2017年5月2日火曜日

ミルトン・エリクソン論文全集を読む 122日目


                                                                                                                            
 パラドクスを解くにはパラドクスが必要(笑)。

 <ひとりごと>




はじめに

 備忘録として、



 お正月から、ミルトン・エリクソンの論文全集『The Collected Papers Milton H. Erickson』[1] を読んでいる。読み方のルールはここで書いた。

 122日目について書いておきたい。

ヒステリー性のウツに対する催眠を使った治療の事例

 「The Successful Treatment of a Case of Acute Hysterical Depression by a Return Under Hypnosis to a Critical Phase of Childhood(1941)」のつづき。著者はミルトン・エリクソンとローレンス・クビエ。

 被験者は23歳の女性、病院で雇用されていた。異常に仕事の能力が高い。ただし、数ヶ月たって、寮に引きこもるようになって仕事を放棄し、死にたいと漏らすようになった。

 そして紆余曲折を経てエリクソンの元にやってくることになる。エリクソンはヒステリー性のうつ病と見立てる。

 そして、3回の催眠療法を始めることになる。もちろん、1回目はトランス状態に誘導しての見立て。

 細かいことはかかないが、10歳くらいの時に母親と死別、本来なら母親を通して社会的関係を気づき、性的な発展について理解しておかなければならなかったがこれができなかったことが要因の一つではないかと見立てる。

 エリクソンはクライアントの母親が死ぬ前の経験に退行させ・・・・・・と見立てとリソースの活性化を行う・・・というのがここでの概要。

 ここでは細かいことは書かないが、間接暗示を使うなど所々の注意点が書いてあるので、必要なら元の論文を読んでいただきたい。 
 
・・・・・・・・・・・

   さて、上の1941年の論文について、個人的には通り一遍には読んでいないところがある。システム屋の直感みたいなものだ。要は、単純にクライアントを催眠状態にして何かできあいの「呪文」を唱えるだけで症状が改善するならば誰も苦労しないということだ。

 それで、NCBIのデータベースを覗いてみる。エリクソンを研究したMRI(パロアルト派)のモデルについて書かれている記事がみつかる。MRIの成立は1959年だから、この論文より18年ほど後のことになる。

Brief Therapy Based on Interrupting Ironic Processes: The Palo Alto Model

 このモデルだとクライアントがうつ状態を引き起こしそれを強化している個々人のコミュニケーションのパターンがあるのだろう、と考える。しかも、これがサイバネティクス的には、よかれと思ってやっていることが相互作用して、ポジティブ・フィードバック・ループ(自己強化ループ)でそれが悪循環の方向で強化されていると。

 だから、催眠を使うにしても介入はこのフィードバック・ループが強化されるパターンを壊すか、善循環に変えるためにこれを見立ててパラドクス介入をするなり、カウンター・パラドクス介入を行うというような形式になっている。個人的に思うのは、エリクソンもこっそりこういったことをやっていて、これが分からないうちはエリクソンなど理解できないのだろうなぁと・・・・

   これについてヘイリーの「Strategies of Psychotherapy 」をパラパラ読み返してみた。ベイトソンのシンメトリー/コンプリメンタリーの人間関係の観察をより発展させて、エリクソンの心理療法についてコミュニケーションの視点から、パラドキシカルなコミュニケーションに対してカウンター・パラドクスを当てるような介入について洞察されているのが非常に面白い。ここらで書いたが、本当はクライアントがセラピストや周りを巻き込んで、周りを振り回すメタ・コンプリメンタリーな関係が構築されると面倒だということでもあった。日本語の用語では「策動」というらしぃ。

 また、安直だが、もっと手っ取り早くパラドクス介入について知りたければ「Psychology  Today」にヘイリーの奥さんだったこともある家族療法のクロエ・マダネスを引いたパラドクス介入について書かれているのでこれを読むのが一番てっとり早いのだろう。

   余談だが、ネットを調べていたら、こんなサイトがあった。自己啓発グルのアンソニー・ロビンズとマダネスで、コーチングのトレーニングをやっているようだ。もちろん、ステマでもないし、個人的にこれを推奨するつもりはないが、アンソニー・ロビンズのコーチングの本質も結局は、クライアントをよく観察した結果のクライアント毎のパラドクス介入だということだ。つまり、集団で大騒ぎすることには何の本質もない。

 あまり大きな声では言えないが、こういった本質がわからずにセミナージャンキーとしてセミナーの参加だけに夢中になっていると、散財した挙句、クライアントの変化を支援するコーチングの本質はいつまでも学べないということになるのだろう・・・・
  

随考

 実は、小学生の頃から「逆張り君」をやっている。

 小学生の頃、住んでいる町でお城をテーマにしたスケッチ大会があった。お城を書いても面白くないので、又の間から反対側を見たら、明治時代に建てられて市役所の庁舎が映った。「これだ」と思った。それで180°振り返ってこの市役所の庁舎を書くことにした。レンガ造りのなんとも言えない風格のその市役所を書いた。そうしたら、面白いことに市長さんから特別賞をもらって、他の入選したお城の絵と一緒に、ひとつだけ市役所の庁舎が書かれた自分の絵はしばらくデパートの一角に飾られることになった(笑)。

 それ以来、困った時は180°反対のことをすることにしている。逆張り人生の始まりだ(笑)。

 おそらくパラドクス介入の発想はこういうことだ。常識で同じ方向からだけ見ていても問題は解決しないということだ。

 個人的には心理療法はやっていないのにこういった知見が役に立つのか?と尋ねられれば、

もちろん、答えは役に立つということになる。しかも、一般的な問題解決に対してだ。

 理由は世の中の多くの問題、あるいは悩みの構図がパラドクスであるから、ということだ。細かい話は、このあたりで書いた。

 そもそも、常識的なことを普通にやっていて悪循環が強化されるようなことが起こっている。しかも、こういった場合はたいてい人間関係がややこしいことになっている。だから、普通の解決策をよかれと思ってやっている事自体が問題を更に強化していることになる。だから、このパターンを崩すためにパラドクス介入をする必要があるということになる。もちろん、単にパラドクス介入をしてもそこに抵抗は生まれる。だからエリクソンはこれを間接的に行う。

 まぁ、JAZZのようにある意味、即興的なアートな世界でもある(笑)。
  

5月2日の進捗、968ページまで(全体 2,648ページ、進捗率 36.6%)

Volume III
HYPNOTIC   INVESTIGATION OF   PSYCHODYNAMIC PROCESSES

The Successful Treatment of a Case of Acute Hysterical Depression by a Return Under Hypnosis to a Critical Phase of Childhood
Milton H. Erickson and Lawrence S. Kubie Reprinted with permission fromThe Psychoanalytic Quarterly, October, 1941, Vol. X, No. 4.




(つづく)

文献
[1]http://ori-japan.blogspot.jp/2017/01/collected-papers.html

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