2017年5月9日火曜日

ミルトン・エリクソン論文全集を読む 129日目


                                                                                                                            
 過去の記憶の中にある学びを文脈に注意して再編集することで、

 今から使える資源・資質はいくらでも見つかる。

 で、再編集とは、臨場した経験での新しい関係性の発見。

   <ひとりごと>




はじめに

 備忘録として、



 お正月から、ミルトン・エリクソンの論文全集『The Collected Papers Milton H. Erickson』[1] を読んでいる。読み方のルールはここで書いた。

 129日目について書いておきたい。

催眠による精神メカニズムのデモンストレーション

 「Demonstration of Mental Mechanisms by Hypnosis(1939)」から。著者はミルトン・エリクソン。

 講義でのデモンストレーションで3人の被験者が登場する。講堂の前に出てトランス誘導されているような感じだ。

 一人目は、男性、今場所は講堂だが、エリクソンのオフィスに居るというように誘導される。おそらく講堂には多くの学生が居るのだろうが、それは気にせず、エリクソンのオフィスにいるような振る舞いをはじめる。要は、外の刺激が気にならず、自分の内的イメージに沿って振る舞う格好になっている。

 二人目は、若い女性、別の教授による誘導だが、若年のころの記憶があまりない。この女性を10歳まで退行させると、振る舞いが10歳の女の子のようになる。

 三人目は、男性。要は負の幻覚の実験。特定の男性が視界から消えると暗示すると、この男性に反応しなくなる。その他、猫ぎらいになる・・・とかの暗示で色々遊ばれている。 

・・・・・・・・・

 1939年、エリクソンは38歳頃の少し古い論文。ここでは単なる催眠でどのように振る舞いが変わるのか?の観察をしているだけということになる。もちろん、以下に書いたが、これを後にどのように心理療法として活用することになるのか?ミラノ派の補助線をあてて考えるととても興味深いことが分かる。
 

随考

   自己認識は、『エリクソニアンのきぐるみを着たベイトソニアン』だ(笑)。だから、なんらかの「情報」が必要な時には、ベイトソンによる「情報」の定義である「A difference that makes a difference.」の発想で、観察対象の横に「物差し」を置いてみたくなる。これで、ほぼ自動的に何らかの「情報」が生じる。

 今日のエリクソン論文について、具体的には「Circular Questioning: An Introductory Guide」というタイトルのミラノ派の円環的質問について書かれた論文を「物差し」として横に置いてみたくなる。

 ミラノ派は、エリクソン→MRI→ミラノ派となり、ざっくり表現すると、ベイトソンをくぐらせたエリクソン派生の家族療法ということになる。それで、このミラノ派をエリクソンの横に置いてみる。青の紙の横に、それより少し薄い青を置いてみるというな発想だ。比較しなければ、どちらも普通の青なのだろうが、比較することで青の微妙な色合いの違いが分かる。もちろん、これ自体が何らかの「情報」ということになる。

 まず、心理療法の大前提としてこうだろう。クライアントの問題行動や問題の感情、あるいは情動はなんらかの状況に依存している。例えば、高所恐怖症はクライアントが高いと認識した場所でのみ起こる、という具合だ。もちろん、家族療法のような場合は、人間関係がある状態になった時に問題が起こる、というように少し複雑だ。また、セラピストがその場面にいて一次情報を取るのは難しいだろう。

 そのため、クライアントに質問するなり、観察するなりして、二次情報から見立てを行う必要が生じる。また、できるだけ一次情報に近似するように、ここで、クライアントに、問題行動や問題感情の状況に臨場する形式で、行動や認識の「差異」を意識してもらう必要があるだろう。

 ミラノ派の場合は、この問題行動や問題の感情がどのように生じるのか?以下の視点でクライアントに「差異」を認識してもらうように聞いていく形式になる。

《差異》を意識してもらう質問

  • 時系列的な変化
    • 問題の始まり
    • 過去一番症状がひどかった時期
    • 過去症状が軽かった時
    • いつまでには症状をなくしたいのか
  • 対人関係
    • コンプリメンタリー/シンメトリーな関係
  • 対人関係(部分)
    • どんな振る舞いが気になるか
    • 相手のどんな性格の部分に反応しているのか
  • 状況毎の違い
    • それが起こる状況、起こらない状況
 そして、
《関係性》を気記述してもらうような格好になる、具体的には以下のカテゴリーだ。
  • 振る舞い
  • 感情
  • 信念
  • 意味
  • 人間関係
 ただし、ここで問題もある。一つは、クライアントが様々な関係性においてその問題の状況に臨場できるか?ということだ。多くの問題は、高いところに登れば怖い、のように直線的な因果関係のようなもので説明できるとは限らない。実際にはもうすこしシステミックでややこしいことが多い。もちろん、ここでの状況、関係性、振る舞いというのは知りたい。

 もう一つは、恐怖を感じるような場合、クライアントをメタ認知の視点でそこで起こる気持ちを抑えた形式で状況を観察してもらう必要があるような場合だ。

   ミラノ派は質問と普通の想起でこれを行うが、エリクソンはここに間接暗示と「催眠」を使うということだ。
 
 もちろん、エリクソンは診察室で、クライアントに家に居る時の振る舞いを自然に再現してもらうために「催眠」を使うようなことを行う。理由は、状況における振る舞いの変化や、時系列的な変化を「よそ行き」でないモードで観察するためだ。そして、ミラノ派と同じように差異を意識しながらその場面に臨場する。そして、現実味のあるその場面に新しい関係性を見つけてもらうように支援するということになる。

 ここで書いたが、こういったことを考えながら、以下を読んで見る。


エリクソンが一度としてぶれたことのない領域は、「治癒」の捉え方であった。これは、彼自身が麻痺を克服したという体験から来ているのではないかと思う。彼は青年のころ、体験的なリソースが変化を発生させることを学んでいる。早くも1948年には、直接暗示はなんらかの形でクライエントに影響を与えるけれども、治癒はそうした直接暗示の結果ではなく、その問題の特定のコンテクストで必要とされる体験を再結合させることによって生じるものであることを認識していた(Erickson , 1980).


 要は、体験の再結合とは差異から経験にアクセスし、現在、役に立ちそうな資源をみつけて、新しい関係性を発見していくことに他ならないということになる。もちろん、こういった本質が分かれば、「催眠」を使う使わないは単なるスタイルの違いであって、もっと本質的ことを理解してクライアントの認識や行動に適切に介入しないと、変化は支援できないことも身をもってわかってくることになる。

5月9日の進捗、1020ページまで(全体 2,648ページ、進捗率 38.7%)

Volume III
HYPNOTIC   INVESTIGATION OF   PSYCHODYNAMIC PROCESSES

Demonstration of Mental Mechanisms by Hypnosis Milton H. Erickson Reprinted with permission from The Archives of Neurology and Psychiatry, August, 1939, Volume 42, No.2.




(つづく)

文献
[1]http://ori-japan.blogspot.jp/2017/01/collected-papers.html


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