2017年5月14日日曜日

ミルトン・エリクソン論文全集を読む 134日目


                                                                                                                            
 エリクソンの技法がちゃんと使えると、

 酒を飲みながらの人生相談でもちゃんと変化が起こせる(笑)。

 もちろん、相手が望む方向で、だが・・・・・

   <ひとりごと>




はじめに

 備忘録として、



 お正月から、ミルトン・エリクソンの論文全集『The Collected Papers Milton H. Erickson』[1] を読んでいる。読み方のルールはここで書いた。

 134日目について書いておきたい。


エリクソン的ジキルとハイド?

 「Permanent Relief of an Obsessional Phobia By Means of Communications With an Unsuspected Dual Personality (1939) 」。著者はミルトン・エリクソンとローレンス・クビエ。

 クライアントは20歳の大学生の女性。この女性は、冷蔵庫、台所のドア、研究室のドア、はたまたロッカーのドアなど、ドアが開いているかもしれないことが気になる強迫神経症だ。

 面白いのは、この女性が起きている時はミス・ディモンとして扱い、催眠中に副人格であるミス・ブラウンという人格で扱うように暗示していることだ。ある意味、ジキルとハイドを地でいっているような、事実は小説より奇なりのようなことになっている。もちろん、ジキルとハイドは善悪だが、ディモンとブラウンは意識、無意識のような関係だ。

 また、催眠に導き自動書記を行ってもらう。

 概要を話すとこのような感じになる。詳細は明日以降。

・・・・・・

 で、この論文の続きをつらつら読んでいたのだが、ネタバレになるので生半可にメモを書かないほうがよい気がしてきた。内容的には『二月の男』と同じくらい面白い内容だ。

 おそらく、フロイトのやっていた自由連想的な技法と、自動書記で二重人格的な2人を対話させて、最後はきちんと介入しているエリクソンの技法の違いが分かるのも面白いところだろう。あまりの職人技的な技法にただただ唸るしかない。


随考

 Youtube にロバート・マクニーリーの「Structuring A Hypnosis Session :催眠セッションを構造化する」が落ちていたので、これを視聴してみた。地味だが、心理療法に限らず、変化を志向したコーチングやファシリテーションでも、ものすごく参考になる映像だ。

 あまり大きな声では言えないが、個人的に「エリクソニアンのきぐるみ被ったベイトソニアン」の立場としては誰が本物のエリクソニアンか?誰がどのようにエリクソンの技法を継承しているのか?は不思議と分かる(笑)。また、老子ではないが、本物は地味で目立たないものだ。


 オーストラリアを中心に活躍するロバート・マクニーリー(映像、左側の人物)は日本ではあまり馴染みはないが、1970年代に米国アリゾナ州フェニックスでミルトン・エリクソンから直接教えを受けた人物のひとりだ。

    その意味、エリクソン本人の暗黙知を持つエリクソニアンということになるだろう。エリクソニアンとしてはお馴染みのザイク、ヤプコ、ギリガン、オハンロンらとの親交も深い。

 さて、この映像の面白さを書いてみよう。一般的に催眠療法のセッションは以下のようなステージからなる。ここで書いた。

  1. 誘導前段階
  2. 催眠誘導
  3. 深化
  4. 方向付け
  5. 終結

 ただし、エリクソン本人のセッションの場合は、この区別が分かりにくいところがある。例えば、催眠誘導をしながらラポールをとったり、情報を引き出したりしている場合がある。これが催眠誘導さえ成功すればクライアントの認識や行動に変化を起こる、と誤解されている点につながっているように思われるもちろん、催眠導入に成功しても、きちんと介入が出来ないと変化は起こらない。

 逆に言うと、マクニーリーのこの映像は意図的にか、この区別が非常に分かり易い。構造化されていて、クライアントひとり一人に応じて、きちんと情報を引き出し、見立て、そして介入しなければいけないと分かるのがよいところだ。しかも、介入はたいていシステム思考でいう全体を見て、変化の支点としてのレバレッジ・ポイントに介入形式になる。具体的には以下のようになる。

  • 前半、誘導前段階の情報をホワイトボードに書き出す
  • 後半、ホワイトボードの情報を元に催眠誘導、方向付けを行う
  • 催眠は対話的に行われる(深化はオプションで軽いトランスだけ)
 
 これは、ある意味、セッションの構造化してエリクソニアン的なアプローチを分かりやすく見せているという意味では非常に面白い映像だ。ただし、引き出し情報から、どのように見立てを行っているのか?は介入からリバースエンジニアリングして推測するしかないが。

 また、エリクソニアン・アプローチでは誰彼区別せず、出来合いのスクリプトを読む、ということは言語道断ということになる。あくまでも鮨屋の職人がお客の顔を見ながら、その時節、その顧客だけにあった鮨を握って顧客を満足してもらう、というようなアプローチになる。その意味ではこの映像は、まさにこのようなアプローチになっている。

 もちろん、このスタイルは心理療法に限らず、コーチングにも有効だ。日本だと「内部表現の書き換え」と言って大騒ぎしているコーチングの某流派があるが、これもある意味誤解を与える表現だ。エリクソニアンは、クライアントがあくまでも、既に持っているが、いままで気づいていない資源・資質(リソース)に気づいて、今コレからこれを利用できる支援を行う。しかし、認識の枠組み(Frame of Reference)が今までと同じだと、資源がそこにあってもそれに気づかないということが起こる。そこでまずは、資源に気づくようにこの認識の枠組みを転換する支援から始めるという具合だ。要は、MRI(Mental Research Institute)の人たちが命名したリフレーミングということだ。上善は、認識のやり方そのものが変わるまで支援することになる。これが行動や人間関係の変化に波及する。
 
 何れにしても、クライアントひとり一人のニーズにあわせて、クライアントから情報を引き出し、ひとり一人にあわせて催眠誘導や介入を組み立て、認識の枠組み(Frame of Reference )や信念システム(Belief System)に働きかけて、認識の枠組みや行動の変化を支援する手法という意味では非常に興味深いところだ。もちろん、冒頭でも書いたが、心理療法に限らず、日常でも仕事の場面でも変化を志向したコーチングやファシリテーションでも有効な技法となる。


 余談だが、後半、前半の情報を使って催眠誘導、方向付けになっていくが、映像のコメントに「二重解離のダブル・バインドの使い方が素晴らしい」とか書かれているのを読むと、やっているほうもマニアックなら、視聴しているほうもマニアックだがきちんと本質を捉えているということが分かってくる(笑)。逆にいうと、これが理解できるレベルで視聴しないといけないということだ。もっとも、普通のエリクソニアンだったら普通にできることを非常に分かりやすく見せているというのがこの映像の価値ではあるのだろう。

 理由は、エリクソニアン・アプローチは自分で使うよりも相手に説明したり、ましてや相手に教えようと考えると何倍も難しいところがあるからだ。

5月14日の進捗、1058ページまで(全体 2,648ページ、進捗率 40.0%)

Volume III
HYPNOTIC   INVESTIGATION OF   PSYCHODYNAMIC PROCESSES

Permanent Relief of an Obsessional Phobia By Means of Communications With an Unsuspected Dual Personality
Milton H. Erickson and Lawrence S. Kubie Reprinted with permission from The Psychoanalytic Quarterly, October 1939, Vol. VIII, No. 4. 




(つづく)

文献
[1]http://ori-japan.blogspot.jp/2017/01/collected-papers.html


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