今持って秘密にされている。ミルトン・エリクソン書簡集の記述によれば、大戦中米国の情報機関で、ドイツ人および日本人の性格についての研究に従事していたことが語られているが、詳細な情報は今持って機密のままである。



テスト付き

 ――ミルトン・エリクソンの介入のパターンとは? ――
  
 ミルトン・エリクソンがクライアントからどのように
  • 情報収集し
  • システムとしての組織の見立て
  • 変化を志向した介入をしたのか
 というのは個人的に興味の対象だ。


  これについて面白い切り口から光を当てているのが当てているのが、ディヴィッド・ゴードン著の「PHOENIX(1981)」ということになる。もちろん、本書だけ読めばなんでも分かるというわけにはいかないが、参考文献の一冊として読むと面白いと思う。

 ゴードンは、初期のNLP(Neuro-Linguistic Programming)の開発メンバーの一人だ。1978年に彼の妻のと一緒にカリフォルニアから車でエリクソンの住むアリゾナ州フェニックスに出かけるところから物語が始まる。

 NLPは、現在、エビデンスがまったく無くエリクソン派生の心理療法の技法としてはかなり微妙な位置づけなのだが、このあたりまでは割りと真面目にやっていた時代なのだろう。現在はアリゾナで別の仕事についているようだ。このあたり直ぐに Linkedin で追跡できるのが凄い時代だ。

―― 催眠を無視したら何が見えるか? ――

 まず、ゴードンのアプローチは催眠やトランス誘導は意図的に無視している。

 そして、エリクソンが働きかけた3つの点からそのパターンを解説しているのが本書となる。

―― 具体的な介入は何に働きかけているか?――

 この答えは案外簡単だ、
 一つは、ラポールとペーシング、二つ目は、認識の枠組み(Frame of reference) 、そして三つ目は行動 (Behavior )ということになる。 介入も柔道の技と同じようなもので、相手の襟首を掴むとか腕を掴むというように当然、技を繰り出すために掴む部分が必要になるのだろうが、本書の場合は、それが認識の枠組みと具体的な行動という具合になる。

 例えば、ラポールとペーシングについては、話の内容のラポール、振る舞いを合わせるラポール、文化のラポールと3パターンが取り出されている、という具合だ。認識の枠組みの介入については、5パターン、振る舞いの介入については7パターンが取り出されている。特に、行動の介入のタイトルに Snow Ball とタイトルが付けられているのだが、これはサイバネティクスのポジティブ・フィードバック・ループを志向した「もっとやれ Do More 」を指示することで変化が起こることを示唆していることになる。

   もちろん、これを実行したからといってミルトン・エリクソンに成れるわけではないが、エリクソンの介入をどのような切り口で見るのか?ということについてはかなり参考になるだろう。

5月31日の進捗、1188ページまで(全体 2,648ページ、進捗率 44.6%)

ボリュームIV
INOVATIVE HYPNOTHRAPY

戦争における急性精神障害の治療のためのHypnoticTechniques
ミルトン・エリクソン米国精神医学会、フィラデルフィア、ペンシルバニア州、月15-18、1944年のセンテナリー総会で読むと精神医学、1945、101、668から672のアメリカジャーナルからの許可を得て転載。









お知らせ:

ミルトン・エリクソンの本質を突き詰めたから分かったことがあります。

 組織のパラドクスを解消し、組織の認識、行動の変化を支援する、
「変化・創発ファシリテーション」のオンデマンド、オンサイト講座を開始いたします。

詳細は、こちらから。



(つづく)

文献
[1] http://ori-japan.blogspot.jp/2017/01/collected-papers.html


記事の内容の正誤について、執筆者は一切保証いたしません。また、本書の内容、エクソサイズなどを実行した結果被った被害などについて著者は一切責任を負わないこととします。本ニュースレターの内容は、以下クリエイティブ・コモンズ・ライセンスに従うものとします。但し、引用元の著作権は引用元に所属します。ご意見、ご感想は次へ tritune'`@''gmail.com
https://www.facebook.com/Okirakusoken-236949276723679

――

2017年5月30日火曜日

ミルトン・エリクソン論文全集を読む 150日目


                                                                                                                            
 
     結局、催眠ってどんな病状に適用できるのだろうなぁ?


   <ひとりごと>




はじめに

 備忘録として、



 お正月から、ミルトン・エリクソンの論文全集『The Collected Papers Milton H. Erickson』[1] を読んでいる。読み方のルールはここで書いた。

 150日目について書いておきたい。


医学における催眠

「Hypnosis in Medicine (1944) 」つづきから。著者はミルトン・エリクソン。

―― 催眠現象について――

 一般的な催眠現象について、は以下がある。

  • ラポール
  • カタレプシー
  • 観念運動
  • 観念知覚
  • 記憶修正(健忘、記憶増進、歪曲など)
  • トランスでの歩行
  • 時間歪曲(1950年代に発見)
  • 催眠による夢
  • 後催眠暗示
 この論文で何が指摘され、何が指摘されていないのか?を比較してみると面白い。要は、まだこの当時、時間歪曲は発見されていない。

  ――催眠の価値 について――

 医師他が催眠を学ぶと何かよいのか?について書かれている。

 ―― 事例、結論となる――

 要は、第二次大戦が終わる前年に発表された論文でエリクソン言いたかったことは。それまで、迷信、恐怖、怪しく思われていた催眠に対して科学的な光が当てられつつあり、このような認識が置き換えられつつあるということだ。それで、心理療法や医療において、クライアントの性格や行動に対する理解を得るために催眠を使うことができるという主張だ。

・・・・・・・・・


テスト付き

 ―― 催眠というのはどのような症状に効果があるのか?――
 
 ふと、こういった疑問が湧いてくることがある。

 ここでまず、最初にお断りしておく。個人的には医者でも臨床心理士でもないので診断をしたり、治療にあたる立場にはない。また、こういった治療法が有効だとアドバイスをする立場でもない。したがって、単なる、ネットに落ちていた論文を面白おかしく読んでいる一読者という立場で書いている。

 ―― 催眠がどのような症状に有効か?まとめられた資料は無いのか?――

 ネットに「WHAT WE CAN DO WITH HYPNOSIS(2008)」というタイトルの論文がある。ミルトン・エリクソンらが1957年に設立した臨床催眠の学科 The American Society of Clinical Hypnosis の学会誌である The American Journal of Clinical Hypnosis に掲載された論文だ。設立から50周年を迎えた2008年に出されている。内容は、過去50年臨床催眠が用いられた32の症例について、催眠の有効性の有効性の観点からメタ分析を行ったという内容だ。学術的な団体から出されている論文だから、それなりには信憑性が高いだろう。それで、対象となっている症状は以下の通りだ。

  1. 急性疼痛(大人)
  2. 急性疼痛(小児)
  3. 拒食症
  4. ぜんそく発作への不安
  5. パブリック・スピーキングの不安
  6. 受験時の不安
  7. ぜんそく発作
  8. おねしょ、夜尿症
  9. 過食症
  10. ガンによる疼痛
  11. 科学療法の苦痛
  12. 嚢胞性線維症
  13. うつ
  14. 外科手術時の苦痛
  15. 十二指腸潰瘍の再発
  16. 線維筋痛
  17. 頭痛
  18. 偏頭痛
  19. 出血
  20. 高血圧
  21. 股関節または膝の変形性関節症の痛み
  22. 医学的に原因不明の不眠症
  23. 過敏性腸症候群
  24. 吐き気および悪阻
  25. 産科アプガースコア
  26. 産科の痛み
  27. 禁煙
  28. 手術の痛み(成人)
  29. 手術の痛み(小児)
  30. トラウマからの回復
  31. イボの除去
  32. 減量、ダイエット
 ――これから何が分かるのか?――


  一つは催眠が用いられ効果があるとされているのがこの症状に対してだということだ。逆に言えば、ここから大きくハズレるような適応であり、かつ学術的に検証されていない範囲は注意が必要だということだ。

 例えば「催眠でガンを治る」と主張している人が居ると仮定する。もちろん、この場合プラセボ効果で治ってしまうことを完全に否定するわけではないが、少なくとも米国臨床催眠の学会が催眠の効果として認めているのは、あくまでも神経学的に痛みを低減できたり、不安を和らげたり、習慣を変えるところまで、ということが分かってくるという具合だ。もちろん、ここにリストされている症状に対する催眠の効果についても個人差はあるだろう。

 何れにしても、学術論文がなく個別の統計的分析もメタ分析もなしの状態で極端なことを言っている記事などには気を付けたほうがよいのだろう。逆にいうと可能性とその限界を統計的に把握するために学術論文があるという具合だ。

―― エリクソン派生の技法をコーチングで使う場合に注意することは?――
 
 個人的にはこのあたりを避けてコーチングやファシリテーションあるいは組織マネジメントに限ってエリクソン派生の方法論を使用している形式にはなっているが、うっかり医療の分野に踏み込まないために、このあたりの範囲を把握しておくのは大事だと思っている。

 ぜんそくの治療をしましょうというと医療行為だが、ぜんそくの発作に対する不安を和らげましょう、とかパブリック・スピーキングの不安を低減しましょう、となるとコーチングの範囲にも重なってくるのでこの切り分けが難しいところではある・・・・・・それで、感覚的にぜんそくの発作についての不安低減は自分の範囲外で、パブリック・スピーキングの不安の低減は範囲内でもいいかなぁという感じにはなっている。もちろん、個人的には目標達成や認識や行動の変化や学習を支援することであり、そのためにパブリック・スピーキングが出来ないことが大きな制約になっているとしたら支援する感じにはなっている。

―― 今日の論文から何を学ぶのか?――

 何れにしてもこういったメタ分析を行った資料というのは、怪しいサービスに騙されたり、うっかり自分が医療分野に足を踏み込むことを防ぐ指針とはなるのだろう。もちろん、催眠自体にはたいした害はないのかもしれないが、催眠に固執することで本来受けられるはずだった他の治療を妨げることを防ぐ重要性は理解できるように思ってくる。

5月30日の進捗、1180ページまで(全体 2,648ページ、進捗率 44.6%)

ボリュームIV
INOVATIVE HYPNOTHRAPY

医学催眠
許可を得て、ミルトン・エリクソン転載は北米、月、1944年、ニューヨーク数の診療所をfromThe。 







お知らせ:

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詳細は、こちらから。


(つづく)

文献
[1] http://ori-japan.blogspot.jp/2017/01/collected-papers.html


記事の内容の正誤について、執筆者は一切保証いたしません。また、本書の内容、エクソサイズなどを実行した結果被った被害などについて著者は一切責任を負わないこととします。本ニュースレターの内容は、以下クリエイティブ・コモンズ・ライセンスに従うものとします。但し、引用元の著作権は引用元に所属します。ご意見、ご感想は次へ tritune'`@''gmail.com
https://www.facebook.com/Okirakusoken-236949276723679

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2017年5月29日月曜日

ミルトン・エリクソン論文全集を読む 149日目


                                                                                                                            
 後催眠暗示で外国語学習が加速度的になる、

 という学術論文があるなぁ。

 そのうち、「後催眠暗示で加速学習する英語塾」でも始めるかなぁ(笑)。

   <ひとりごと>




はじめに

 備忘録として、



 お正月から、ミルトン・エリクソンの論文全集『The Collected Papers Milton H. Erickson』[1] を読んでいる。読み方のルールはここで書いた。

 149日目について書いておきたい。


医学における催眠

「Hypnosis in Medicine (1944) 」から。著者はミルトン・エリクソン。1922年あたりからウィスコンシン大学時代から始めた催眠の実験から20年ほど経過しているが、1944年にエリクソンが医療従事者向けに書いた「医学における催眠」というのが今日の論文となる。内容をサマっておくと以下のようになる。

 催眠の歴史

 ありがちだが、フランツ・アントン・メスメルの説明から始まって、ジョン・エリオットソン、ジェームズ・エスデール、ジェームズ・ブレイドの話から始まる。フロイトについては一言も言及されてないのが、案外意味があるのかもしれない。情報は何が書いてあるか?より何が書いてないのか?というのが案外重要だったりするからだ。

 一般的な疑問

 このあたりも代表的な疑問だ。誤解といったほうが正確なのかもしれない。

 具体的には、誰に催眠がかかるのか?催眠で反社会的なことは可能か?催眠術師ー被験者の間は、支配する者と支配される者との関係なのか?精神病の被験者の症状を結晶化もしくは沈殿させるのではないか?といったことだ。ある意味、誤解だがこれを丁寧に説明していることになる。

 催眠の技法

 ここで、エリクソンは凝視法、クリスタルボール法、握手のすっぽかし、のような固定化されたものではなく、催眠療法士と被験者の対人関係の関数になっていることが述べられている。また練習すれば誰にでも可能だということも。既に、エリクソンは一人ひとりの反応を見抜き、それを利用するようなアプローチを確立していたことが伺える。

 催眠現象

 ここではトランス誘導により被験者に誘発される催眠現象について書かれている。ただし、ここでは定量的な数字として訓練を受けた70%の被験者しかトランス状態に入れないことが指摘されている。また、催眠の状態、深さは被験者により違うとしている。また、場合によって軽い催眠で十分だともされている。

 大体、今日のところはこんな感じだが、だいぶん後期のエリクソンに近づいてきているように思う。

・・・・・・・・・


随考

 ネットに少し古い1961年に書かれた「Hypnosis A Useful Adjunct to Medicine and Dentistry」という論文が掲載されていた。医療や歯科への催眠の適用という内容だが、少し違うことも書かれている。

 特に、個人的に面白いと思ったのは以下にある外国語の習得に関しての記述だ、
One foreign language student learned a working vocabulary of 6000 words of Spanish in exactly five hours of intensive training under hypnosis, plus some study.This was accomplished in five days.
要は、5時間の催眠トレーニングを受けた後、5日間かけて6000語の単語を記憶することが出来たというところだ。 具体的には、この論文にトランス誘導のスクリプトが書かれているが、外国語の学習の場合には、ここに後催眠暗示で学習が容易になるようなことを入れ込むという具合だ。

 催眠の『平和利用』としてはかなり面白い分野への適用だ(笑)。そう言えば、一昔前、紀伊國屋書店などで『サジェストペディア(Super Learning)』と呼ばれる教材が販売されていたことを思い出した。バロック音楽を流しながらリズムに併せて流れる語学教材を聞くことで加速度的に学習が進むというコンセプトだったと記憶している。

 上の論文に話を戻すと、こういったこととは違い、学習する時には特別なデバイスを必要とせず、後催眠暗示で学習に最適な心身状態に入るようになっているようだ。

 余談だが、最近ご近所を歩いていると、「バイリンガルの幼稚園」に通う、英語の歌を歌いながら行進している園児の集団をたまに見かける。もちろん、個人的には、日本語とロジックをしっかり勉強してから外国語を学べ派なのだが、一旦、日本語で基礎をつくってから後催眠暗示で加速学習したら、どうなるのだろうなぁと考える今日この頃でもある(笑)。さらに、暗示したわけではないのだが、調子がいい時は英語が関西弁に聞こえるのだよなぁ(笑)。


5月29日の進捗、1172ページまで(全体 2,648ページ、進捗率 44.3%)

Volume IV
INOVATIVE HYPNOTHRAPY

Hypnosis in Medicine
Milton H. Erickson Reprinted with permission fromThe Medical Clinics of North America, May, 1944, New York Number. 







お知らせ:

ミルトン・エリクソンの本質を突き詰めたから分かったことがあります。

 組織のパラドクスを解消し、組織の認識、行動の変化を支援する、
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詳細は、こちらから。


(つづく)

文献
[1]http://ori-japan.blogspot.jp/2017/01/collected-papers.html


記事の内容の正誤について、執筆者は一切保証いたしません。また、本書の内容、エクソサイズなどを実行した結果被った被害などについて著者は一切責任を負わないこととします。本ニュースレターの内容は、以下クリエイティブ・コモンズ・ライセンスに従うものとします。但し、引用元の著作権は引用元に所属します。ご意見、ご感想は次へ tritune'`@''gmail.com
https://www.facebook.com/Okirakusoken-236949276723679

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