2017年5月16日火曜日

ミルトン・エリクソン論文全集を読む 136日目


                                                                                                                            
 過去の経験に囚われていても、

 今、ココからやれることは何か一つくらいはある。

   <ひとりごと>




はじめに

 備忘録として、



 お正月から、ミルトン・エリクソンの論文全集『The Collected Papers Milton H. Erickson』[1] を読んでいる。読み方のルールはここで書いた。

 136日目について書いておきたい。


二重人格の臨床的な発見

 「The Clinical Discovery of a Dual Personality(1940s)」から。出版されなかった原稿で著者はミルトン・エリクソン。

     本稿に書かれているテーマは二重人格。エリクソンがこの原稿を書く60年ほど前から知られていたようだ。エリクソンは、500人ほどの被験者を催眠状態にして色々調査した結果、4人ほどこの二重人格のクライアントがいたことを語り始める。

 もちろん、催眠状態において普段とは少し違う振る舞いをする時のことを二重人格とは言っておらず、明示的に区別される。

 ここで、ある二重人格と思われるクライアントの調査を始める・・・というところから話がはじまる・・・・

・・・・・・・

随考

 週末に『Doing What Works in Brief Therapy(2007)』をパラパラ読んでみた。
    
 

 タイトルどおりに中身はブリーフセラピーの本だが非常に実践的で面白い。

 個人的には、心理学大学院出でもなく、医者でもないため心理療法を行うという企みはない。しかし、ブリーフセラピーの知見や手法は日常でも仕事の場面でのコミュニケーション、問題解決、枠組みを越えた未来を思い描く・・・といったことでとても役に立つように思っている。もちろん、当方のコーチングやファシリテーションを通して何らか心身状態の調子がものすごく良くなったとしても、それは当方の関知する範囲ではない(笑)。

 また、ブリーフセラピーは基本エリクソン派生ということになるが、

  • エリクソンのように催眠は使わない
  • 家族や組織をシステムと見立てる
  • システムとしての全体最適化の視点からの問題解決を目指す
  • システムを変化させるレバレッジ・ポイントを見つけて介入を行う

 というような点を考えるとシステム論的に非常に興味の湧く分野でもある。システム論を勉強して、「絵に描いた餅」にならずに実践できる分野のひとつ、と言ってもよいかもしれない。もっとも、エリクソンかブリーフセラピーのような Either Or の発想はあまりお勧めではなく、ベイトソンではないが2つを二重記述(Double Description)することでより理解が深まるとは思っている。

 一般的にビジネス上のコンサルティングのフレームワークは、 Fit-Gapのような戦略的なモデルとなっている。これは、特に戦略派のブリーフセラピーの現状-理想と同じ発想のモデルであり非常に相性がよいように思っている。

 また、プロジェクト・マネジメントなどの運営にアドバイスをしていると、どうしても人間系を扱う必要がある。このあたりは、無生物を扱う一般システム論や第一次サイバネティクスのような考え方では対処が難しく、どうしてもオートポイエーシス論や第二次サイバネティクスのような生物を扱うシステム論的な考え方をしなくてはならなくなる。その意味でも、オートポイエーシス論や第二次サイバネティクスを含む家族療法のような考え方は非常に参考になるところだ。このあたりで書いた。

 実際にプロジェクト・マネジメントの国際組織であるPMIのチェンジ・マネジメント本にMRIの知見が使われている。このあたりで書いた。
 

 さて、話を戻す。本書の面白いところは、2系統のアプローチを合体させている点だろう。それは、以下だ、

  • 《プロブレム・フォーカス》MRI+戦略的家族療法(ヘイリー)
  • 《ソリューション・フォーカス》SFBT

 比喩で言うと、金閣寺だ。一階は寝殿造り、二階は書院づくり、三階は仏殿風というような感じで、一階は第二次サイバネティクス、二階はプロブレム・フォーカス、三階はソリューション・フォーカスのように本来は一緒にならないものを上手く組み合わせたという感じになっている。それで技法の名前は、「戦略的ソリューション・フォーカスト・アプローチ」となっている。

 それで、方法論の概要は以下となっている、


《前提》

 ここで書いたが、MRIとSFBTとではこの優先順位が案外問題だったりする。

1.トラブルというのは何か?(壊れていなければ、直すな)
2.上手く機能しているのであれば、それをもっとやれ
3.機能していないのであれば、それを止めて、何か他のことをやれ

《プロセス》

1.問題の明確化
2.解決の強調
3.解決策のアセスメント
4.介入
5.他のサービスの計画

 

 もっとも、細かい話をすると、かなり小ネタが満載されている。例えば、過去にトラウマを抱えていたらどう対処するか?というような場合。もちろん、エリクソンだったら催眠状態に導き・・・・過去に遡及して・・・・メタ認知を促して・・・となるだろうが、ここではそれはやらない。結局、過去の問題が今コレからどう困るの?というところを明示して対処することになる。

 例えば、いきなり小ネタだが、クライアントに以下の質問をする


Do you have to wait to understand the past in order to make things better for you, or are there things you can do to make it  better even while you're still working on the understanding part?

あなたは物事をより良くするために過去を理解するのを待たなければならないのですか、それとも理解の一部分に取り組んでいる間でさえ改善するために(今ココで)できることはありますか?

 
個人的には、ここに治療的ダブル・バインドの質問をぶつけることも可能なように思えてくるが、一例としてこんな小ネタが満載されているのは嬉しいところだ。少なくともなんでもかんでも過去退行催眠、といった思考停止に陥ることは防げるだろう。
 

5月16日の進捗、1072ページまで(全体 2,648ページ、進捗率 40.6%)

Volume III
HYPNOTIC   INVESTIGATION OF   PSYCHODYNAMIC PROCESSES

The Clinical Discovery of a Dual Personality
Milton H. Erickson Unpublished manuscript, circa 1940s. 



(つづく)

文献
[1]http://ori-japan.blogspot.jp/2017/01/collected-papers.html


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