2017年5月12日金曜日

ミルトン・エリクソン論文全集を読む 132日目


                                                                                                                            
 エリクソニアン・アプローチの本質は何か?

 こころの中の物語を変化させる支援をすることに他ならない。

   <ひとりごと>




はじめに

 備忘録として、



 お正月から、ミルトン・エリクソンの論文全集『The Collected Papers Milton H. Erickson』[1] を読んでいる。読み方のルールはここで書いた。

 132日目について書いておきたい。


法的証言の否定もしくは取り消し

 「Negation or Reversal of Legal Testimony(1938) 」。著者はミルトン・エリクソン。

 簡単に言うと、犯罪の証言に関係する話。取り調べで、容疑者だけではなく、被害者もその証言がコロコロ変わることがある。このメカニズムがどうなっているのか?これを心理療法家の立場から推論していく話。

    第一の事例は、警察による売春宿の手入れ。ここで、9歳と11歳の女の子、その両親、12人の客が逮捕される。両親は、この女の子を店に出していたもよう、暴力を受けた後もあり、それぞれ性病にも感染していることが判明。女の子は別々に収監され4回のインタビューを受ける。この証言内容は、両親、客の証言で裏取りされる格好になる。

   それで4回の証言内容がどのように変わっていっているのか?

 ざっと言うと、こんな話。

 第二の事例は、仮保釈中の男性。女性を誘って盗んだ車でホテルへ行こうをドライブしている。無謀な運転から車が横転、炎上。女性が取り残される。この男は救助せずに逃げる。この女性は重傷を負ったものの、たまたま通りかかったドライバーに救出され、やけどは軽症で済む。

 男は逮捕され、この女性は法定で証言を始める。最初は事実を語っていたのだが、8ヶ月後の証言では、虚偽の証言を語り始める。

 ざっというと、こんな話。

 ・・・・・・・

   2つの話の共通点は以下だ、

  1. 背景は、権威に挑戦的で、なんらかの犯罪行為に加担
  2. 性的関係、違法行為、ただし好んで関与
  3. 女性は感情を配慮されず性的な玩具として扱われる
  4. 女性は虐待されている。事例1は肉体的に、事例2は精神的に
  5. 将来の不安を掻き立てる治るまで時間のかかる怪我を負う
  6. 問題のある男性と同じように、苦しみとして、将来についての個人の無力感、汚名、どうなるか分からない不安を経験した
  7. 自己弁護と他の罪の意識の偏重により、犠牲性は犯罪者に強烈な避難を行う
 エリクソンはどのようなメカニズムでこういうことになるのか?を洞察しているが中々重い話だ。
 

随考

 ネットに「Ericksonian Hypnosis:A Review Of the Empirical Data(1999)」というのが落ちていたので、これを読んでみた。非常にまとまっていて興味深い。

 内容は3人の博士様が、

  • エリクソン催眠(エリクソニアン・アプローチ)の特徴とは何か?
  • その技法を何人くらいに試してどんな効果があったのか?
 分かる範囲で調べてみようじゃないか?と思い立って調査した論文ということになる。

 もちろん、メタ分析をしたわけでもないし、二重盲検をやってプラセボ効果を除いたわけでもなく、単にマッチ棒を置いて数えました、という程度なので、エリクソニアン・アプローチが何か統計的にその優位性が検証されたわけではない。しかし、一体どれくらいの母数を対象に試されたのか?が分かるのは出だしとしては意味があるだろう。

 さて、この人たちがエリクソニアン・アプローチに置いている仮定が4つある、
  • 催眠は変性意識である
  • 通常の起きている意識とは違う状態にある
  • 利用(Utilization) を使うことで、被催眠性はより機能する
  • 直接暗示より、間接暗示のほうが有効である
 本当にそうなのか?これらの切り口から調べていく格好になっている。

 興味深い結論だけ書いておく、

It is our contention that essence of the Erickson's approach was to create an expectancy for change, disrupt, distract or otherwise occupy the limited conscious mind, and thereby create a context for the client in which a change in his or her self narrative can occur. 

我々の主張するエリクソンのアプローチの本質は、変化に対する期待を作り、制限された意識的な心を崩したり、気をそらせたり、専有したりすることで、クライアントのナラティブ(ドミナント・ストーリー)の変化が起こる可能性のある状況を作り出すことだ。


 ここでは、人の心が構成主義的に説明されているところがある。つまり、人の心は何で動いているのか?それは、心の織りなす物語で動いているということだ。この物語はどんどん固定化されていき、この物語はいつしか決められたパターンになり、未来はその専有された物語でしか動かないと考えるようになる。要は、ドミナント・ストーリーということだ。これを変化させ、未来の可能性が見えるようになるために、新しい物語について考える取り組みがエリクソニアン・アプローチということになるだろう。

 さらに、ここで催眠がどのような役割を果たすのか?ということになる。以下につづく、


Within this perspective,hypnosis is used as a social interaction constructed by the therapist and client in which different multiple realities for the client can emerge. Hypnosis becomes a form of communication in which clients are provided a context to develop a more useful life narrative than that with which they entered therapy.

この観点の中で、催眠は、クライアントのために異なる複数の現実を出現させることのできるセラピストとクライアントによって構築された社会的相互作用として使用される。催眠はコミュニケーションの一形態となり、クライアントは治療に入ったよりもより有用な人生のナラティブを開発するための文脈を提供される。

 非常に美しい定義だ、と思う。要は、催眠は物語が機能するためのコミュニケーションの一つのやり方だ、ということだ。
 

5月12日の進捗、1042ページまで(全体 2,648ページ、進捗率 39.4%)

Volume III
HYPNOTIC   INVESTIGATION OF   PSYCHODYNAMIC PROCESSES

Negation or Reversal of Legal Testimony Milton H. Erickson Reprinted with permission from the Archives of Neurology and Psychiatry, September 1938, Vol. 40, pp. 548-553. 




(つづく)

文献
[1]http://ori-japan.blogspot.jp/2017/01/collected-papers.html


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